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パーソル総合研究所「医療従事者の職業生活に関する定量調査」
・医師を除く医療従事者のはたらく幸せに関する実態を明らかにする。
・多様な医療従事者の仕事の魅力と課題について明らかにする。
【本調査の対象者】
医療従事者 3,500ssと比較群 500ss 計4,000ss (居住・勤務地域:全国、20~69歳以下の男女)
比較群は正規雇用社員を対象とし、国勢調査の性年代比率に従い回収
本報告書における( )内の数値は、各設問のサンプル数を示している
【職種別サンプル構成】

職種ごとに目安数を設定して調査を実施したが、最終的な回収数は自然回収に基づく。
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2025年7月11日 – 7月22日
株式会社パーソル総合研究所
東京大学公共政策大学院 鈴木寛 教授
調査対象の医療従事者を、「看護師群」「リハビリテーション職群」「その他の医療職群」「医療事務職群」に区分し、「職業生活ウェルビーイング※」の主観的指標 である「はたらく幸せ/不幸せ実感」を見た。
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職業生活ウェルビーイングとは、「自分の仕事に満足し、はたらく事を通じて、社会とのつながりや貢献、喜びや楽しみを感じることが多く、怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態。また、そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態」と定義する。
医療従事者以外も含めた就業者全体の「はたらく幸せ実感」の平均4.03ptに対し、「リハビリテーション職群」のみ同水準であり、「看護師群」「その他の医療職群」「医療事務職群」はいずれも下回った。一方で「はたらく不幸せ実感」は、すべての職種で就業者全体の平均3.34ptを上回る。
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Y軸の数値は、各項目の平均スコア(1~7点尺度で算出)を示しています。「1=まったくあてはまらない」~「7=とてもあてはまる」として回答を得た結果の平均値です。
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参照値:パーソル総合研究所 「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」 (https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/worker-well-being.pdf)
職位別に「はたらく幸せ/不幸せ実感」を見ると、「一般職・スタッフ職」は、「はたらく幸せ実感」がやや低く、「はたらく不幸せ実感」が高い傾向。
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Y軸の数値は、各項目の平均スコア(1~7点尺度で算出)を示しています。「1=まったくあてはまらない」~「7=とてもあてはまる」として回答を得た結果の平均値です。
「医療従事者であることに誇りを感じる」かどうかを尋ねたところ、「看護師群(57.1%)」「リハビリテーション職群(53.3%)」「その他医療職群(51.3%)」で、5割強が自身の職業に「誇りを感じる」と回答。
一方、「医療従事者という職業を友人・知人、家族に勧めたいと思う(推奨意向)」人は、「看護師群(25.6%)」「リハビリテーション職群(25.6%)」「その他医療職群(23.6%)」「医療事務職群(16.6%)」で、2割程度にとどまる。
やりがいを感じる場面を尋ねたところ、「看護師群」や「リハビリテーション職群」は、「患者さんやその家族から感謝の言葉をもらったとき」が最も多く、患者との関わりが中心となっている。「その他の医療職群」は「専門知識・スキルが向上したと実感したとき」が最も多く、専門性の発揮がやりがいとなっている。「医療事務職群」では「同僚や他職種のスタッフから感謝の言葉をもらったとき」が最も多く、チーム内の協働がやりがいを支えている傾向。
医療従事者のやりがいは、全体的に患者との関りに由来する要因(図表4薄橙色)が多く、他者貢献志向の強さがうかがわれる。
医療従事者を心理的ストレス反応とワーク・エンゲイジメント※の高低で「ワーカホリック型」「ワーク・エンゲイジメント型」「バーンアウト型」「不活性型」に4分類した。
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ワーク・エンゲイジメントとは仕事から活力を得て、熱意をもって没頭できている状態。本調査では、ワーク・エンゲイジメントと心理的ストレス反応について7件法のリッカート尺度で回答を求め、いずれも4点以下を低群、4点超えを高群として分析を行った。
職種別にタイプを見ると、いずれの職群についても、仕事にやりがいを感じており、ストレスをあまり感じていない「ワーク・エンゲイジメント型」は2〜3割にとどまる。一方、仕事へのやりがいも、ストレスもあまり感じていない「不活性型」は4割前後、仕事にやりがいを感じておらず、ストレスを強く感じている「バーンアウト型」は20%前半の割合が多く、「不活性型」と「バーンアウト型」と合わせると60%前後と高い傾向。
職位別にタイプを見ると、「一般職・スタッフ職」では「不活性型」と「バーンアウト型」の割合が多く、両タイプ合算で65.3%を占める。「一般職・スタッフ職」以外では「ワーク・エンゲイジメント型」が3割前後。一方、「診療科等を統括する現場の管理職層」では「不活性型」の割合が40.6%で、職位によってタイプ分布が異なる。
職場での心理的苦痛経験を尋ねると、「医師から受けた」が最も高く、1カ月間に33.5%が経験を報告している。また、「上司や先輩から受けた」が29.7%、「同僚や部下・後輩から受けた」は21.8%であった。
心理的苦痛の具体的な内容は、「ため息や不満の態度」や「目を見ない・他の作業をする」といったインシビリティ※事案が多く、「感情的・高圧的な叱責」「威圧的な発言」などハラスメント事案も確認された。相手としては、医師からの経験割合がやや多い傾向がみられる。
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インシビリティとは、法的対応が必要となるハラスメントには至らないが相手への礼を欠いた事案を指し、ハラスメントとは区別して対応策を検討する職場が増えている。
職場で経験した心理的苦痛の経験内容をハラスメントとインシビリティに区分し、相手別の延べ回答割合を職種別に比較した。「看護師群」「医療事務職群」では「医師から」の割合が相対的に高く、「リハビリテーション職群」「その他医療職群」では「上司・先輩から」のハラスメント報告が高い傾向がみられた。
心理的苦痛の経験と仕事への影響を見たところ、医師や上司・先輩からの心理的苦痛は、「バーンアウト(仕事への燃え尽き)」リスクを高め、この職場で働き続けたいという「継続就業意向」を下げる。この効果は、ハラスメントとインシビリティで同程度の影響度を示した。法的対応が求められる点でハラスメントに注意が向きがちだが、職場におけるインシビリティも人材確保(定着)や専門性の発揮を阻害し得るため看過できない。
医療従事者が受ける患者やその家族からのクレームへの対応の負担は、「看護師群」と「医療事務職群」で大きい傾向。「看護師群」の50.0%は「クレーム対応によって、心身が疲弊することがよくある」と回答し、「医療事務職群」も45.2%であった。
苦情に対して「組織的な対応がある」との回答は、「高度急性期病院」「回復期病院」「一般急性期病院」などの大規模・入院中心の施設で比較的高い。一方で、「訪問・往診クリニック」や「介護医療院」では、個人対応に依存している傾向が確認できる。
医療従事者の「昇進・昇格」や「賞与・給与」の決定基準では、「勤続年数」が最も多く、「管理職登用」については「個人の功績」が相対的に多い傾向。年功的要素がやや強いが、実力主義的要素や上層部の属人的判断による運用が併存している様子もうかがえる。
人事評価制度が「必要」かについて、「一般職・スタッフ職」に限定して確認した。約半数が必要と回答しており、特に20代では57.3% と最も高い。年代が上がるにつれて必要性の認識はやや低下する傾向にあり、若年層ほど制度的評価やフィードバックを求める志向が強い。
人事評価や今後の期待の説明の有無と経営職・管理職との信頼関係を見た。人事評価があり、評価結果と今後の期待の説明があるほうが、経営職・管理職を信頼している割合が53.1%と高い。人事評価制度があるだけでは職場の信頼関係は高まりにくく、適切な説明などが伴わない運用はかえって信頼を下げかねない。
医療従事者の職業生活をより良いものとするため、本調査から見えてきた介入観点および、実務上のポイントを以下にまとめる。
医療従事者は、仕事へのやりがいも、ストレスもあまり感じていない「不活性型」や、仕事にやりがいを感じておらず、ストレスを強く感じている「バーンアウト型」の割合が高い。この状態が固定化すると、医療サービスの質の低下 や離職リスクの増大につながる。
<ポイント>
「〇〇ハラスメント」といった安易な表現は、職場の人間関係を委縮させる。結果として、日々のコミュニケーションが滞れば、医療の質や安全にも支障をきたしかねない。軽微な非礼行為であっても、その影響はハラスメントに近似し、状況により深刻化しかねず看過できない。
<ポイント>
医療機関の処遇制度は依然として年功的傾向が強く、運用面でも属人的な判断に依存する場合が多い。若年層は評価制度を求める一方、否定的な職員も少なくない。こうした状況では、制度導入以前に、上司と部下の間に信頼関係を築くことが欠かせない。
<ポイント>
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「医療従事者の職業生活に関する定量調査」
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