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パーソル総合研究所 「賃上げと就業意識に関する定量調査」
企業が報酬設計を検討する際の示唆を得るべく、賃金と就業意識の関係性、および、就労者の報酬に関する意識を定量的に把握するための調査を行った。
■社会人:20-64歳の正社員 計2500名
内訳は以下の通り ※労働力調査(2024年)における正規雇用者の性別・年代構成に準拠

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2025年 6月27日 – 7月10日
株式会社パーソル総合研究所
2024年の年収を前年と比較すると、年収が増えた人は51.9%と約半数。3%以上の増加があった人は41.3%。20~30代の若年層であっても、4割程度は年収が上がっていない。
結果として、物価上昇(2024年の消費者物価指数CPI(持家の帰属家賃を除く総合)における前年比3.2%*1)を上回る賃上げが得られていない人が過半数。
※1
総務省「消費者物価指数(CPI)」 ※e-statより、持家の帰属家賃を除く総合指数 前年比(1948年~最新年)データ参照
2024年の年収が上がった理由のトップは「賞与・ボーナスの増額」。次いで「ベースアップ」 。賞与の一部には個人評価が反映されているものの、全体としては組織要因の影響が相対的に大きい傾向が見られる。
勤務先において、2023年以降(2023~2025年のいずれかの年)に初任給の引き上げがあった人は64.7%、ベースアップがあった人は69.1%(「わからない」と回答した人を除くといずれも約9割)。
※
参考:厚生労働省(2024)「令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」において、一般職についてベアを行った・行う企業の割合は、従業員5,000人以上で78.5%、1,000~4,999人で76.8%、300~999人で58.8%であることから、今回の数値が高いわけではない。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/dl/10.pdf
2023年以降、調査時期(2025年)までの間に勤務先において、「退職金の月給化(退職金の一部または全部を前倒しで毎月の給与に上乗せすること)」があった人は27.7%、「賞与の月給化(賞与割合を減らして、毎月の給与に組み込むこと)」があった人は32.8%で、それぞれ約3割(「わからない」と回答した人を除くと4~5割弱)。
「その他給与制度の改定(初任給・ベースアップや賞与・退職金の月給化以外の給与制度改定)」があった人は41.7%(「わからない」と回答した人を除くと約6割)。
自社でベースアップがあった場合、ベースアップによってモチベーションが向上した人は48.6%と約半数。一方で、自社でベースアップがあっても約半数ではモチベーション向上につながっていない。
ベースアップによるモチベーションの変化を年代別に見ると、モチベーションが向上した人の割合は、 20代で58.8%。年代が高いほど、モチベーションが向上した人の割合が低い。
今の自分の給与を未来や過去の給与と比較(時間軸:「タテ比較」)、および、自分の給与の相対的低さについての社内外の人との比較(集団軸:「ヨコ比較」)の観点で分析を行った。
自分の給与に対する「未来不安」「過去からの停滞」「社内外との比較不安」が継続就業意向やワーク・エンゲイジメントに影響しているのかを見ると、時間軸での比較、特に、将来の給与に希望を持てない「未来不安」が、継続就業意向やワーク・エンゲイジメントの低さと関係している。
将来の給与に希望を持てない「未来不安」による継続就業意向やワーク・エンゲイジメントへの影響について年代別に見ると、継続就業意向への影響は20~40代、ワーク・エンゲイジメントへの影響は30~40代で特にマイナスに影響している(詳細は報告書37、39ページ参照)。
「未来不安」の影響が強く見られる40代以下の層において、3年後の給与見込みと継続就業意向との関係を見た。3年後の給与が「上がる」と思っている人の継続就業意向は高く、「下がる/変わらない」と思っている人の継続就業意向は低い。
3年後の給与が「変わらない」見込みの場合、継続就業意向は27.0%であり、「下がる」見込みの場合の31.5%と、ほぼ同レベルにとどまる。すなわち、給与が変わらないことは、実質的に継続就業意向が下がることと同等に捉えられている。
将来の給与水準のうち、いつ時点の給与水準のことを最も気にしているかを聞いたところ、5年以内の比較的近い未来を最も気にする人が約半数を占める。50~60代は、「1~2年後」の近い将来の給与水準を最も気にしている。
給与が上がらない場合の行動として多いのは、「支出見直し(36.5%)」「投資(28.2%)」「転職(26.0%)」。昇進・昇格やスキルアップといった社内での躍進を目指すよりも、社外での手段を検討する人の方が多い。年代が若いほど転職が選択肢になりやすく、 20代では38.3%が転職を検討する。
給与への不安がある中で、給与以外でどのような要素が継続就業意向やワーク・エンゲイジメントと関係するかを分析した。休みのとりやすさや時間外労働の削減、フレックスタイム制や中抜け制度などの勤務時間の柔軟性といった「時間とのバランス」、および、景気・業績による見直し等の給与の調整方針の透明性や他社・業界水準との比較情報の提示といった外部比較水準の透明性、目標の透明性といった「納得性とのバランス」が特に継続就業意向やワーク・エンゲイジメントとプラスに関係している。
具体的にどのような要素が継続就業意向やワーク・エンゲイジメントに影響しているかを年代別に見た。
継続就業意向に影響する要素は、20代では給与の「決定方針の透明性」、40代では「昇進・昇格の透明性」がTOP3に入ることが特徴。20~30代では、「昇進・昇格の透明性」は関係していない。
ワーク・エンゲイジメントに影響する要素は、20代や40代では、給与の「決定方針の透明性」、60代では給与の「調整方針の透明性」が関係していることが特徴。「昇進・昇格の透明性」はワーク・エンゲイジメントと関係していない。
インフレが進む中、給与の現状維持は実質的な減給と同等に捉えられる。今回の調査結果からは、20代では給与が変わらない場合、約4割が転職を検討することが明らかになっており、人材流出のリスクが大きいことが懸念される。こうした状況において、離職防止や仕事への前向きな関与の維持に重要なのは、他社や業界との横並び(ヨコ比較)ではなく、自社の給与の未来展望というタテ比較である。特に40代以下では、将来の給与に対する不安が継続就業意向やワーク・エンゲイジメントの低さと密接に関わっており、この不安を放置すれば企業の持続的成長を阻害しかねない。
したがって企業には、給与の未来展望を描けるよう自社の給与決定・調整方針を明確に示した上で、非金銭的報酬も含めたトータル・リワードによる報酬設計を行うことが求められる。その上で、従業員の将来不安を軽減し、定着を支えるためには、賃上げの伝え方・見せ方にも配慮する必要がある。こうした考え方を具体的に実践する上では、以下の3つの視点を重視することが重要である。
今回の調査では、“給与が変わらない”層でも離職リスクが高まる傾向が確認された。特に、近い将来、直近5年以内の給与の伸びが重視されている。したがって企業は、給与の現状水準や将来の昇進による昇給だけでなく、この先数年で給与が上がっていくという期待を従業員に持たせる経営判断が重要である。横並びで他社と比較して「いまの水準が妥当か」を問うことや、将来の昇進可能性でモチベートすることではなく、「数年間で給与がどのように伸びるか」を業績と結びつけて明示する姿勢が求められる。
給与を「どこと比べて・なぜ・どのように」決めるのかを従業員に明示することが不可欠である。特に、給与に関する方針の明確化および継続的な情報発信は、従業員の納得感を高め、将来の処遇に対する理解を促し、主体的なキャリア形成を支援するための重要な基盤となる。現状では、これらの取組みを実施している企業は4割未満にとどまっており、今後は各企業における取組みの導入・強化が望まれる。右肩上がりの給与とデフレ環境の下では報酬の不透明さも許容されてきたが、インフレと給与フラット化が進む現在、給与の決定・調整方針を明示し、確実に実行することが離職防止の鍵である。
給与の伸びが見込みにくい時代においては、時間とのバランスを《報酬の一部》と捉える視点が求められる。給与の伸びが見込みにくい場合、従業員が働きやすさを求めるのは合理的である。したがって、休暇取得の容易性や時間外労働の削減といった労働負荷の軽減を進めることが、継続就業意向を高める有効な手段となる。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「賃上げと就業意識に関する定量調査」
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