調査・研究コラム

外国人との「共生」を果たしている地域はどこか―共生を支える「顔の見える関係」づくり

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執筆者

  主席研究員 執行役員 シンクタンク本部長

主席研究員 執行役員 シンクタンク本部長

小林 祐児

外国人との「共生」を果たしている地域はどこか―共生を支える「顔の見える関係」づくり

昨今、移民・外国人労働者の受け入れをめぐる議論が政治的アジェンダとして大きくフォーカスされている。2025年6月末時点での日本在留外国人数は、過去最多の約396万人を記録。1990年の約100万人からおよそ4倍に増加し、日本が本格的な移民社会への道を歩み始めていることを示している。

しかしその一方で、外国人受け入れの是非をめぐる議論は過熱している。反対派は、治安や文化摩擦、社会保障への負担拡大を懸念し、「日本社会の同質性が失われる」と警鐘を鳴らす。一方、賛成派は、人口減少と人材不足に直面する今、外国人の存在を「労働力」ではなく「社会の担い手」として受け入れ、共に地域を支える関係を築くべきだと主張する。

両者の間には、「外国人をどう見るか」という根本的な視座の違いが横たわっている。

パーソル総合研究所が発表した「ニッポンのはたらく地図2025レポート」では、こうした対立的な言説を越え、外国人との共生がどの地域で、どのような形で進んでいるのかを、客観的データに基づいて明らかにする。さらに、排外意識の形成要因や交流経験の影響を分析し、「共に住む」から「共に関わる」への転換を探りたい。単なる「何人受け入れるのか」という量の議論ではなく、どのような関係を築くのか——関係の質としての共生を問うことが、本コラムの狙いである。

日本における外国人労働者の受け入れ議論

今、世界各地で、移民や外国人労働者をどの程度、そしてどのような形で受け入れるのかという問題が、政治的なアジェンダとして激しく議論されている。そして、その波は外国人労働者が増え続ける日本にもやはり波及してきた。

これまで政府は入管法の改正や新たな在留資格の創設、技能実習制度の見直しなどを進めてきた。「サイドドア」と呼ばれてきた位置づけを見直し、労働力としての外国人材の受け入れを本格的に拡大しようとしている。その一方で、地域や現場では「外国人との共生」や「文化的摩擦」への不安も根強い。

今後ますます労働力不足が深刻化する日本において、多かれ少なかれ、外国人の数は増えていくことは疑いない。そうした時、直視するべきは「外国人をどのように迎え入れ、共に社会をつくっていくのか」という具体的な設計である。

しかし、外国人に関する議論の多くは、とりわけ感情的・直情的な議論に流されやすいトピックだ。そこで本コラムでは、外国人の活躍度を客観的に測定し、地域ごとの差異を明らかにする。企業・住民・教育・生活・観光といった多様な側面から構成した労働市場における「外国人活躍指標」を用い、全国47都道府県のデータを基に分析を行った。

地域別「外国人活躍」の指標説明

ここでは、外国人の活躍指標を図表1の6つの指標(「外国籍従業員比率」「外国人許容度」「外国人交流経験」「外国人留学生割合」「外国人居住者割合」「訪日外国人割合」)で検討している。本指標は、地域社会における「外国人の活躍度合い」を、単なる人口比率ではなく、社会・経済・文化の複合的な側面から総合的に測定するものになっている。

具体的には、図表1内「データソース」にあるパーソル総合研究所独自調査を含む6つの観点から指標を構成している。これら6項目は基に、「働く」「学ぶ」「暮らす」「訪れる」「受け入れる」「交わる」という6側面を統合してスコア化したものが「外国人活躍指標」である。単なる経済活動だけでなく、地域社会における共生・共創の成熟度を反映することを狙いとしている。

図表1:「外国人活躍」の指標内項目一覧

図表1:「外国人活躍」の指標内項目一覧


出所:パーソル総合研究所(2025)「ニッポンのはたらく地図2025レポート」

都道府県別の外国人活躍ランキング

これらの指標で測定した総合ランキングを概観していこう。

まず上位は、1位・東京、2位・京都、3位・千葉、4位・大阪、5位・愛知となった。これらはいずれも経済規模・教育機関・観光インフラが整った大都市圏であり、外国人との接点が多層的に形成されている点で共通している。

図表2:「外国人活躍」の都道府県ランキング

図表2:「外国人活躍」の都道府県ランキング

出所:パーソル総合研究所(2025)「医療従事者の職業生活に関する定量調査」 を基に筆者作成

東京都は、6指標のうち4項目(外国籍従業員比率、許容度、交流経験、留学生)で全国1位。

経済・文化・教育の中心として、あらゆる形で外国人の活躍が可視化されており、「国際都市」の地位を裏付ける結果となった。

京都府は、観光・文化資産の多さから外国人訪問者との交流が突出しており、「外国人交流経験」「訪日外国人割合」で高順位。オーバーツーリズムの問題もささやかれる一方で「許容度」や「外国籍従業員比率」も一定の水準を維持しており、観光都市としての受け入れ文化と雇用面のバランスが特徴的である。

東京ディズニーランド、成田空港を擁する千葉県は、日本の「玄関口」としての機能が際立つ。「訪日外国人割合」で全国1位なだけでなく、「留学生割合」でも上位を占めており、交通・教育の両面で国際化が進展している。

大阪府は、観光都市としての人気に加え、外国籍従業員比率・許容度も高く、「働く×訪れる」両側面から外国人との接触が多い地域構造が見られる。2025年は万博開催でさらに国際度を増している見込みだ。

愛知県は、「外国人許容度」2位、「外国人従業員比率」16位と、製造業を中心とする産業型の国際化を示す。他都市とは異なり、観光よりも「雇用」と「定住」を通じた外国人活躍が進む地域である。

外国人への「共生」の態度はどう育まれるのか

今後、日本の政策が外国人に対して排斥的な方向に進むのか、寛容なものになっていくかは、この国全体の行く末を占う意味でも極めて重要だ。先ほどのランキングにおいては、日本に外国人が増えることや外国人によるサービスを受けることについての抵抗感の無さを、「外国人許容度」としている。これによれば、許容度が最も高いのは東京で、低い順に秋田(47位)、青森(46位)、岩手(45位)となっている。

こうした外国人への排他/許容といった態度は、どのように形成されるのだろうか。単なる政治的イデオロギーや思想信条ではなく、「排外的な意識」の要因を具体的に知っておく必要がある。例えば、先ほどの許容度指標は、日ごろの生活での外国人との交流経験の多さと弱い正の相関(0.215)が確認できる。一見して、訪日外国人が少なく、過疎化が進む地域ほど、許容度も低い傾向も見られる。

外国人との「接触経験」の多少が態度を形成する

パーソル総合研究所では2023年にすでに、「多文化共生意識に関する定量調査」においてこうした点を詳細に分析している。本分析は、全国10,000人を対象とした調査データを基に、生活空間における外国人への排外意識の態度形成を多面的に検証したものである。

まず、分析で明らかになったのは、排外意識は「学歴」や「所得格差」などの社会的立場では説明できず、むしろもっと個人的な経験と心理特性によって形づくられるという点である。

その上で年齢や語学力、性格傾向などの属性を見ると、排外的傾向が強いのは高齢層・外国語を話せない層、そして性格特性として勤勉性/神経症傾向が高い層であった。そうした層は、秩序や慣習を重視する傾向が強く、変化や異質な存在に慎重になりやすいようだ。逆に、若年層・語学力を持つ層、外向性や協開放性が高い層は、排外意識が低い。

さらに、具体的な外国に触れる経験がどのような影響を及ぼすかを分析したところ、海外旅行、仕事での渡航、国内での語学学習といったいずれの経験も、排外意識と有意にマイナスの関係が見られる。生活圏では、「多くの外国人と関わる」「見かける」「コミュニケーションをとる」といった経験がいずれも排外意識を有意に弱めていた(図表3)。特に「見かける」「話す」といった日常的で自然な接触が心理的抵抗を減らしている点は注目される。

図表3:生活空間における外国人への排外意識に影響する要因

図表3.生活空間における外国人への排外意識に影響する要因

出所:パーソル総合研究所(2021)「多文化共生意識に関する定量調査」

一方で、「接客される」(外国人が店員やサービス提供者として関わる)という一方向的な関係には効果が見られなかった。つまり、共生意識を育むのは「取引的接触」ではなく、相互にやり取りする関係性である。
外国人と「共に働く」「共に学ぶ」「共に暮らす」といった双方向の関わりが、他者への理解を深め、心理的な壁を取り除いていくようだ。

データの限界から因果関係までは特定できないものの、以上の結果を総合すると、接触や学習、交流を通じて「外国人=他者」という境界が相対化され、共生への寛容さが少しずつ形成されている様子が示唆される。

「顔の見えない定住化」を防げ

以上のことからいえるのは、今後の外国人との共生を実現する上で、単なる人の意識を変えるのは「ダイバーシティ」といった理念や啓発ではなく、実際に人と出会い、話し、協働する経験である。つまり、生活の中で積み重ねられる交流経験を社会全体でどう増やしていくかこそが、これからの共生政策の核心課題となる。知識や思想といった抽象的な認識レベルではなく、経験レベルのコミュニケーションや交流を増やすには、就労・生活の両面で交流を支える環境づくりが欠かせない。

こうした点と深く関連するのは、移民政策の議論において指摘されてきた「顔の見えない定住化」の議論だ。これは、外国人労働者が日本に定住しながらも、地域社会から「見えない存在」として存在しているという指摘である。

梶田孝道・丹野清人・樋口直人『顔の見えない定住化―日系ブラジル人と国家・市場・移民ネットワーク―』(名古屋大学出版会, 2005)

だからこそ、共生とは公平性を担保する「制度」だけでも、教科書的な「啓発」だけでもなく、「関係をつくる営み」として再設計される必要がある。

例えば地域では、イベントやお祭り、ボランティア、地域清掃などを通じて、偶発的に出会い、言葉を交わす場を増やすこと。こうした「顔の見える接点」の積み重ねが、孤立を防ぎ、相互理解を育てる最も確かな方法である。「偶発的な出会い」や「継続的な関係」こそが、相互の信頼を育む土壌になるだろう。

そのための基盤として、言語教育と生活支援の拡充もやはり重要な要素だ。夜間・週末の日本語講座、生活情報の多言語提供、住宅・医療・行政アクセスの改善など、生活と交流をつなぐ「共生インフラ」を整備することが、社会参加への第一歩となる。「生活の安定が、雇用と関係の安定を生む」という視点のもと、自治体・企業・地域が協働して取り組むことが求められるだろう。

さらに職場でも、外国人の「孤独」問題は根深いこともパーソル総合研究所の調査では分かっている。異文化理解を促す研修だけでなく、具体的なレクリエーションや対話の場を整備し、外国人と日本人が共に学び合う、協働する関係性を日常の中に根づかせることが求められるだろう。

まとめとして

現在日本では、外国人受け入れの是非をめぐる議論が過熱している。本コラムでは、対立的な言説を越え、外国人との共生がどの地域で、どのような形で進んでいるのかを、パーソル総合研究所が発表した「ニッポンのはたらく地図2025レポート」に基づいて明らかにした。さらに、外国人への排外意識の形成要因や外国人との交流経験の影響を分析し、「共に住む」から「共に関わる」への転換を探った。

共生社会とはきれいごととしての「理念」ではなく、顔の見える関係の総体である。制度の背後にいる一人ひとりが互いの存在を知り、名を呼び合うことでようやく「共に生きる社会」が現実の形をとり始める。

移民の「数」としての増加が、「地域にいるが、顔の見えない」関係として定着していけば、形式的な共生が進んでも、結果的に排他的なムードを育て、断絶が深まりかねない。外国人への排外意識を変えるのは「ネット上の噂」でも「政治思想」でもなく、生活の中で交わる経験であり、そこにこそ共生社会の基盤がある。それを社会としてどう支え、どう増やしていくか——その問いに答えることが、次の時代の共生政策の出発点となるはずだ。

執筆者紹介

  主席研究員 執行役員 シンクタンク本部長 小林 祐児

主席研究員 執行役員 シンクタンク本部長

小林 祐児 Yuji Kobayashi

上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。
NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行う。
専門分野は人的資源管理論・理論社会学。
著作に『職場の対話はなぜすれ違うのか』(光文社)、『罰ゲーム化する管理職』(集英社インターナショナル)、『リスキリングは経営課題』(光文社)、『学びをやめない生き方入門』(テオリア)、『残業学』(光文社)など多数。

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