“みえないリスク”軽減のためにも企業のガイドラインや制度の導入が必要
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、 「ワーケーションに関する定量調査」の結果を発表いたします。
テレワークの延長として「ワーケーション」という働き方が注目されています。政府はもとより、地方自治体においてもワーケーションを地方創生の切り札として捉え普及促進に力を入れており、ワーケーション関連のマーケットは拡大傾向にあります。一方で、企業側のワーケーション導入率は5.3%※2と低く、ワーケーションに対して消極的か無関心な人事担当者も多いと考えられます。
観光庁の定義※3に基づくと、「ワーケーション」には普段の職場や自宅とは異なる日常生活圏外の場所での多様な働き方が内包されているものの、就業者個人が認識しているワーケーションはその一部しか捉えられていない可能性があります。ワーケーションを広義的に捉えて、全体の効果傾向の確認やその要因を探るような調査研究はいまだ乏しいことから、本調査は、観光庁の定義に基づいた「ワーケーション」の経験者に焦点を当て、その実態および効果、さらに効果を最大化するための要因について明らかにすることを目的に実施しました。
※1 本調査における「隠れワーケーション」の定義:企業に隠れて行うワーケーション
※2 観光庁(2022年3月)「新たな旅のスタイル」に関する実態調査報告書 より。
※3 観光庁によるワーケーションの定義:普段の職場や自宅とは異なる日常生活圏外の場所で、仕事(テレワーク)をしながら自分の時間も過ごすこと(出張先等で滞在を延長して余暇を過ごす「ブレジャー」も調査対象とした)。
「ワーケーション」を類型化すると、個人単位で行うワーケーション(個人ワーケーション)5タイプとグループ単位で行うワーケーション(グループワーケーション)3タイプに分かれた。
勤務先からの費用補助を受けているのは10人に1人。(正社員:13.7%)有期雇用社員は正社員に比べ、勤務先、国・自治体からの補助を受けていない傾向。
【参考】 通常の観光時の有給休暇取得率は34.7%
※4 チーム・バーチャリティ:チーム内でPCやインターネットなどのテクノロジーを利用したコミュニケーションを行いながら、メンバー同士が対面せず地理的に離れた場所で活動する度合い
分散型組織の割合はワーケーション経験者の約4割。ワーケーション後の組織コミットメントを確認すると、「分散型組織×グループワーケーション」のスコアが最も高い。
ワーケーション後の変化・成果、ワーク・エンゲイジメントを見ても、「分散型組織×グループワーケーション」のスコアが最も高い。
※5 職務効力感:今回の経験で得たものが自身の仕事に活かせるかを感じる度合い
ワーケーションへの注目が集まる昨今ではあるが、本調査より、ワーケーションのイメージと実態にはギャップが生じていることが明らかになった。また、企業方針が不明瞭、もしくは禁止されている環境下で勝手にワーケーションする者や、隠れてワーケーションする者も確認された。こうした就業者は、テレワークが浸透してきている以上、今後も一定数出てくることが考えられる。ワーケーションは、従業員にとっては柔軟な働き方として魅力的な選択肢にもなり、企業側にとってのメリットも多いが、セキュリティリスクや労務管理上のリスクなどをコントロールしなければならない課題も生じる。ワーケーションというものを広い意味合いで捉え、適切なガイドラインを設け、就業者の動きを適切に調整することが、企業にとっての”みえないリスクの軽減”にもつながる。
ワーケーション制度の整備は、人的資本経営の実現やウェルビーイングの向上を目指すための取り組みの一環であると同時に、企業にとってのネガティブな側面を抑制する点においても必要な取り組みである。
ワーケーションは、有給休暇取得の促進やワーケーション後の前向きな意識・行動の変化などに良い影響があり、仕事においてプラスの効果が期待できそうであることが確認された。しかし、ワーケーションは多様であり、効果の程度はタイプによって異なる。「自己成長したい」「他者交流したい」などの明確な動機を持つワーケーションの効果は高い一方、明確な動機がなく、消極的な状態で行うようなワーケーションの効果は低い。これは、単に制度上でワーケーションを全面的に容認するのではなく、容認のあり方を工夫する必要性を示唆している。ワーケーションする目的の内容に応じて容認可否を判断するなど、企業と従業員の双方にとって意味のあるワーケーション制度の導入が必要であろう。
また、テレワークが普及する昨今において、ワーケーションはチーム力を高める上でも有効な取り組みであることが示唆された。個人だけでなく、チームにとっても有効な非日常体験のデザインが重要だ。
ワーケーションの効果を最大化させるためには、ワーケーション中の地域体験とあわせて、
企業・チームにおけるワーケーションしやすい雰囲気の醸成や、上司からのサポートも重要
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と明記してください。
※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/workcation.html
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
調査名称 |
パーソル総合研究所 「ワーケーションに関する定量調査」 |
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調査内容 |
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調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査時期 | 2023年6月5日 - 6月13日 |
調査対象者 |
■スクリーニング調査 全国の就業者 20~69歳男女、勤務先従業員人数10人以上 109,034s ■本調査 ① 直近半年未満のワーケーション経験群 n=3,500s ② ワーケーション未経験群 n=1,000s ・①のテレワーク頻度(1週間に 1日未満/1日程度/2~3日程度/4日程度/ほぼ毎日)に合わせて、②は割付。 |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
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