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パーソル総合研究所「組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査」
①従業員調査 n=3,000s
[年代]20~60代、[勤続年数]1年以上、[従業員規模]10人以上、[業種]第一次産業・国家・地方公務以外、[職位]正社員(執行役員以上は除く)、契約・嘱託・派遣社員、パート・アルバイト
※総務省「労働力調査(2024年)」の性年代構成比(就業者ベース)で割付
②企業調査 n=500s
[年代]20~60代、[勤続年数]1年以上、[従業員規模]10人以上、[業種]第一次産業・国家・地方公務以外、[職位]正社員(主任・リーダー相当以上)もしくは経営者、[職種]経営・経営企画もしくは人事・総務、[その他の条件]自社の人事戦略・人事施策全体 もしくは ダイバーシティ推進について把握している者
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2025年 10月15日 – 10月20日
株式会社パーソル総合研究所
従業員のダイバーシティに関する受け入れ意識を見た。「多様な人材が活躍できる社会は、より良い社会だと思う(70.6%)」「勤務先が、多様な人材を積極的に受け入れることは、良いことだと思う(66.5%)」といった、一般的なダイバーシティへの受け入れ意識は、いずれの項目も6割以上と概ね高い。
ただし、社会的な意義への賛同(70.6%)と比べ、勤務先が積極的に取り組むべきという規範的意識(60.7%)はやや低い傾向が見られた。
一方で、ダイバーシティに関する抵抗感の意識を見ると、「正直なところ、多様な人材を受け入れることには抵抗感を抱いている(27.2%)」「勤務先で行われているダイバーシティの取り組みはあまり好きではない(24.2%)」など、受け入れを抵抗する直接的な回答は2割台と限定的である。しかし、「価値観の異なる同僚との協働」には54.3%がストレスを感じていた。
一般的理念としてはダイバーシティに賛成だが、実際に価値観が違う人と働くことに対しては抵抗感があることがうかがえる。
前述したダイバーシティへの「一般的受容度」と「個人的抵抗感」の2軸で従業員を4タイプに分類した。「ダイバーシティ賛同派(37.2%)」が一定の規模を占める一方で、理念には賛成しつつもストレスや抵抗感を抱える「ダイバーシティ葛藤派」が39.4%で最多となった。
頭では理解していても感情や実務が追いついていない層が組織のボリュームゾーンであることが浮き彫りとなった。
「ダイバーシティへの個人的抵抗感」を高める要因を分析したところ、「施策の空回り感(中身のないダイバーシティ施策だ)」「仕事の不公平感(不公平・不平等な評価体系だ)」「過剰な気遣い感(思った事を言えない職場だ)」「関係性コンフリクト(対人関係の摩擦・あつれき)」がプラスの影響を与えていた。
特に、ダイバーシティ施策に対する「空回り」の意識が強いほど、「ダイバーシティへの個人的抵抗感」も高まる傾向が確認された。
次に、組織のダイバーシティを多角的に捉えるため、年齢、性別など表層的な多様性を測る「属性のダイバーシティ」と、さまざまな性格、スキル・経験を有するなど深層的な多様性を測る「価値観のダイバーシティ」の2指標を定義し、分析に用いた。
多変量解析の結果、「属性」「価値観」双方のダイバーシティが、「ダイバーシティ葛藤派」の発生を有意に高める要因であることが確認された。特に価値観のダイバーシティによる影響は大きく、価値観のダイバーシティが「低め」から「中層」へ移行する段階で、「ダイバーシティ葛藤派」の割合は約20ポイント(28.3%→47.7%)急増している。同一的な価値観の組織が多様になっていくときの過程が最も葛藤を生みやすいことが示唆される。
属性・価値観のダイバーシティが、「ダイバーシティ葛藤派」の発生を高めていることが分かった。では、企業が向き合うべきダイバーシティとは何なのか。
本調査では、仕事における「つながり」と「つながり方」の多様性を測定する4項目(「ネットワークの《数》」「ネットワークの《密度》」「コミュニケーションの《頻度》」「コミュニケーションの《豊富さ》」)の平均値を基に、「関係のダイバーシティ」を定義し分析に用いた。
見えやすい「属性のダイバーシティ」、見えにくい「価値観のダイバーシティ」、仕事における「つながり」と「つながり方」の多様性を指す「関係のダイバーシティ」それぞれが、ダイバーシティへの「一般的受容度」と「個人的抵抗感」にどう影響するかを見た。
属性・価値観のダイバーシティは、ダイバーシティへの「一般的受容度」と「個人的抵抗感」を高める傾向が見られる一方、関係のダイバーシティは「一般的受容度」を高めつつ、「個人的抵抗感」を下げる傾向が確認された。
次に「属性」「価値観」「関係」のダイバーシティと「チームパフォーマンス」の関係を見た。属性・価値観のダイバーシティと比較しても、関係のダイバーシティは、スコアが高いほどチームパフォーマンスが高くなる傾向が確認された。
同様に「属性」「価値観」「関係」のダイバーシティと「イノベーション活動」や働くことを通じて幸せ/不幸せを感じている「はたらく幸せ/不幸せ実感」への影響度との関係を見た。
関係のダイバーシティは「イノベーション活動」を強く促進し、かつ「はたらく不幸せ実感」を有意に下げる効果が確認された。これらは属性・価値観のダイバーシティと比べても、特に際立った傾向である。
「関係のダイバーシティ」のスコアの高低別に「属性」「価値観」のダイバーシティと、働くことを通じて幸せを感じている「はたらく幸せ実感」への影響度を見た。
関係のダイバーシティが確保されている組織ほど、属性・価値観のダイバーシティが「はたらく幸せ実感」に結びつきやすいことが確認された。つまり、関係のダイバーシティを高めることで、属性・価値観のダイバーシティをより円滑に高められることが示唆される。
「関係のダイバーシティ」が組織に良い影響を与えることが分かった。では、関係のダイバーシティを高めるために何をすればいいのか。
多変量解析を行った結果、企業の「ネットワーク/コミュニティ施策数」が多いほど、「関係のダイバーシティ」が高まる傾向が見られた。具体的に有効なコミュニティ施策を分析すると、1.「広げる(ネットワークの数を増やす)」2.「太くする(話す頻度を増やす)」3.「かき混ぜる(会話内容を分散させる)」4.「つなげる(知り合い同士をつなぐ)」施策の有効性が確認された。
組織の関係性に関して、さらに応用的な論点として、「風通しの良い組織」の在り方についても分析した。風通しの良い組織とは、組織内コンフリクト(対立)の観点から、「仕事上の意見は対立するが、人間関係に引きずらない組織」と定義し、その組織特徴を分析した。その結果、風通しの良い組織はその他の組織*と比べて、「関係のダイバーシティ」が高い傾向が見られた。
*
その他の組織とは、「炎上型組織:タスクコンフリクト(仕事における意見の対立)と関係性コンフリクト(対人関係のあつれき・摩擦)の両方多い組織」「冷戦型組織:関係性コンフリクトだけ多い組織」「無風型組織:どちらのコンフリクトも少ない組織」を指す。詳細は報告書PDF60ページを参照。
今、ダイバーシティをめぐる議論は、世界規模で大きな転換点を迎えている。これまで主流であった属性や経験、価値観の多様性を「頭数」で捉える人材ダイバーシティは、不公平感や過剰な配慮を生み、現場では形骸化が進んできた。アメリカを中心に進む「アンチ・ダイバーシティ」のバックラッシュは対岸の火事ではない。
属性のダイバーシティや価値観のダイバーシティといった既存の議論の最大の問題は、それぞれの人材の「関係」の在り方が考慮されてこなかった点にある。多様な人材を揃えることが目的化し、組織の中でどのようにつながり、どのように協働しているのかという問いが欠落し、リアリティを損なってきた。
そこで本調査は新しい多様性の観点として、「関係のダイバーシティ」を提案する。これは人材同士の「つながり」と「つながり方」の多様性を測る指標である。ここでの関係のダイバーシティとは、「関係の質」や「仲の良さ」ではない。「ネットワークの数」「密度」「コミュニケーションの頻度」「豊かさ」といった「つながりとつながり方の多様性」を示すものだ。分析の結果、関係のダイバーシティ指標が高いほど、ダイバーシティ施策の抵抗感を下げ、組織のウェルビーイングやイノベーション活動を促進することが示唆された。
これからのダイバーシティ議論は、「どんな人がいるか」という頭数だけではなく、人材が「どのように関わっているのか」を問うべきである。この「関係」の論点が補われることで、ダイバーシティの施策と議論をアップデートさせることができる。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査」
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