公開日:
パーソル総合研究所「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」
【共通条件】 全国20~59歳の正社員、農業・林業・漁業・鉱業は除く
<2018年調査※と同設計>※パーソル総合研究所・中原淳 「第二回 長時間労働に関する実態調査」(「比較する先行調査の概要」参照)
<2019年調査※と同設計>※パーソル総合研究所 「中間管理職の就業負担に関する定量調査」(「比較する先行調査の概要」参照)
※2019年調査の性年代構成比に合わせて割付
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2026年 2月27日-3月4日
株式会社パーソル総合研究所
パーソル総合研究所・中原淳 「第二回 長時間労働に関する実態調査」
調査対象者の設定は、2026年「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」の対象者1、対象者2と同じ
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2018年3月
株式会社パーソル総合研究所/立教大学教授 中原淳
パーソル総合研究所 「中間管理職の就業負担に関する定量調査」
ト
調査対象者の設定は、2026年「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」の対象者3と同じ
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2019年3月
株式会社パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/middle-management/
本調査における「働き方改革」は、主に残業削減に関する取り組みを指す。国が推進する働き方改革においては、柔軟な働き方の促進や、同一労働同一賃金なども包含されるが、本レポートでは企業の残業削減施策に関する成果や副作用を整理している点に留意されたい。
2026年の直近1カ月の残業時間は、メンバー層・上司層ともに2018年よりも減少。メンバー層は6.7時間、上司層は9.0時間減少しており、上司層の減少幅のほうが大きい。
メンバー層の月間残業時間の変化を性年代別に見たところ、特に男性20代(-10.4時間)や男性30代(-9.3時間)の残業時間の減少が顕著。一方、最も減少幅が小さいのは男性50代であった(-3.4時間)。
上司層の月間残業時間の変化は、男性の減少幅が大きく(-9.4時間)、職位別では上位になるほど残業時間の減少が顕著であった。
残業が減った理由として最も多いのは、メンバー層・上司層ともに「労働時間の管理が厳格になった」。次いで、メンバー層では「残業が原則禁止もしくは事前の承認が必要になった」が続く。一方、上司層では「役職・階級が変わった」から残業が減ったという回答や、「業務プロセスの見直し」「DX化・ITツール導入」といった生産性向上に関する理由が高い傾向となった。
働き方改革は、残業減少の他にどのような成果があったのか。まず、バーンアウト(燃え尽き症候群)※の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも減少傾向であることが確認された。
※
参考:久保真人(2007)「バーンアウト(燃え尽き症候群)-ヒューマンサービス職のストレス」『日本労働研究雑誌』 No.558,pp.54-64.
次に、平日の睡眠時間の変化を確認したところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも睡眠時間が増えている傾向が確認された。1カ月換算で、メンバー層では5.3時間、上司層では4.3時間睡眠時間が増えている計算となる。
さらに、人生満足度※の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも上昇傾向であることが確認された。
※
Diener, E., Emmons, R. A., Larsen, R. J., & Griffin, S. (1985). The Satisfaction with Life Scale. Journal of Personality Assessment, 49(1), 71–75.
働き方改革の成果が見られる一方、職場に生じたしわ寄せも確認される。
企業の働き方改革について、従業員側は「管理の厳格化(時間管理が厳しくなった)」や「仕事の過密化(短時間で成果を出さないといけなくなった)」を感じており、結果として「業務の無機質化(業務をこなすだけになった)」や「関係の希薄化(職場の一体感が失われた)」につながっている可能性が示唆される。この傾向は上司層ほど強く、このような職場に生じたしわ寄せは「働き方改革の歪み」ともいえる。
この「働き方改革の歪み」が強い組織ほど、社員が仕事に没入・挑戦する機会を妨げている傾向が確認された。また、「働き方改革の歪み」が強い組織ほど、上司がマイクロマネジメントを行いやすくなる可能性も示された。
実際、「仕事への没入」機会や、「仕事への挑戦」機会の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも減少傾向。また、上司が部下に対して行うマイクロマネジメントは、2019年より増加傾向であることが確認された。
働き方改革前後におけるメンバー層(成長志向あり層)の成長実感の変化を見たところ、2018年と比較して2026年は増加傾向にある。なお、メンバー層が感じる「成長」の背景には、仕事への「没入」や「挑戦」を起点とする【自律的成長】と、上司からのマイクロマネジメントを介して生じる【補助輪付き成長】の2パターン存在することが確認された。
マイクロマネジメントと成長実感の関係性を見たところ、メンバー層はマイクロマネジメントを受けるほど「自身の成長」を実感する傾向にある。その一方で、上司層はマイクロマネジメントを行うほど「部下の育成不足」を強く実感していることが確認された。
「自律的成長」層と「補助輪付き成長」層の人事評価の傾向を比較すると、「自律的成長」層が高評価を得やすいのに対し、上司からのマイクロマネジメントを介して生じる「補助輪付き成長」層は平均的な評価にとどまるという違いが確認された。
働き方改革における2つの副作用として示した「職場の低体温化(社員が仕事へ没入・挑戦する機会の低下など)」「部下の成長錯覚化(部下が感じる成長と、上司が求める成長の乖離)」を乗り越えるには、その背景にある「仕事への没入」や「仕事への挑戦」を促していく施策が重要と考えられる。
そこで、仕事への没入・挑戦を高める要因をそれぞれ分析し、職場の「熱さ」を取り戻すための方策を探った。以下に、職場の「熱さ」を取り戻すポイントを、次の4つの要因に注目して分析した。
自分の仕事に意義や重要性がないと感じるなどの「仕事の無意味さ(ブルシット・ジョブ※感)」を測定し、多変量解析を行った。その結果、仕事の無意味さが、仕事への没入・挑戦をどちらも阻害する傾向が確認された。なお、半数以上の社員が仕事の無意味さを感じている傾向も確認されている。
※
グレーバー, D.(2020)『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』(酒井隆史ほか訳)岩波書店
仕事の無意味さ(ブルシット・ジョブ感)を抑制するには、定型的な作業をツールに任せ、人間が判断・思考する業務に集中できる時間を捻出する取り組み(「DXによる省力化」)などが有効であった。また、仕事への没入には、「何時間働くか」ではなく「どのアウトプットを出せば完了か」を明確に握れている状態(「成果基準の明確化」)、仕事への挑戦促進には、労働時間にかかわらず、能力や意欲があれば難易度の高いプロジェクトにアサインする姿勢(「能力・意欲重視のアサイン」)などが有効であった。
上司マネジメントが仕事への没入・挑戦の促進に与える影響を分析した結果、仕事への没入には、「キャリアへの期待の明示」や「平等な情報提供」が有効であり、挑戦の促進には「キャリアを相談できる関係構築」や「公平な評価の徹底」が有効であった。
他にも、仕事への没入・挑戦の両方に共通して、組織の目標やビジョンを上司自身が信じていることや、部下への十分なフィードバックも有効であることが確認された。
仕事への没入や挑戦に対して、目標管理の運用がどのような影響を及ぼすかを検証した。分析の結果、勤務態度や取り組み姿勢、個々人のもつ能力の発揮状況が重視される「プロセス重視」と、個人と組織の目標の紐づきや、上司と話し合って目標を決めているなどの「目標の連動」、何でも数値化して目標を管理しない「脱・数値依存」の各要素が統計的に有意な関連を示すことが明らかになった。
本調査では、働き方改革が本格化した時期を起点とする変化を、客観的なデータを基に整理し、先行調査との比較に基づき、残業時間の変化とその要因、現場への影響を定量的に確認した。
長時間労働是正の面においては、残業時間の短縮や睡眠時間の増加が見られるほか、バーンアウト傾向の改善、さらには人生満足度の向上も確認され、働き方改革は着実な前進を遂げてきたことを示した。
一方で、見過ごせない副作用も表面化している。厳格な労働時間管理と短期間での業績達成を求める圧力が強まった結果、「目の前の業務の効率的遂行」に社員の意識が向きやすくなっているのだ。そのため、試行錯誤を通じて質を高める余地や、周囲との協力の機会は縮小し、仕事への没入感や新たな挑戦の場も減少しつつある。
本レポートで示す「職場の『低体温』化」とは、こうした業務の無機質化や関係の希薄化の帰結と言えるだろう。表面上に大きな混乱がなくとも、仕事に対する熱量や挑戦行動は少しずつ薄れ、組織の競争力を支える土台が静かに揺らぐ「地盤沈下」として捉えることもできる。
さらに注目すべき課題として、上司とメンバーの間に生じる「育成・成長の捻じれ」がある。限られた時間の中で成果を出すことを求められる上司は、マイクロマネジメントに傾きやすく、「部下育成が十分でない」という認識を持つ。他方、メンバー側には、「指示業務の完遂」をもって成長と捉える意識が広がりつつある。今後、企業はこうした育成問題への対応も求められる。
労働力不足が深刻化する昨今において、「労働時間の削減」が「職場の活力低下」につながる構造は解消しなければならない。短い労働時間の中で職場の「熱さ」をいかにして生み出すか――この問いに正面から向き合い、職場の設計を見直すことが、働き方改革における次の段階といえる。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」
THEME
CONTACT US
こちらのフォームからお問い合わせいただけます
{{params.not_modal_movie| }}
{{params.modal_movie| }}