学び直しを3年以上※1続けることで年収が平均30万円(推計)高くなることが判明
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、産業能率大学・齊藤研究室と共同で実施した「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」(調査対象は35歳~64歳の有職者 N数=36,537)の結果を発表いたします。
政府は6月下旬に「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)を閣議決定。三位一体の労働市場改革※2を打ち出し、その具体的な施策の一つとして「リスキリング」が掲げられました。一方、パーソル総合研究所の先行調査※3では、日本の就業者の学習投資が諸外国と比較して著しく低く、加齢とともに新たな学習行動をとらなくなる傾向が明らかになっています。本調査では、高齢化が進む日本の労働市場において、就業人口のボリュームゾーンでもあるミドル・シニア層に着目し、学び直しの実態について多角的に把握することで、リスキリングの推進に寄与することを目的に実施いたしました。
本調査では、35~54歳をミドル、55~64歳をシニアと定義し、主に下記3項目についての定量的な分析結果を報告いたします。
① 就業者(ミドル・シニア層)の学び直しの実態
② 就業者(ミドル・シニア層)の学び直しの効用
③ 就業者(ミドル・シニア層)の学び直しの促進・抑制要因
※1 推計には3年よりも長い学習期間を含む
※2 三位一体の労働市場改革:リスキリングによる能力向上、職務に応じた適正なスキルの評価、自らの選択による労働移動の円滑化
※3 先行調査:「グローバル就業実態・成長意識調査 -はたらくWell-beingの国際比較」
※4 「社内にどんな職務があるのかが明らか」「社内公募による異動がある」「社内のキャリア・パスが明確」といった要素。
※5 キャリアのセルフアウェアネス:過去のキャリアで得た経験・スキルや未来の目標を意識化できている度合い
※6 働く人が将来や仕事に対してポジティブな感情を持ち、前進しようとする心の力
学び直しをしない理由では、まず「金銭的・時間的余裕」があがる。しかし、学び直しへの投資許容額よりも実際の投資額は少なく、労働時間が長い人ほど学び直している傾向も確認された。この背後には「心の余裕のなさ」や「振り返り機会の乏しさ」がありそうだ。何をどう学ぶかと考える前に、時に仕事から距離を取って、自分は「何のために働くのか?どう働きたいのか?」と問い直してみてはどうか。本調査結果では、キャリアのセルフアウェアネスを高めることが学び直しの実行につながっていたが、内省するにしても「心の余裕」は欠かせない。
また、学び直しは中長期的に年収が高まるなど「労力に見合う」ことが確認された。自分の興味・関心(好奇心)や仲間との語らいなど、学びを楽しむ自分なりのポイントを見出し、継続することが大切だ。いくつになっても、新しいことに挑戦することを恐れず一歩踏み出し、まずは粘ってやり続けることで得られる喜びもあろう。
大人の学びには実利的な側面もある。ミドル・シニア層には学び直し意欲を行動に移せていない人たちも多く確認された。学び直す意欲を行動に向かわせるためのインセンティブシステムを機能させることが重要だ。人事諸制度の内容や運用状況は就業者の学びを抑制してはいないか、育成施策は学びを促進するものとなっているかなど、社内アンケート等を通じ確認してみてはどうか。
本調査では、学び直しをしないことのデメリットを喧伝し、将来の不安を煽るだけでは行動が伴わない「口だけ層」が 増えることが確認された。危機感は学び直す意欲は高めるかもしれないが、合わせてキャリアのセルフアウェアネスを 高めることが肝要となる。この点においては、自身のキャリアについて振り返るような教育機会を設けることなどは有効 な施策となるだろう。
職場上司の言動は、部下の学び直し行動に影響していた。管理者自らが学び直しを実践するとともに、学 び直しに対する上司の積極的な言動は、学び直しに対してオープンな組織風土を醸成していくことにもつなが るだろう。
ミドル・シニア層は、現在の仕事ですぐに役立つ学びを志向しており、資格取得や研修参加など硬直的な学習 観を持つ傾向も見られた。体系化された知識をインプットする学びも大事だが、自身の経験の内省・概念化を 通じ、経験から気づきを得ていく「経験学習」、職場で気の合う仲間や問題・関心を同じくする仲間との活動を 通じて学ぶ「状況的学習」といった学び方の方が仕事上の効果を高めることが確認された。
生成AIなどの技術が急速に進化・普及する中、組織が提供する学びにも常に進化と変化が求められる。学習という行為を狭く捉えすぎず、就業者が働くことを通じて自らを更新し続ける意欲(4つの学び直しマインド)を育むことを重んじ、提供する教育施策を再構築していく必要があるだろう。
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所+産業能率大学 齊藤研究室」と明記してください。
※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/middle-senior-learning.html
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
調査名称 |
パーソル総合研究所 「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」 |
---|---|
調査内容 |
|
調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査時期 | 2023年3月24日 - 3月28日 |
調査対象者 |
■スクリーニング対象者:全国の就業者 35~64歳男女 最終学歴高卒以上 n=36,537 ※令和2年国勢調査の雇用形態・学歴別の構成比に合わせてウェイトバック処理 ■本調査対象者:業務外学習の実施状況・学び直し意欲により割付 ① 仕事関連学習層 n=1,800 ② 非仕事関連学習層 n=2,700 ③ 学び直し意欲あり・非学習層 n=2,700 ④ 学び直し意欲なし・非学習層 n=1,800 ①~④の合計 n=9,000 ※回答の早い上位10%のデータを削除 |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
共同研究 | 産業能率大学 齊藤弘通研究室 |
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
専門は人材育成論、質的調査法。慶應義塾大学文学部卒業、法政大学大学院政策創造研究科博士課程修了。博士(政策学)。専門社会調査士。産業能率大学総合研究所を経て現職。主に、高等教育機関における社会人教育の実態や学修効果、ビジネスパーソンの継続的な学び直しのあり方などを調査・研究。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
株式会社パーソル総合研究所 広報
TEL:03-6385-6888 Mail:prc_pr@persol.co.jp