公開日 2012/01/12
日本企業がトランスナショナル企業になるために、日本型人材マネジメントの何を変え何を残せば良いのだろうか?
今回の議論では、グローバル企業における採用や育成、配置などの本質的な"コア"を探ることで、日本企業が変えるべき部分の明確化を図った。
本委員会の議論により出されたHRMのコアとは「ビジネスモデルや"勝ち方"に即した採用や育成、評価、配置など」だといえる。
ビジネスモデルや"勝ち方"は企業によって異なるため、本来的には企業によってその採用スタイルや育成スタイルは異なるはずである。議論に出てきたグローバル企業の例においても、業界特性やビジネスモデルによってそのスタイルが異なっていることが確認された。
一方、日本企業に目を向けると、新卒一括採用に顕著なように、同じ採用・育成スタイ
ルを取ることが多い。自社のビジネスモデルや"勝ち方"、カルチャーやバリューを明確に定義しないまま、従来のスタイルに固執しているのではないだろうか。このスタイルへの固執こそがトランスナショナル化への弊害だといえる。
・採用→欲しい人材像の明確化や自社のカルチャー・バリューが明文化されないまま盲目的に新卒一括採用を導入している場合が多い。「自社が求める人材はどこにいて、どう採用すれば良いか?」という視点がないまま新卒一括採用に固執しているため外国人の採用などに結びつかない。
・育成/配置→自社が求める人材像が不明瞭なためキャリアパスやキャリアデベロップメントが整備されない。個ではなくマスで捉えた育成がなされているため外国人の社員にとっては目指すべき方向が見えず、意欲的な学習志向が芽生えにくい。
・評価/処遇→評価の基準が不明瞭であるため、"上がるべき人"が上がらず、インナーサークルで上がる。そのため国籍を超えた、統一の評価基準策定につながらない。
・組織目標に基づき、欲しい人材像や自社のバリュー・カルチャーをしっかり明文化する。その上で、学習者主体の育成や計画的なサクセッションプランニングを実践する。
・暗黙的なカルチャーフィットではなく、自社のカルチャーやバリューを明文化した上でのフィットを図る。
・バリューやカルチャーに基づく評価項目を明確化することで、国籍に囚われず「上げるべき人材」を上に上げる。
採用におけるコアは、自社の勝ちパターンに即した自社に合った人材を確保することである。そのためには、必要な人材像や自社のバリュー・カルチャーの明文化を行ない、それに合った人材を採るための適切な採用スタイルを取ることが求められる。企業によってバリュー・カルチャーや"勝てる"人材像は異なるため、採用スタイルも異なる。
委員会で議論されたグローバル企業の例においても、業界特性やビジネスモデルによって、採用スタイルが異なることが確認された。例えば、長期雇用が前提のBtoB企業においては、採用時点ではポテンシャルを重視し、育成段階で企業が求める"バリュー"に近づけていくというスタイルがとられていた。一方、BtoCで、且つ流動性の高い業界に属す企業ではカルチャーを全面に押し出すスタイルをとっており、明文化されたカルチャーへの共感のほか、働く職場とのフィット感を重視して採用する企業もみられた。
育成におけるコアは、自社のバリュー・カルチャーを体現する人材の継続的な輩出だといえる。その際必要なのは「あくまで学習者主体。企業はその成長をサポートする」という視点である。
議論されたグローバル企業では、人材を底上げするベースアップの育成以上に、上から引き上げるピックアップが重視されていた。育成においては、OJTとOff-JTがミックスされた学習者主体の教育体系がベースになっており、それが評価や報酬、キャリアデベロップメント、計画された経験などと連動することで、"個"が自発的に学習し続ける仕組みづくりがなされていた。
処遇や配置のコアは、カルチャーやバリューに基づく評価基準の明確化である。
日本企業は、評価基準が曖昧であるため国籍などに囚われた処遇から脱却できない。トランスナショナル企業になるには、評価基準の明確化やその浸透が求められる。
日時:2012年1月12日(木)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室
参加者:
コマツ 常務執行役員 日置政克氏
アジレント・テクノロジー株式会社 取締役 人事・総務部門長 島田智氏
株式会社日本総合研究所 調査部長 チーフエコノミスト 山田久氏
コーチジャパン ヴァイスプレジデント 人事部 島村隆志氏
HOYA株式会社 アイケア事業部 人事部長 内海将隆氏
一橋大学商学部准教授 島貫智行氏
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広氏
事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 森安亮介
※肩書きは当時のものです
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