少子高齢化や人手不足、女性活躍の推進、IT技術の進化や人材の流動化などが重なり、職場ではさまざまな属性の人が多様な働き方をする環境が当たり前になってきました。 同時に、不確実性や変化に対応して職場チームの成果を出す重要性が一段と高まっています。
これからの企業や組織では、多様性を「推進する」だけではなく、多様な人が可能性を広げて活躍できる職場・チームづくりがいよいよ求められています。上司の指示通りにメンバーを動かすマネジメントではなく、メンバー一人ひとりがチームの目標を理解したうえで独自性を発揮し、個人の知識や知恵をチーム成果に結びつけることを支援するマネジメントの重要性が高まっています。職場のリーダーは、個人やチームに対する影響力の発揮方法をアップデートする必要性があります。
このような背景を踏まえパーソル総合研究所では、早稲田大学グローバルエディケーションセンター 森永教授と協働し、多様性を前提とする時代に全員活躍を推進するためのリーダーの行動を体系化した「AUBEモデル」を提唱し、具体的な行動を精緻化するプロジェクトに取り組んでいます。
今回は、その取り組みの一つとして行ったインターネット調査の結果から、「AUBEモデルからみる現状の強みと課題」をご紹介します。上司の行動がメンバーに対してどのように映っているのかに着目し、非管理職層を対象に、「直属の上司がとっている行動」についての調査結果を分析しています。
今回調査を行ったAUBEモデルは、次の4つの要素で構成されます。AUBEモデルは、早稲田大学 森永雄太教授とパーソル総合研究所が共同制作したリーダー行動モデルです。
| AUBEを構成する要素 | 意味 |
|---|---|
Adaptive | チームの状況に合わせて行動を調整する機能を持つ。メンバー間の対立や葛藤、混沌とした状況に建設的に向き合い、解決に向けて効果的に介入する |
Uniqueness | 個人の強みを引き出し、職場での発揮を支援する。本人が気づいていない潜在的な強みを発見し、様々な意見の発信を奨励する |
Belongingness | メンバーとチームのつながりをつくる。新たなメンバーがチームに参加しやすい環境づくりを行う。全員をチームの意思決定に巻き込む |
Set an Example for the team | リーダーが模範となり、多様性が活きるチームづくりにメンバーに期待する行動を示す。チームづくりに貢献するメンバーの行動を評価・承認する |
AUBEモデルの4つの要素は、メンバーが自分らしさを発揮しつつ組織に馴染むという、相反しがちな2つの状態の両立を支援します。さらに、多様性を活かし合うために見本となる行動や姿勢を示し、奨励することで、メンバー間の共通規範の確立を促進します。加えて、チームを取り巻く環境の変化や、メンバーの関係性を捉えながら自身の行動を調整する適応的な行動は、多様性を活かす上での土台となります。AUBEモデルは、4つの要素それぞれが重要な役割を果たします。変化や不確実性に対応しつつ、この4つを連動させてマネジメント行動をアップデートすることがこのモデルを活用する狙いです。
今回の調査にあたっては、AUBEの各要素に関連する様々な具体的な行動を抽出した約60項目を調査しました。調査では、非管理職層であるメンバーの回答により、「直属の上司の行動」の実践度合いを5段階評価で確認した結果を分析しています。
AUBEの4つの要素の平均値で実践度合いをみると、相対的に実践度合が高かったのは「A:適応的にふるまう」、低かったのは「E:チームづくりの見本を示す」でした。状況に応じて行動を調整する行動は実践されている一方で、多様性を活かすチームづくりを率先する行動はやや弱いとメンバーには映っているようです。
次に、具体的な行動レベルで、実践度が高い行動、実践度が低い行動の傾向を確認してみましょう。ここでは、5段階評価での肯定的な回答(とてもあてはまる/ややあてはまる)が多かった項目と、否定的な回答(全くあてはまらない/あまりあてはまらない)が多かった項目に着目して整理していきます。
肯定的な回答が多い上位8項目のうち5項目が、「A:適応的にふるまう」に該当しました(図3)。環境変化を捉えた着実な進捗管理や、状況に応じてメンバー一人ひとりへの対応を調整することについて特に実践されている傾向がみられました。また、「B:帰属感を高める支援をする」「U:独自性の発揮を支援する」については、新しく加わったメンバーを歓迎する職場の雰囲気づくり、新しいアイデアの奨励も上位に挙がりました。
「A:適応的にふるまう」の具体的な行動の中では、メンバー間の対立や葛藤に関連する行動は含まれていないことは特徴的です。
一方で、否定的な回答が多かった上位8項目を抽出すると「E:チームづくりの見本を示す」に区分される項目が6項目、「独自性の発揮を支援する」に区分される項目が2つ挙がりました(図4)。「見本を示す」に関しては、多様性を活かす意義や、明確な意思や方針を示す行動の実践度が相対的に低い結果となっています。「独自性」に関しては、個別のキャリア志向や価値観に応じた成長機会の提供、多数派と異なる視点からの貢献やアイデアを称賛する行動が不足している傾向です。多数派と異なるアイデアや貢献を積極的に称賛したり、一人ひとりに応じた成長機会をつくったりする実践は十分ではないことが見受けられました。
今回、AUBE行動の実践度合いを確認した結果、状況の変化や相手の反応を踏まえて行動を調整する行動は一定程度行われ、チームへの歓迎や意見の受容を行い、一体感の醸成が進んでいる様子がうかがえます。
今後の課題としては、メンバー一人ひとりの独自性や多様な意見をより積極的に活かす行動を強化することです。多様性を活かしたチームをつくるという方針を明確に示し浸透させる行動や、対立や葛藤を回避することなく建設的に対処する行動は、十分には実践されていないようでした。リーダーから多様性が重要であるというメッセージが十分に発信されない場合、チームの規範や価値判断基準は曖昧なものになり、メンバーは新しいアイデアを出そうとしても、周囲を気にして尖った意見を出しすぎないように調整してしまうことも起こりえます。
多様性を活かし、チームの変化対応力や創造性を高めるためには、1対1のコミュニケーションで一人ひとりを理解することに加えて、職場の中で個の力を活かす工夫が肝要です。AUBE行動においては、集団の中で個人の意見や価値観が埋もれてしまうことがないように、多様な意見や考え方の表出を奨励する「独自性の発揮を支援する行動」、意見の対立を避けることなく建設的な対話を行うことを促進する「適応的にふるまう」が一層重要になると考えます。
| 調査名称 | 早稲田大学 グローバル・エデュケーション・センター 森永雄太教授/株式会社パーソル総合研究所「AUBEモデルに関する実態調査」 |
|---|---|
| 調査方法 | 調査会社モニターを対象とするインターネット調査 |
| 調査回答者 | 以下の要件を満たすビジネスパーソン |
| 調査時期 | 第1回:2025年10月(1,417名から回収、うち不良回答を削除した1,174名を分析) |
| 実施主体 | 早稲田大学 グローバル・エデュケーション・センター 森永雄太教授/株式会社パーソル総合研究所 |
CONTACT US
こちらのフォームからお問い合わせいただけます