「はたらく人の休憩に関する定量調査」を発表
適切な休憩は心身の不調リスクを下げ、集中力を高める効果

職場環境や文化が休憩の質に影響

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:萱野博行)は、「はたらく人の休憩に関する定量調査」の結果を発表いたします。

働き方改革や健康経営の推進が重要視される中、従業員の休憩の質が心身の健康や労働生産性に与える影響が注目されています。しかし、業務の効率化や職場文化などの影響で、十分(適切)な休憩が取れていないケースも多く見られます。休憩は従業員の心身の健康を守り、業務パフォーマンスを向上させる不可欠な要素です。

本調査は、正規雇用就業者を対象に、休憩の実態と課題を明らかにし、効果的な休憩の取り方を検討するための基礎資料になることを目的に実施いたしました。

 

休憩時間とプレゼンティズム(出勤しているが、心身の健康上の問題があり、生産性が下がる状態)および「休めている実感」とプレゼンティズムの発生割合を確認したところ、休憩していない人は休憩している人に比べ、プレゼンティズムの発生割合が最大で15.0pts高く、「休めていない実感」がある人は、「休めている実感」がある人と比較して最大で16.3pts高い。

news_20250130_01

※ プレゼンティズムの詳細については、「主なトピックス(詳細)」の7(P6)を参照

 

本調査の“休憩”に関する定義

法律で定められた、労働から離れることができる時間を指す。
仕事の休憩は、労働者が権利として労働から離れることを保証された時間である。
一般的には「昼休憩」を指すことが多いが、企業の就業規則等によってその実態は異なる。多くは、勤務が6時間超で45分、8時間超で1時間の休憩、飲食休憩、その他の活動が含まれる。

 

主なトピックス

実態

  1. 職場で定められた休憩時間のうち、46分~60分程度(56.3%)の取得が最も多く、次いで61分以上(22.4%)であった。また、職場で定められた休憩時間以外の“小休憩”については、53.9%が取っていた
  2. 誰かと一緒に休憩を取っている人(同僚・上司・社外・家族)は37.3%であり、ひとりで休憩している人は62.7%であった。
  3. 平日5日間のうち、月曜に最も長い休憩時間を取得している人が多く(78.5%)、金曜日に向けて休憩時間が短くなる人が多い傾向が見られた。休憩後に業務へ集中できている人の割合も月曜日が最も高く、金曜日にかけて低下していく

休憩の実感と業務への影響

  1. 休憩で休めていない実感がある人は18.7%であった。職位別にみると、中間管理職(22.0%)、一般社員(20.6%)、経営層(14.6%)の順であった。
  2. 休憩で休めている実感のある人は、「取得する際に上司や同僚は快く承認してくれる」といった職場内のピア効果があった。
    ※同じ職場環境にいる人々の行動や態度が、自身の生産性、行動、さらには仕事への取り組み方や満足度に影響を与える現象を指す。
  3. 休憩時間が長い人、休めている実感がある人は「休憩後の業務に対して集中して取り組める」割合が高かった。
  4. 休憩時間が長い人、休めている実感がある人はプレゼンティズムの発生割合が低くなり、労働生産性にポジティブな影響が確認された。逆に、休憩しない人や休めていない実感がある人では、プレゼンティズムの発生割合がそれぞれ最大2倍程度と高かった。

休憩の過ごし方と効果

  1. 休憩の過ごし方を類型化したところ、①不本意タイプ(仕事を継続・強制的な休憩)②自己投資タイプ(身体を動かす・自己啓発する)③エンタメ没頭タイプ(音楽を聴く・スマホゲームで遊ぶ)④交流タイプ(上司・同僚と会話や食事・ランチミーティング)⑤仮眠タイプ(仮眠・瞑想)⑥ひとり時間タイプ(1人で飲食・趣味に没頭する)の6つのタイプに分類され、それぞれ異なる効果が見られる。
  2. 休めている実感の割合が高かったのは、「自己投資タイプ(55.0%)」「エンタメ没頭タイプ(49.0%)」「交流タイプ(48.7%)」の順であった。
  3. 休憩後に肉体的な疲労や精神的な疲労を感じていないのは、「自己投資タイプ(48.9%)」「交流タイプ(41.5%)」の順であった。
  4. 休憩の過ごし方とプレゼンティズムの発生割合において、「交流タイプ(15.6%)」「エンタメ没頭タイプ(18.5%)」はプレゼンティズムが低く、休憩後の集中力やパフォーマンスの向上が期待できる。

 

主なトピックス(詳細)

実態

  1. 職場で定められた休憩時間のうち、「46分~60分程度(56.3%)」が最も多く、次いで「61分以上(22.4%)」であった。また、職場で定められた休憩以外を“小休憩”として聴取したところ、小休憩をしている人は53.9%であった。

news_20250130_02

 

  1. 誰と休憩しているかについて、誰かと一緒に休憩を取っている人は37.3%であった(同僚・上司・社外の人・家族)。一方で、ひとりで休憩している人は62.7%であった。

news_20250130_03

 

  1. 月曜日に45分以上の休憩をとれている割合が最も高く(78.5%)、金曜日に進むにつれて45分未満の短い休憩の割合が増加傾向。

news_20250130_04

 

休憩後に業務へ集中して取り組めている割合が最も高いのは「月曜日(計44.7%)」であり、金曜日には3.2pts低下していた。

news_20250130_05

 

休憩の実感と業務への影響

  1. 休憩で休めていない実感の人は18.7%であった。職位別にみると、中間管理職(22.0%)、一般社員(20.6%)、経営層(14.6%)の順であった。

news_20250130_06

 

  1. 休憩で休めている実感のある人は、「取得する際に、上司や同僚は快く承認してくれる(65.0%)」、「直属の上司や同僚が積極的に休憩を取得している(49.9%)」といった職場のピア効果が見られた。
    ※ 同じ職場環境にいる人々の行動や態度が、自身の生産性、行動、さらには仕事への取り組み方や満足度に影響を与える現象を指す。

news_20250130_07

 

  1. 休憩時間が長いほど、休憩後は「業務に集中して取り組める」が高かった。また、休憩で休めている実感のある人ほど、休憩後は「業務に対して集中して取り組める」が高かった。

news_20250130_08

 

  1. 休憩時間とプレゼンティズムの発生割合を確認したところ、休憩していない人ではプレゼンティズムの発生割合が最大15.0pts高かった。また、休めていない実感の人は、休めている実感がある人と比較して、プレゼンティズムの発生割合が最大16.3pts高かった。

news_20250130_09

 

プレゼンティズム(Presenteeism)

出勤しているにもかかわらず、心身の健康上の問題があり、生産性が下がる状態のことを指す。 つまり、「出勤しているが、十分な能力を発揮できない」ということである。主な原因は、健康上の問題、精神的なストレスやメンタルヘルスの不調、過度な労働負荷や長時間労働などが挙げられる。プレゼンティズムが発生することにより、業務遂行能力や集中力の低下をもたらし、個人の成果だけでなく、チーム全体の効率にも負の影響がある。

 

休憩の過ごし方と効果

  1. 休憩の過ごし方の特徴について、階層的クラスター分析(データを類似性に基づいて階層構造で分析して、グループを作る分析手法)を用いて分類した結果、不本意タイプ、自己投資タイプ、エンタメ没頭タイプ、交流タイプ、仮眠タイプ、ひとり時間タイプの6つに分類された。

news_20250130_10

 

  1. 休めている実感の割合が高かったのは、「自己投資タイプ(計55.0%)」、「エンタメ没頭タイプ(計49.0%)」、「交流タイプ(計48.7%)」の順であった。一方で、休めていない実感の割合が高かったのは「不本意タイプ(計28.9%)」であった。

news_20250130_11

 

  1. 休憩後の肉体的な疲労感を感じない割合は「自己投資タイプ(計48.9%)」、次いで「交流タイプ(計41.5%)」が高かった。また、休憩後の精神的疲労感を感じない割合は「自己投資タイプ(計44.2%)」、次いで「交流タイプ(計38.6%)」が高かった。

news_20250130_12

 

  1. 休憩の過ごし方とプレゼンティズムの発生割合において、最も高かったのは「仮眠タイプ(22.0%)」、次いで「不本意タイプ(21.0%)」であった。一方で、最も低かったのは「交流タイプ(15.6%)」であった。

news_20250130_13

 

調査結果からの提言

パーソル総合研究所
研究員 田村 元樹

現在の労働環境では業務効率を求められる一方で、休憩の質が業務パフォーマンスに与える影響が見過ごされがちである。本調査により、適切な休憩が従業員の心身の不調予防と業務パフォーマンスの向上に必要であることが明らかになった。この結果を基に、改善に向けた3つの提案をする。

提案1: 休めている実感向上のために、職場文化を見直す

休めていると実感できることが、業務パフォーマンスを高める要素だと捉えることが必要だ。休めている実感がある人は「取得する際、上司や同僚は快く承認してくれる(65.0%)」といった、職場内でのピア効果も確認できた。上司や同僚も、休憩を進んで取得する習慣・文化の醸成が重要である。

提案2: 休憩空間の工夫と休憩しやすい居場所の整備

「交流する休憩」や「エンタメに没頭する休憩」など、自身にとって最適な休憩スタイルを選べることが必要だ。 また、共用エリアや個人がリラックスできるスペースを整備することにより「交流する休憩」、「自己投資する休憩」がしやすくなるだろう。従業員が自然と休憩の質を高められる休憩の居場所を整備すべきではないか。

提案3: 週末にかけて、休憩の変化に要注意

週末に向かい、休憩時間が短くなっていくことに注意が必要だ。休憩の過ごし方が変化することも関係しているだろう。 週末ほど、休憩後の集中力が回復しない傾向にあったため、意識的に休む必要がある。

物理的な環境整備だけでなく、業務効率を損なわない範囲で休憩を取り入れられる職場文化の醸成が鍵となる。休憩環境の整備と職場内でのピア効果によって、従業員の心身の不調予防と業務パフォーマンスの向上に寄与する休憩が普及していくことを期待したい。

 

効果的な休憩の過ごし方が業務パフォーマンスの向上に寄与

上司・同僚と会話や食事、身体を動かす、自己啓発するといった休憩の過ごし方は、プレゼンティズムが低くなり、休憩後の業務への集中が期待でき、効果的な休憩の過ごし方といえる。一方で、仕事をしながらの休憩や仮眠といった休憩の過ごし方は、プレゼンティズムが高くなり、効果の低い休憩の過ごし方であることが分かった。

適切な休憩時間の確保と過ごし方を知ることにより、休憩による効果を最大化できる可能性がある。

 

news_20250130_14

 

※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。

※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
 URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break.html

※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

 

調査概要

調査名称

パーソル総合研究所 「はたらく人の休憩に関する定量調査」

調査内容

・正規雇用就業者の休憩実態とその課題を明らかにする。

・休憩が及ぼす心身や業務への影響を明らかにする。

・休憩で休むための過ごし方の示唆を得る。

調査対象者

■Web調査

 全国の正規雇用就業者 男女20~69歳

 第一次産業(農林漁業)、1日の就業時間が6時間未満の労働者は除く

 ※労働力調査(2023年)を参考に割付 n=2,000

 

■日記調査

 Web調査のn=2,000から男女比に沿って抽出されたn=800を対象とし、平日5日間出勤している人に限定

調査手法

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査(Web調査+日記調査)

調査時期

Web調査 2024年 6月27日 - 6月29日

日記調査 2024年 7月8日 - 7月12日

実施主体 株式会社パーソル総合研究所

 

■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。

■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。

 

問い合わせ先

株式会社パーソル総合研究所 広報
TEL:03-6385-6888 Mail:

PAGE TOP