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パーソル総合研究所 「元管理職の社内キャリアに関する調査」
① 元管理職:課長以上のライン管理職経験後、退任し同一企業に勤務する50~64歳の男女
(正社員、契約・嘱託社員、パート・アルバイト〔定年後再雇用者を含む〕)・・・690名
② 現管理職:課長以上のライン管理職を務める30~59歳の男女(正社員)・・・500名
【共通条件】
※全国の性年代別の人口構成比に基づき配信・回収。ライスケール1問正答者を有効回答とした。
調査会社モニターを用いたインターネット調査
2026年 6月16日 – 6月22日
株式会社パーソル総合研究所
50~64歳の正社員・再雇用者では、管理職経験者が43.6%を占める。元管理職の約7割は元課長相当のミドルマネジメント層である。
管理職は、必ずしも本人の想定通りに退任するわけではない。管理職の35.3%が想定外の理由で退任している。
退任理由別に見ると、「組織改編」による退任者は81.0%が想定外と回答。制度に基づく退任は想定できるはずだが、「役職定年」「定年・再雇用」では約15%、「任期満了」では36%が想定外との回答であり、留任・再任を予想していた人と思われる。
退任理由は、「役職定年(32.9%)」「定年・再雇用(21.3%)」「任期満了(3.6%)」といった制度による退任が約6割を占める。
約8割が想定外の退任と答えた「組織改編」による退任は15.2%。「成績不振」「その他社命」などを含めた制度外退任が26.0%。自己都合は7.2%と1割を下回る。
さらに、退任時期は「想定通り」が47.8%である一方、25.1%は想定より早く退任している。退任年齢は、60歳での退任を希望・想定する人が4割前後と多数を占めるが、実際には54歳以下での退任が35.9%を占め、50代後半、60歳、61歳以上での退任よりも多い。
退任の説明(内示)は、「説明なし」または「1か月以内」の合計が39.1%を占める。組織改編による退任では「1か月以内」29.5%、「説明なし」26.7%で計56.2%と、突然の退任が特に多い。
退任は十分な準備期間なく訪れることが少なくない。そして、退任後には長い就業期間が待っている。
課長経験者の平均退任年齢は53.9歳で、65歳まで勤務する場合、退任後の就業年数は11.1年におよぶ(管理職としての経験年数も平均11.1年)。上位職ほど退任後の期間は短いが、部長経験者は平均57.1歳で退任後7.9年、事業部長・執行役員経験者は平均57.3歳で退任し、その後7.7年働く。
退任時に本人がどのように受け止めたかは一様ではない。
退任時の心境変化は「モチベーションが低下した」「喪失感・寂しさを感じた」などの否定的な心境も3割前後に上る一方、「プレッシャーがなくなり、気持ちが楽になった」49.0%、「自分のキャリアと向き合う機会になった」38.8%と、退任を「解放」と捉える人も多い。
管理職退任は喪失と解放の両面を持ち、肯定・否定の心境が併存する「交錯型」が41.0%と最も多い。退任理由別で見ても、「制度的退任」「制度外退任」「自己都合等」のいずれも交錯型が最も多く、喪失型が最も少ない。退任は必ずしもネガティブなものとはいえない。
元管理職の退任後の主たる役割を4タイプに分類したところ、自ら成果を創出する「プレーヤー」が47.2%と最多。定例業務・他者支援を担当する「サポーター」19.7%、組織内外の調整を行う「コーディネーター」18.7%、後進指導・育成を担う「メンター」が13.5%であった。
退任後の役割と元の最高職位との関係では、元課長は退任後に50.9%がプレーヤーになる。一方、元部長は41.8%、元事業部長では26.7%と、上位役職経験者ほど退任後にプレーヤー復帰する割合が低下する。元課長でコーディネーターになるのは15.9%と少数派。
退任後は経験職種に配置される場合が多いが、全体の26.7%が未経験職種へ異動している。サポーターは職種転換率が42.6%と最も高く、メンターは17.2%と最も低い。
職種転換では、いずれの役割4タイプも「営業」「技術」から「営業系ミドルバック」「コーポレート」への異動が多い。特にサポーターは「コーポレート」へ集中している。
退任後の役割への適合度を見ると、「高パフォーマンス×高役割納得(高×高)」36.1%、「低パフォーマンス×低役割納得(低×低)」34.6%と、高適応群と低適応群にほぼ二分される。現管理職は「高×高」55.4%、「低×低」21.8%。元管理職は現管理職に比べて高適応群が19.3pt少なく、低適応群が12.8pt多い。
退任後の役割への適合度を左右する要因を分析したところ、以下の結果が確認された。
「退任前職位」「管理職経験年数」「退任理由」や「年収変化」、「在任中のプレイング比率」などは適応度に影響していない。
次からは、適応度に影響する要因の詳細を見ていく。
退任後の仕事内容や上司などについて、事前理解が「高」群では、高適応群が50.8%を占めるのに対し、「低」群は21.4%にとどまり、逆に低適応群が過半数に達する。事前理解度は退任後の適応度と強く関連する。
事前準備「高」群は高適応群が51.3%に達する一方、「中」群は28.1%と「低」群(32.5%)をも下回り、低適応群も43.0%と最多。準備量に比例して適応が高まるわけではなく、徹底した準備層のみが際立って高い。
このように事前準備の重要性が示される一方で、実際には退任に向けて「備えとして行っていたことは特にない」が37.2%と最も多い。さらに「役職退任後については極力考えないようにしていた」も20.9%に上り、退任に向き合わないまま退任を迎えた層が少なくない。
準備の内容は「仕事に対する考え方を変えた」33.9%、「専門性を広げる努力」31.9%など内面の切り替えが上位。一方で「退任後のキャリアプランの計画」23.6%や「具体的業務の計画」22.8%などは低く、意識の変化が具体的な備えに結びついていない。
企業が提供する研修機会は、こうした準備不足を補う手段になっている。
研修「受講あり」群は高適応群が40.6%と「受講なし」群の28.2%を12.4pt上回る。差はむしろ低適応群で大きく、「受講なし」45.6%に対し「受講あり」28.3%と17.3ptの開きがある。
研修内容別では、リーダーシップスキルの開発の影響が最も大きい(パフォーマンス0.135***/役割納得感0.094*)。社外カウンセラーによるキャリアカウンセリング(0.096*)やセカンドキャリアプランの設計(0.081*)など、キャリア系研修も有意な関連を示す。
元管理職全体では、希望した役割に配置された割合は55.4%。3割が希望と異なる役割に就いている。役割別ではプレーヤー希望者の85.4%が希望と一致しており突出して高い一方、メンター希望者の希望一致率は40.9%にとどまる。
希望通りの役割を担う元管理職では高適応群が41.9%で、不一致層の31.6%を上回る。「希望なし」層は低適応群が54.2%と過半数を占め、不一致層より約20pt多い。
退任後の状況変化(年下上司、人事制度対象外など)には「納得」と「割り切り」を合わせると8~9割を占めるが、「納得」と「割り切り」では高適応群の割合が大きく異なる。
役割難易度が希望通りだった層では、難易度が高いほど適応度が高く、「チャレンジング」で高適応群は51.9%に達するが、チャレンジングな仕事を希望していない場合は、高適応群は13.3%と最も低い。また、希望の有無にかかわらず、「簡単」では、高適応群が2割台にとどまる。
プレーヤー復帰時に「気力・体力の衰え」を障害と感じる層でも、高適応群は35.3%とプレーヤー全体(34.4%)とほぼ変わらず、衰えの自覚が低適応に直結するわけではない。
むしろ「障害はない」と答えた層は高適応群38.0%・低適応群41.3%と二極化しており、業績先行群も3.3%とプレーヤー全体(14.1%)を大きく下回る。障害認識の有無より、復帰後に役割を再構築できているかが適応を左右する。
気力・体力の自覚よりも、むしろ退任後の役割で経験・スキルを活かせているかが適応に関わる。活かせる経験・スキルが多い層は高適応群が54.8%で、低活用層の約3.3倍に上る。
専門性レベルが高いほど高適応群が増え、業界第一人者、社内第一人者では半数前後が高適応群。一方、「業界第一人者」「社内第一人者」でもおよそ4分の1が低適応群であり、専門性の高さだけでは不適応を防げない。専門性レベルと実際の役割・難易度の不一致などが考えられる。
適応度を高めるには、専門性やスキルを持っているだけでは十分ではなく、それを現場で発揮する行動も問われる。
元管理職は「手」「足」「口」「目」を動かす現場行動が全12項目とも現管理職を下回るが、差は3.1〜15.6ptと一様ではない。自ら仕掛ける行動ほど低く、求められて応じる行動は維持されている。
差が最も大きいのは「目」で、視点の両立(−15.6pt)と状況変化への目配り(−12.5pt)。「口」は交渉・プレゼン(−13.5pt)、「足」は現場への直接アプローチ(−12.4pt)、「手」は試行錯誤(−12.3pt)が続く。一方、質問に丁寧に答える対応は−3.1ptにとどまる。
現場行動が高い層は高適応群比率が高く、低群との差はいずれの項目も40pt前後に上る(例:目が動く59.7%対13.9%)。パフォーマンスには「目(状況変化への目配り)」(0.263)が最も強く影響し、役割納得感には「口(交渉・プレゼン)」(0.275)が最も強く影響する。なお「足」「手」は役割納得感には有意な影響がみられない。
役割期待の明示の実施有無は、適応度と顕著な関連がみられる。期待役割明示の高群では高適応群が63.7%に達する一方、期待役割明示の低群では低適応群が56.1%と半数を超え、高適応群は2割を下回る。
現在の役割における目標設定の明確さや評価・フィードバックの納得性は、適応度と顕著な関連がみられる。目標の明確さ高群では高適応群が67.9%(評価の納得性73.0%)に達する一方、低群では低適応群が53.5%(同50.1%)と約半数を占め、高適応群は2割を下回る。退任後も目標を明確に設定し、納得できる評価とフィードバックを返すことが、適応の分かれ目になっている。
周囲からの承認は、適応度と顕著な関連がみられる。職場での承認が高い群では高適応群が68.8%に達する一方、承認が低い群では低適応群が54.3%と半数を超え、高適応群は2割を下回る。
職場での役割期待や承認に関する評価は、比較可能な10項目すべてで元管理職が現管理職を5.0〜12.6pt下回る。特に「評価への納得」34.8%、「適切なフィードバック」34.6%、「仕事への周囲の関心」37.0%が低く、退任後は役割説明、評価・対話・承認の機会が不足している。ただし現管理職も4~5割台にとどまり、決して高いとはいえない。
なお元管理職では、「元の役職にかかわらず気兼ねなくやり取りできる」58.8%に対し、「他のメンバーと同様に仕事が割りふられる」は45.2%と低い。
日本企業では、役職定年、定年・再雇用、組織改編等を契機として、多くの管理職が一定年齢以降に役職を離れる。しかし、管理職退任後もそのまま同じ企業で就業を継続する期間は長く、元管理職がどのような役割を担い、どのような適応状況にあるかは、企業における中高齢人材活用の重要な論点である。
退任後の役割はプレーヤー、コーディネーター、メンター、サポーターの4タイプに分かれ、その適応状況は高適応群(36.1%)と低適応群(34.6%)に二極化している。適応を左右しているのは、①退任前の理解と準備、②役割の設計と本人希望との一致、③経験・スキルの活用度、④退任後の職場運営(役割の説明・対話・目標設定・評価・承認)である。
当レポートでは、元管理職の退任後の適応度向上施策として、「事前(退任前の理解・準備)」「配置(4タイプに即した役割設計)」「運用(退任後の職場運営)」の3層から8つの提言を示す。
自社の「標準的管理職キャリア」について、新任管理職研修など早い時期に機会を設け、理解を促進すべきだ。研修では、以降の昇進確率、退任理由・退任年齢などのデータ、退任後の役割タイプと配置状況・要件、退任後役割におけるマネジメント経験の有用性など、本調査の主要項目を提示することが、登用から退任後までを通算したキャリア自律を後押しする。
従業員1000人未満の企業では10年以内の研修受講なしが47.0%にのぼり、受講なし群では低適応群が45.6%を占める。外部プログラムの活用を含め、研修機会の確保が課題である。
従業員個々のキャリアを考えるにあたり、若手・中堅や一般社員層ではキャリア面談が定期的に実施されることが多い一方、管理職本人のキャリア面談は盲点になりやすい。
管理職については、人事部による登用後2~3年サイクルでのキャリア面談を制度化すべきだ。面談では、専門性の棚卸し、退任後の4タイプの役割と要件の共有、今後のキャリア希望の聴取などを扱う。
目的は、単に退任に向けてということではなく、タレントマネジメントの観点から全社的な最適配置を検討し、専門性の状況と個別のキャリア希望を継続的に把握する総合的な面談と位置づける。配置は原籍組織に限らないため、人事部の直轄事項とし、人事部内に専任担当を置く。面談担当として同職種を経験した元管理職をアサインすることも考えられる。なお、職務遂行上の目標面談などは直属上司が担当する。
課の傘下に、社内外調整や定例的なマネジメント業務(会議運営、進捗管理、部門間・部門内調整、勤怠管理など)を分担するコーディネーターポジションを設置し、元課長を配置することで、課長の罰ゲーム化を防止し、意思決定や人材育成に集中できる体制を作ることができる。昨今の管理職昇進忌避傾向に対する歯止め効果も考えられる。
コーディネーターへの配置割合は元の役職が高いほど多く、元課長は15.9%にとどまる。課内コーディネーターは元課長の新たな活躍場所になりうる。
ただし役割の固定化防止のため1~2年の任期制とし任免権を課長に委ねる、指揮系統の混乱防止のため課長の専権事項を明確化するなどが必要だろう。
企業も個人も管理職経験者には後進指導・育成を期待しがちである。しかし、高齢化が進み、AIによる代替も見込まれる中、専任メンターの必要数はかなり限定される。メンティーは誰か、専任メンターは何名のメンティーを担当するのかなど、配置すべきポジションと必要数の絞り込みが必要だろう。
メンターは希望と実際の一致率が40.9%と最も低く、絞り込みによって一層狭き門になる。適任者の要件は、まずプレーヤーとしての通用性と専門性である。メンター機能はプレーヤーなど他の役割でも分担でき、後進育成の意欲は発揮しうる。
元管理職は約半数(47.2%)がプレーヤーに位置づけられる。50~64歳の正社員・再雇用者のうち43.6%が管理職経験者であり、母集団は大きい。労働力不足が深刻化する中、今後も自ら成果を挙げるプレーヤーへの配置が基本路線になる。
元管理職のプレーヤーとしての専門性は高い。「業界第一人者」8.0%、「社内第一人者」23.0%、「熟達レベル」40.4%、合計7割に及ぶ人材の専門性を活用しない手はない。そして、管理職として専門的判断を下し続けた経験は、プレーヤーに求められる能力をメタ認知させており、若手と同じ動き方によらない「新たなプレーヤー」像、高度専門業務を担う「シニアプロフェッショナル」像を描くことができるはずだ。
また、プレーヤーを希望して配置された者の「高パフォーマンス×高納得度」率は40.9%、非希望者は25.9%と差が大きい。プレーヤー希望者はプレーヤーに配置するとともに、成果に対するフェアでメリハリある処遇制度の整備・適用も必要だ。
サポーターは「低パフォーマンス×低役割納得度」が39.0%と4タイプで最も多い。未経験職種への転換率も42.6%と高く、コーポレート部門への集中がみられる(在任時10.3%→退任後34.5%)。スキル活用度や期待役割の明確さも低く、役割が曖昧な「受け皿型配置」になっている懸念がある。
業務の難易度が高いほど高適応群は多く、希望通り「チャレンジング」な業務を担う場合51.9%に達する一方、「簡単」な業務では希望通りかにかかわらず2割程度にとどまる。すなわち、簡単な業務を希望する人が多いサポーターでも、簡単な仕事に就いては適応しない。「業務負荷=業務量×難易度」と考えれば、調整すべきは難易度ではなく業務量である。サポーター配置は最小限にとどめ、業務量調整オプションを設けてプレーヤーへ配置することが望ましい。
適応度と最も強く関連したのは配置ではなく退任後の職場運営である。だが、元管理職は「評価への納得」34.8%、「適切なフィードバック」34.6%が低い。
背景としては、元管理職なので「本人に任せておけばよい」ということで、期待役割の擦り合わせや目標設定、評価のフィードバックが省略されやすい。また、年下上司の遠慮から対話が形骸化しがちになるなども考えられる。属人的な配慮に委ねるだけでは、この状態の改善は難しい。
一般社員層には、たいてい、1.「配置時の期待役割・職務範囲・権限の確認」、2.「目標設定と達成基準の明確化」、3.「定期的なフィードバック面談」、4.「評価結果の説明と貢献の承認」が制度として整備されている。元管理職についても、上司任せにせず、同じ水準の運用を標準プロセスとして実施すべきである。
あわせて、年上部下を持つ上司への対話研修や人事部による運用状況のモニタリングで確実な実施を担保したい。
給与の変化や昇進機会の喪失、年下上司といった変化は適応度に影響しない一方、経営関与や意見具申の機会が「ある」層では高適応群44.2%、「ない」層では28.0%と16.2pt低く、有意差を示している。
しかし、役職定年などによる制度的退任の主な目的は世代交代である。新陳代謝を妨げず、現役層が決裁権を持つことを大前提とした「インフォーマルな相談相手」「参謀役」としての活用が望ましい。「納得」と「割り切り」では適応度が大きく異なる。元管理職には、プレーヤーやコーディネーターなどでの新たな貢献が期待されていることへの納得を得るためのマネジメントが欠かせない。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「元管理職の社内キャリアに関する調査」
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