管理職の負荷が高まり続ける一方で、組織の成果を左右する「非管理職層」の存在感はこれまで以上に増しています。実際、職場の推進役となるのは必ずしも管理職だけではなく、日々の業務を担う「普通の従業員」がどれだけ主体的に動き、周囲を巻き込み、チームの方向性を支えられるかが、組織のパフォーマンスを大きく左右します。いわば「リーダーの右腕」になるようなフォロワーシップの重要性です。
そこで、「フォロワーシップに関する定量調査 」を基に、フォロワーシップの実態と現場に潜む課題を整理し、求められるフォロワーシップの力──自律性、巻き込み力、建設的な進言などをどのように人事制度や評価、日々のマネジメントの在り方に組み込み、継続的に育成していくかを、主席研究員 小林 祐児が解説しました。
(2026年2月に開催したイベント「パーソル総合研究所 Think Forward2026春 -HRの課題を読み解くネットワーキング・セッションー」のイベントレポートです。)
イベントのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。
2024年に書籍『罰ゲーム化する管理職 』を上梓し、大きな反響をいただきました。本日の話はこの続編にあたります。
『罰ゲーム化する管理職』を復習すると、管理負荷の増大トレンドは止まっていない、という話です。管理職ポストは減る一方で、プレイングマネジャー化が進み、働き方改革、ハラスメント防止、ダイバーシティ、女性活躍、シニア活躍など、各種テーマの重要性が管理職のマネジメントに集中しています。
質的に難しくなっただけでなく、数の面でも、日本は過去25年間でいわゆる「上司層(課長層以上の管理的職業従事者)」の割合が半分になりました。人手不足といわれつつ就業人口は増えていますが、管理職は右肩下がりです。1997年を基準にすると、管理職は92万人減少しました(図表2左)。短期トレンドでも、パーソル総合研究所の調査によると役職者のスパン・オブ・コントロール(部下人数)は増加傾向です(図表2右)。課長・係長は伸び、部長はやや不安定ですが、長期・短期いずれでも「上司が減り、部下が増える」状況が続いています。
図表3左のメンバー(若手・一般層)は、ダイバーシティ、個別のキャリア、働き方の柔軟性、自分らしさや個性の尊重といったテーマを重視します。一方、図表3右の上司は、目標、成長、予算、人的資本といった責任を背負い続けます。残業規制が直接かからず「働かせ放題なのではないか」という中、成果を求められるのは上司側。このような職場の関係性は広がり、止まる気配がありません。このままで良いのか——これが本日共有したい課題感です。
書籍『罰ゲーム化する管理職』では、罰ゲーム化を止めるために、4つのアプローチ「ワーク・シェアリング・アプローチ」「ネットワーク・アプローチ」「キャリア・アプローチ」そして「フォロワーシップ・アプローチ」を提案しました。本日は特に「フォロワーシップ・アプローチ」に絞ります。メンバー層は、プレッシャーが弱まってきた中で、そのプレッシャーのバランス感覚を取り戻す必要があるのではないか、というのが問題意識です。
改めて、「フォロワー」の定義を確認します。ここでいうフォロワーとは、イノベーター理論における「フォロワー」ではなく、「職場において部下の立場で業務を遂行する者であり、正規雇用者における係長未満の一般職層」を指します。そして、フォロワーシップとは「フォロワーが組織において主体的に実施するさまざまな行動やそれに向かう姿勢」を指します。
多くの会社を拝見しましたが、「フォロワーシップ」という言葉がキーワードとして出てくる機会はあまり多くはありません。フォロワーシップに関する本が時折出版されますが、少しブームになってすぐ忘れられます。
学術界も同様で、圧倒的にリーダーシップ偏重です。論文数を調べると、フォロワーシップはリーダーシップの約1/8、日本の研究ではさらに少ない。企業研修の内容もリーダーシップに関するものは多いですが、フォロワーシップは研究も注目度も低いのが現状です。
皆さんが耳にしたことがあるのは、ケリーのフォロワーシップ定義だと思いますが、30年以上前のアメリカの研究が未だに参照されてるのが現状です。さすがにアップデートが必要でしょう。日本という独特の雇用慣行もあり、求められるフォロワー像は変化している可能性があります。そこで「フォロワーシップに関する定量調査 」を実施しました。
先ほどの定義に基づくフォロワーは、職場でさまざまなフォロワーシップ行動をとっています。積極的なフォロワーシップ行動の例は、「指示がなくても、必要な行動を自分で見つけて実行する」「感謝や労いの言葉を自然にかける」「成功や失敗の背景を皆で振り返る」などです。
一方、消極的なフォロワーシップ行動もあります。行動自体に善悪はありませんが、主体的ではない、やや消極的な態度です。例えば、「できるだけ労力をかけずに仕事を終わらせたい」「判断が難しい場面では、最終的な責任は上司にある」「この組織は何も変わらないから言わないほうがよい」などです。これらはよくある行動です。
もちろん、人によって特徴があり、フォロワーは一様ではありません。積極的にやる人もいれば、やらない人もいる。行動の中身もさまざまです。そこで、クラスター分析(類型分析)を用いてタイプ分類を行ったところ、大きく5つのタイプに分かれました。「自己成長タイプ」「職人タイプ」「気づかいタイプ」「まとめ役タイプ」「批判者タイプ」です。
自己成長タイプは、自分の成長が最優先。組織支援はやや少なめで、若手に多く見られます。組織より自分の仕事や成長が中心にあり、ITエンジニアにやや多い。悩み事を聞く、落ち込んでいる人に声をかけるなど、個別的なケアは行います。一方、見られていないところで手を抜きがち、不満や愚痴を拡散しがちという傾向があります。組織への貢献より成長が前に立つタイプです。自己成長タイプは36.9%でした。
職人タイプは仕事が中心で効率重視。仕事の面では先回りしてどんどん動く。シニア層(50〜60代)や商品開発・研究職に多く、プロフェッショナリズムが高い。周囲のケア(労いの言葉)も行います。先回り行動が高い一方、昇進意欲は低め。エキスパート職が多いと考えられます。消極的側面として、やや従順すぎ、決まったこととして淡々と仕事をし、あまり意見を言わない傾向があります。
気づかいタイプは女性とサービス職に多く、サポート志向が強い傾向。職場の人間関係の維持に長け、周囲の感情面のケアをよく行います。「まあまあ、みんな仲良くやりましょう」といった調整を担いがちです。一方、指示待ち姿勢が強く、自己判断が苦手。職場の空気を敏感に察知し、感情的ケアはできるが、意見を主導するタイプではありません。
まとめ役タイプは人を巻き込むのが得意。自己成長タイプが自分の成長を目指すのに対し、チーム全体の成長を目指します。どの組織・年代にも偏りなく分布し、職場では自動的にこのタイプが一定数生まれるのかもしれません。周りを誘ってランチや共有会を積極的に企画し場づくりに強みがある一方、個人としての挑戦志向は薄い傾向です。
批判者タイプは30代や60代、男性に多く、間接部門・専門職に多い。批判的な意見をきちんと言い、長期的視野で素直に発言しますが、会社への不満・愚痴も非常に多いタイプです。主体的な挑戦は低め。メタ視点を持ち「これは違うのでは」と積極的に言う一方、ネガティブな情報も広げがちです。
5つのフォロワータイプを見ていえることは「万能の部下はいない」ということです。本講演の副題にある「右腕」という言葉には、模範的で優れていて次世代リーダーとして期待できる素晴らしい部下というイメージがありますが、実際には得意・不得手があり、フォロワー行動は2軸程度ではなく複数の軸で構成されます。リーダーの右腕は1人である必要はありません。タイプ分類からもそういえます。
フォロワーにはいろんなタイプがいますが、その中でも「伸ばしたい行動は何か」という話に移ります。仮説を立て、複数の行動を測定した結果、統計的に組織のパフォーマンスに結びついていた行動は「寄り添い」「学び共有」「踏み出し」「場づくり」「本音発言」の5つです。アルファベットで表すと「5S(Five S)」ともいえます。
この5つの行動全部を完璧にやるのは難しいものの、ポイントを押さえ、苦手を意識すれば取り組める構成だと感じます。
フォロワーシップ行動は、年齢が上がると低下する傾向があり、男性は下がってそのまま、女性は50代で上がります(図表17左)。ただし本調査は正規雇用者対象で、50代の正規雇用女性が積極的というセレクション・バイアスの可能性はあります。概ね、20〜30代のほうが放っておいても組織のための行動を積極的にとる傾向です。性年代別の組織パフォーマンスと結びつく5つの各行動の詳細は図表17右をご覧ください。
分析で興味深かったのは、フォロワーシップ行動とウェルビーイングの関係です。積極的なフォロワーシップ行動は、働くことを通じて幸せを感じている「はたらく幸せ実感」と相関し、消極的なフォロワーシップ行動は、働くことを通じて不幸せを感じている「はたらく不幸せ実感」と相関しました。積極的フォロワーシップ行動は不幸せとは関係せず、消極的フォロワーシップ行動は幸せとは関係しない。ポジはポジ、ネガはネガに結びつく傾向です。職場という人間関係の中で、どのような働きかけをしているかが、こうした「はたらく幸せ/不幸せ実感」に影響するのでしょう。
万能の部下はいないが、組織として求めたい行動はある。では、フォロワーシップを組織としてどう引き出すのがいいのでしょうか。分析から、間接的アプローチと直接的アプローチの両方が必要だと分かりました。
フォロワーシップが自然と湧き出る組織環境づくりです。例えば上司がガチガチにマイクロマネジメントすると余白がなくなり、フォロワーシップが育ちません。役割の明確さと行動の余白のバランスが重要です。
時間の余白も重要で、残業が月50時間以上だとフォロワーシップは機能していませんでした。自分の仕事で手一杯になり、フォロワーシップ行動を取る余裕がなくなるからです。自律性(自分で考えて行動する余地)を確保しつつ、無限定に求めすぎないことが鍵です。
コミュニケーションでは、タテとヨコのバランスが重要です。タテは上司・部長・社長などとの対話、ヨコは同僚間の感情的交流。ヨコだけが強い職場は「仲良しクラブ」で、本音の発言(「批判者タイプ」が得意な建設的な問題提起)が出てきません。タテだけが強い職場は、感情的ケアが広がりません。タテとヨコの両方が強い職場が、パフォーマンスもフォロワーシップ行動も最も高くなります。
さらに、日本的雇用の特徴とフォロワーシップ行動の関係も分析しました。日本的雇用は柔軟で現場の力が強いからフォロワーシップが育つと思う方もいますが、結果は逆です。「労働時間の無限定性」は消極的フォロワー行動を助長。「会社都合の異動が多い」と、ネガティブな噂の拡散が増える。「職務範囲の無限定性(余白が多すぎる)」も、フォロワーシップを引き出すポジティブな要素(組織的な余白/ヨコの感情交流/タテの対話関係/役割の自律性)が軒並み低下しています。
先ほど見た通り、長く働くほどフォロワーシップ行動は下がり、若手ほど組織のために頑張っていました(図表17)。日本的雇用に慣れるほど「フォロワーシップ行動はしなくていいかな」と自然と考える結果かもしれません。
では、フォロワーシップをどう引き出すか。間接的アプローチに加え、直接的アプローチが必要です。メンバー層を「ほったらかし」にしすぎているという問題があります。上司が部下に直接「組織のために動いてほしい」「もっと本音で意見を出してほしい」と言いづらくなっています。
だからこそ、会社(人事)がメンバーに直接伝える仕組みが重要です。行動規範や研修、アセスメントを通じてフォロワーシップを教え、埋め込むアプローチです。新入社員の配属前研修でこうした話を取り入れてもいいでしょう。従業員サーベイに組み込む、既存のキャリア/新人研修の改定など方法は多様です。
重要なポイントは「コモン・センス(共通知)」です。上司だけが知っていても、部下だけが知っていても意味が薄い。フォロワーシップ行動が重要で、会社がそれを求めていることを共通の知識にする。全員が同じ知識を知っており、相手も知っていることを互いに知っている状態を作ることが必要です。
この状態を作ると現場の上司は楽になります。部下側は「会社・上司はこのフォロワーシップ行動を期待している」と理解して行動でき、上司は「フォロワーシップ行動の中でもこれを意識してほしい」と言えるようになるからです。現状は、上司が自分の正解や旧世代の常識を押し付けているように見える懸念から言いづらい。組織として教え、伝える必要性が高まっています。
フォロワーシップを上司部下の間の「コモン・センス」にする方法として、6つの例を挙げます。
上司向け・メンバー向けの両方に研修する「サンドイッチ型」や、全社員「横断型」の研修が有効です。多くの会社では上司向け研修は上司しか受けず、メンバーはその内容を知りません。これを同時に学ぶ機会を作ると手応えがあります。
他にも、従業員サーベイで測ってから研修を実施する「サーベイ起点型」、人数が多ければ「eラーニング型」、既存のキャリア研修や新人研修の「改定型」、ワークショップで会社のアクションポリシーに落とし込む「定着ツール型」などがあります。これらの方法は、上司だけでは実装が難しいため、人事として提案・設計することが重要です。
書籍『罰ゲーム化する管理職』で主張したかったことは「何でも管理職頼みはもう限界」ということです。管理職が変わることを起点としない組織の変え方を、そろそろ複線的に持つ必要があります。
そのひとつがフォロワーシップです。フォロワーシップに関する調査から得たヒントは、フォロワーは5つのタイプ「自己成長タイプ」「職人タイプ」「気づかいタイプ」「まとめ役タイプ」「批判者タイプ」があること。そして、5つのフォロワーシップ行動の「寄り添い」「学び共有」「踏み出し」「場づくり」「本音発言」は、組織パフォーマンスの向上に結びつくということです。
万能の右腕・万能の部下は現実的ではない。職場とは、多様なタイプの「普通の人たち」が集まり成果を出す場です。得意・不得意がある中で、内省しながら意識づけることでフォロワーシップを醸成していくことを提案します。
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主席研究員
小林 祐児
上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。
NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行う。
専門分野は人的資源管理論・理論社会学。
著作に『罰ゲーム化する管理職』(集英社インターナショナル)、『リスキリングは経営課題』(光文社)、『学びをやめない生き方入門』(テオリア)、『残業学』(光文社)など多数。
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