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パーソル総合研究所「オールド・ボーイズ・ネットワークに関する定量調査」
オールド・ボーイズ・ネットワークに見られる組織運営上の閉鎖性について、その実態と影響、維持・再生産の構造を定量的に把握し、人事施策の方向性を明らかにすることを目的として調査を行った。
■正社員(基本サンプル):20-64歳の正社員 計2500名
内訳は以下の通り ※総務省(2024年)「労働力調査」における正規雇用者の性別・年代構成に準拠

■女性管理職ブースト 計353名 ※上記基本サンプルとの重複含む
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2025年 12月25日(木) – 2026年 1月5日(月)
株式会社パーソル総合研究所
オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)とは、主に旧知の男性を中心に形成されてきた、限られた人間関係や共通の結びつきに基づく非公式な関係性である。
OBNは、単なる人間関係ではなく、昇進・情報共有などの組織運営のあり方と結びついた現象として捉えられる(Rand & Bierema, 2009)。日本の実務や政策の文脈でも、OBNは人間関係そのものというよりも、採用や昇進、仕事の割り振り、情報共有といった組織運営の各場面において、明文化されていない価値観や慣習が機会配分の偏りや意思決定の画一性を生じさせることが問題視されてきた(内閣府男女共同参画局; 内永, 2020など) 。
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参考:
自身の勤務先にOBNやそれに基づく慣習・組織文化があるかを尋ねると、6割以上があると回答。
OBNとして指摘されてきたような組織運営上の閉鎖性は、女性社員や女性管理職の増加により属性の多様化が進む中でも、なお残りうる。本調査では、これらのように見えにくく存在する組織運営上の閉鎖性を、「深層の閉鎖性」と位置付けた。
深層の閉鎖性が、組織運営の6つの場面(①採用 ②アサイン・成長機会 ③評価・昇進 ④意思決定 ⑤働き方 ⑥情報共有)においてどの程度存在するかを見たところ、概ね3~4割の企業で見られた。
女性正社員比率と「深層の閉鎖性が高い組織」※の割合を見ると、女性比率の上昇に伴い、深層の閉鎖性が高い組織の割合は低下する傾向が見られるものの、女性比率が50%以上でも、39.6%の組織で深層の閉鎖性が高い。同様に、女性管理職比率が50%以上となっても、34.3%の組織で深層の閉鎖性が高い。つまり、属性構成の変化は重要な一歩ではあるものの、機会配分や意思決定の仕組みが変わらなければ、見えにくい深層の閉鎖性は温存されるといえる。
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組織運営の6つの場面(①採用 ②アサイン・成長機会 ③評価・昇進 ④意思決定 ⑤働き方 ⑥情報共有)において、5件法で「深層の閉鎖性のスコア」を測定し、場面平均の平均(総合平均)を基に、総合平均が3超を「深層の閉鎖性が《高い》組織」、総合平均が3以下を「深層の閉鎖性が《低い》組織」と分類した。項目詳細は報告書PDF47ページ参照
「深層の閉鎖性」が高い組織では、組織・個人の双方で悪影響が確認された。
組織では、「新規人材の参入困難」や「多様な視点の欠如」、「離職率の高さ」が感じられやすい。特に、「外部から来た人が力を発揮しにくい」割合は、深層の閉鎖性が低い場合と比べて5.0倍と大きな差が見られる。
個人では、「キャリア機会の制約」や「成長停滞感」が感じられやすく、「発言躊躇」や「意欲低下」が起きやすい。特に、「昇進や成長の機会が限られていて、キャリア形成に制約を感じる」割合は、深層の閉鎖性が低い場合と比べて4.2倍の差が見られる。
「深層の閉鎖性」が個人にもたらす悪影響を性年代別に見ると、特に40代女性で影響が大きく、「意欲低下」「発言躊躇」「キャリア機会の制約」は+43%〜+46%に及ぶ。また、20代男性の意欲低下(+41%)や20代女性・60代男性のキャリア機会の制約(+41~42%)も大きく、若手層やシニア層にも影響が及んでいる。
どのような組織で閉鎖性が高まりやすいのかを業種別に見た。
「宿泊業、飲食サービス業」「建設業」「運輸業、郵便業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「製造業」は、女性比率が低く、かつ深層の閉鎖性が高い傾向が見られた。一方で、「生活関連サービス業、娯楽業」「不動産業、物品賃貸業」のように女性比率が比較的高くても閉鎖性が残る業界もある。
また、深層の閉鎖性が高い組織では、上級管理職が特定部門出身者に偏り、顔ぶれが固定化し、男性中心である傾向が強い(マネジメント層の特性)。加えて、高年齢層への偏り、中途社員や外国籍社員の少なさも見られる(その他の組織特性)。
さらに、管理職は男性が適任だとする価値観が残っているなどの「ジェンダー役割規範」や、従来のやり方を尊重すべきだという意識が強いなどの「変化抵抗性」、残業や休日対応が熱意の証とみなされやすいなどの「長時間コミット規範」といった「組織規範」も深層の閉鎖性と強く関係していた。
一方で、企業規模と深層の閉鎖性との間に明確な関係性は見られない。
「深層の閉鎖性」が高い組織ほど、意思決定の迅速性や組織の安定性といった組織上の機能的メリットが感じられやすいことも明らかになった。特に、「似たタイプの社員が多いため、マネジメントしやすく、統制がとりやすい」割合は、深層の閉鎖性が低い場合と比べて2.9倍と大きな差が見られる。深層の閉鎖性が維持・再生産されるひとつの理由といえる。
さらに個人レベルでは、評価・信頼のために自分らしさや本音を抑える「自己抑制」、評価・昇進のために努力を見せることを重視する「努力アピール」、不安や摩擦を避けるため、既存のやり方や組織文化を維持しようとする「現状維持志向」、評価・昇進を見据え、権力者の意向に合わせて行動する「戦略的迎合」といった「キャリア適合戦略」が、深層の閉鎖性に影響を与える「組織規範」と強く関係している。
つまり、組織にも個人にも短期的な合理性があるため、深層の閉鎖性は見直されにくく、再生産されやすい。
「深層の閉鎖性」を弱めるには、「誰に対しても開かれた機会設計」が不可欠である。特に影響が大きかったのは、重要情報を全社員に同時共有する「情報アクセスの非独占化」である。その他、ダイバーシティに関する社員アンケートなどの「意思を示す機会を開く」設計や、成果・能力に応じた評価・昇進などの「評価・機会配分の偏りを是正する」設計も、深層の閉鎖性を弱めていた。
一方で、女性比率ルールや女性活躍推進研修などの「対象範囲が閉じたダイバーシティ施策」では、深層の閉鎖性が維持されやすい傾向が見られた。
属性の多様化が進んでも、意思決定のあり方や機会の与え方が変わらなければ、閉鎖的な組織運営は解消されない。むしろ、表面的な多様化の下で、その状態は見えにくくなり、気づかないまま維持・再生産されてしまう。このように、属性の多様化が進んでいるにもかかわらず、実態として閉鎖性が残る状態は、「現代型OBN(OBN2.0)」と位置づけられる。
こうした閉鎖性は、短期的には意思決定の速さや組織の安定、個人の合理的な適応をもたらす面もあるが、一方で、機会の偏りや多様な視点の不足を通じて、意欲の低下や離職、成長停滞につながり、組織全体の活力を損なう可能性がある。したがって、単に属性を多様化させるだけでは不十分である。重要なのは、「誰に、どのように機会が開かれているか」という設計そのものを見直すことである。
こうした点を見直し、「誰に対しても開かれた機会」をつくることが、組織の深層に根付く閉鎖性を解消する鍵となる。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「オールド・ボーイズ・ネットワークに関する定量調査」
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