職場における属性の多様化が進む中で、オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN:主に男性を中心に形成された閉鎖的な人間関係や慣習・組織文化)に象徴される組織運営の実態を明らかにするため、「オールド・ボーイズ・ネットワークに関する定量調査」を実施しました。
OBNは、採用や昇進、仕事の割り振り、情報共有、意思決定などにおいて、特定の人間関係や慣習が影響を及ぼす組織運営上の課題として指摘されてきました。本調査では、属性の多様化(性別や年齢などの多様化)が進んだ職場においても残り得る、このような組織運営に内在する見えにくい閉鎖性を「深層の閉鎖性」※と定義し、その実態や影響について分析しました。
調査の結果、女性社員や女性管理職の比率が高い職場においても、こうした組織運営上の閉鎖性は一定程度残存していることが確認されました。さらに、深層の閉鎖性が高い組織ほど、新たな人材や多様な視点が受け入れられにくい傾向が見られるなど、組織と個人の双方に影響を及ぼしていることが明らかになりました。
※ 深層の閉鎖性
本調査では、採用や昇進、仕事の割り振り、情報共有、意思決定などにおいて、特定の人間関係や慣習によって機会や情報が偏るなどの、組織運営に内在する見えにくい閉鎖性を「深層の閉鎖性」と定義した。これは、性別や年齢などの属性構成とは別に、属性の多様化が進んだ職場においても残りうる組織運営上の課題である。
主なトピックス
OBNと深層の閉鎖性の実態
- 「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」の認知率は18.3%、OBNについての説明後は67.0%が勤務先に存在すると回答:OBNという言葉を聞いたことがある人は18.3%にとどまった。一方で、意味を提示すると、67.0%が勤務先に「OBNやそれに基づく慣習・組織文化」があると回答しており、言葉は知られていなくても、そうした人間関係や慣習・組織文化は広く実感されている。
- OBNの慣習・文化が「ある」と感じるほど、「深層の閉鎖性」も高い:勤務先にOBNに基づく慣習・組織文化が「かなりある」と回答した人では、「深層の閉鎖性」が高い割合が94.0%にのぼった。OBNとして認識されている慣習・文化は、組織運営に内在する見えにくい閉鎖性を反映している。
- 採用、アサイン・成長機会、評価・昇進、意思決定、働き方、情報共有の各場面で、一部の人間関係や慣習が機会や判断に影響する「深層の閉鎖性」が、3~4割の企業で見られる。
- 女性正社員比率が5割以上でも約4割、女性管理職比率が5割以上でも3割強で「深層の閉鎖性」が高い状態が残存:女性比率の上昇に伴い、「深層の閉鎖性」が高い組織の割合は低下する傾向が見られるものの、女性正社員比率が5割以上でも約4割、女性管理職比率が5割以上でも3割強の組織で高い状態が残っている。
深層の閉鎖性がもたらす影響
- 深層の閉鎖性が高い組織では、「外部から来た人が力を発揮しにくい」が5.0倍:深層の閉鎖性が高い組織では、低い組織と比べて「外部から来た人が力を発揮しにくい」と感じる人が5.0倍にのぼった。また、新しいアイデアや視点が意思決定に反映されにくい、離職率が高いなど、組織や個人への影響も見られた。
深層の閉鎖性が生じる組織要因
- 深層の閉鎖性が高い組織は、上級管理職の同質性・固定化、メンバーの多様性の低さ、特定の組織規範と関連:深層の閉鎖性は、上級管理職の同質化・固定化やメンバーの多様性の低さと関連していた。また、「ジェンダー役割規範」「変化抵抗性」「長時間コミット規範」といった組織規範とも強く関連していた。
- 深層の閉鎖性は、意思決定の速さや組織の安定といった“メリット”も伴うため維持されやすい:深層の閉鎖性が高い組織ほど、意思決定の迅速性や組織の安定性といった機能的メリットが感じられやすい。特に「似たタイプの社員が多いため、マネジメントしやすく、統制がとりやすい」は2.9倍だった。
深層の閉鎖性を弱めるために
- 深層の閉鎖性を弱めるには、「重要情報の同時共有」など誰に対しても開かれた機会設計が重要:誰に対しても開かれた情報共有や意思表示の機会、評価・機会配分の偏りの是正は、深層の閉鎖性を弱めていた。
主なトピックス(詳細)
OBNと深層の閉鎖性の実態
- 「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」の認知率は18.3%、OBNについての説明後は67.0%が勤務先に存在すると回答:「オールド・ボーイズ・ネットワーク」という言葉を聞いたことがある人は2割弱。約8割の人が、言葉自体を聞いたことがない。
一方で、OBNについての意味を説明すると、6割以上の人が、自身の勤務先にオールド・ボーイズ・ネットワークの人間関係や慣習・組織文化があると回答。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」という言葉は知らなくても、そうした人間関係、慣習・組織文化は実感されている。
- OBNの慣習・文化が「ある」と感じるほど、「深層の閉鎖性」も高い:OBNの慣習・文化が「ある」と感じるほど、「深層の閉鎖性」(実態)も高い。すなわち、OBNとして認識されている慣習・文化は、「深層の閉鎖性」として捉えられる組織運営上の閉鎖性と同じ現象を捉えたものといえる。OBNの慣習・組織文化が「かなりある」と感じている場合では、「深層の閉鎖性」が高い割合は94.0%にのぼる。
- 採用、アサイン・成長機会、評価・昇進、意思決定、働き方、情報共有の各場面で、一部の人間関係や慣習が機会や判断に影響する「深層の閉鎖性」が、3~4割の企業で見られる。:採用面では「経営層や上級管理職との非公式なつながりの影響」(33.8%)、アサイン・成長機会の面では「古参メンバーの働き方・価値観・経歴に近い社員が、リーダー候補に選ばれやすい傾向」(39.5%)、評価・昇進面では「上司や経営層の個人的な好みや考え方が、昇進の判断に影響」(44.2%) など、採用、アサイン・成長機会、評価・昇進の各場面で、3~4割の企業に「深層の閉鎖性」が見られる。
意思決定面では「権限のあるメンバーに同調する空気が強い」(36.6%)、働き方の面では「働き方の違いで重要な仕事の任され方に差が出る」(35.2%)、情報共有面では「経営層や上級管理職との非公式なつながりで情報が先に共有される」(38.4%) など、意思決定、働き方、情報共有の各場面で、3~4割の企業に「深層の閉鎖性」が見られる。
- 女性正社員比率が5割以上でも約4割、女性管理職比率が5割以上でも3割強で「深層の閉鎖性」が高い状態が残存:女性比率の上昇に伴い、「深層の閉鎖性」が高い組織の割合は低下する傾向が見られるものの、女性比率が5割以上となっても、約4割の組織で「深層の閉鎖性」が高い状態が残っている。
同様に、女性管理職比率が5割以上となっても、3割強の組織で「深層の閉鎖性」が高い状態が残っている。
深層の閉鎖性がもたらす影響
- 深層の閉鎖性が高い組織では、「外部から来た人が力を発揮しにくい」が5.0倍:「深層の閉鎖性」が高いほど、組織レベルでは、新規人材の参入困難や多様な視点の欠如、離職率の高さが感じられやすい。
特に、「外部から来た人が力を発揮しにくい」割合は、深層の閉鎖性が低い場合と比べて5.0倍と大きな差が見られる。また、個人レベルでは、キャリア機会の制約や成長停滞感が感じられやすく、発言躊躇や意欲の低下が起きやすい。
「深層の閉鎖性」が個人にもたらす悪影響を性年代別でみると、特に40代女性で影響が大きく、「意欲低下」「発言躊躇」「キャリア機会の制約」は+43%〜+46%に及ぶ。また、20代男性の意欲低下(+41%)や20代女性・60代男性のキャリア機会の制約(+41~42%)も大きく、若手層やシニア層にも影響が及んでいる。
深層の閉鎖性が生じる組織要因
- 深層の閉鎖性が高い組織は、上級管理職の同質性・固定化、メンバーの多様性の低さ、特定の組織規範と関連:部長級以上の上級管理職が男性・特定部門出身者・固定メンバーであること、高年齢層への偏りや中途社員・外国籍社員が少ないこと、ジェンダー役割規範や変化抵抗性、長時間コミット規範が高いことが「深層の閉鎖性」と関係している。一方で、企業規模と「深層の閉鎖性」との間に明確な関係性は見られない。
「深層の閉鎖性」に影響する組織規範(規範的価値観)を見た。「深層の閉鎖性」には、「ジェンダー役割規範」「変化抵抗性」「長時間コミット規範」が強く影響している。
- 深層の閉鎖性は、意思決定の速さや組織の安定といった“メリット”も伴うため維持されやすい:「深層の閉鎖性」が高い組織ほど、意思決定の迅速性や組織の安定性といった組織上の機能的メリットが感じられやすい。
特に、「似たタイプの社員が多いため、マネジメントしやすく、統制がとりやすい」割合は、深層の閉鎖性が低い場合と比べて2.9倍と大きな差が見られる。
深層の閉鎖性を弱めるために
- 深層の閉鎖性を弱めるには、「重要情報の同時共有」など誰に対しても開かれた機会設計が重要:重回帰分析の結果、「情報アクセスの非独占化」「意思を示す機会を開く」「評価・機会配分の偏りを是正」といった「誰に対しても開かれた機会設計」は、「深層の閉鎖性」を弱めていた。 中でも、「重要情報の同時共有(情報アクセスの非独占化)」が最も影響が大きい。一方で、対象範囲が閉じたダイバーシティ施策では、「深層の閉鎖性」が維持されやすい傾向が見られた。
誰に対しても開かれた機会設計が高いほど、「深層の閉鎖性」は低い。中でも、「従来の慣習が強く、新しいやり方が受け入れられにくいと感じる」割合は、開かれた機会設計が高い場合に、低い場合と比べて9.6ポイント低い。
調査結果からの提言
属性の多様化が進んでも、意思決定のあり方や機会の与え方が変わらなければ、閉鎖的な組織運営は解消されない。むしろ、表面的な多様化の下で、その状態は見えにくくなり、気づかないまま維持・再生産されてしまう。
このように、属性の多様化が進んでいるにもかかわらず、実態として閉鎖性が残る状態は、「現代型OBN(OBN2.0)」と位置づけられる。
こうした閉鎖性は、短期的には意思決定の速さや組織の安定、個人の合理的な適応をもたらす面もあるが、一方で、機会の偏りや多様な視点の不足を通じて、意欲の低下や離職、成長停滞につながり、組織全体の活力を損なう可能性がある。
したがって、単に属性を多様化させるだけでは不十分である。重要なのは、「誰に、どのように機会が開かれているか」という設計そのものを見直すことである。
- 重要な情報が、一部の人だけに偏らず共有されているか
- 多様な立場の人の意見が、意思決定に反映されているか
- 評価や登用が、特定の関係性や背景に左右されていないか
こうした点を見直し、「誰に対しても開かれた機会」をつくることが、組織の深層に根付く閉鎖性を解消する鍵となる。
表層では多様化が進んでも、機会配分・意思決定の偏りは見えにくく温存される。
「誰に対しても開かれた機会設計」が解消の鍵。
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本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
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構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
調査概要
| 調査名称 | パーソル総合研究所 「オールド・ボーイズ・ネットワークに関する定量調査」 |
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| 調査内容 | オールド・ボーイズ・ネットワークに見られる組織運営上の閉鎖性について、その実態と影響、維持・再生産の構造を定量的に把握し、人事施策の方向性を明らかにすることを目的として調査を行った。 |
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| 調査対象 | ■正社員(基本サンプル):20-64歳の正社員 計2500名 ・正社員規模101人以上の企業勤務者 ・除外業種:農業・林業、漁業、鉱業・採石業・砂利採取業
内訳は以下の通り ※総務省(2024年)「労働力調査」における正規雇用者の性別・年代構成に準拠
 ■女性管理職ブースト 計353名 ※上記基本サンプルとの重複含む |
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| 調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
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| 調査時期 | 2025年12月25日(木)~2026年1月5日(月) |
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| 実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
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株式会社パーソル総合研究所 について
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