柔軟な働き方制度、整備すすむもケア就業者の利用は2割
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)は、「ケア就業者に関する研究」の結果を発表いたします。 ※本調査におけるケア就業者の定義 : 働きながら、育児・介護といったケアを行っている者
少子高齢化の進行により、育児や介護と仕事の両立は、多くの就業者にとって現実的な課題となりつつあります。本調査では、2035年には、育児・介護・ダブルケア就業者(育児と介護のいずれも行う就業者)のすべて含めたケア就業者が1,285万人に達し、就業者の6人に1人を占めると推計されました。
一方、柔軟な働き方制度が整備されても、実際の利用率は2割にとどまります。背景には、ケア就業者自身の“しわ寄せ懸念”や、非ケア就業者の不満・特別扱い感といった職場内の構造的課題があることが明らかになりました。ケアと仕事の両立支援を、対象者だけでなく職場全体の視点から捉え直す必要性が示唆されます。
2035年のケア就業者数(育児・介護・ダブルケアの累計)は、
2022年比で9.7%増(+113万人)の1,285万人と見込まれる。
パーソル総合研究所と中央大学は、2024年10月に2035年の労働市場の見通しを「労働市場の未来推計2035」として発表しました。就業者数は現在から300万人以上増加し、7,122万人になると予測しました。本研究では、2035年の就業者数7,122万人を前提条件に置いた上で、その時点でのケア就業者(育児就業者、介護就業者、ダブルケア就業者)の人数をそれぞれ推計しました。
2022年と2035年の育児就業者数を性年代別に見ると、男女ともに40代以外のすべての年代で育児就業者は増える見込み。この背景には、男性は育児就業率の増加、女性は労働力率(労働参加率)の増加があると考えられる。
2022年と2035年の介護就業者数を性年代別に見た。男性では60代・70代以上、女性では50代・60代・70代以上で介護就業者が増える見込み。この背景には、人口動態における高齢化の進行や、全般的な労働力率の上昇があると考えられる。
2022年と2035年のダブルケア就業者数を性年代別に見た。男女ともにすべての年代でダブルケア就業者は増える見込み。この要因には、晩婚化や晩産化、高齢化が考えられる。
ケア就業者への不満あり層となし層で、「(ケア就業者への)過度な優遇意識」と「就業者の不公平感」の差が 見られる。つまり、ケア就業者への不満と、ケア就業者の特別扱い感の関連が強い。
※上記分析には、それぞれ以下の項目の平均値を用いた。
育児や介護といったケアと仕事の両立に注目が集まっている。企業単位の様々な施策だけでなく、法改正もそれを裏付けている。そこで、今回、「労働市場の未来推計2035」をベースに、将来的なケア就業者数を算出したところ、2035年には現状からおよそ10%増え、1,285万人に達するという予測となった。これは、性別や年齢問わず、誰にとってもケア就業者になる可能性が高まり、ケア就業者と共に働く可能性が高まる社会の到来を意味する。
こうした中で重要になってくるのは、ケアと仕事を両立するための仕組みづくりである。事実、政策的にも、実務的にも、ケア就業者をターゲットとした様々な支援が形作られてきた。しかし、本調査では、制度が導入されていても、5人に4人は利用していないことがわかっている。
この背景には、周囲への仕事のしわ寄せを恐れるケア就業者の意識が潜む。本調査からは、周囲への業務の代替が、非ケア就業者側の不満を高めており、こうした不満の蓄積が、ケア就業者の制度利用の足かせとなっている可能性がうかがえている。今後は、非ケア就業者の意識により一層目を向け、調整型の上司マネジメントを行っていくことや、働き方制度における特別扱いを緩和していくことなどが重要だろう。
従来のケアと仕事の両立支援においては、その対象となるケア就業者だけに目を向けた支援が主に模索されてきた。しかし、ケア就業者の活躍を促進するには、その周りにいる非ケア就業者も含めた包括的なアプローチへと転換することが不可欠である。
ケア就業者のいる職場の課題を解決するには、まずは非ケア就業者側の不満を抑制し、ケア就業者が働き方制度を利用しやすい風土を醸成していくことが重要と考えられる。
※本調査を引用いただく際は、出所としてパーソル総合研究所「ケア就業者に関する研究」と記載してください。
※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/carer-enployee.pdf
※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
調査内容 |
・ケア就業者のいる職場の課題と、課題解決のためのポイントを明らかにする。 |
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調査対象者 |
共通条件:全国の就業者(休業中の就業者は除く)、20~69歳男女 ※ 2022年の総務省「就業構造基本調査」の性年代構成比を参考に割付(ただし、③の割付は自然発生で回収) |
調査手法 |
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査時期 |
2024年 12月6日 – 12月10日 |
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中央大学は、1885年の創立から「實地應用ノ素ヲ養フ(じっちおうようのそをやしなう)」という建学の精神のもと、いつの時代にも社会を支え、未来を拓くことを使命とし、実社会の課題に対応する教育・研究に取り組んでいます。
「Chuo Vision 2025」に基づき、中央大学は持続可能な社会を築き、国際的に貢献できる実践力を持つ次世代の人材育成を目指して、2026年から2027年にかけて新しい5つの学部を設置する計画を進めています。
2026年4月には、現在の理工学部を発展的に再編し、基幹理工学部、社会理工学部、先進理工学部の3つの学部を新設します。2027年4月には、スポーツ情報学部(仮称)、情報農学部(仮称)の2つの学部を開設に向けて設置構想中です。
本調査は「労働市場の未来推計2035」プロジェクトとして、中央大学の阿部正浩教授、中央大学 経済研究所 客員研究員および下関市立大学の鈴木俊光准教授にご参画いただき、パーソル総合研究所シンクタンク本部と中央大学の共同で実施しました 。
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