イベントレポート

多様性時代の全員活躍マネジメント 個と組織を活かすAUBEモデルとは?

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多様性時代の全員活躍マネジメント 個と組織を活かすAUBEモデルとは?

昨今、リーダーやマネジャーにとって職場やチームづくりが難しくなる要因の一つは、メンバーの多様性です。経験や専門性、働く時間や場所、価値観が異なる一人ひとりの強みを引き出すことに加え、連携や協働を促進することは、かつてよりも困難になっています。

多様性は、意見の違いから創造的な成果を生む源泉になるのと同時に、分断や対立によって組織の成果を損なう要因にもなり得ます。多様で柔軟な働き方が増えることによって、創造的な成果につながることもあれば、メンバー間の不公平感から意欲が下がるといったネガティブな影響をもたらすことも考えられます。

多様性に対応するためには、一律的で画一的な働きかけだけでチームを機能させることが難しくなってきました。メンバー一人ひとりとの対話を重視することで、個別に対応する負荷も高まっています。リーダーやマネジャーが、個人やチームへの働きかけをどのようにアップデートする必要があるのか、より具体的な知恵が求められています。

パーソル総合研究所では、早稲田大学グローバル・エデュケーション・センター 森永雄太教授との協働プロジェクトにより、多様性が活きるチームづくりを推進する実践的なリーダーシップ行動「AUBEモデル」の構築と活用に取り組んでいます。昨年度は2回のインターネット調査の実施を通して、定量的な検証と精緻化に取り組んできました。

今回は、2026年3月に開催したウェビナーにおける森永教授のご講演を抜粋してご紹介します。

メンバーの多様化で、「光の射す職場」と「闇堕ちする職場」の二極化が進行している

人材の多様化が進む中、職場では二極化とも呼べる現象が起きています。一つは、多様性を力に変え、好循環を生み出す「光の射す職場」。もう一つは、多様性に翻弄され、混乱や分断が深まる悪循環に陥る「闇堕ち職場」です。(図1)

図1:「光の射す」職場と「闇堕ち」職場

「光の射す職場」では、
・働き方の柔軟性が高く、
・制約があっても優秀な人材が活躍でき、
・多様な知識や経験が流入することで、
・建設的な意見の対立(建設的コンフリクト)が生まれ、
・結果として、意思決定の質や創造的問題解決が促進され、
「成果 → 職場の体力向上 → さらなる柔軟性」という好循環が生まれます。

一方、「闇堕ち職場」では、
・不公平感が蔓延し、
・「頑張らなくてもいいのでは」という意欲の低下や離職が生じ、
・非生産的な人間関係のもめごとや分断が生じ、
・心理的安全性も低下する
といった現象が連鎖し、成果も人も失われていきます。

多様性を活かせるかどうかによって、いわば光と闇のような対照的な職場が生まれます。多様化が進む中で全員が活躍できる職場づくりを進めるために、この対照的な職場の違いを生み出すリーダーの行動が何かを解き明かし、マネジメントに生かす方向性を見出すことが重要になります。

「AUBEモデル」とは?

多様性の時代に全員が活躍するマネジメントは、これまでの企業で多く取り入れられてきたマネジメントの手法とは異なる比較的新しいスキルであると考えられます。従来の「一律・指示命令型」のリーダーシップは通用しにくくなり、対話を重視する「フォロワー重視型」への転換が求められています。しかしこのような二元論はわかりやすいとはいえ、どのようなときでも「対話をすればいい」「指示はしない方がいい」と極端に振れると、職場で実践して成果を出すことは難しくなります。

例えば、メンバー一人ひとりの違いに着目すると、自律的に動くメンバーや、経験やスキルがまだ浅いメンバーや、働き方に制約のあるメンバーが混在しています。そのためリーダーには、状況や個人に応じて関わり方を調整する力が不可欠です。

AUBE(オーブ)モデルは、こうした多様化した職場において、メンバーが意欲やパフォーマンスを落としてしまう「闇堕ち」を防ぎ、創造的な問題解決が生まれる「光が射す職場」へと変えていくための、具体的なリーダーの関わり方を示したモデルです。

AUBEモデルは、多様性を活かすインクルージョンの概念をベースに、以下の4つの要素で構成されています。(図2)

独自性の発揮を支援する(U:Uniqueness)

一人ひとりの強みを引き出す成長機会を提供する、少数派の意見を尊重する

帰属感を高める支援をする(B:Belongingness)

新しくチームに入る人を歓迎する、意思決定に巻き込む

チームづくりの見本を示す(E:Set an Example for the team)

対個人へのコーチングや1on1だけではなく、対チーム次元で、多様性を活かすチームとしてのアイデンティティを示し、体現する行動をとる

適応的にふるまう(A:Adaptive)

上記の行動の結果や状況をみながらバランスをとる、行動を変える、繊細に調整する

図2:AUBEモデル

※AUBEモデルは、早稲田大学 森永雄太教授とパーソル総合研究所が共同制作したリーダー行動モデルです

リーダーのAUBE行動は、チームの業績・創造性と関連することが明らかに

2025年から2026年にかけて本プロジェクトで行った2回のインターネット調査について、結果と示唆を紹介します。調査は、従業員300名以上の企業の非管理職、20代から60代を対象に行いました。調査では、自分の上司がどの程度「AUBEを発揮しているか」について回答を得ました。上司自身の主観ではなく、上司の行動がメンバーからどのように映っているかを確認しました。

まず、AUBE行動とチーム業績・創造性について確認した結果、AUBE行動は、職場の「インクルージョン(職場の一員として認められており、自分の独自性や能力は組織の成功のために必要とされている感覚)」に正の関連があることがわかりました。また、AUBE行動は、インクルージョンを介して、チームの業績や個人の創造性の発揮と関連することを確認できました。(図3)

図3:AUBE型リーダー行動とチーム業績・創造性の関係性

一方で、現状の傾向としては、「U:独自性の発揮を支援する」については、独自性を「尊重する」ことはできていても、「積極的に引き出す」行動は不足していること、チーム全体に多様性活用の方針を示す「E:見本を示す」行動には、まだ伸びしろがあることも明らかになっています。

無気力な「“悪い”静かな退職」を低減

続いて、近年注目を集めている「静かな退職」に関して紹介します。働き方の多様化に関連して「闇堕ちする職場」にみられる一つの現象に、「静かな退職」があらわれていると考えられます。パーソル総合研究所が行った「働く10,000人の就業・成長定点調査 2026」では、「会社を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやるだけの状態」を「静かな退職」と捉え、そのような状態にある人は約5.8%、約17人に1人存在するとされています。

ただし、「静かな退職」は必ずしもネガティブなものではありません。制約がある状況下で一時的な働き方として起こりうるものであり、場合によっては本人と組織の双方にとって望ましい働き方の一つとして受け止める視点も重要です。

また、この調査における「静かな退職」の4分類に基づくと、パフォーマンスと、はたらく幸せ実感の両方が高い「戦略的な静かな退職」は、多様な働き方と経営がうまく機能している良い形態であるといえます。一方でパフォーマンスも、はたらく幸せ実感も低い「無気力型」などの形態は、より望ましい状態に移行できるようなマネジメントが求められるでしょう。(図4)

図4:「静かな退職」の4類型

今回のインターネット調査では、まず上司が「AUBE行動」をとることで、「静かな退職」の状況にどのような違いが生じるのかを検証しました。AUBE行動のスコアの高低でグループを「AUBE高群」と「AUBE低群」に分けて比較したところ、「静かな退職」の出現率はいずれも7%前後と大きな差はなく、AUBE高群の方がわずかに出現率が高いという結果になりました。これは一見、AUBE行動は「静かな退職」を促進しているかのように見える結果です。

一方、AUBE高群と低群において、上述の「静かな退職」の4類型の内訳を確認したところ、AUBE高群ではパフォーマンス・はたらく幸せ実感ともに高い「戦略的“静かな退職”型」が統計的に有意に多く、「無気力型」は少ないことが分かりました。一方、AUBE低群では「無気力型」が有意に多く、「戦略的“静かな退職”型」が少ない傾向が見られました。(図5)

図5:AUBE高群と低群の「静かな退職パターン」の出現数比較

この結果から、リーダーのAUBE行動が十分に実践されていない環境では、メンバーにとっても組織にとっても望ましくない働き方が生じやすいことが示唆されます。リーダーがAUBEを実践することで、柔軟で多様な働き方を実現しながら、個人と組織の双方にとってポジティブな成果を得られる可能性が高まることが明らかになりました。

AUBE行動は仕事上の意見交換を活発にして、人間関係の対立を抑える

多様性がある職場では、意見の対立(コンフリクト)は避けられません。今回のインターネット調査では、AUBE行動と組織コンフリクトの関連について確認しました。コンフリクトで重要なのは、その質です。コンフリクトは以下の2種類に分けて考えることができます。(図6)

  • タスクコンフリクト:仕事や意思決定をめぐる意見の違い
  • 関係性コンフリクト:人間関係そのものの対立

図6:コンフリクトの種類

「意見の食い違い」と「人間関係のもめごと」を区別して、違いを価値創造の源泉に変えることが、コンフリクトを建設的に扱う鍵となります。今回のインターネット調査結果では、上司がAUBE行動をとっているほど、仕事や意思決定をめぐる活発な意見交換(タスクコンフリクト)が促進されて、人間関係の対立(関係性コンフリクト)は抑えられるという傾向が示されました。

さらに、パーソル総合研究所が実施した「組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査」における「組織コンフリクトの4つのタイプ」(図7)でみると、AUBE高群の職場は低群の職場と比べ、仕事上の意見は対立するが関係性に引きずらない「風通し型組織」が多く、仕事上の意見の対立がないものの人間関係のもめごとが多い「冷戦型組織」が少ないことがわかりました。(図8)

どちらの結果からも、AUBE行動は、仕事上の建設的な意見交換を促進することができることがわかります。

図7:組織コンフリクトの4つのタイプ

出所:「組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査」(パーソル総合研究所、2026年)

図8:AUBE行動と組織コンフリクトタイプ

今回のインターネット調査結果では、AUBE型リーダーシップは、多様性がもつネガティブな側面が顕在化することによって生じる職場の「闇堕ち」を防ぎ、「“悪い”静かな退職」や「職場の冷戦化」を抑止することが示唆されました。同時に、多様な働き方を前向きに促進し、風通しのよい職場を実現するための有効なリーダーシップであることも明らかになりました。

パーソル総合研究所では、「AUBEモデル」をもとに、職場のマネジャー・リーダーのためのトレーニングプログラム「多様性が活きるチームのためのリーダー行動」を森永教授とともに開発し、提供しています。そして、今後も森永教授との協働により、「AUBEモデル」をさらに実践的に進化させるための取り組みを継続していく予定です。

登壇者紹介

早稲田大学 グローバル・エデュケーション・センター 教授 リーダーシップ開発プログラム統括責任者

森永 雄太

神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。専門は組織行動論、経営管理論。主著に『ジョブ・クラフティングのマネジメント』(2023年、第39回冲永賞、第41回組織学会高宮賞)、『ウェルビーイング経営の考え方と進め方:健康経営の新展開』(2019年)など。「職場のダイバーシティが協力志向的モチベーションを向上させるメカニズム」(共著)にて2019年度日本経営学会賞(論文部門)受賞。

  • 文中の内容・肩書等はすべて取材当時のものです。

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