上司と部下では信頼を判断する基準そのものが異なることが明らかに
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株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)と九州大学大学院(池田浩研究室)は、職場における上司と部下の信頼の揺らぎ(低下)の実態とメカニズム、さらに修復プロセスを明らかにするため、「信頼の揺らぎと修復のメカニズムに関する研究」を実施し、結果を発表いたしました。
本調査は、前回公表した「上司と部下の信頼関係に関する研究」(前回リリース「上司・部下の信頼関係、52.4%は部下の片思い」)に続く第2弾です。働き方やコミュニケーション手段の多様化により、職場における「信頼」は一度築けば維持されるものではなく、日々の出来事によって揺らぎ、修復されながら変化する“動的な関係”です。調査の結果、上司(リーダー)・部下(メンバー)ともに約3人に1人が直近3カ月以内に信頼の揺らぎを経験していることを確認しました。さらに、リーダーとメンバーでは信頼を判断する基準そのものが異なること、また、信頼の修復は一度の「謝罪」で終わらず、「理解」「納得」「安心」「再期待」という4つのプロセスを経て進み、その進み方によっては信頼関係の再形成や強化にもつながることが明らかになりました。
過去3カ月以内に、リーダーの33.3%、メンバーの34.7%が相手への信頼が揺らぐ出来事を経験

リーダーとメンバーでは信頼を判断する基準そのものが異なる


リーダーの信頼が低下した理由:リーダーを対象に、メンバーに対して、信頼が揺らいだ出来事を聞いた。件数では「報連相がない/遅い」が最も多く、次いで「約束・期限・ルールを守らない」であった。一方、信頼の低下度が大きかったのは「重大なコンプライアンス問題」、次いで「裏切り・陰口・表裏のある態度」。リーダーは、任せた仕事をメンバーが適切に遂行したかどうかを重視していた。また、頻繁に起きる出来事と、信頼を大きく失う出来事は異なる。

メンバーの信頼が低下した理由:メンバーを対象に、リーダーに対して、信頼が揺らいだ出来事を聞いた。最も多かったのは「嘘・ごまかし/言っていることが変わる」、次いで「指示があいまい/一貫しない」であった。一方、最も信頼の低下度が大きかったのは「ハラスメント(近い言動を含む)」、次いで「理不尽な対応・叱責」であった。リーダーが業務遂行を重視するのに対し、メンバーは意図や誠実さといった自身との「関わり方」によって強く信頼を失う傾向がみられる。

信頼が揺らいだ(低下した)際のリーダーの反応:信頼が揺らいだ際、リーダーはどのような反応をとるのかを主な出来事別に確認した。全般的に監視行動を強める傾向がみられる一方で、安易に距離を置くだけではなく、「声を上げる」「関係再交渉」も高い割合で行われている。リーダーは、不信を感じても関係を断絶するのではなく、立て直そうとする傾向がみられる。

信頼が揺らいだ(低下した)際のメンバーの反応:信頼が揺らいだ際、メンバーはどのような反応をとるのかを主な出来事別に確認した。メンバーは信頼が揺らぐと、まず距離化・監視・沈黙といった回避的反応を示す傾向がみられた。特にハラスメントや嘘・ごまかしなど、意図や誠実さへの不信ではその傾向が強い。メンバーの信頼低下は表面化しにくく、リーダーが気づかないまま関係が悪化してしまう可能性がある。

リーダーのメンバーに対する信頼が低下するメカニズム:リーダーのメンバーへの信頼低下に最も強く影響していたのは「怒り・反発」という感情側面であった。また、「メンバーの性格(誠実さの欠如)」や「相手の意図(わざと、など)」と判断(原因帰属)した場合も信頼低下を強めていた。一方、信頼が揺らぐ出来事を課題(業務や役割)の難しさとして捉える場合には、信頼低下を抑制する。同じミスや問題行動であっても、それが「誠実さ」や「意図」の問題として受け止められると、メンバーへの信頼低下は大きくなりやすい。

メンバーのリーダーに対する信頼が低下するメカニズム:メンバーのリーダーへの信頼低下に最も強く影響していたのは「怒り・反発」という感情側面であった。また、「相手がわざと行った」「能力が不足していた」と受け止めた場合は、リーダーへの信頼低下を強めていた。一方、リーダーの努力や課題の難しさに原因を求める場合には、信頼低下は相対的に小さい。メンバーは、リーダーの行動を「わざと行った」「適切に対処する能力が不足している」と受け止めたときに、より大きく信頼を低下させる傾向がみられる。

信頼低下がもたらすリーダーへの影響:信頼が揺らぐ出来事が生じた後の影響を確認した。その結果、リーダー側では「育成意欲の低下」「メンバーへの心理的距離・期待の低下」「リーダー自身の負担増加」の影響が相対的に大きい。リーダーは部下への期待や関与を控え、「育てること」から距離を置く傾向がみられた。信頼の揺らぎは当事者間の関係悪化にとどまらず、育成や支援といった職場運営の中核機能そのものに影響を及ぼすことがうかがえる。

信頼低下がもたらすメンバーへの影響:メンバー側では共通する3項目(関係の質・協働/心理的距離・期待/チーム・組織への波及)ではいずれもメンバー側が高く、加えて「モチベーションの低下」の影響が大きい。メンバーは、上司への期待や仕事への関与を弱め、「働くこと」から距離を置く傾向がみられた。信頼の揺らぎは上司との関係悪化にとどまらず、職場への関与や就業意欲そのものを低下させることがうかがえる。


リーダーのメンバーに対する信頼修復のメカニズム:トピック6の信頼修復行動が、リーダーのメンバーへの信頼修復にどのように影響するかを検討した。その結果、信頼修復は一足飛びに進むのではなく、「理解」「納得」「安心」「再期待」という段階を経て進行する可能性が示された。修復初期の「理解」には、原因・経緯の説明が最も有効だった。「納得」の段階では、再発防止に向けた行動変容と共に謝罪の表明が関連していた。つまり、まず背景の説明を受け、その後に謝罪や行動変容を通じて納得し、安心を回復した後、再びメンバーへ期待・関与できる状態へと至るプロセスが示唆された。

メンバーのリーダーに対する信頼修復のメカニズム:トピック6の信頼修復行動が、メンバーのリーダーへの信頼修復にどのように影響するかを検討した。その結果、メンバー側においても信頼修復は「理解」「納得」「安心」「再期待」の段階を経て進行する可能性が示された。修復初期の「理解」には、原因・経緯の説明が有効であった。「納得」の段階では、再発防止のための行動変容や感情への配慮が関連していた。メンバーが「再期待」に至るためには、相手の感情に配慮し、意見や不安を傾聴しつつ、再発防止に向けた行動を示すことが重要であることが示唆された。


パーソル総合研究所
上席主任研究員
井上 亮太郎
信頼の揺らぎは、特別な出来事ではなく、多くの職場で日常的に生じうる。重要なのは、信頼を揺らがせないことだけではなく、揺らいだ際に関係を修復し、再び信頼を築けることである。すなわち、“信頼のレジリエンス(回復力)”を高めることである。
管理職教育においては、「信頼を築く方法」を伝えるだけでは不十分である。信頼は形成されるだけでなく、日常的に揺らぎ、修復されながら維持・強化される動的な関係である。ゆえに、信頼形成のみならず、信頼低下のメカニズムや修復プロセスについても学ぶ機会を提供することが重要である。
また、メンバー側についても、信頼の揺らぎへの向き合い方や対話による関係再構築について学ぶ機会を設けることも有効と考えられる。
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本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
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調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/spiral-relationship-of-trust-2/
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構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
| 調査名称 | パーソル総合研究所・九州大学 |
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| 調査目的 | ・リーダーとメンバーの信頼関係に揺らぎを引き起こす出来事の実態把握 |
| 調査対象 | 企業で働くリーダー(管理職)およびメンバー(非管理職) |
| 調査方法 | 調査会社のアクティブパネルを用いたアンケート調査(Web方式) |
| 調査時期 | 本調査 2026年3月9日-17日 |
| 実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
研究室を主宰する池田准教授は、企業や組織を取り巻く多様な心理学的メカニズムを研究対象とする産業・組織心理学の分野で活躍しており、日本産業・組織心理学会会長(2022年~2025年)を務めるなど、学術界において高い評価を受けています。池田研究室では、リーダーシップ、ワークモチベーション、チームワーク、組織文化(カルチャー)などを主要な研究テーマとし、心理学の視点から理論的・実証的な研究を展開しています。また、企業との共同研究にも豊富な実績を有し、学術と実務の双方に貢献しています。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
株式会社パーソル総合研究所 広報
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