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パーソル総合研究所 「人事部トレンド定量調査2026」

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2026年 3月4日 – 3月16日
株式会社パーソル総合研究所
企業の経営課題は「人材の確保・採用競争への対応」が53.9%で最多。次いで「人材育成・リスキリング・最適配置(45.3%)」「DX・AIを活用した業務変革・新たな価値創出(38.2%)」「人材高齢化・組織の硬直化への対応(37.7%)」「組織風土改革・エンゲージメント向上(29.4%)」と続く。人材確保だけでなく、配置・育成・デジタル活用まで含めて、人と組織の変革が経営課題の中心になっている。
人事の課題は「従業員満足度・エンゲージメントの向上(36.0%)」「最適な人員配置(35.7%)」「従業員の定着/離職防止(35.6%)」が上位に挙がった。人材を確保するだけでなく、既存人材の活躍・配置・定着をどう高めるかが、人事課題の中心になっている。
人事の課題を2021年調査と比べると、「メンタルヘルス対策」「長時間労働の是正」「従業員の定着/離職防止」などが大きく増加している。既存人材が定着し、健康に活躍し続けられる状態をつくるという課題へ重心が移っている。
人事部が主導・関与する施策は「新卒採用」「中途採用」「人事考課・評価の調整」の領域で高い。一方、「DX・デジタル化・AI活用の推進」「経営戦略・事業戦略の策定」「組織戦略の策定」では関与が少なく、人事の主導領域は実務・制度運用に偏っている。
人事部の主導領域が実務・制度運用に偏る背景には、人事部の内部課題がある。「専門性不足」が45.2%、「人員不足」が44.6%と高く、「攻めより守り重視」も39.7%に上る。「企画構想力の低さ」や「部門内で共通するビジョン・目的」の不明確さにも課題があり、戦略機能を高める前提となる体制整備が十分ではないことが分かる。
では、人事部が戦略的にパフォーマンスを発揮するためには、どのような要素が必要なのか。本調査では「人事部の戦略的パフォーマンス」について、必要な人材を量・質の面で確保できているなどの「人材を通じた事業戦略への貢献性」と、人事ポリシーが明確で、各施策が一貫して運用されているなどの「人材マネジメントの戦略性」の2側面から捉えた。その上で、パフォーマンスがどのようなことに関係するのかを確認した。また、パフォーマンスの向上に寄与する要素・阻害する要素を抽出した。
まず、「人事部の戦略的パフォーマンス」と財務パフォーマンス(売上高変化、利益率変化)の関係を見ると、正の関係が見られた。また、人事部の戦略的パフォーマンス高群は低群と比べて、売上高・利益率ともに増加企業の割合が大きく上回ることも確認された。
次に「人事部の戦略的パフォーマンス」にポジティブに影響している要素を多変量解析したところ、職務記述書が多くの職務について整備されているなどの「職務と処遇」、社内のキャリアパスが明確に示されているなどの「キャリアと異動配置」、雇用形態や勤務形態の変更が柔軟に行えるなどの「働き方」の領域がポジティブに影響していた。
この結果を踏まえ、「人事部の戦略的パフォーマンス」の向上に重要な要素を5つにまとめ、人事と従業員の2つの観点で整理した。
人事の観点
1.職務範囲の脱・属人化:仕事と人材要件の対応関係を明確にする
2.処遇の市場化:市場と貢献に応じて報酬・評価に差をつける
従業員の観点
3.自律的キャリア選択:個人が主体的にキャリア機会を選べる
4.社内/外の雇用流動化:雇用形態・勤務形態・外部副業の自由度を高める
人事と従業員に共通
5.タレントデータの一元化:人材情報を統合し配置判断に活用していく
一方で、「人事部の戦略的パフォーマンス」にネガティブに関連する要素は、「人事部門の企画構想力が低い」「人事部門と事業部門のコミュニケーションが不足」「人事部門全体に共通するビジョンや目的がない」。こうした特徴は、3~4割の企業で見られる。
AI活用の進展が人員増減見込みにどのように表れているのかを、AI活用度別に見た。AI活用度が高い企業では、「一般事務職」を減らす見込みの割合が42.5%と高い。一方で「デジタル・IT職」は56.3%が増員見込みであり、IT職代替までは想定していない可能性が考えられる。また、「中途採用」については、AI活用度にかかわらず増やす見込みの企業が多い。
こうした人員構成への影響が見込まれる一方で、人事部門自身のAI活用はどこまで進んでいるのか。人事部でAIを日常活用している企業は39.2%で、約4割となっている。
活用業務では、議事録・翻訳・メール下書きなどの「一般的な事務・デスクワーク」が最も高く、「人事評価・タレントマネジメント」「研修・人材開発」が続く。まずは文書作成・要約・確認、評価コメント作成、研修資料作成など、既存業務を支援する領域から活用が広がっている。
一方で、人事・労務領域におけるAI活用には、情報管理や正確性をめぐる懸念もある。AI活用の課題を見ると、「機密情報・個人情報の漏洩リスク(34.8%)」が最も高く、「情報の正確性・信頼性への懸念(29.9%)」「著作権・知的財産権の侵害リスク(25.3%)」が続く。加えて、「人事スタッフのスキル・リテラシー不足」、「責任所在の不明確」、「社内ルール・ガイドライン未整備」も2割台半ばで並んでおり、活用拡大にはリスク対策だけでなく、運用ルールと人材側の備えが求められる。
賃上げの実施状況を見ると、「引き上げ予定/済」の企業は、2022年の61.8%から2026年には73.0%に拡大している。「未定・分からない」回答も7.3%から14.7%に増加する一方、「改定を実施しない」は25.5%から7.8%へ大きく減少している。賃上げの決定には至っていないものの、検討を続けている企業が多いことがうかがえる。
では、賃上げを実施・検討する企業は、どのような要素を判断材料としているのか。賃上げ判断のための要素を見ると、「物価動向」が29.7%で最も高く、次いで「従業員の離職防止(26.2%)」「優秀人材の採用強化(24.0%)」が続く。
2022年調査と比較※すると、「予算達成度や業績の良し悪し(-23.3pt)」が大きく減少。また、「従業員の離職防止(-9.1pt)」「景気動向(-7.6pt)」も低下している。一方で、「戦略的人材の採用強化(+2.2pt)」「労働組合の要請(+2.7pt)」はわずかに上昇している。
※
小サンプルのため参考
今、労働力不足の中で、企業の経営課題はますます「ヒト」の課題に集中してきた。そうした中、人事課題の重心は既存の人材が長く活躍し続けるための「定着・活躍支援」へとシフトし、「攻めより守り」という姿勢がより鮮明になりつつある。
AIの組織普及や次世代リーダー育成など、経営戦略的な領域への関与が限定的で、昨今のビジネス戦略に人事が取り残されつつある側面が垣間見える。また、過去の調査と比較して、人事組織の社内における位置づけがやや下降して見えることにも、注意が必要だろう。
本調査からは、人事が戦略的にパフォーマンスを発揮するためには、「処遇の市場化」、「職務範囲の脱・属人化」、「タレントデータの一元化」、「自律的キャリア選択」、「社内/外の雇用流動化」という5つが重要な要素として抽出されている。一方で、ビジョンや企画構想力の欠如、事業部門との連携の不足といった状況は、パフォーマンスを押し下げている。
自社の事業戦略を見据えた上で、人事部門が取り組むべきことは以下の5つである。
1.自らの組織目的を問い直し、戦略人事を推進していくための指針となる人事ポリシーを定める
2.HRBPを主軸に事業戦略と人材戦略を再接続する
3.人材データの一元化による配置・育成の高度化を進める
4.経営とのコミュニケーションを密にし、自社ビジネスへの感度を高める
5.従業員の報酬と市場価値との乖離を埋める
ますますAIが経営戦略に組み込まれていく中で、「人と組織」の意思決定が人事の外側で進んでいけば、人事部が存在感を失っていく事態になりかねない。こうした取り組みを通じて、人事部門が実務運営の担い手ではなく、経営と事業の成長を支える戦略パートナーへと進化していくことが期待される。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
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