派遣社員のリスキリングに関する定量調査

公開日:2023年6月14日(水) 

調査概要

調査名 派遣社員のリスキリングに関する定量調査
調査内容 ・派遣社員のキャリア意識や派遣先・派遣元企業での就業実態を明らかにする。
・派遣社員の学び・リスキリングの実態とその課題を明らかにする。
調査対象 ■全国の男女就業者(年齢20-59歳)
■除外業界あり (第一次産業、公務員除く)
■性別・年代割合構成は、労働力調査における派遣社員の構成比に合わせ、雇用形態別に以下割付。
調査対象
調査時期 2023年 3月1日-6日
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

調査報告書(全文)

Index

  1. 派遣社員のリスキリングとスキルの実態
  2. 派遣社員のキャリアへの意識
  3. 派遣社員のキャリアへの支援実態
  4. キャリアの時間意識を変えることで、派遣社員のスキル向上とキャリアの選択肢の拡大を

調査結果(サマリ)

派遣社員のリスキリングとスキルの実態

派遣社員も無期雇用社員も学びへの意欲の大きな差はない

派遣社員のリスキリングの実態を把握するため、派遣社員と無期雇用社員に、「スキルや学び直しをする必要性がある時代」「スキルや能力をのばしたい」「仕事で学ぶことは大切」と感じるかなど、学びへの意欲を聞いたところ、派遣社員も無期雇用社員も大きな差は見られなかった。

図1.派遣社員と無期雇用社員の学びへの意欲

派遣社員と無期雇用社員の学びへの意欲

派遣社員の78.0%が学習行動「とくに何も行っていない」

実際の学習行動については、派遣社員の78.0%が「とくに何も行っていない」。無期雇用社員では69.8%。

図2.派遣社員と無期雇用社員の学習行動の実態

派遣社員と無期雇用社員の学習行動の実態

派遣社員の75.9%が企業研修を受けていない

企業による研修経験についても、派遣社員の75.9%が直近1年間で「どれも受けていない」。最も経験率の高い「情報保護・コンプライアンス研修」においても6.8%にとどまる。

図3.派遣社員の研修経験

派遣社員の研修経験

派遣社員は転職や職場変更をまたいだスキルの蓄積がされにくい

転職後のスキルの転用について見たところ、派遣社員は無期雇用社員に比べ、業務上で得た経験やスキルを次の職場で活かせておらず、転職や職場変更をまたいだスキルの蓄積がされにくい傾向にある。

図4.派遣社員と無期雇用社員の前の勤務先から活かしているスキル

派遣社員と無期雇用社員の前の勤務先から活かしているスキル

派遣社員のキャリアへの意識

キャリアへの不安が高い派遣社員

派遣社員のキャリアへの意識を見たところ、派遣社員は無期雇用社員と比べ、キャリア不安が全般的に高い。特に「今のまま、十分な収入が得られるか不安だ(45.5%)」「今のまま、いつまで働き続けられるか不安だ(45.4%)」が高い。

図5.派遣社員と無期雇用社員のキャリア意識

派遣社員と無期雇用社員のキャリア意識

「キャリアの時間意識」と「セルフ・アウェアネス」

自身のキャリアを、「過去」「未来」に照らして振り返ったり考えたりする「キャリアの時間意識」、仕事を通じて実現したいことや自分の得意なことを理解する「セルフ・アウェアネス(自己認識)」について、「学びへの意欲(学び意欲)」と「変化適応力(環境変化に対する自己効力感)」への影響を見たところ、「キャリアの時間意識」は「学び意欲」「変化適応力」ともにプラスの影響が見られ、「セルフ・アウェアネス」は「変化適応力」にプラスの影響が見られた。

図6.「キャリアの時間意識」「セルフ・アウェアネス」と、「学ぶ意欲」「変化適応力」との関係

「キャリアの時間意識」「セルフ・アウェアネス」と、「学ぶ意欲」「変化適応力」との関係

「キャリアの時間意識」と「セルフ・アウェアネス」は、「変化適応力」と「スキル転用」に影響

「キャリアの時間意識」は、「学び意欲」と「変化適応力」にプラスの影響を与え、仕事に関する「セルフ・アウェアネス」は「変化適応力」にプラスの影響を与えていることが見られた。

図7.「キャリアの時間意識」と「セルフ・アウェアネス」の影響

「キャリアの時間意識」と「セルフ・アウェアネス」の影響

「キャリアの時間意識」と仕事に関する「セルフ・アウェアネス」はともに、次の職場でスキルを活かせている度合いを表す「スキル転用」にプラスの影響を与えており、スキルを蓄積していくためにこの2つの意識の存在が寄与している。

図8.次の職場での「スキル転用」とキャリア意識の関係

次の職場での「スキル転用」とキャリア意識の関係

派遣社員のキャリアへの支援実態

上司・同僚からの手薄な支援

職場での上司・同僚からのサポート・支援の実態を見ると、派遣社員の職場支援は、上司・同僚ともに「業務支援(仕事に関するサポート・フォロー)」に偏っており、「精神支援(プライベートを含む悩み相談)」も、「内省支援(振り返りの支援・フィードバック)」も低い。中でも「ネットワーク支援(社内外の人の紹介)」は最も手薄であった。

図9.派遣社員と無期雇用社員が職場の上司・同僚から受けている支援

派遣社員と無期雇用社員が職場の上司・同僚から受けている支援

上司・同僚の「内省支援」や派遣元担当者の「キャリア相談」「学びへの助言」が、「キャリアの時間意識」「セルフ・アウェアネス」にプラスの影響

職場での支援と「キャリアの時間意識」「セルフ・アウェアネス」との関係を見た。上司・同僚の「内省支援」は、「キャリアの時間意識」「セルフ・アウェアネス」ともにプラスの影響が見られた。「ネットワーク支援」も一部を除いて同様の傾向が見られる。

図10.職場での支援とキャリア意識との関係

職場での支援とキャリア意識との関係

派遣元担当者のフォロー実態

派遣元担当者のフォローと「キャリアの時間意識」「セルフ・アウェアネス」との関係を分析すると、「キャリアへの相談」、「学びへの助言」はともに「キャリアの時間意識」、「セルフ・アウェアネス」にプラスの影響が見られた。「事務連絡」や「情報提供」だけでは、それらにプラスの影響は確認できない。

図11.派遣元担当者のフォロー行動とキャリア意識との関係

派遣元担当者のフォロー行動とキャリア意識との関係

しかし、「キャリア相談」「学びの助言」はともにあまり実施されておらず、今後の実施余地が大きい。

図12.派遣社員が派遣元担当者から受けるフォロー

派遣社員が派遣元担当者から受けるフォロー

分析コメント

キャリアの時間意識を変えることで、派遣社員のスキル向上とキャリアの選択肢の拡大を

昨今、人的資本経営の潮流が強まり、従業員のリスキリングの重要性も広く認識されるようになった。しかし従前より、派遣社員は外部人材リソースとして企業の人材育成の対象外に置かれがちで、リスキリングの議論からも取り残されている。

派遣社員の学び意欲は潜在的には低くないが、「キャリアの時間意識」が短く、「セルフ・アウェアネス(自己認識)」が低く、キャリア不安が強い状態にあることが分かった。そうしたキャリア意識を背景にして、得たスキルが次の職場で活かされておらず、「飛び石」のような非連続的なキャリアを歩んでいる。

図13.「積み石型」「飛び石型」キャリアの違い

「積み石型」「飛び石型」キャリアの違い

学習機会や情報をただ提供するだけでは、こうしたキャリアの在り方を変化させることは難しい。必要なのは、「キャリアの時間意識」と「セルフ・アウェアネス」を高めるための「振り返り支援」や「ネットワーク支援」であるが、現在は効果的な振り返り支援やネットワーク支援ほど不足している。派遣先・派遣元企業・行政が連携し、キャリアサポートをより手厚くしていくことが求められる。

図14.派遣社員に不足している支援の在り方

派遣社員に不足している支援の在り方

労働力不足の深刻化とともに、外部人材リソースを戦略的に活用することの重要性は増している。賃上げなどで人への投資が拡大する流れの一方で、派遣社員がコストの調整弁として使われるようなことは避けられるべきだ。派遣社員の蓄積的なスキル向上を実現し、魅力的なキャリアの幅を広げるために本調査が参考になれば幸いである。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「派遣社員のリスキリングに関する定量調査」


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