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パーソル総合研究所「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」
【スクリーニング調査対象者】
全国 12,176名
うち、学生(中学生を除く 15~25歳男女/就業の有無は問わない)1,041名
【本調査対象者】
全国の就業者 計5,000名
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2025年 5月29日 – 6月3日
株式会社パーソル総合研究所
「ウェルビーイング」という用語の認知度を就業者に確認したところ、27.1%が「意味を知っている」と回答した。2023年同時期に実施した調査での認知度(15.9%)と比較して、11.2pt増加している。また、「聞いたことがない」割合も48.1%と半数を下回る。
用語の認知度について近似する概念と比較したところ、先行して普及している「エンゲージメント」の認知度(24.6%)を上回っており、一定程度ビジネスパーソンの間で定着しつつある傾向がうかがえる。
ここからは「ウェルビーイング」の中でも「職業生活ウェルビーイング」に焦点を当てた調査結果を紹介する。
職業生活ウェルビーイングとは
自分の仕事に満足し、はたらく事を通じて、社会とのつながりや貢献、喜びや楽しみを感じることが多く、怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態。また、そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態。
なお、職業生活ウェルビーイングについては、幸福感と不幸感とを弁別し、「はたらく幸せ実感」「はたらく不幸せ実感」の2つの評価指標を用いて計測した※。また、2つの評価指標の説明変数(要因)として、「はたらく人の幸せ/不幸せの7因子」尺度を用いた。職業生活ウェルビーイングはこの7つの因子の状態を良好に保つことによって高めることができる。
※
幸福感と不幸感の弁別:主観的幸福感(subjective well-being : SWB)の計測に際しては、肯定・否定の感情状態を一つの双極連続体(とても幸せ―とても不幸)にまとめず、ポジティブとネガティブを別々に測ることを推奨する。(OECD.OECD Guidelines on Measuring Subjective Well‑being (2025 Update),p.20,2025年10月3日)
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井上 亮太郎・金本 麻里・保井 俊之・前野 隆司(2022).職業生活における主観的幸福感因子尺度/不幸感因子尺度の開発 エモーション・スタディーズ,8, 91‒104.
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「はたらく人の幸せの7因子(はたらく幸せ7因子)/はたらく人の不幸せの7因子(はたらく不幸せ7因子)」と尺度は無償公開しています。https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/well-being/
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「はたらく人の幸せ/不幸せ診断」では、無償で診断ができます。https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/well-being-survey/
職業生活ウェルビーイングの実態について、「はたらく幸せ実感」「はたらく不幸せ実感」を経年で見ると、2025年(6月時点)は、2020年(2月)と比較して「(はたらく事を通じて)幸せを感じている人」の割合が3.1pt低下し40.8%、かつ、「幸せを感じていない人」の割合が7.9pt増加し31.7%だった。また、「(はたらく事を通じて)不幸せを感じている」人の割合は2020年と比較すると2.3pt増加し22.5%だった。これらの事から、はたらく事を通じた主観的な幸福感/不幸感は、やや悪化傾向にあることがうかがわれる。
はたらく事を通じた主観的な幸福感/不幸感の悪化傾向はどのような影響をもたらすのだろうか。そこで、親(就業者)のはたらく姿に対する子ども(学生)の印象と、学生のはたらくイメージ(ポジティブ/ネガティブ項目)との関連を分析した。結果、親のはたらく姿が「幸せそうに見える」学生ほど、はたらく事に対してポジティブなイメージを持っており、「幸せそうに見えない」学生ほどネガティブなイメージを持っていた。
本分析は相関であり因果関係ではないものの、中でもはたらく事が「楽しい」イメージでは、35.2ptの差が生じており、家庭内での親のはたらく姿の印象が、子どもの労働観やキャリア観の形成に影響を与え得ることが示唆される。
では、次世代の労働観やキャリア観の形成に影響を与え得る就業者の職業生活ウェルビーイングを高めるにはどうすればいいのか。
本調査では、ウェルビーイングを大事にしている就業者ほど、自分のウェルビーイングの要因(どのようなことに幸せ/不幸せを感じるのか)を理解しており、日頃の職業生活において意識的に工夫をしていることが分かった(報告書32ページ参照)。そこで、ウェルビーイングであることを求め能動的に行動することを「ウェルビーイング・クラフティング」と称することとし、職業生活におけるウェルビーイング・クラフティングを促進するメカニズムを検証した。
結果、はたらく幸せ実感の高い人ほど、ウェルビーイングを追求し、工夫している傾向が確認された。本分析は因果を断定するものではないが、幸せを感じず、不幸せを感じている社員は「あきらめ」や「無関心」に陥るリスクがあり、能動的な変革行動が期待しにくい。
職業生活におけるウェルビーイング・クラフティングを促進するメカニズムを検証した結果、図表6のような循環構造が確認された。
直近の①「はたらく幸せ実感」を起点として、②「はたらく幸せを重視する価値観」が醸成され、③「自分のはたらく幸せの理解」が深まる。価値観醸成、幸せの源泉の理解が深まることで④「幸せにはたらくための工夫(クラフティング)」が促進され、その結果更なる①「はたらく幸せ実感」が獲得される。
すなわち、持続的な職業生活ウェルビーイングの実現には、「ウェルビーイングが大事だ」と理念を説くだけでは不十分で、日常の仕事の中で実際にはたらく幸せを得られる体験機会を設計・実装することが重要となる。
職業生活においてより良い状態を自ら作り出すためには、自分のウェルビーイングにとって影響度が高い要素を理解し、求めて工夫することが肝要だ。しかし、自分のウェルビーイングの源泉(要因)を適切に理解できている人は多くはない。
職業生活ウェルビーイングの主要因となる「はたらく幸せ/不幸せの7因子」の重視度を見た。分析の結果、「リフレッシュ因子」を最も重要視する(1位に挙げる)人が26.8%と多かった。
リフレッシュ因子を1位に挙げた就業者は、次点で「オーバーワーク因子(過重負荷の回避)」を重視しており、それ以外の因子は相対的にあまり重視していなかった。特に、はたらく幸せ実感との相関が強い「他者貢献因子」や「自己成長因子」は、過小評価される傾向がある。このように、自分が注目する要因が持つ影響力を実際以上に重要視してしまう傾向を「フォーカシング・イリュージョン(焦点化幻想)※」という。上記の結果から、「はたらく幸せ/不幸せの7因子」の重視度においても、フォーカシング・イリュージョンの可能性が示唆されたといえよう。
※
フォーカシング・イリュージョンの詳細は報告書36ページ参照
リフレッシュ因子はウェルビーイングのために重要ではあるが、仕事に追い立てられないよう段取りをし、他者貢献因子や自己成長因子など他の因子にも目を向けることも大事にしたい。
自分のウェルビーイングの源泉(要因)を理解したとしても、その要因が変化することも考えられる。そこで、就業者に対し、これまでの職業生活において幸せに感じる事柄(要因)が大きく変わったことがあるかを聞いた。その結果、就業者の24.4%がはたらく幸せ/不幸せの要因が「大きく変わった」と回答。男女の性差はほぼなく、変化の自覚は30代以上で増加する傾向が見られた。
変化のきっかけは、「体調悪化・病気」「転職・独立」「ハラスメントなどによるストレス」「結婚・出産・育児」「仕事上の失敗・行き詰まり」などの人生上の出来事が上位にあがった。もっとも多かったのは「年齢・経験を重ねることで自然と変わった」(31.2%)であったが、これは、特定の体験に限らず、様々な体験の蓄積が複合的に影響しているものと考えられる。
自覚の有無にかかわらず、ライフステージ(加齢)/職業経験の蓄積に伴いウェルビーイングの源泉(要因)には個人差があり、かつ、時と共にトランジション(変移)することを示唆している。
さらに、どの年齢で何が変わったかを、はたらく幸せ/不幸せの7因子の観点で聞いた。その結果、20代・30代で「リフレッシュ因子(回復・休息)」、「オーバーワーク因子(過重労働負荷)」や「評価不満因子(報われなさ)」をあげる割合が多かった。「リフレッシュ因子」と「オーバーワーク因子」は、年齢とともに低減する。一方、「評価不満因子」は40代以降も高止まり、世代を超えた課題だといえる。
今回の調査では、就業者が職業生活をより良い状態で過ごすための3つのポイントが確認された。
今日の学生が抱く「はたらく事」のイメージには、「自由になるお金を得る」「趣味や欲しいものを買う」「生活のかて」といった経済的側面が最も多くあがった。また、「夢や目標実現」「社会貢献」「成長」といった前向きなイメージも上位にあがるが、「世間体のため」「忙しい」「人間関係が大変」といった消極的なイメージもまた半数程度が抱いていた。
労働観とは、これまでの経験と学習の結果であって、その影響要因は多様である。本調査では、はたらく親の姿が子どもの労働観に影響を与え得ることが示唆された。
職業生活においてより良い状態を自ら作り出す姿勢は大事にしたい。そのためにも、自分のウェルビーイングにとって影響度が高い要素を理解し、求めて工夫することが肝要だ。しかし、自分のウェルビーイングのために今、何を大事にすべきかを適切に理解できている人は多くはない。
本調査では、仕事を離れてリフレッシュする事が最重要だと考える人の割合が多かったが、フォーカシング・イリュージョン(焦点化幻想)として実際よりも過大評価している可能性が示唆された。リフレッシュすることを疎かにしてはいけないが、それだけでは得難い喜びや楽しみもある。まずは、当人が仕事を通じて自身の成長や役割を自覚する喜び、他者に貢献することで得られる喜びなど、実体験を通じて味わうことが重要だ。
一人ひとりのウェルビーイングの源泉(主要因)は異なり、人生におけるインパクトの大きい出来事の発生やライフステージ、また明確な特定事象の自覚がなくとも加齢や経験の蓄積により変化し得る。この背景には、慣れや飽和といった快楽適応、人生の目的・目標変更に伴う物事への意味づけの変化などが考えられる。そのため、現在の自分が置かれている状態と追求すべきウェルビーイングの主要因については、定期的に振り返ることが有効だ。

上記で紹介した「はたらく人のウェルビーイング実態調査2025」の調査結果をはじめ、これまで蓄積してきたウェルビーイングに関するパーソル総合研究所の調査結果と、学術的知見を基に、現場において散見される10の疑問に答える形で、基本的な考え方と実務適用の視点を整理しました。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」
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