一方、出張には 「新たな気づき・学び」「前向きな態度変容」などの副次的な効果も
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、「出張に関する定量調査」の結果を発表いたします。
テレワークの浸透や経費削減などの影響もあり、多くの企業で出張業務(予算)が見直され、一部はオンライン会議などに代替されています。しかし、出張には現地・現物を確認し、取引先等と対面することで業務遂行を円滑にするといった直接的な成果だけでなく、新たなビジネス機会の創出や個人としての気分転換、学び・成長機会といった副次的な効果も期待できます。また、出張先地域の地方自治体において出張者は、観光客とは異なる潜在的な関係人口として期待される貴重な存在ともいえます。
本調査では、企業などにおける出張業務に着目し、組織と個人、そして出張先の地域にとっての副次的な効果について確認し、組織と従業員にとって有意義な出張の在り方、出張者の地域貢献意識を高めるための観点などを探ることを目的に実施しました。
出張への意識をみると、出張前・後のいずれのタイミングでも、出張を肯定的にとらえる割合は若年層で低い傾向。
また、出張前⇒出張後の意識変化(肯定意識の落差)は、若年層で大きい傾向。
出張は「現地・現物確認」「他者との信頼関係構築」など、業務を円滑に遂行するための重要な機会である。しかし、価値観の多様化やコロナ禍を経て、オンライン会議でも事足りると考える傾向も確認された。この傾向は特に若年層において顕著であった。
他方で、出張業務の成果とは目下の業務遂行だけにとどまらない。出張者は出張を通じて「新たな気づき」や「仕事への前向きな態度変容」、「偶発的なビジネス拡大」といった組織や個人にとっての副次的な意義を見出していた。とりわけ、「新たな気づき」は、移動中に行う学びの時間や、業務後に地域と関わる時間の中で生まれる可能性が示唆されている。
企業などの組織では今後、出張業務の目的や内容を機能面から再評価し、オンラインで代替可能な業務については積極的にオンライン会議を活用する方針が強化される動きは進むだろう。他方で、今回の調査結果にあるような副次的効果を含めて、出張機会を奨励する姿勢を維持することも重要と考える。
就業者が出張を肯定的に捉え、自身の学びや成長機会とするためにも適度な余白時間を大切にしたい。業務外に人との交流や娯楽を通じて、新たな気づきや仕事への前向きな姿勢(ワーク・エンゲイジメント)を促す効用が期待できるのであれば、出張中やその前後に休暇取得を許容(奨励)することも一案である。
また、出張とは、捉え方次第で職場内では得難い多様な学びを促進する越境的な学習機会ともなり得る。このため、出張後のリフレクションは重要である。上司との1on1や組織内で体験共有機会を設けるなど、個人の成長と組織全体のナレッジ向上を図ることを提案したい。
関係人口創出政策において、来訪実態を把握し難い企業等の出張者は、これまで主たるターゲットとはなっていなかったかもしれない。しかし、オンライン会議が普及する今日、組織が出張経費を支出してまで地域を訪れる人物は、地域に新たな刺激を持ち込む可能性をも秘めている。
調査結果では、交通費を除き一時的な滞在費として平均34,284円(支出総額62,216円-交通費27,932円)を支出しており、出張を通じて地域における消費やふるさと納税、イベント参加などに対する意識が高まったと述べる出張者が2割弱確認された。さらに、出張者は業務終了後の飲食・娯楽を通して地域住民と交流することで、地域への愛着が高まることが示唆された。
ただし、地域への愛着は訪問3回目でピークとなり、この間に有効な地域とのつながりを結べなかった出張者の愛着は、その後薄れていく傾向が確認された。その際、地域とのつながりを媒介する《つなぎ役》の存在は重要であり、《つなぎ役》として期待される人物には、ほがらかな人柄、ないしはビジネスを促進し得る知見を有するなどの特徴が示唆された。
地域政策として、出張者向けの地域情報発信や地元消費を促進するキャンペーンを展開することは有効だろう。さらに、出張者が業務終了後に街に出るきっかけを作るにはどうすればよいかを考えてみたい。例えば、出張者が気軽に立ち寄れるコワーキングスペース等を活用し、ビジネスラウンジ的機能を付加することを提案したい。執務空間の提供のみならず、来訪者同士(出張者や地元企業)を自然に引き合わせたり、当日参加可能な地域イベントや人気の飲食店の紹介などを行うことも有効と考える。ただし、その場を機能させるには、先述の特徴を有する《つなぎ役》の存在がカギとなりそうだ。
上記は一案だが、地域ごとに様々な工夫の余地のある観点であろう。
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と明記してください。
※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/business-trip.html
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
調査名称 |
パーソル総合研究所 「出張に関する定量調査」 |
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調査内容 |
・雇用組織と従業員にとって有意義な出張の在り方を探る ・出張者の地域貢献意識を高めるための観点を探る |
調査対象者 |
直近3カ月以内に国内出張を経験した正社員20~64歳 : 1,834s ※従業員数10人未満の企業に属する者/出張の滞在日数が日帰り、もしくは2週間以上の者/その地域に10回以上出張経験のある者 は除外 (追加調査)上記同様の条件の正社員 : 1,316s |
調査手法 |
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査時期 |
2024年4月3日-4月5日 (追加調査:2024年7月23日-7月25日) |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
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