調査レポート

医療従事者の職業生活に関する定量調査

公開日:

引用について
本報告書の内容は、著作権法が認める引用の範囲内であれば、出所を明記の上で、ご自由に引用・転載いただいて構いません。
(記載例)パーソル総合研究所 「調査名称」

調査概要

調査名称

パーソル総合研究所「医療従事者の職業生活に関する定量調査」

調査内容

・医師を除く医療従事者のはたらく幸せに関する実態を明らかにする。
・多様な医療従事者の仕事の魅力と課題について明らかにする。

調査対象

【本調査の対象者】
医療従事者 3,500ssと比較群 500ss 計4,000ss (居住・勤務地域:全国、20~69歳以下の男女)
比較群は正規雇用社員を対象とし、国勢調査の性年代比率に従い回収
本報告書における( )内の数値は、各設問のサンプル数を示している

【職種別サンプル構成】
調査対象
職種ごとに目安数を設定して調査を実施したが、最終的な回収数は自然回収に基づく。

調査方法

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査

調査時期

2025年7月11日 – 7月22日

実施主体

株式会社パーソル総合研究所

監修

東京大学公共政策大学院 鈴木寛 教授

  • 報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある
  • 図中の括弧内の数値は、分析対象人数を表す

調査報告書 全文

調査概要

調査結果サマリと提言

 調査属性情報

 医療従事者は幸せなのか?

医療従事者の仕事のやりがい

医療従事者の仕事への熱意とストレス

医療従事者の仕事の課題

  • (1)職場における心理的な苦痛経験
  • (2)患者・その家族からの苦情対応
  • (3)人事評価制度と職場の信頼関係

Appendix

医療従事者は幸せなのか?

医療従事者の職業生活ウェルビーイングは低い傾向

調査対象の医療従事者を、「看護師群」「リハビリテーション職群」「その他の医療職群」「医療事務職群」に区分し、「職業生活ウェルビーイング」の主観的指標 である「はたらく幸せ/不幸せ実感」を見た。

職業生活ウェルビーイングとは、「自分の仕事に満足し、はたらく事を通じて、社会とのつながりや貢献、喜びや楽しみを感じることが多く、怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態。また、そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態」と定義する。

医療従事者以外も含めた就業者全体の「はたらく幸せ実感」の平均4.03ptに対し、「リハビリテーション職群」のみ同水準であり、「看護師群」「その他の医療職群」「医療事務職群」はいずれも下回った。一方で「はたらく不幸せ実感」は、すべての職種で就業者全体の平均3.34ptを上回る。

図表1.職種別|はたらく幸せ/不幸せ実感 (平均値/pt)

職種別|はたらく幸せ/不幸せ実感 (平均値/pt)

Y軸の数値は、各項目の平均スコア(1~7点尺度で算出)を示しています。「1=まったくあてはまらない」~「7=とてもあてはまる」として回答を得た結果の平均値です。

参照値:パーソル総合研究所 「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」 (https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/worker-well-being.pdf

「一般職・スタッフ職」の職業生活ウェルビーイングは低い傾向

職位別に「はたらく幸せ/不幸せ実感」を見ると、「一般職・スタッフ職」は、「はたらく幸せ実感」がやや低く、「はたらく不幸せ実感」が高い傾向。

図表2.職位別|はたらく幸せ/不幸せ実感 (平均値/pt)

職位別|はたらく幸せ/不幸せ実感 (平均値/pt)

Y軸の数値は、各項目の平均スコア(1~7点尺度で算出)を示しています。「1=まったくあてはまらない」~「7=とてもあてはまる」として回答を得た結果の平均値です。

医療従事者の仕事のやりがい

職業への誇りは感じるが他者への推奨意向は低い

「医療従事者であることに誇りを感じる」かどうかを尋ねたところ、「看護師群(57.1%)」「リハビリテーション職群(53.3%)」「その他医療職群(51.3%)」で、5割強が自身の職業に「誇りを感じる」と回答。

一方、「医療従事者という職業を友人・知人、家族に勧めたいと思う(推奨意向)」人は、「看護師群(25.6%)」「リハビリテーション職群(25.6%)」「その他医療職群(23.6%)」「医療事務職群(16.6%)」で、2割程度にとどまる。

図表3.医療従事者の「職業への誇り」と「推奨意向」

医療従事者の「職業への誇り」と「推奨意向」

医療従事者は他者への貢献志向が強い

やりがいを感じる場面を尋ねたところ、「看護師群」や「リハビリテーション職群」は、「患者さんやその家族から感謝の言葉をもらったとき」が最も多く、患者との関わりが中心となっている。「その他の医療職群」は「専門知識・スキルが向上したと実感したとき」が最も多く、専門性の発揮がやりがいとなっている。「医療事務職群」では「同僚や他職種のスタッフから感謝の言葉をもらったとき」が最も多く、チーム内の協働がやりがいを支えている傾向。

医療従事者のやりがいは、全体的に患者との関りに由来する要因(図表4薄橙色)が多く、他者貢献志向の強さがうかがわれる。

図表4.職種別|医療従事者のやりがい

職種別|医療従事者のやりがい

医療従事者の仕事への熱意とストレス

医療従事者を心理的ストレス反応とワーク・エンゲイジメントの高低で「ワーカホリック型」「ワーク・エンゲイジメント型」「バーンアウト型」「不活性型」に4分類した。

ワーク・エンゲイジメントとは仕事から活力を得て、熱意をもって没頭できている状態。本調査では、ワーク・エンゲイジメントと心理的ストレス反応について7件法のリッカート尺度で回答を求め、いずれも4点以下を低群、4点超えを高群として分析を行った。

図表5.医療従事者の4類型

医療従事者の4類型

医療従事者の6割前後は、仕事に熱意・没頭するようなやりがいを見出せていない

職種別にタイプを見ると、いずれの職群についても、仕事にやりがいを感じており、ストレスをあまり感じていない「ワーク・エンゲイジメント型」は2〜3割にとどまる。一方、仕事へのやりがいも、ストレスもあまり感じていない「不活性型」は4割前後、仕事にやりがいを感じておらず、ストレスを強く感じている「バーンアウト型」は20%前半の割合が多く、「不活性型」と「バーンアウト型」と合わせると60%前後と高い傾向。

図表6.職種別|医療従事者タイプの実態(%)

職種別|医療従事者タイプの実態(%)

「一般職・スタッフ職」の約65%は、仕事に熱意・没頭するようなやりがいを見出せていない

職位別にタイプを見ると、「一般職・スタッフ職」では「不活性型」と「バーンアウト型」の割合が多く、両タイプ合算で65.3%を占める。「一般職・スタッフ職」以外では「ワーク・エンゲイジメント型」が3割前後。一方、「診療科等を統括する現場の管理職層」では「不活性型」の割合が40.6%で、職位によってタイプ分布が異なる。

図表7.職位別|医療従事者タイプの実態(%)

職位別|医療従事者タイプの実態(%)

職場における心理的な苦痛経験

医療従事者の約3割が過去1カ月の間に職場内で心理的苦痛を経験

職場での心理的苦痛経験を尋ねると、「医師から受けた」が最も高く、1カ月間に33.5%が経験を報告している。また、「上司や先輩から受けた」が29.7%、「同僚や部下・後輩から受けた」は21.8%であった。

図表8.職場において心理的苦痛を受けた経験(過去1か月以内)

職場において心理的苦痛を受けた経験(過去1か月以内)

ハラスメント以外にも発生している非礼な行為

心理的苦痛の具体的な内容は、「ため息や不満の態度」や「目を見ない・他の作業をする」といったインシビリティ事案が多く、「感情的・高圧的な叱責」「威圧的な発言」などハラスメント事案も確認された。相手としては、医師からの経験割合がやや多い傾向がみられる。

インシビリティとは、法的対応が必要となるハラスメントには至らないが相手への礼を欠いた事案を指し、ハラスメントとは区別して対応策を検討する職場が増えている。

図表9.職場のおける心理的苦痛の内容(%) 複数回答

職場のおける心理的苦痛の内容(%) 複数回答

職種によって異なるハラスメント・インシビリティ経験

職場で経験した心理的苦痛の経験内容をハラスメントとインシビリティに区分し、相手別の延べ回答割合を職種別に比較した。「看護師群」「医療事務職群」では「医師から」の割合が相対的に高く、「リハビリテーション職群」「その他医療職群」では「上司・先輩から」のハラスメント報告が高い傾向がみられた。

図表10.職種別|職場のハラスメント・インシビリティ経験 (%)

職種別|職場のハラスメント・インシビリティ経験 (%)

心理的苦痛の経験はバーンアウトを高め、継続就業意向を下げる

心理的苦痛の経験と仕事への影響を見たところ、医師や上司・先輩からの心理的苦痛は、「バーンアウト(仕事への燃え尽き)」リスクを高め、この職場で働き続けたいという「継続就業意向」を下げる。この効果は、ハラスメントとインシビリティで同程度の影響度を示した。法的対応が求められる点でハラスメントに注意が向きがちだが、職場におけるインシビリティも人材確保(定着)や専門性の発揮を阻害し得るため看過できない。

図表11.職場における心理的苦痛の経験と仕事への影響

職場における心理的苦痛の経験と仕事への影響

患者・その家族からの苦情対応

「看護師群」「医療事務職群」はクレーム対応の負担が大きい

医療従事者が受ける患者やその家族からのクレームへの対応の負担は、「看護師群」と「医療事務職群」で大きい傾向。「看護師群」の50.0%は「クレーム対応によって、心身が疲弊することがよくある」と回答し、「医療事務職群」も45.2%であった。

図表12.職種別|患者やその家族からのクレーム対応 (あてはまる・ややあてはまる計/%)

職種別|患者やその家族からのクレーム対応 (あてはまる・ややあてはまる計/%)

大規模・入院中心の施設は苦情に組織的な対応

苦情に対して「組織的な対応がある」との回答は、「高度急性期病院」「回復期病院」「一般急性期病院」などの大規模・入院中心の施設で比較的高い。一方で、「訪問・往診クリニック」や「介護医療院」では、個人対応に依存している傾向が確認できる。

図表13.施設別|苦情への組織的対応 (%)

施設別|苦情への組織的対応 (%)

人事評価制度と職場の信頼関係

医療機関の処遇制度は年功的傾向が強い

医療従事者の「昇進・昇格」や「賞与・給与」の決定基準では、「勤続年数」が最も多く、「管理職登用」については「個人の功績」が相対的に多い傾向。年功的要素がやや強いが、実力主義的要素や上層部の属人的判断による運用が併存している様子もうかがえる。

図表14.医療従事者の処遇決定要因 (%)

医療従事者の処遇決定要因 (%)

若年層ほど制度的評価やフィードバックを求める傾向

人事評価制度が「必要」かについて、「一般職・スタッフ職」に限定して確認した。約半数が必要と回答しており、特に20代では57.3% と最も高い。年代が上がるにつれて必要性の認識はやや低下する傾向にあり、若年層ほど制度的評価やフィードバックを求める志向が強い。

図表15.「一般職・スタッフ職」に限定した 年代×人事制度の必要性(%)

「一般職・スタッフ職」に限定した 年代×人事制度の必要性(%)

人事評価は制度導入よりも適切なコミュニケーションが重要

人事評価や今後の期待の説明の有無と経営職・管理職との信頼関係を見た。人事評価があり、評価結果と今後の期待の説明があるほうが、経営職・管理職を信頼している割合が53.1%と高い。人事評価制度があるだけでは職場の信頼関係は高まりにくく、適切な説明などが伴わない運用はかえって信頼を下げかねない。

図表16.「人事評価や今後の期待の説明」と経営職・管理職との信頼関係 (%)

「人事評価や今後の期待の説明」と経営職・管理職との信頼関係 (%)

[分析コメント]医療現場の再整備に向けた3つの実装

医療従事者の職業生活をより良いものとするため、本調査から見えてきた介入観点および、実務上のポイントを以下にまとめる。

「不活性型」・「バーンアウト型」職員の早期検知と配置・体制の見直し

医療従事者は、仕事へのやりがいも、ストレスもあまり感じていない「不活性型」や、仕事にやりがいを感じておらず、ストレスを強く感じている「バーンアウト型」の割合が高い。この状態が固定化すると、医療サービスの質の低下 や離職リスクの増大につながる。

<ポイント>

  • 定期的なエンゲージメントサーベイやフォロー面談を通じて、職員の状態を継続的に把握することが重要である。結果を基に、仕事量や責任の偏りを見直すなど、勤務設計や職場の構造的課題への対応を進めるべきだ。
  • 短期的な対処としては、仕事から適度な心理的距離を保つ「適応的ディタッチメント研修」や、職員の自己受容と肯定感を高める「セルフコンパッション研修」の導入が有効である。

職場の非礼(インシビリティ)の可視化と予防

「〇〇ハラスメント」といった安易な表現は、職場の人間関係を委縮させる。結果として、日々のコミュニケーションが滞れば、医療の質や安全にも支障をきたしかねない。軽微な非礼行為であっても、その影響はハラスメントに近似し、状況により深刻化しかねず看過できない。

<ポイント>

  • エンゲージメントサーベイ等を通じて、職場における職員の心理的苦痛の実態を把握する。ハラスメント事案が確認された場合は個別に対応するとともに、実際の職場事例を活用してインシビリティ(職場での非礼行為)への理解を深めることができる。
  • 組織横断的なプロジェクトとして、職場の倫理規範のガイドラインを策定し、職場教育の一環として周知を進める。さらに、定期的なサーベイによって施策の効果を検証し、結果に応じて見直しを行うことで、取り組みを一過性のものではなく、組織文化として定着させていく。

評価制度導入前に信頼関係の構築を

医療機関の処遇制度は依然として年功的傾向が強く、運用面でも属人的な判断に依存する場合が多い。若年層は評価制度を求める一方、否定的な職員も少なくない。こうした状況では、制度導入以前に、上司と部下の間に信頼関係を築くことが欠かせない。

<ポイント>

  • 評価制度の導入・運用よりも先に、職場内の信頼関係を構築することが重要である【信頼関係=無形資産】。信頼関係の起点は上席者の姿勢にあり、①部下への信頼→②上司からの信頼感→③上司への信頼→④部下からの信頼感、という循環構造の中で強化される。
  • 制度導入の際には、処遇・人材育成方針の明確化を図ったうえで、評価基準の妥当性を担保し、運用教育を丁寧に行うことが求められる。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「医療従事者の職業生活に関する定量調査」

調査報告書 全文

調査概要

調査結果サマリと提言

 調査属性情報

 医療従事者は幸せなのか?

医療従事者の仕事のやりがい

医療従事者の仕事への熱意とストレス

医療従事者の仕事の課題

  • (1)職場における心理的な苦痛経験
  • (2)患者・その家族からの苦情対応
  • (3)人事評価制度と職場の信頼関係

Appendix

医療従事者の職業生活に関する定量調査

調査解説動画

医療従事者の職業生活に関する定量調査

動画

THEME

注目のテーマ

    CONTACT US

    お問い合わせ

    こちらのフォームからお問い合わせいただけます

    お問い合わせフォーム

    FOLLOW US

    最新情報をチェック!

    メルマガ登録・公式SNSフォローで最新情報をお届けします。