本連載では、組織の管理職が、部下のキャリア開発支援を自身の役割と認識し、日常のマネジメントの中で実践できるようにしていくためには、どのような学びや経験が必要になるのか、という点について考えていきます。前回は、部下のキャリア自律を高めるための管理職の支援の必要性について述べました。今回は、管理職のキャリア支援についてより具体的に整理していきます。
前回もご紹介したように、部下のキャリア自律を促すマネジメント行動としては、「期待伝達」「ビジョン共有」「理解とフィードバック」が効果的です。
人事・人材開発ご担当者からよく、「年に一度キャリアプランシートをもとに上司・部下でキャリア面談は行っているのですが、これで本当に従業員のキャリア自律は促されているのか……。管理職の意識も大きく変わったように感じず、正直、面談の質も管理職によって差があるかもしれません」といった相談を受けます。皆さまがこのような相談を受けたらどのように回答されるでしょうか。そもそも、年に1回のキャリア面談だけで「期待伝達」「ビジョン共有」「理解とフィードバック」を満たすことができるのでしょうか。
ご存知のとおり、キャリアを考える時に基本となるのは、STEP1:自己理解を深める → STEP2:中長期未来のありたい姿(キャリアビジョン)を考える → STEP3:ありたい姿実現のための行動(キャリアプラン)を考える、といった3つのSTEPです。また、キャリアプランは一度考えて終わりではなく、自身を取り巻く環境の変化に合わせながら都度再検討することが必要です。
部下がキャリアプランを検討し、キャリア面談を行う。これだけで部下のキャリア自律行動が活性化する、というのは理想かもしれません。しかし、部下の中には、そもそもキャリアプランを描くことができない人もいるかもしれません。また、キャリアを描くための「STEP1:自己理解」がそもそもできていない人もいるでしょう。「あなたの強み・持ち味はなんですか?」と質問すると「特には……」と答える部下もいるかもしれません。年に1回の上司・部下の対話だけでは、部下のキャリア自律行動を促す支援としては不十分だといえるでしょう。
部下のキャリア自律を促す上司のマネジメント行動別に、具体的な支援策をあげてみましょう。
上司が部下に期待を伝える場面はどのようなものが考えられるでしょうか。勿論、年に1回のキャリア面談の際にも、お互いに認識合わせをしていきます。それ以外にも、期初の目標設定面談などで、部下への期待を伝えているのではないでしょうか。
昨今では、部下が指示された業務について、「この業務遂行が自身にとってどのような意義があるのか」を重視する傾向があります。日々の業務指示や進捗確認といったコミュニケーションの中でも、定期的に「期待」を伝えることが大切です。
組織からの期待をリードするビジョンについては、日頃から上司・部下で対話していることが求められます。また、上司自身が会社のビジョンを意識し、日頃の行動で体現している姿を見せることも重要です。
部下の取組みに対し、結果だけをとらえてフィードバックするのではなく、その過程において本人がどのように取り組んでいるのかを観察し、理解を示すこと。日頃から部下を観察し、部下自身が気づいていないキャリア資産(強みや持ち味、価値観、周囲からの期待など)を発見し、本人へ伝えること。これにより、部下は「ただ指示された業務に取組む」のではなく、自分の行動の意義をとらえ、成果獲得のために自身のキャリア資産をどのように活かすことができるかを主体的に考え、「やってみよう」という自己効力感を高めることができるでしょう。
部下のキャリア自律を効果的に促す上司の支援行動としては、以下のようなものが考えられます。
以上のように、管理職によるキャリア支援とは、キャリア面談だけでなく、日頃のコミュニケーションの延長の中でこそ可能なものが存在するのです。
以上のような背景を踏まえると、変化し続ける現代において、管理職の役割である「人的資産の活用を通して組織の業績向上、組織活性」を実現するためには、部下のキャリア自律度を高めていくことが効果的であり、それらは上司のマネジメント行動という支援によって加速させることができるということです。
従業員のキャリア自律向上に向けて、管理職の日々の支援がいかに影響を与えるかを理解いただけたと思います。これらの「支援」を活性化・促進させるためには、キャリア面談はもちろん、1on1など日頃の上司・部下のコミュニケーションの場をつくること、意識醸成のため管理職に必要な教育を実施することが必要不可欠であり、それらが循環するための仕掛けづくりが求められます。
キャリア自律促進に取り組まれているご担当者は、管理職が自信をもって部下のキャリア開発支援に取り組める仕掛けづくりができているか、是非一度、再点検してみるとよいでしょう。
次回からは、仕掛けの1つである「キャリア面談」について、実情やあるべき姿、プログラム設計のポイントなどについて述べていきたいと思います。

産労総合研究所 『企業と人材』2026年5月号より転載
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