本業の年収が低いほど副業を望む傾向にあるが、年収1500万円以上から副業者の割合は急増
企業ニーズと副業希望者のスキルにギャップ。キャリア形成につながる副業にはスキル獲得などが必要
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:渋谷和久)は、副業に関する調査結果(個人編)を発表いたします。本調査は、副業に関する企業・個人の実態を定量的なデータで把握するとともに、経営・人事に資する提言を行うことを目的に実施しました。
本調査結果のニュースリリースは「企業編」「個人偏」に分けてまとめており、本リリースは「個人編」となります(企業編は8月11日付ニュースリリースで発表)。また、副業に関する調査は2018年の実施に続き、2回目となります(前回調査結果は2019年2月のニュースリリースで発表)。
① 副業を行っている正社員の割合
現在、副業を行っている正社員の割合は9.3%。2018年の1回目の調査では同10.9%であり、1.6ポイント減少している。企業における副業の容認自体は進んでいるが、実際に副業を行う人の割合はほぼ横ばいである。
図表1.副業を行っている正社員の割合
② 副業を行っている正社員の割合(属性別)
正社員の男女ともに若い世代になるほど副業を行っている。本業の年収別にみると1,500万円以上から副業を行っている割合が急激に高まっており、職位別にみると部長相当以上で副業を行っている割合が最も高い。高いスキルを持っている人材は、そうしたスキルを活かして副業を行っていることが推察される。
コロナ禍で本業の収入が減った人が副業を行っている割合は12.6%となり、本業の収入が変わらない人の7.8%より高い割合となった。しかし、コロナ禍で本業の年収が増えた人が副業を行っている割合は15%となり、年収が減った人の割合よりも高かった。
図表2.副業を行っている正社員の割合(属性別)
➂ 副業者の割合が高い職種ランキング
最も副業者の割合が高い職種はコンサルタントで、約3割(29.8%)が副業を行っている。
図表3.副業者の割合が高い職種ランキング
④ 現在副業を行っていない正社員の副業意向
現在副業を行っていない正社員のうち、副業を行いたいと思っている人は40.2%。2018年の1回目の調査では41.0%であり、ほぼ横ばいである。
図表4.副業を行っていない正社員の副業意向
➄ 副業を行っていない正社員の副業意向(属性別)
現在副業を行っていない正社員において、本業の年収が低いほど副業を行いたいと思っている人の割合が高い傾向がみられる。実際に副業を行っている人の割合は、本業の年収1,500万以上から急激に高まっており(図表2参照)、希望と実態とのギャップがみられる。また、現在副業を行っておらずコロナ禍で本業の年収が減った正社員の過半数(52%)が副業を行いたいと思っており、年収が変わらない人や増えた人に比べて割合が高い。
図表5.副業を行っていない正社員の副業意向(属性別)
⑥ 地方での副業への関心
都市部に居住する副業者や副業をしたいと思っている人に対して、地方での副業に関心があるか尋ねたところ、関心があるとの回答割合は55.8%だった。
図表6.地方での副業への関心
➆ 初めて副業を始めた時期
現在副業を行っている人に対して、初めて副業を始めた時期について聞いたところ、厚生労働省のモデル就業規則改定以降とする回答割合は52.3%で過半数となった。新型コロナ感染拡大以降とする回答割合は25%で四分の一となった。
図表7.初めて副業を始めた時期(%)
⑧ 正社員が行っている副業ランキング
正社員が行っている副業ランキング1位はYouTubeなどのWEBサイト運営。
図表8.正社員が行っている副業ランキング ※複数回答
➈ 副業を行う理由ランキング
正社員が副業を行う理由ランキング1位は「副収入(趣味に充てる資金)を得たいから」で70.4%、2位は「現在の仕事での将来的な収入に不安があるから」で61.2%、3位は「生活するには本業の収入だけでは不十分だから」で59.8%。お金関連の理由がトップ3となった。
図表9.副業の理由ランキング
➉ 副業の時間・収入
正社員が副業にかけている日数は1か月あたり9日、労働時間は1か月あたり29.5時間となった(図表10)。副業の月収の中央値は4.1万円であり、時給の中央値は1,883円(図表11)。
図表10.副業にかける時間
図表11.副業による収入
⑪ 副業による意識の変化
副業を行っている正社員のうち、「転職したい」「独立・起業したい」などのキャリア意識が高まっている人の割合は2~3割程度。「専門性の高いスキルを身につけたい」「学び直しをしたい」などの学習意欲が高まっている人の割合は3割超。地方移住の気持ちが高まった人は18.8%。
図表12.副業による意識の変化
⑫ 副業による本業へのプラスの効果
副業者は本業への様々なプラスの効果を感じている。
図表13.副業による本業へのプラスの効果(%)
⑬ 副業によって本業に生じた問題・課題
副業によって本業に生じた問題・課題を聞いたところ、最も多かったのは「過重労働となり、体調を崩した」との回答割合で16.1%。「過重労働となり、本業に支障をきたした」も14.1%と3番目に高い回答割合となり、副業にとって過重労働が大きな問題・課題となっていることがうかがえる。
図表14.副業によって本業に生じた問題・課題(%)
2018年の1回目の副業調査時に比べて、企業側の副業に対する容認は進んでいると考えられるが、実際に副業を行っている正社員の割合は約10%とほぼ横ばいとなった。総務省の就業構造基本調査によれば、平成29年の調査時まで正社員の副業率は増加傾向にあったが、現状、副業者の増加に歯止めがかかっていると考えられる。
その要因の一つとして推察されるのがコロナ禍の影響だ。飲食業の休業や営業時間短縮などにより、パート・アルバイトで働く副業者の受け皿が減少したことが推察される。また、今回の調査データを概観すると、需要(副業者の受け入れ先)と供給(副業をしたい個人)にギャップがあることが見て取れた。副業を望むのは一般的な会社員に多いが、企業側のニーズが高いのは高スキル人材である。結果として高スキル人材に副業実施者が多いという実態が垣間見えた。個人側においては、中長期的なキャリア形成につながる副業を行うためには、様々な副業に目を向け、必要があれば新たなスキルを獲得していくなどの積極的な姿勢を持つことが求められるのではないだろか。
人材獲得に悩む地方の企業や自治体にとって朗報と言えるのは、都市部に居住する副業者や副業をしたいと思っている人のうち、地方での副業に関心があるとの回答割合が55.8%にも及んだことだ。テレワークや成果報酬型とすることで都市部の副業候補者を惹き付けることをお勧めしたい。
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と明記してください。
調査名称 | パーソル総合研究所 「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」 |
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調査内容 |
■副業に関する企業、個人の実態や意識を明らかにする。 |
調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査時期 | 2021年3月4日~3月8日 |
調査対象者 | 【企業調査】 勤務先従業員人数10人以上、年齢70歳未満 男女 経営層・人事(主任・リーダー以上)で人事管理(制度設計・運用等)について把握している者 n=1,500 【個人調査】 ■スクリーニング対象者 勤務先従業員人数10人以上 正社員20-59歳 男女 n=34,824 ※調査結果の数値は平成27年国勢調査の正規の職員・従業員性年代の構成比に合わせてウェイトバック集計実施 ■本調査対象者 上記スクリーニング対象者条件に加え、 副業(現金収入を伴う仕事)を現在行っている者(1ヵ月間で稼働0時間は除外) n=1,703 |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
株式会社パーソル総合研究所 広報室
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