ダイバーシティ推進に賛成でも、職場で負担感や葛藤を感じる人が約4割
属性や価値観の多様化だけでは不十分 — 鍵を握るのは「関係のダイバーシティ」
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近年、世界的にダイバーシティをめぐる議論が転換点を迎え、日本でも企業による取り組みが進む一方で、そのあり方や現場への影響が改めて問われています。本調査でも、属性や価値観の多様化が進むほど、現場では抵抗感や葛藤が生じ、ダイバーシティ施策が形骸化している実態が確認されました。
本調査では、こうしたギャップの背景を分析するため、従来の「属性」や「価値観」の多様性に加え、人材同士の「つながり」と「つながり方」の多様性を示す新たな概念として「関係のダイバーシティ」に着目しました。分析の結果、「関係のダイバーシティ」が高い組織ほど、ダイバーシティへの抵抗感が抑えられ、チームパフォーマンスやイノベーション活動との間に正の関係が見られることが確認されました。
頭では理解していても感情や実務が追いついていない「葛藤派」が39.4%と最多

ダイバーシティの一般的受容度:ダイバーシティに関する受け入れ意識(一般的受容度)を見た。いずれの項目も6割以上と概ね高い。ただし、社会的な意義への賛同(70.6%)と比べ、勤務先が積極的に取り組むべきという規範的意識(60.7%)はやや低い傾向が見られた。

ダイバーシティに関する個人的抵抗感:「受け入れへの抵抗」などを直接的に問う項目での肯定回答は2割台と限定的である。しかし、一方で、「価値観の異なる同僚との協働」には半数がストレスを感じていた。
一般的理念としての反対は少ないが、実際に価値観が違う人と働くことに対しては抵抗感があることがうかがえる。



ダイバーシティへの個人的抵抗感を高める要因:個人的抵抗感を高める要因のなかでも、「施策の空回り感」の意識が強いほど、ダイバーシティへの抵抗感が最も高まる傾向が確認された。


本調査では、組織のダイバーシティを多角的に捉えるため、表層的な多様性を測る「属性のダイバーシティ」と、深層的な多様性を測る「価値観のダイバーシティ」の2指標を以下の通り定義し、分析に用いた。

属性・価値観のダイバーシティと葛藤:多変量解析の結果、「属性」「価値観」双方のダイバーシティが、「ダイバーシティ葛藤派」の発生を有意に高める要因であることが確認された。特に「価値観」の違いによる影響は大きく、価値観のダイバーシティが「低め」から「中層」へ移行する段階で、葛藤派の割合は約20ポイント(28.3%→47.7%)急増している。同一的な価値観の組織が多様になっていくときの過程が最も葛藤を生みやすいことが示唆される。

組織のダイバーシティが与える影響:多変量解析を行った結果、組織における属性・価値観のダイバーシティが高まるほど、「仕事の不公平感」や「過度な気遣い感」「関係性コンフリクト」を高める傾向が見られた。
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「仕事の不公平感」「過度な気遣い感」の内容は報告書のAppendix、「関係性コンフリクト」の内容は報告書P58を参照

本調査では、仕事における「つながり」と「つながり方」の多様性を測定する以下4項目の平均値を基に、「関係のダイバーシティ」を定義し分析に用いた。
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各項目の聴取方法や平均値については報告書P37~40を参照

「関係のダイバーシティ」が与える影響:ダイバーシティへの一般的受容度、個人的抵抗感に対して与える影響を分析すると、「属性のダイバーシティ」と「価値観のダイバーシティ」は、どちらの要素も高める傾向が見られる一方、「関係のダイバーシティ」は一般的受容度を高めつつ、個人的抵抗感を下げる傾向が確認された。

また、「関係のダイバーシティ」スコアの高群は、低群よりも「ダイバーシティ賛同群」が多く、「ダイバーシティ葛藤群」が少ない傾向が確認された。

チームパフォーマンスの促進:属性・価値観・関係の各ダイバーシティとチームパフォーマンスの関係性を見た。「属性のダイバーシティ」や「価値観のダイバーシティ」と比較して、「関係のダイバーシティ」は、スコアが高いほどチームパフォーマンスが高くなる傾向が確認された。

イノベーションの促進:また、「関係のダイバーシティ」は「イノベーション活動」を強く促進し、かつ「はたらく不幸せ実感(働くことを通じて不幸せを感じている)」※を有意に下げる効果が確認された。これらは他のダイバーシティ指標(属性・価値観)と比べても、特に際立った傾向である。

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組織で働く従業員の「はたらく幸せ実感/不幸せ実感」については、その要因となる「はたらく幸せ7因子/はたらく不幸せ7因子」によって説明することができる。<原著論文>「職業生活における主観的幸福感因子尺度/不幸感因子尺度の開発」(Inoue.et,al.,日本感情心理学会,2022,12)
はたらく幸せ実感への影響:加えて、「関係のダイバーシティ」が、「属性」「価値観」のダイバーシティの効果を高める傾向も見られた。「関係のダイバーシティ」が確保されている組織ほど、「属性」や「価値観」のダイバーシティが「はたらく幸せ実感」に結びつきやすいことが確認された。


企業のネットワーク/コミュニティ施策実施率(制度系):制度系のコミュニティ施策の実態を見た。最も多く行われている取り組みは「1on1ミーティング」で33.2%。次いで、「オンボーディング、メンター制度(26.6%)」、「社内チャレンジ公募制度(25.6%)」が続く。

企業のネットワーク/コミュニティ施策実施率(イベント系):イベント系のコミュニティ施策の中では、「全社懇親会」が最も多く30.2%。次いで、「社内勉強会・読書会(27.2%)」、「仕事に関する情報共有会(27.0%)」が続く。

関係のダイバーシティに対してプラスの関係がみられたコミュニティ施策:各コミュニティ施策が「関係のダイバーシティ」に与える影響を多変量解析で分析した。❶広げる:ネットワークの数を増やす施策、❷太くする:会話頻度を増やす施策、❸かき混ぜる:会話内容を分散させる施策、❹つなげる:知り合い同士をつなぐ施策の4施策が「関係のダイバーシティ」を強化する傾向。


パーソル総合研究所
主席研究員
小林 祐児
今、ダイバーシティをめぐる議論は、世界規模で大きな転換点を迎えている。
これまで主流であった属性や経験、価値観の多様性を「頭数」で捉える人材ダイバーシティは、不公平感や過剰な配慮を生み、現場では形骸化が進んできた。アメリカを中心に進む「アンチ・ダイバーシティ」のバックラッシュは対岸の火事ではない。
属性のダイバーシティや価値観のダイバーシティといった既存の議論の最大の問題は、それぞれの人材の「関係性」が考慮されてこなかった点にある。多様な人材をそろえることが目的化し、組織の中でどのようにつながり、どのように協働しているのかという問いが欠落し、リアリティを損なってきた。
そこで本レポートは新しい多様性の観点として、「関係のダイバーシティ」を提案する。これは人材同士の「つながり」と「つながり方」の多様性を測る指標である。
ここでの関係のダイバーシティとは、「関係の質」や「仲の良さ」ではない。ネットワークの数と密度、コミュニケーションの頻度と豊かさといった「つながりとつながり方の多様性」を示すものだ。分析の結果、関係のダイバーシティ指標が高いほど、ダイバーシティ施策の抵抗感を下げ、組織のウェルビーイングやイノベーション活動を促進することが示唆された。
これからのダイバーシティ議論は、「どんな人がいるか」という頭数だけではなく、人材が「どのように関わっているのか」を問うべきである。この「関係」の論点が補われることで、ダイバーシティの施策と議論をアップデートさせることができる。
ダイバーシティ推進の「限界」を乗り越えるために

関係のダイバーシティを高めるためのフレームワークと施策例

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本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
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調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/diversity/
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構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
| 調査名称 | パーソル総合研究所 「組織のダイバーシティ(多様性)に関する定量調査」 |
|---|---|
| 調査内容 | ・組織におけるダイバーシティの意識・実態とその要因について明らかにする。 |
| 調査対象 | ①従業員調査 n=3,000s |
| 調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
| 調査時期 | 2025年 10月15日 – 10月20日 |
| 実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
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人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
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