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昨今の組織では、年代や働き方の違いなどをはじめ、様々な考え方や価値観を持つ人たちが一緒に働くことは当たり前になりつつあります。組織内の多様性が高まると、理想的には様々な知見や考え方が飛び交い、創造的なアイデアが生まれることが期待されます。しかし実際には、意思疎通の難しさや煩雑さを感じる場面も増えているのではないでしょうか。
パーソル総合研究所による組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査の結果では、「勤務先が、多様な人材を積極的に受け入れること」に対しては6割以上が肯定的である一方で、自分自身が「考え方や価値観が大きく異なる同僚と一緒に働くこと」には半数以上がストレスを感じていることが確認されました。ストレスを避けるために、自分と共通点がある人にのみ仲間意識を持つ「うち集団びいき」や「サブグループ化」が促進されてしまう可能性が高いことが示唆されます。
さらに、生成AIのめざましい進化により、アイデアや知恵を出したいと思ったり、判断に迷ったりする場面では、人に意見を求めるよりも、生成AIに解決策を求めることも増えてきました。他者の視点を得る必然性が薄れ、メンバーそれぞれがサイロ化した思考になることを加速させるリスクも高まります。
このような状況だからこそ、多様性が高いチームを率いるリーダーは、メンバーが他者にフィードバックを求める行動を促進することが重要になります。リーダーが、メンバー同士が気軽に率直にフィードバックし合える関係づくりに影響力を発揮することができれば、結果としてリーダーが一人で抱え込む状況は減り、チームの創造性を引き出すことがもっと容易にできるようになるのではないでしょうか。
本コラムでは、多様性が高いチームにおいて重要性が高まる「フィードバック探索行動」に着目し、どのようなリーダー行動がその実践を後押ししているのかを、調査データをもとに明らかにしていきます。本コラムは、 パーソル総合研究所が早稲田大学グローバル・エデュケーション・センター 森永雄太教授と協働して進めるプロジェクトの調査結果に基づき考察します。
属性や専門性、価値観の異なるメンバーが協働することは、今日の多くの組織にとって前提になりつつあります。しかしその一方で、メンバーが多様であるほど、お互いに気を遣いすぎて本音が見えづらくなったり、あるいはストレートな発言によって対人関係が悪化したりすることもあるのではないでしょうか。先に挙げた組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査 では、属性・価値観のダイバーシティが高まるほど、「仕事の不公平感」や「過度な気遣い感」「関係性コンフリクト」が高まる傾向が見られたことが確認されました。
本来はお互いの見方や価値観を活かし、新たな視点を見出すことが多様性が高いチームの強みであるにもかかわらず、過度な気遣いや対人的な摩擦によって率直に意見を交わすことができなくなると、多様性の価値を活かすことができません。
こうした課題を踏まえると、多様性が高いチームとなるほどに、一人ひとりが「他者からの声かけを期待する」受け身な状態から一歩踏み出し、他者の意見を求める「フィードバック探索行動」をとることが重要になります。多様性が高い環境では、他者が必ずしも自分の意見や考え方に賛成してくれるとは限りません。そのため、他者にフィードバックを求めることは、心理的な抵抗を伴うこともあります。しかし、その抵抗を越えて他者の視点を取り入れることは、自分一人では気づけなかった発想や気づきをもたらす可能性があります。「他者にフィードバックを求める」「フィードバックをする」ことが特別な行動ではなく日常的に行われるようになれば、多様な見方を持ち寄り、共にアイデアを磨き合う文化が育まれていくでしょう。
では、メンバーがフィードバック探索行動を積極的にとるようになるために、リーダーはどのような関わり方をするとよいのでしょうか。メンバー任せにするだけでは変化が起きづらいため、意識的に「他者にフィードバックを求めることが安全であり、むしろ学びや気づきが大きい」ことを体得できる環境を整えることがリーダーには求められています。
本プロジェクトで提唱する多様性を活かすリーダー行動「AUBEモデル」(図1)は、そのような環境づくりのための働きかけとして機能できるものです。「U:独自性の発揮を支援する」「B:帰属感を高める支援をする」「E:チームづくりの見本を示す」「A:適応的にふるまう」の4つの要素が、メンバーの行動や関係性、チームとしての共通認識に影響を与え、多様なメンバーが独自性を発揮しながら協働できる関係性を促進します。
現状として、フィードバック探索行動はどの程度実践されているでしょうか。本プロジェクトで実施した調査では、非管理職の正社員のフィードバック探索行動の実践状況を確認しました。具体的には、「仕事の質をもっと良くする方法」「自身の考え方やアイデア」「自身の仕事の進め方や姿勢」について、他のメンバーの意見やアドバイスを積極的に求めているかどうかを、5段階尺度で回答を得ました。フィードバック探索行動の実践状況(回答平均値)について、年代別の結果を示します(図2)。
年代別の傾向をみると、20代から30代がほぼ横ばい、40代・50代で低下し、60代で再び上昇する傾向が見られました。この結果からは、50代頃までの、組織における主たる担い手としての意識が強い段階では、経験を通じて仕事に習熟し「自分の型」ができるほどに、他者のフィードバックを求める頻度が減る可能性が示唆されます 。今後の課題としては、仕事に習熟した後も、自ら変化し続けるためのフィードバック行動を促進することです。
では、フィードバック探索行動を促進するのは、リーダーのどのような働きかけなのでしょうか。今回の分析では、AUBE型リーダー行動のどの行動がメンバーの「フィードバック探索行動」に影響するかを検討しました。具体的には、「フィードバック探索行動の実践度が高いグループ」と、「実践度が低いグループ」に分けて、回答者が認識する上司のAUBE型リーダー行動にどのような違いが見られるのかを確認しました(図3)。
この分析の目的は、フィードバック探索行動の実践度合いが高いグループに着目し、「上司のAUBE型リーダー行動の実践度」と「フィードバック探索行動への影響度」 の観点から、リーダーが優先的に注力すべき行動を明らかにすることです。分析では、主に以下の2つのポイントを確認しました。
⇒差が大きいほど、メンバーのフィードバック探索行動に与える影響が大きいリーダー行動であると解釈できる。
⇒特に実践度合いが高いリーダー行動は、メンバーのフィードバック探索行動の実践を促進する上で効果的であると捉えることができる。
分析にあたっては、この2つのポイントを縦軸・横軸として、AUBE型リーダー行動を4つの象限に分類する方法をとりました(図4)。
この4象限はそれぞれ次のように解釈できます。
今回、AUBE行動をこの4象限で分類した結果、以下のような特徴的な傾向が見られました。(図5)
フィードバック探索行動の年代別傾向の結果からは、40代・50代で低下する傾向がありました。仕事上の経験や専門性が高まり、「自分なりの型」が固まるほど、他者にフィードバックを求めなくなる可能性が示唆されます。しかし絶え間ない環境変化にある今、個人の強みを磨き、他者からのフィードバックを求める行動を止めないことが、これまで以上に重要です。フィードバック探索行動は、個人と組織が、自ら変化に適応して成長し続けるための推進力となります。
本分析から、フィードバック探索行動を促進するためのリーダー行動には、大きく3つのステップがあることが示唆されます。
第一に、職場やチームへの帰属感を高める支援を行い、共通の成果を目指すチームの一員である感覚を強め、そのためにお互いが学び合う仲間であるという関係性づくりを重要な土台とすることです。メンバー同士の雰囲気や状況の変化を観察して、関わり方を調整することも必要です。
第二に、一人ひとりの変化や学習を後押しし、他者に意見を求めることを前向きな行動として位置づけることです。現在の個人の強みだけに着目するのではなく、変わり続けることを奨励することが重要な行動です。
そして第三に、リーダー自身が多様性を受容し、異なる視点を積極的に取り入れる姿勢を行動で示すことによって、メンバーのフィードバック探索行動は一層促進されます。多様なメンバーとのコミュニケーションにおける現実の葛藤を乗り越えるためには、掛け声だけではなく、自らのふるまいを通して、メンバーのモデルになることが必要です。
結論として、フィードバック探索行動は、個人の変化を促進し、チームの多様性を活かすための重要な鍵となります。誰もが他者にフィードバックを積極的に求め、共に変化・変容し続けることを促進する上で、リーダーは大きな影響力を持っています。
| 調査名称 | 早稲田大学 グローバル・エデュケーション・センター 森永雄太教授/株式会社パーソル総合研究所「AUBEモデルに関する実態調査」 |
|---|---|
| 調査方法 | 調査会社モニターを対象とするインターネット調査 |
| 調査回答者 | 以下の要件を満たすビジネスパーソン |
| 調査時期 | 第1回:2025年10月(1,417名から回収、うち不良回答を削除した1,174名を分析) |
| 実施主体 | 早稲田大学 グローバル・エデュケーション・センター 森永雄太教授/株式会社パーソル総合研究所 |
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