「ワーケーションに関する定量調査」を発表
4人に3人が無自覚にワーケーションを経験、隠れワーケーション※1は14.1%

“みえないリスク”軽減のためにも企業のガイドラインや制度の導入が必要

 株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、 「ワーケーションに関する定量調査」の結果を発表いたします。

 テレワークの延長として「ワーケーション」という働き方が注目されています。政府はもとより、地方自治体においてもワーケーションを地方創生の切り札として捉え普及促進に力を入れており、ワーケーション関連のマーケットは拡大傾向にあります。一方で、企業側のワーケーション導入率は5.3%※2と低く、ワーケーションに対して消極的か無関心な人事担当者も多いと考えられます。

 観光庁の定義※3に基づくと、「ワーケーション」には普段の職場や自宅とは異なる日常生活圏外の場所での多様な働き方が内包されているものの、就業者個人が認識しているワーケーションはその一部しか捉えられていない可能性があります。ワーケーションを広義的に捉えて、全体の効果傾向の確認やその要因を探るような調査研究はいまだ乏しいことから、本調査は、観光庁の定義に基づいた「ワーケーション」の経験者に焦点を当て、その実態および効果、さらに効果を最大化するための要因について明らかにすることを目的に実施しました。

※1 本調査における「隠れワーケーション」の定義:企業に隠れて行うワーケーション
※2 観光庁(2022年3月)「新たな旅のスタイル」に関する実態調査報告書 より。
※3 観光庁によるワーケーションの定義:普段の職場や自宅とは異なる日常生活圏外の場所で、仕事(テレワーク)をしながら自分の時間も過ごすこと(出張先等で滞在を延長して余暇を過ごす「ブレジャー」も調査対象とした)。

「ワーケーション」を類型化すると、個人単位で行うワーケーション(個人ワーケーション)5タイプとグループ単位で行うワーケーション(グループワーケーション)3タイプに分かれた。

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主なトピックス

ワーケーションの実態

  1. 全就業者(全国20~69歳男女)の17.4%が「日常生活圏外の場所で仕事と自分の時間を過ごした」経験がある。
  2. 「日常生活圏外の場所で仕事と自分の時間を過ごした」経験者のおよそ4人に3人が、「ワーケーション」を行っていることを自覚していない。
  3. ワーケーション経験者の内、14.1%がほかのメンバーに隠れてワーケーション(隠れワーケーション)を行っている。
  4. ワーケーションについての企業方針がない、または、禁止されている中で実施している経験者がおよそ半数。「ワーケーション」を容認している企業の方が、隠れワーケーションは発生しにくい。
  5. チームワークの悪い組織や私的コミュニケーションが少ないチームで、隠れワーケーションは特に発生しやすい。

ワーケーションの効果

〈有給休暇取得促進の効果〉

  1. 地域に滞在している期間の内、約44%分が有給休暇として扱われている。

〈ワーケーション中の効果〉

  1. ワーケーション中の仕事の(主観的)生産性は、通常勤務時の6~7割程度。
  2. ワーケーション中の「職務効力感」(ワーケーションで得られた経験が仕事で活かせると感じたこと)の割合は約4割。

〈ワーケーション後の効果〉

  1. ワーケーション後に、仕事における意識・行動の変化や成果につながった割合は4~5割程度。
  2. ワーケーション後、はたらく幸せ実感が高まった割合は約5割。また、ワーク・エンゲイジメントが高まった割合は約4割。
  3. 分散型組織(PCやネットなどを利用しながら、メンバー同士が地理的に離れた場所で活動する組織)については、個人ワーケーションよりもグループワーケーションの方が、ワーケーション後の組織コミットメントやワーク・エンゲイジメントが高まる傾向。

ワーケーション後の効果を高める要因

  1. ワーケーション後の効果を高める上で、ワーケーション中に感じる「職務効力感」を高めることがポイントとなる。
  2. 職務効力感に対して、ワーケーション中の「非日常感」「体験の多さ」「現地交流の体験」「偶発的な体験」が正の影響を与えている。また、「体験の多さ」「現地交流の体験」「偶発的な体験」は「非日常感」に対しても正の影響を与えている。
  3. チームワークの高い組織や私的コミュニケーションの多いチームほど、ワーケーション後の効果(「仕事における意識・行動の変化、成果」「はたらく幸せ実感」「ワーク・エンゲイジメント」)が高い傾向。

主なトピックス(詳細)

ワーケーションの実態

1. 全就業者の17.4%が、「日常生活圏外の場所で仕事と自分の時間を過ごした」経験(=観光庁の定義に基づくワーケーション)を行ったことがある。また、そのタイプを確認したところ、個人で行うワーケーションの経験が多い。

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勤務先からの費用補助を受けているのは10人に1人。(正社員:13.7%)有期雇用社員は正社員に比べ、勤務先、国・自治体からの補助を受けていない傾向。

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2. 「日常生活圏外の場所で仕事と自分の時間を過ごした」経験者に対して、ワーケーションの経験有無を問うた。「経験あり」と答えた回答者は25.9%と、およそ4人に3人が「自分がワーケーションしていること」を自覚していない。

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3. ワーケーション経験者(無自覚含む)の内、14.1%が他のメンバーに隠れてワーケーション(隠れワーケーション)を行っている。特に、「息抜き集中」「仕事浸食」「動機低め」タイプは、5人に1人が隠れワーケーションを行っている傾向。

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4. ワーケーションを容認している企業(と認知されている割合)はおよそ半数。残りの半数は、ワーケーションの方針が出ていないか、禁止されている中でワーケーションを行っている。企業がワーケーションを容認している方が、隠れワーケーションは発生しにくい傾向。

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5. チームワークの悪い組織や私的コミュニケーションが少ないチームで、隠れワーケーションは特に発生しやすい。

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ワーケーションの効果

〈有給休暇取得促進の効果〉

6. 地域への滞在期間中に有給休暇が充てられた割合(利用日数)は、個人・グループワーケーションのいずれも約約44%。

【参考】 通常の観光時の有給休暇取得率は34.7%

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〈ワーケーション中の効果〉

7. 就業者の主観的生産性について、ワーケーション期間中は普段の仕事の出来と比べて6~7割程度の生産性しか発揮できていない。

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8. ワーケーション中に職務効力感を感じた割合は4割前後と、観光群よりも20pt程度高い。一方、健康回復は観光群よりも20pt程度低い。

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〈ワーケーション後の効果〉

9. ワーケーション後に、仕事における意識・行動の変化や成果につながった割合は4~5割程度。観光群よりも30pt程度高い。

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10. ワーケーション後にはたらく幸せ実感が高まった割合は約5割であるが、観光群との差異は特段見られない。一方、ワーケーション後にワーク・エンゲイジメントが高まった割合は約4~5割で、観光群よりも15pt程度高い。

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11. チーム・バーチャリティ※4の度合いで、組織を「分散型組織」「ハイブリット型組織」「対面型組織」の3つに分けた。

※4 チーム・バーチャリティ:チーム内でPCやインターネットなどのテクノロジーを利用したコミュニケーションを行いながら、メンバー同士が対面せず地理的に離れた場所で活動する度合い

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分散型組織の割合はワーケーション経験者の約4割。ワーケーション後の組織コミットメントを確認すると、「分散型組織×グループワーケーション」のスコアが最も高い。

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ワーケーション後の変化・成果、ワーク・エンゲイジメントを見ても、「分散型組織×グループワーケーション」のスコアが最も高い。

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ワーケーション後の効果を高める要因

12. ワーケーション後の効果を高める上で、ワーケーション中に感じる「職務効力感※5」を高めることがポイントとなる。

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※5 職務効力感:今回の経験で得たものが自身の仕事に活かせるかを感じる度合い

13. ワーケーション中の「非日常感」「体験の多さ」「現地交流の体験」「偶発的な体験」は職務効力感を高める傾向があった。また、「体験の多さ」「現地交流の体験」「偶発的な体験」は「非日常感」に対しても正の影響を与えている。

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14. ワーケーション後の効果を促進する組織的要因を確認したところ、特にチームワークの高い組織や私的コミュニケーションの多いチームほど、ワーケーション後の効果(「仕事における意識・行動の変化、成果」「はたらく幸せ実感」「ワーク・エンゲイジメント」)が高い傾向。

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調査結果からの提言

パーソル総合研究所
研究員 中俣 良太

企業方針の明確化によるリスク対策

 ワーケーションへの注目が集まる昨今ではあるが、本調査より、ワーケーションのイメージと実態にはギャップが生じていることが明らかになった。また、企業方針が不明瞭、もしくは禁止されている環境下で勝手にワーケーションする者や、隠れてワーケーションする者も確認された。こうした就業者は、テレワークが浸透してきている以上、今後も一定数出てくることが考えられる。ワーケーションは、従業員にとっては柔軟な働き方として魅力的な選択肢にもなり、企業側にとってのメリットも多いが、セキュリティリスクや労務管理上のリスクなどをコントロールしなければならない課題も生じる。ワーケーションというものを広い意味合いで捉え、適切なガイドラインを設け、就業者の動きを適切に調整することが、企業にとっての”みえないリスクの軽減”にもつながる。

 ワーケーション制度の整備は、人的資本経営の実現やウェルビーイングの向上を目指すための取り組みの一環であると同時に、企業にとってのネガティブな側面を抑制する点においても必要な取り組みである。

ワーケーションの効果と導入のポイント

 ワーケーションは、有給休暇取得の促進やワーケーション後の前向きな意識・行動の変化などに良い影響があり、仕事においてプラスの効果が期待できそうであることが確認された。しかし、ワーケーションは多様であり、効果の程度はタイプによって異なる。「自己成長したい」「他者交流したい」などの明確な動機を持つワーケーションの効果は高い一方、明確な動機がなく、消極的な状態で行うようなワーケーションの効果は低い。これは、単に制度上でワーケーションを全面的に容認するのではなく、容認のあり方を工夫する必要性を示唆している。ワーケーションする目的の内容に応じて容認可否を判断するなど、企業と従業員の双方にとって意味のあるワーケーション制度の導入が必要であろう。

 また、テレワークが普及する昨今において、ワーケーションはチーム力を高める上でも有効な取り組みであることが示唆された。個人だけでなく、チームにとっても有効な非日常体験のデザインが重要だ。

 ワーケーションの効果を最大化させるためには、ワーケーション中の地域体験とあわせて、
企業・チームにおけるワーケーションしやすい雰囲気の醸成や、上司からのサポートも重要

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※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と明記してください。

※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
 URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/workcation.html

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

調査概要

調査名称

パーソル総合研究所 「ワーケーションに関する定量調査」

調査内容
  • ワーケーションの実態やタイプについて明らかにする。

  • ワーケーションの効果(有給休暇取得促進/ワーケーション中の生産性/ワーケーション後の変化 etc.)傾向 について明らかにする。

  • ワーケーションの効果を高める要因について明らかにする。

調査手法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期 2023年6月5日 - 6月13日
調査対象者

■スクリーニング調査

全国の就業者 20~69歳男女、勤務先従業員人数10人以上  109,034s

■本調査

① 直近半年未満のワーケーション経験群 n=3,500s

② ワーケーション未経験群 n=1,000s
      └ ワーケーション意向有、テレワーク実施有、直近半年未満の観光経験有

・①のテレワーク頻度(1週間に 1日未満/1日程度/2~3日程度/4日程度/ほぼ毎日)に合わせて、②は割付。
・いずれもライスケール1問正答者

実施主体 株式会社パーソル総合研究所

【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/について

 パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。

【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

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問い合わせ先

株式会社パーソル総合研究所 広報
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