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ミドルの未来

ミドル3

55歳定年制が一般的だった高度成長期では、45-55歳とは職業人生を締めくくるキャリアの集大成にあたる時期でした。しかし70歳まで働くことを前提とすると、45歳は折り返し地点を過ぎたばかりの時期にすぎません。ミドルが転換期を迎える今、ミドルのキャリアデザインやミドルマネジメントはどうあるべきなのでしょうか?

- 委員会
第3回 議事要旨
『ミドルがキャリアをデザインできるようになるには?』

2012.09.03

現在、ミドルの停滞という言葉に代表されるように、ミドルの多くは自身のキャリアの展望を描けないままに立ち止まっている。結果、仕事への意欲、成長実感が低下し、仕事のやりがいを感じないなどの閉塞感に襲われてしまっている。統計上は失業率が最も低く、また所得水準が最も高い世代とされるミドルが、いま現実に自信を失い、キャリアの展望を描けなくなってしまっているのはなぜだろうか?
今回は、『ミドルのキャリアデザイン』を主題として取り上げた。まず、ミドルがキャリアをデザインできない理由について議論した。その理由を明示し、その上でミドルがキャリアをいかにデザインしていくのかということについて検討した。自助の視点から個人でできる取り組みを探り、共助の観点から会社や会社外の共同体が個人のキャリアデザインをいかに支援してくのか、公助の観点から政府に何を期待すべきかについて議論した。

ミドルがキャリアをデザインできない理由

ミドルがキャリアをデザインできない理由の主なものとして、次の3つが挙げられる。

第1に、「組織決定型キャリアパスの崩壊」である。従来、企業に入社すれば、大きな失敗をしない限り、エスカレーター式の昇進に応じて、権限や収入が増える仕組みになっていた。しかし、景気停滞による企業の成長鈍化から、定期的な昇給・昇進の可能性が限定され、さらに優秀な若手の抜擢などもあいまって、ポストや勤め先から押し出される事態が起きつつある。

第2に、「キャリアの長期化と不確実性の高まり」である。70歳まで企業で働く社会が現実のものになろうとしている昨今において、ミドル期は職業人生の折り返し地点に過ぎないのである。さらに経営環境の不確実性が高まったため、これらの結果、ミドルがこれからのキャリアを長期的に展望することが一層難しい時代となった。

第3に、「専門性の欠如」である。これには2つの背景がある。
1つは、専門性を磨くために必要な成長機会が不足していたことが背景にある。現在のミドルの多くはバブル期に大量採用された世代である。大量採用後に数年新卒採用を抑制した企業が多かったため、後輩が職場に入ってこないまま長い年月を過ごした人が多かった。また、新規事業への投資が抑制され、新商品や新規事業に挑戦する機会も失われた。こうした背景によって、今のミドルはマネジメントスキルや新規事業を通じた専門性の習得機会に恵まれなかった。

もう1つは、社外でも通用する専門性を意識してこなかったことが背景にある。キャリアは会社から与えられるものだとする捉え方が支配的で、自己の仕事経験を客観的に振り返り、どのようなキャリアを描いていくのかを自律的に考えてこなかった。社外でも通用する専門性が必要であることを十分に自覚してこなかったため、市場の変化に応じて求められる知識・スキルを習得することを怠ってきた。さらに、今の自分が身を置く業界や職種のピークがいつ頃なのかを常に意識して、行動する必要があるが、今のミドルが十分にできているとは言い難い。つまり、専門性について「社外でも通用するか」を意識すると共に、「これからの時代にも通用するか」という視点を持つことも重要であろう。

ミドルのキャリアデザインの解決策

ミドルが自らのキャリアをデザインするためには、どのような行動が必要になるのだろうか?ミドル自らができること(自助)、会社や社外の共同体ができること(共助)、政府ができること(公助)の3つの切り口から検討した。

・1.ミドル自らができること(自助)
キャリアデザインをするために、ミドル自身ができることは2つある。
第1に、キャリアについて自分で考える、言い換えれば、仕事における自己イメージを確立することが必要である。中でも、自らの仕事経験を棚卸しし、真の専門性を探ることである。真の専門性とは、他の人やモノにより代用されるものではなく、希少性が高く、社会的ニーズが十分にあるという3条件が揃っていることを意味する。つまり、自身の生み出せる価値を、いかに会社において発揮し、さらにいかに社会において発揮するのかを問い直すことである。
第2に、新しい仕事に挑戦するため、新しい知識やスキルを習得すること(=学び直し)が必要である。専門性の低いゼネラリスト的な知識・スキルは、特定の企業以外で通用しない場合が多い。つまり、高度な専門的な知識・スキルを身に付けるべきで、そのためには、まず今後どういう知識やスキルが価値を持つかを見極める必要がある。なお、新しい知識やスキルの習得自体も大変なことであるが、これまでに身に付いた知識やスキルを環境変化に応じて棄却するというマインドセットも必要となる。ただ、連続的に学習することや学習棄却することを自助だけで取り組むことは難しく、その助けとなるものが次に触れる“共助”である。

・2.会社や社外の共同体ができること(共助)
会社に期待されることは、各個人に対して会社からの期待役割を明確化することである。明確化された期待役割を各個人が自覚し、期待役割に対して専門性が不足していれば、学び直しなどの努力をしたり、期待役割が自身の関心や将来展望と一致しているかを再度確認するようになる。
社外の共同体に期待されることは、キャリアについて考え、新しい試みに挑戦する場を提供することである。まず、キャリアについて考える場としては、サードプレイスや社会人大学院のような場が有効である。会社の立場や肩書きを離れて、異質な価値観やものの考え方に触れることによって、自らを客観視できるようになる。その結果、自分の強みに気付くことや、深い関心が持てるものと出会うこと、自分の持っている知識・スキルへのニーズを発見することができる。次に、そうした気付きを実践する場として、NPO活動やプロボノ活動が挙げられる。社内では試行できない業務に携わることによって、自分の新しいキャリアを見出すことができるだろう。さらに言えば、こうした取り組みによって、本業で活かせる専門性を高め、自身の関心を期待役割の中に見出すミドルが増えることも期待できるのではないだろうか。

・3.政府ができること(公助)
政府に期待されることとして、以下の2つが挙げられる。
第1に、セイフティーネットや再訓練の仕組みの整備を進め、雇用の流動性を高めることである。個人が新しいキャリアに挑戦することのリスクを下げる環境を整備することで、自分自身でキャリアを考え、行動する個人を増やすことができる。これにより、組織決定型のキャリアパスの崩壊によってキャリア展望が描きにくくなっても、再挑戦に希望を持つミドルが増えることを期待したい。
第2に、各キャリアに必要な能力・スキル・知識について、社会全体のコンセンサスをつくることである。社会全体にコンセンサスがあれば、個人は目指すキャリアのために、どのような学び直しが必要かを理解しやすくなるし、企業としても学び直しについての評価をしやすくなる。これにより、専門性の欠如を埋めるための学習として、どのようなものが適切なのかを理解しやすくなるだろう。
このように、個人が現在の業種・職種を越えたキャリアをデザインしやすくなれば、成熟産業で活躍の場を失った個人が成長産業で新しい活躍の場を見出すような事例が増え、自然と成熟産業から成長産業への労働力の再分配が進むと考えられる。

日時:2012年9月3日(火)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室
参加者:
法政大学大学院政策創造研究科 教授 諏訪康雄氏
プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー 山本紳也氏
日本電気株式会社 コーポレートコミュニケーション部
広報統括マネージャー 中島英幸氏
ディー・エイチ・エル株式会社 オーガニゼーション ディベロップメント
マネージャー 牛島仁氏
グリー株式会社 ヒューマンリソース本部長 中西一統氏
株式会社インテリジェンス 取締役兼専務執行役員 小澤稔弘
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広

事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中 聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 兵藤 郷

※肩書きは当時のものです

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