公開日 2025/03/17
株式会社パーソル総合研究所 取締役/シンクタンク本部 本部長
株式会社朝日新聞社 社外取締役
株式会社東急エージェンシー HRXアドバイザー
スポーツヒューマンキャピタル 代表理事
立教大学大学院 経営学専攻 リーダーシップ開発コース 客員教授 本間 浩輔
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフー傘下入りした後は、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)を歴任。2021年より現職。著書に『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(ダイヤモンド社)など多数。
今、日本は人口減少により労働力が不足すると同時に、技術革新によりビジネスの高度化が進んでいます。企業は採用がますます難しくなり、今まで以上に従業員にクリエイティブな仕事を求めるようになっていくでしょう。そこで最も懸念されることは、この状況下で人々が生き生きと働けているかどうかです。その意味では、当社調査にもある管理職の部下への関わり方や60代の働き方、中でも若手従業員のメンタルヘルス不調の増加は特に注目すべきテーマだと感じています。実際、社会やキャリアの入り口に立つ若手がメンタルヘルス不調になり、サポートも十分受けないまま会社を辞めているケースが、他の年代に比べて多い現状があります。
人事や経営に携わる者として、若手のメンタルヘルス不調がこれだけ増えている事実を反故(ほご)にしてはならないと強く思います。しかし、最近、働く人々に対する企業のまなざしに優しさがなくなっているように感じ、気掛かりです。労働力不足を背景に、「企業経営のため、働く人の不足は困る」「少子化は社会保障が機能しなくなるため問題だ」といった議論が多く聞かれますが、こうした議論は端緒においてすでに誤りなのではないでしょうか。
かくいう私もかつては、企業は競争に勝つことに意味があり、そのために人事があるという考えに立っていました。しかし、人的資本経営への注目が高まってきた頃から、経営や人事としての哲学的に、人を企業のもうけや経済成長のために《使う》という考え方に偏ることは果たしてどうなのか、と思うようになりました。これからの経営というものを考えたときに、利益を上げる企業のみが評価されるかは疑問です。もちろん、利益が出ない企業は働く人にとっても魅力がないことは確かです。健全な利益の追求、人が幸せになるために健全に働けるという企業の在り方は、今の資本主義の中では難しいかもしれませんができないわけではないと思うのです。そして、そのためには人に対する企業の向き合い方は変わっていく必要があります。企業のパーパスや戦略が多様であるように、人に対する考え方も多様になっていく。これからは、働く人に対する企業の考え方・ポリシーが競争の源泉のひとつとなり、働く人から選ばれるポイントになってくるかもしれません。
当社には、こうしたポリシーの重要性を長年主張し続けてきた研究員がいます。また、人事コンサルタントとして専門性を築いてきた研究員もいれば、他の専門分野から集った研究員もいて、それぞれがオンリーワンの存在です。総合研究所とは、いろいろな人がいるからこそ「総合」と呼ばれます。多様な研究員たちが、積極的に外部との交流を持ちながら、特定の企業の利益のためではなく、日本を元気にするために研究し、世の中に向けて提言していく。パーソル総合研究所は、そのようなユニークな存在であると自負しています。皆さまには、当社の調査研究を活用していただくとともに、さまざまな形で関わり合っていただけるとうれしい限りです。皆さまとの関わりを通して多様性をさらに広げ、今後AIが解けないような課題にも解を見いだせるような、力強い組織を目指していきたいと考えています。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。
調査研究要覧2024年度版
海外のHRトレンドワード解説2024 - BANI/Voice of Employee/Trust
高齢化社会で求められる仕事と介護の両立支援
男性育休の推進には、前向きに仕事をカバーできる「不在時マネジメント」が鍵
男性が育休をとりにくいのはなぜか
男性の育休取得をなぜ企業が推進すべきなのか――男性育休推進にあたって押さえておきたいポイント
調査研究要覧2023年度版
人的資本経営を考える
人的資本情報開示のこれまで、そしてこれから
なぜ、日本企業において男性育休取得が難しいのか? ~調査データから紐解く現状、課題、解決に向けた提言~
《インテグリティ&エンパシー》いつの時代も正しいことを誠実に 信頼されることが企業価値の根源
《“X(トランスフォーメーション)”リーダー》変革をリードする人材をどう育成していくか
人的資本情報開示にマーケティングの視点を――「USP」としての人材育成
男女の賃金の差異をめぐる課題
内部通報を利用して人的資本のリスク管理の開示充実を
有価証券報告書を通した人的資本のリスクの開示状況と課題
エンゲージメントとは何か――人的資本におけるエンゲージメントの開示実態と今後に向けて
女性管理職比率の現在地と依然遠い30%目標
企業と役員の人的資本に対するコミットメントに整合性を
有価証券報告書を通した人的資本のガバナンスの開示状況とその内容
有価証券報告書、ISSB、TISFDから考える人的資本情報開示のこれから
女性役員比率30%目標から人的資本経営を見直そう
役員報酬設計を通して示す人的資本経営へのコミットメント
株主総会の招集通知から見えた、人材に関する専門性不足
男性育休に関する定量調査
先行対応企業の開示から考える人的資本に関する指標の注目ポイント
内部通報制度は従業員に認知されているか
有価証券報告書による人的資本情報開示 企業の先行対応を調べる過程で得た3つの気づき
人的資本情報開示に先行対応した企業の有価証券報告書から何が学べるか
真に価値のある「人的資本経営」を実現するため、いま人事部に求められていることは何か
企業の競争力を高めるために ~多様性とキャリア自律の時代に求められる人事の発想~
HITO vol.19『人事トレンドワード 2022-2023』
目まぐるしく移り変わる人事トレンドに踊らされるのではなく、戦略的に活用できる人事へ
2022年-2023年人事トレンドワード解説 - テレワーク/DX人材/人的資本経営
地に足のついた“独自の”人的資本経営の模索を
人的資本経営は人事によるビジネスへの貢献の場 リーダーの発掘・育成の環境を整え企業成長を
人的資本経営は企業特殊性を最大限に生かす事業戦略と人材戦略を
人事は経営企画、財務、事業企画と共に 「持続的な企業の成長ストーリー」を語ろう
特別号 HITO REPORT vol.13『動き出す、日本の人的資本経営~組織の持続的成長と個人のウェルビーイングの両立に向けて~』
人的資本情報の開示に向けて
人的資本経営と情報開示を巡る来し方と行く末 ―ウェルビーイング時代の経営の根幹「人」へのまなざし―
~サイボウズの人的資本経営~ 企業理念やポリシーをいかに開示できるか 型にはめるより伝わりやすさを重視
~ポーラの人的資本経営~ 企業は人の集合体。ポーラに脈々と伝わる「個を大切にするDNA」でサステナビリティ経営を推進
《人的資本経営》「人への投資」が投資判断に影響する 今こそ企業存続への正しい危機感を
人的資本情報開示に関する調査【第2回】~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~
会社と社員のパーパスを重ね合わせ エンゲージメントの向上を通じた人的資本経営の高度化を目指す
人的資本経営を“看板の掛け替え”で終わらせてはいけない 個人の自由と裁量をどこまで尊重できるかが鍵
CFO/FP&Aの観点から考える CHROとCFOがCEOを支える経営体制の確立と人材育成の方向性
人的資本経営は「収益向上」のため 人事部はダイバーシティ&インクルージョンの推進から
~KDDIの人的資本経営~ 投資家との対話は学びの宝庫 人事は投資家と積極的に相対しよう
自社の人材戦略に沿ったストーリーあるデータを開示 人材に惜しみなく投資することで成長するサイバーエージェントの人的資本経営
経営戦略と連動した人材戦略の実現の鍵は人事部の位置付け ~人的資本経営に資する人事部になるには~
人的資本の情報開示の在り方 ~無難な開示項目より独自性のある情報開示を~
人的資本経営の実現に向けた日本企業のあるべき姿 ~人的資本の歴史的変遷から考察する~
人的資本情報の開示で自社の独自性を見直す好機に~市場は人材や組織の成長力を見ている~
人材版伊藤レポートを読み解く
人的資本情報やその開示に非上場企業も高い関心 自社の在り方を問い直す好機に
《人的資本経営》多様な個を尊重し、挑戦を促すことで企業発展につなげたい
人的資本経営の実現に向けて 人材版伊藤レポートを概観する
《人的資本経営》対話が社員の心に火をつける 時間という経営資本を対話に割こう
人的資本情報開示に関する実態調査
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