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パーソル総合研究所 「公務員の職業生活に関する定量調査‐中央官庁・地方自治体職員編」
【本調査の対象者】
本省・本庁、出先機関勤務の現職公務員:2,366名
<所属・職種別内訳>

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
2026年 1月21日 – 1月23日
株式会社パーソル総合研究所
鈴木 寛 東京大学公共政策大学院 教授
村上 敬亮 東京大学公共政策大学院 特任教授/慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任教授
まず、公務員の職務の特性を確認したところ、共通して「技能の高度さ」「対人配慮」が高い傾向であった。「技能の高度さ」は中央官庁が最も高く(平均3.64pt)、「対人配慮」は基礎自治体が最も高い(平均3.59pt)。一方で、全般的に「成果の明確さ」は低い傾向であった。
総じて、高度な専門性と対人配慮を求められるが、その成果は見えにくいという職務特性が示唆される。
こうした職務特性を踏まえ、働くことを通じて主観的な幸福感/不幸感をどれほど感じているかを確認した。公務員の「はたらく幸せ実感」は会社員平均と概ね同水準であった。一方で、「はたらく不幸せ実感」は全ての所属・職種で会社員平均を上回った。
公務員の「職業生活ウェルビーイング」※1を考える上では、幸福感を高めるだけでなく、不幸せ実感につながる要因を低減する視点が重要である。
※1
職業生活ウェルビーイングとは、「自分の仕事に満足し、はたらくことを通じて、社会とのつながりや貢献、喜びや楽しみを感じることが多く、怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態。また、そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態」と定義。
では、公務員の「はたらく幸せ/不幸せ」は何によって左右されるのか。その要因は、「はたらく人の幸せの7因子(幸せ7因子)/はたらく人の不幸せの7因子(不幸せ7因子)」によって説明することができる※2。
公務員のはたらく幸せ実感と強く結びつくのは、「自己成長(仕事を通じて、未知な事象に対峙して新たな学びを得たり、能力の高まりを期待することができている状態)」「他者貢献(仕事を通じて関わる他者や社会にとって、良い影響を与え、役に立てていると思えている状態)」「他者承認(自分や自分の仕事は周りから関心を持たれ、好ましい評価を受けていると思えている状態)」の因子だった。
一方、はたらく不幸せ実感と強く結びつくのは、「オーバーワーク(私的な時間を断念せざるを得ない程に仕事に追われ、精神的・身体的に過度なストレスを受けている状態)」「評価不満(自分の努力は正当に評価されない、努力に見合わないと感じている状態)」「自己抑圧(仕事での能力不足を感じ、自信がなく停滞している。また、自分の強みを活かす事を抑制されていると感じている状態)」の因子だった。
公務員の職業生活ウェルビーイングを高めるには、社会や地域への貢献実感や成長機会を高めることに加え、過度な負荷や報われなさを抑制する視点が重要となる。
※2
原著論文「職業生活における主観的幸福感因子尺度/不幸感因子尺度の開発」(Inoue et al. 日本感情心理学会、2022,12)
次に、公務員としての誇りをどれほど感じているのかを確認した。最も高くても中央官庁職員で49.9%、基礎自治体職員では39.2%にとどまった。公共性の高い職務に従事し、社会や地域への貢献を志向する職員が多いことを踏まえると、参考値の小学校教員や看護師群のスコアと比較して、必ずしも高いとはいえない。
公務員としての誇りは、職業の魅力や継続的な勤務意欲を支える重要な資源であり、誇りの形成を支える条件を考える必要がある。
※
パーソル総合研究所では、過去に教員・看護師の「職業生活に関する定量調査」を実施しており、その調査結果を参考値として掲載。教員・看護師は、公務員と同様に市民生活の維持・発展に欠かせない職業であり、かつて安定性や社会的意義の高さなどから人気が高かった一方、近年では人材確保・定着が課題となっている。
パーソル総合研究所(2024)「教員の職業生活に関する定量調査」
パーソル総合研究所(2025)「医療従事者の職業生活に関する定量調査」
さらに、その誇りがどのような要因によって支えられ、また損なわれるのかを明らかにするため、公務員としての誇りと「幸せ/不幸せ7因子」との関係を確認した。誇りを高める要因としては、所属を問わず「他者貢献(誰かのため)」因子が共通して確認された。一方、誇りを損なう要因としては、いずれも「評価不満(報われない)」因子があがった。
では、他者貢献の実感は何によって高まり、評価不満は何によって生じるのか。
他者貢献は、「自分の業務の影響や結果が実感しやすい仕事だ」「直接、感謝の言葉をかけられることが多い仕事だ」などと感じることによって高まる。一方、評価不満は、「自分の仕事の担当範囲が不明確である」「関係者からの要望や不満への対応が多い」などによって高まる。
すなわち、公務員としての誇りは、貢献や成果を実感でき、努力が正当に認められる環境によって支えられている。
一方で、公務員の魅力を損なう組織課題は、所属によって異なる。
公務員をワーク・エンゲイジメント※3と心理的ストレス反応の高低で「ワーカホリック型」「ワーク・エンゲイジメント型」「バーンアウト型」「不活性型」の4類型に分けてみると、中央官庁では、仕事にやりがいを感じており、ストレスをあまり感じていない「ワーク・エンゲイジメント型(28.3%)」と、仕事にやりがいを感じているが、ストレスを強く感じている「ワーカホリック型(8.4%)」が相対的に多い。
一方、広域自治体では、仕事へのやりがいも、ストレスもあまり感じていない「不活性型(46.5%)」が最も多く、基礎自治体では、仕事にやりがいを感じておらず、ストレスを強く感じている「バーンアウト型(21.4%)」の割合が他所属より高い。
所属により仕事への熱意や心理的ストレスの現れ方は異なり、公務員としての職業の魅力を損なう要因もまた異なることが示唆される
※3
ワーク・エンゲイジメントとは仕事から活力を得て、熱意をもって没頭できている状態(職務への高い活性状態を示す)。(注)ワーカホリック型は、ワーク・エンゲイジメントが高い一方で、心理的ストレス反応も高い層を指す。本調査では、ワーク・エンゲイジメントと心理的ストレス反応について7件法のリッカート尺度で回答を求め、いずれも4点以下を低群、4点超えを高群として分析を行った。
では、こうした4類型の違いは、定着や離職リスクにどう関わるのか。公務員の4類型ごとに、継続就業意向と転職意向を確認した。
「ワーク・エンゲイジメント型」は他の型と比較して継続就業意向が83.0%で高く、転職意向が20.3%で低い。一方で、「バーンアウト型」は継続就業意向が最も低い48.2%、転職意向が最も高い41.0%。
注目すべきは「ワーカホリック型」である。仕事への活性度が高く、継続就業意向も63.6%で一定程度ある一方で、転職意向も35.8%で高い。一見すると仕事への熱意があり定着しているように見えても、高ストレスを抱えていることから、見えにくい流出リスクを抱える可能性がある。
ここからは、公務員の職務における重要な接点である国民・住民対応に着目する。日々の業務においてどの所属も「一般の国民・住民」を5~6割程度意識していた。また、「直接、感謝の言葉をかけられることが多い」と答えた割合は2割前後にとどまった。国民や住民への貢献を強く意識しながらも、その手応えを十分に得にくい実態が示唆される。
こうした国民・住民対応の手応えの得にくさに加え、クレーム対応も職員の大きな負担となっている。さらに、その負担は組織で分担されているとは限らない。基礎自治体ではクレーム対応を個人で担う割合が52.7%と過半数を占める。住民対応の最前線にある職員ほど、クレーム対応の負担を個人で抱えやすい実態がうかがえる。
では、クレーム対応を組織で担うか、個人に依存するかによって、職員の意識にはどのような違いが生じるのか。対応機会の多い基礎自治体について、クレーム対応の組織的対応/個人依存別に、他者貢献因子・評価不満因子との関係を確認した。
組織的にクレーム対応をしている職場ほど、職員の他者貢献実感が高く、評価不満が低い傾向もみられた。クレーム対応を個人に依存する職場では、貢献実感を低下させ、評価不満を増大させるリスクが示唆される。
加えて、公務員の魅力を阻害するもう一つの課題として、成長実感の低さがある。公務員の成長実感は全ての所属・職種で会社員平均48.6%を下回った。特に基礎自治体では、行政職33.8%、技術職35.1%にとどまる。公務員において成長実感の獲得が課題となっている可能性がある。
では、成長実感はどのような職務特性によって高まり、また損なわれるのか。自己成長因子を高める要因としては、「自分の業務の影響や結果が実感できる」「直接、感謝の言葉をかけられることが多い」などがあがった。一方で、「仕事を続けても習熟度が変わらない」が最も強い阻害要因であり、「関係者からの要望や不満への対応が多い」ことも成長実感を損なっていた。能力や経験の向上が実感しにくい環境は、公務員の活力や魅力を低下させる可能性がある。
成長実感を高める上では、日々の業務だけでなく、人事異動の設計も重要である。異動前後の仕事内容に関連性がある職員は、関連がない職員より成長実感が高い。例えば中央官庁では、関連あり4.22pt、関連なし3.66ptであった。
また、異動に伴う仕事内容の関連性がある場合は、スキル・知識の深化や組織理解につながりやすい。一方で、関連性がない場合は、異動前のスキル・知識や人脈を活かせていないと感じる割合が高い。異動を成長機会として機能させるには、経験やスキルを次の職務へ接続する視点が重要となる。
ここまで見てきた貢献実感や成長実感に加え、公務員の定着を支えるには、長期的なキャリアの見通しが欠かせない。継続就業意向への影響はキャリア見通しが最も大きく、他者貢献や役割認識も重要だった。
若手職員に限ると「役割認識因子」の影響が特に大きかった。若手の定着には、中長期的なキャリアの見通しが描けることに加え、自らの役割や目の前の仕事の意味を実感できることが、とりわけ重要であることが示唆される。
若手職員については、継続意向だけでなく転職意向も含めて流出リスクを捉える必要がある。継続就業意向と転職意向を組み合わせ、年代別に4類型化したところ、20~30代では、公務員としての継続就業意向が高く、転職意向も高い「潜在流出群」と、継続就業意向は低く、転職意向が高い「離職切迫群」を合わせた割合が3割を超えた。一方、継続就業意向は高く、転職意向も低い「定着安定群」は41.7%だった。
40〜60代では、「潜在流出群」が11.3%、「離職切迫群」が16.6%、「定着安定群」が50.0%だった。なお、「離職切迫群」の割合は年代間で大きな差はみられなかった。
職員の採用と定着を考える上では、公務員という職業イメージがどのように形成されるのかも重要である。公務員の職業イメージは、家族・親族や友人・知人など身近な人を通じて形成されやすい。特に、基礎自治体職員では、約4割が家族・親族関係から公務員の職業イメージを得ていた。「友人・知人関係」を含めれば、所属に関わらず公務員の約4~5割は身近な人からそのイメージが形成されている。また、中央官庁職員では、約2割が「学校関係」から職業イメージを得ていた。
現職職員が誇りや成長実感を持ち、近親者に勧めたいと思える状態をつくることが、次世代への魅力継承につながる。
また、将来の組織運営を担う人材を育てる上では、管理職意向の低さも見逃せない。管理職意向は多くの所属・職種で2割前後にとどまる。中央官庁の行政職(政策系)は24.1%で最も高い一方、基礎自治体の行政職・技術職はいずれも14.0%と相対的に低い。
管理職という役職に対する魅力や負担感といった認識は、所属や職種などによって異なるだろうが、組織運営上の価値を正当に再評価し、適切に伝えていく必要がある。
管理職に対する負担感だけでなく、管理職として得られる成長実感や役割認識、組織運営への貢献実感といった価値にも目を向ける必要がある。
公務員の職業生活ウェルビーイングは、貢献実感、成長実感、役割認識、キャリア見通しによって支えられる一方、過重負荷、評価不満、クレーム対応の個人依存によって損なわれることが見えてきた。以上を踏まえて6つの提言を示す。
他者貢献の実感は、公務員の誇りを高める最大要因である。その背後には、成果・結果の手応えと感謝の実感があった。一方で、公務員の職務には、社会や地域への貢献が強く求められるものの、その成果や感謝は見えにくい。職員が貢献しても、その成果や感謝を実感しにくい「手応えレス」「感謝レス」の状態をいかに減らしていくかが重要である。
成長の実感とキャリアの見通しは、公務員のウェルビーイングや管理職意向、継続就業意向を高める重要な要因である。異動の前後で経験や専門性が接続されるほど、成長実感や主体性が高まる傾向が見られ、特に「技術職」では顕著であった。異動を単なる配置転換ではなく、経験や専門性が活かされるキャリア形成機会として位置づけることが、定着支援策となり得る。
評価不満(報われなさ)は、公務員の誇りやウェルビーイングを損なう主要な要因であった。職員にとって重要なのは、給与や処遇だけではない。自らの努力や貢献が適切に認識され、組織から期待されていると実感できることである。そのためにも、役割期待を明確に提示し、日常的な対話やねぎらい、建設的なフィードバックを通じて、職員の努力や貢献が適切に認識され、正当に評価される仕組みづくりが求められる。
基礎自治体では、クレーム対応を個人で抱え込む傾向がみられた。一方で、組織的に対応している職場ほど、職員の他者貢献実感が高く、評価不満も低い傾向がみられた。クレーム対応を職員個人の経験や努力に委ねず、AIなどテクノロジーも積極的に取り入れつつ、組織として支える仕組みづくりが求められる。
管理職の業務負荷や責任は大きいが、必ずしも職業生活ウェルビーイングが低いわけではない。むしろ、政策形成や人材育成を通じて新たな価値を生み出せる魅力もある。しかし、近年の管理職を忌避する傾向を考えれば、職務を通じて得られるやりがいや価値についても適切に伝えていく必要がある。管理職の働き方や職務の魅力を高め、その価値を伝えることは、後に続く職員にとっての前向きな将来像を示すことにつながる。
公務員の職業イメージは、親族や友人、学校の教員など身近な人々を通じて形成されることが多い。若年層に届く採用広報は重要だが、現職職員が誇りや成長実感を持ち、「この仕事を勧めたい」と思える状態をつくることこそが、公務員という職業の魅力を次世代へ継承する持続的で最大の採用施策である。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「公務員の職業生活に関する定量調査」
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