技術者による全技術者の情報検索を可能に。導入3年目の進化

技術者相互の"Know-Who"

パーソルR&D株式会社
(現・パーソルクロステクノロジー株式会社)

導入初年度は技術者のスキル情報をデータ化、2年目はキャリア情報を追加
3年目、技術者による全技術者の情報検索を可能にしたタレントマネジメントのさらなる進化

パーソルR&D株式会社(現・パーソルクロステクノロジー株式会社。以下同)は「尖った技術」で世界のモノづくりを支える設計開発のプロフェッショナル集団だ。その事業領域は自動車業界を中心に航空機・宇宙機器・産業機械など多岐に渡る。約2,400名の技術者を擁し、受託開発やコンサルティング、技術者派遣を行っている。
『モノづくりは人づくり』との考え方から、さまざまな教育プログラムや技術継承のための社内環境づくりに取り組み、2年半前の2016年に技術者のスキル管理を目的としてタレントマネジメントシステム"HITO-Talent"を導入した。2019年現在、高い技術レベルを保有する技術者のスキル情報を全技術者で共有し、技術者相互で「この技術に詳しい人」を検索できる新機能"Know-Who"をスタートさせた。

タレントマネジメントの課題・チャレンジ

「1,000項目×6段階」のスキルマップをどうやって可視化し、活用するか

パーソルR&Dの事業領域は広い。機械設計開発では自動車業界を中心に航空機・宇宙機器・産業機械など。電気・電子設計開発ではエンジン制御コンピューターなどのカーエレクトロニクス分野や航空機・宇宙機器分野。制御ソフト開発では組込み制御ソフトウェア開発を強みとし、自動車・輸送機器、家電・OA機器、工作機械・FAシステムなど。実験・認証サービスではデータ採集から評価・解析・対策実験まで。また、近年注目されているモデルベース開発(MBD)も手がけている。
同社は、それらの事業領域に対応する技術をスキルマップとして一覧化・体系化した。「設計_機械_自動車_シャシ設計技術_サスペンション性能設計」「設計_電子ハード_FPGA・ASIC〈デジタル回路設計〉_Verilog」「設計_機械_航空宇宙_固定翼航空機_飛行機_エンジン・動力装置」「設計_共通項目_ MBD_ツール_MathWorks_MATLAB」「実験_自動車_ EV/HV/FCV 電磁両立性(EMC)試験」など約1,000項目に整理し、それぞれのスキル項目を6段階にレベルを分けた『スキルディクショナリー』を完備している。

パーソルR&D人事本部人事総務部長 斉藤淳氏 氏
パーソルR&D株式会社
人事本部人事総務部長
斉藤 淳氏

「エンジニアリング会社にとって技術者のスキル管理は事業成長のカギを握る最重要テーマのひとつですが、スキルディクショナリーを整備するだけでも大仕事でした。私たちも2013年にスキルマップ分科会を立ち上げて何度も検討を重ねて、完成までに2年かかりました。そのディクショナリーをもとに、毎年、全技術者のスキルを棚卸しするわけですが、Excel管理でしたから、2年分2400行のExcelシートが毎年溜まっていくわけです(笑)
特定スキルの保有者を横断的に検索することは時間をかければできるものの、異動者の人事情報の反映は追いつかず、閲覧制御もできない状態でした。せっかくのスキルマップ情報もストックしておくだけでは宝の持ち腐れです。特に活用面ではExcel管理の限界を感じていました」
そう語るのは、パーソルR&D 人事本部人事総務部長の斉藤淳氏。

タレントマネジメントの成果・ソリューション

スキルマップ情報を全技術者に開放。HITO-Talentで技術者相互の"Know-Who"を実現

パーソルR&Dは㈱日本テクシードと㈱DRD、ふたつのエンジニアリング会社を母体とし、日本テクシードは2009年、DRDは2013年にパーソルグループに入り、2017年に経営統合・社名変更を行い、現在に至る。
パーソルグループの一員となったことで、当時はまだ本格的な外販を行っていなかったパーソル総合研究所のタレントマネジメントシステム"HITO-Talent"を知る。
「こんなに便利なものがあったんだ、これでようやくスキルマップを活用できると思いました」

第1ステップとして、タレントマネジメントシステム導入初年度は人事給与システム(ワークスアプリケーションズ「カンパニー」)に格納している基本情報とExcel管理していたスキルマップ情報をHITO-Talentに取り込み、マネージャー以上で技術者の適材適所配属を主目的として活用を始めた。経営層が「旧・日本テクシードと旧・DRD、お互いの技術者がどのようなスキルを持ち、どこに所属しているのか」という可視化ができない限り、業務拡大やシナジーを生むことはできないという強い課題感を感じていたこともこの活動を後押しした。
第2ステップは、技術者を財産と考える社長の方針のもと、人財マネジメントツールとしての本格的活用に着手。技術スキルを軸に、技術者一人ひとりの「教育」「成長」「評価」「コミュニケーション」を一括集約・管理し、技術キャリア形成をサポートする視点で、異動発令情報だけではなく、担当製品や技術テーマ、習得技術、教育受講履歴などの詳細を含む「技術キャリア情報」をHITO-Talentに蓄積するとともに、ログインユーザー範囲を一般社員にも拡大した。

「このような活動を通して、導入当初からの目的のひとつだった"Know-Who"を実現する環境が整いました。ただ、スキルマップ情報はエンジニアリング会社の生命線といっていいほど重要な機密情報です。誰にどこまで開放するのかというセキュリティの問題をはじめ、運用方法など検討すべき事項が多くありました」

パーソルR&Dでは、新入社員を含む全技術者にスキルマップ情報を公開する試みをスタートする。この"Know-Who"とは「この技術に詳しい人」を技術者自身が検索し、コンタクトできるというものだ。より具体的には、各技術項目において「スキルレベル4=人材育成ができ、自分から付加価値が高い仕事を創りだせるレベル」以上の保有者を検索できる。
たとえば「設計_機械_自動車_シャシ設計技術_サスペンション性能設計」と検索するとスキルレベル4以上保有者の氏名・所属と上司氏名・連絡先がリストされる。
なぜそのスキル保有者の上司情報が提供されるのだろうか?
「理由は2つあります。ひとつはセキュリティの問題です。もうひとつは"Know-Who"を実際に機能させるための工夫なのですが、上司経由でスキル保持者に連絡が行くことによって、スキル保持者は、技術伝承を上司公認の"自分の仕事"として位置づけて取り組むことができるわけです」

今後のタレントマネジメントの展望

技術者キャリア開発のための計画的ローテーション機会の創出と、事務系・営業系社員のスキル管理・キャリア管理
HITO-Talentを使うほどにタレントマネジメントの進化、ステップアップが続く

パーソルR&DはHITO-Talent導入後、順調に活用範囲を広げ、タレントマネジメントをステップアップさせてきている。導入3年目、第3ステップはどのような計画なのだろうか。
「技術者のスキル情報・キャリア情報の見える化はかなり進んできました。技術者全員に"Know-Who"を十分に活用してもらい、技術伝承のインフラとして定着させることはもちろんなのですが、他にもやりたいことはたくさんあります。技術者のさらなるキャリア開発に向けて異動機会を創り出してキャリアデザイン支援をすること、特にお客様先に常駐している技術者については、技術者と上司との面談記録や契約期間、同一顧客・部門での勤務期間などをきめ細かくモニターして、計画的に異動させることも必要だと考えています。
また、これまでは技術者先行でタレントマネジメントを進めてきましたが、事務系・営業系の社員のスキル管理・キャリア管理も重要なテーマです」

タレントマネジメントを高度化させようとすると、必要とされるデータも増えてくる。特にキャリア開発では、今後どの方向に進んでいきたいかという社員本人の意思や計画が欠かせない。
導入後は、業務経験、キャリア情報、スキル情報等の棚卸しを年に一度、人事部がExcelで情報集約し、HITO-Talentに取り込んでいたが、ログインユーザー範囲を拡大したことを機に、今回の第3ステップでは技術者個々人がHITO-Talentへアクセスし情報追記・修正等の編集を行うことができる環境を整備する計画だ。今後は、セルフメンテナンスを促進させることで、担当業務が変わる際などに身に付けた技術や経験を速やかにアップデートすること、自分の経歴は自分で管理する習慣を浸透させること、その結果として、情報の鮮度を維持するとともに自分の技術キャリアを考えるためのツールとしてもHITO-Talentの活用度を向上させてゆく。

アクセス数

パーソルR&Dではタレントマネジメントシステム導入当初からHITO-Talentへのアクセス人数・アクセス数をモニターし、導入2年目の昨年度、マネージャー以上の各月のアクセス率はほぼ80%超、アクセス数は毎月ひとり平均55回と、すでにかなりのヘビーユーザー振りだ。
「HITO-Talentを使うほどに、やりたいことが増えていきます(笑)」
今回のセルフメンテナンス化によって、パーソルR&Dのタレントマネジメントのステップアップがさらに加速していくに違いない。

※取材日:2019年11月。内容・肩書等はすべて取材当時のものです。
※パーソルR&D株式会社は、2023年1月パーソルクロステクノロジー株式会社に社名変更しました。

パーソルR&D株式会社(現・パーソルクロステクノロジー株式会社)

業種:サービス業/設立:1979年/事業内容:設計・研究開発・実験事業

パーソルクロステクノロジーは『"尖った技術"で社会の発展に貢献する設計開発のプロ集団』として、自動車・航空宇宙関連機器・家電・ロボットなどの設計・開発・実験において、モデルベース開発(MBD)をはじめとした先端技術で社会に貢献するエンジニアリングカンパニーです。

https://persol-xtech.co.jp/
ISMSマーク

タレントマネジメント事業本部は情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISO27001を取得しています。
(登録番号:IC20J0508)

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