労働市場の未来推計 ~2025年、このままいくと何万人足りなくなるのか?~

多くの業種で、人手不足が課題となっています。
そこで、パーソル総合研究所では、約10年後の2025年に向けて、経済成長率0.8%を維持するために
必要な就業者数の推計と、人口動態から推計した就業者数のギャップを算出しました(※1)。

そこから見えてきたのは、2025年に約600万人の人手不足が懸念されることです。
今後、どれくらい人手不足解消の余地や可能性があるのか、
先進諸国などの状況をベンチマークとして推計しました。

583万人 人手が足りなくなる 2025年時点の人手不足の状況は……

2025年時点の産業別需給ギャップ

  • 不足
    情報通信・サービス業

    -482万人

  • 不足
    卸売・小売業

    -188万人

  • 不足
    農林水産業 鉱業

    -57万人

  • 不足
    運輸業

    -49万人

  • 不足
    建設業

    -39万人

  • 不足
    金融・保険・不動産業

    -31万人

  • 不足
    電気・ガス・水道業

    -2万人

  • 余剰
    製造業

    19万人

  • 余剰
    政府サービス等

    246万人

現在の2倍以上の不足 ※2
  • ※1:経済成長率0.8%(内閣府『中長期の経済財政に関する試算』におけるベースラインケース)を2025年まで継続した場合の必要な就業者数の推計と、
    人口動態から推計した就業者数のギャップ
  • ※2:2016年時点の有効求人数248万人

人手不足の解消に向けた4つの選択肢

1 働く女性を増やす

2025年、30代以上の日本の女性の労働参加率は?

スウェーデン(2014)91.4%

日本(2025)73.3%

2014年のスウェーデン並みに引き上げ

出所:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 平成27年度版」、OECD Stat, Labour Force Statistics, LFS by sex and age - indicators

2014年時点のスウェーデン並みに30代以上の女性が働けるようになれば ※30〜64歳の女性

350万人が労働参加

2025年、日本の女性の就業状況は、活躍先進国であるスウェーデンの2014年時点に比べ、就職当初は同率であるにもかかわらず、30~40代では10~15%の開きがでています。結婚・出産・育児とライフイベントが重なる30~40代で職を離れてしまう人が依然存在するようです。育児支援や休暇など制度面で強力なバックアップがあるスウェーデンに比べ、まだまだ女性活躍が進みづらい日本。女性の労働参加を増やすには、子育てと両立しやすい環境をより一層整えていく必要がありそうです。

2 働くシニアを増やす

2025年、65歳以上70歳未満のシニア労働参加率は?

57.6%
60〜64歳の労働参加率と同等に
79.1%
21.5pt UP
39.4%
女性の労働参加率がスウェーデン並みまでのびる想定で60〜64歳の労働参加率と同等に
53.4%
14.0pt UP
出所:総務省「労働力調査」(2015年)

60代後半も、60代前半と同じくらい生き生き働けるようになれば

167万人が労働参加

内閣府の調査によると(※)2008年時点で「70歳になっても働きたい」と希望している60歳以上のシニアの方は7割を超えています。しかしながら、今回の推計では、2025年に働いている65歳〜69歳の方だけを見ても、男性57.6%、女性39.4%と7割には届いていませんでした。
70歳定年延長も具体化しつつある中、65歳以上のシニアのうち、せめて65〜69歳の方が60〜64歳までと同じくらい働けるようになれば、167万人の労働力増加が期待できるだけでなく、生き生きと働くシニアの増加で会社も社会もより活性化するのではないでしょうか。
※内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20年)

3 働く外国人を増やす

2025年、日本の労働力人口に外国人が占める割合は?

  • 0.8%
  • 1.0%
  • 1.1%
  • 1.4%
  • 1.5%
  • 1.7%
  • 1.9%
  • 2.1%
  • 2.3%

国別に見た労働力人口に占める外国人の割合

  • アメリカ
    16.2%
  • ドイツ
    9.4%
  • イギリス
    8.2%
  • フランス
    5.8%
  • 日本
    0.8%

出所:厚生労働省「外国人雇用状況報告」「外国人の雇用状況の届け出状況について」、国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(2012)
※各国の外国人労働者割合の数値はアメリカ、ドイツ、フランス、日本は2009年、イギリスは2013年のものです

日本の労働力人口に占める外国人の割合が2015年時点(1.4%)の2倍(2.8%)に伸びれば

34万人が労働参加

留学生の受け入れや「専門的・技術的分野」の在留資格の外国人労働者の増加に伴って、日本で働く外国人の方は、2025年には今よりも約53万人増え、全労働人口に占める割合は2015年時点の1.4%から2.3%まで伸びる見込みです。現在100人の職場に1人の割合で働いている外国人の方が、2025年には50人に1人の割合になり、今よりももっと会社の中で働く外国の方を見かけることが増えるでしょう。とはいえ、2.3%では主要先進諸国のレベルにはまだまだ及びません。法律や雇用制度など政策の影響が大きい分野ではあるものの、一つひとつの職場におけるダイバーシティの促進など、外国人の方が働きやすい環境を今から整備し、2015年時点の2倍(2.8%)まで全労働力人口に占める外国人の割合を増やしていければ34万人の人手増加が期待できます。

4 生産性を向上する

日本の労働生産性の伸び率を約3割上げると …

  • 日本 0.9%
  • 目標数値は1.2%
3割増

出所:公益財団法人日本生産性本部「日本の生産性の動向2015年版」世界銀行等のデータによる 実質労働生産性上昇率/年率平均(2010~2013年)

労働生産性を今よりももっと早いペースで向上させれば ※1時間当たりの労働生産性の伸び率 0.9%→1.2%

114万人必要となる人手が減る

人手不足を解消するには、働いていない人々の労働参加を促すことも重要ですが、今の職場の生産性を向上させる努力も必要でしょう。近年目ざましく進展するAIやIoTの活用、人材配置の最適化などにより、今後さらに大幅な生産性の向上が見込めます。日本の労働時間1時間当たりの実質GDPは今、年率平均0.9%伸びていますが、これを現在の約3割増の年率1.2%に伸ばすことができれば、2025年に必要な人手は114万人分減少することが期待できます。これを実現するには、働き方の抜本的改革など、かなり大きな変化や努力を要するでしょう。しかし、そのぶん人々はより高度な仕事や自分のスキルに合った仕事に集中して力を発揮することができるようになり、より良い成果が多く世の中に生まれていくのではないでしょうか。

4つの選択肢により人手不足の解消が見込まれる人数 665万人

  • 1 働く女性を増やす 350万人
  • 2 働くシニアを増やす 167万人
  • 3 日本で働く外国人を増やす 34万人
  • 4 生産性を向上する 114万人

労働市場の未来推計 人手不足解消へ向けて

今回は、経済の成長や人口の増減が過去のトレンドのまま継続した場合を想定して、2025年における必要な就業者数と、働いてくれそうな人の人数を推計しました。そのうえで、人手不足解消に努めた場合に期待できる不足解消の人数を推計しました。ここで紹介した推計結果は、あくまでも先進諸国の状況などをベンチマークとしたときの可能性の一つです。当然、ビジネス環境の変化や法律、科学技術の発展、そして企業や個人の努力や変化によって、この数字は増減するでしょう。しかし、いずれにしても変わらないことは、働く人を増やしていくために、人々が「働きたい!」と思えるような環境を整えることが何よりも重要だということです。

人々が生き生きと働き、個人の成長によって組織が成長している社会の実現に向けて、各社や各人のできることは何か。この推計によって、ほんの少し考えてみていただくきっかけになれば幸いです。

「労働市場の未来推計」プロジェクト

※2016年6月に発表しました「労働市場の未来推計」につきまして、より精緻な数値を確認するため、2016年10月に、非連続なトレンド(①海外への長期滞在者・移住者の増加、②長期介護離職の増加)も考慮して一定の調整値を乗じて再推計を行いました。

PDF詳しい資料はこちらからダウンロードいただけます。[512KB]

■推計について
以下の手順で、Ⅰ.【2015年度の経済成長率0.8%を維持したときに2025年に必要となる就業者数】とⅡ.【人口減少に伴い、2025年に予想される就業者数】を推計し、ⅠとⅡのギャップを確認した。
Ⅰ.【2015年度の経済成長率0.8%を維持したときに2025年に必要となる就業者数】
①内閣府「国民経済計算(実質国内総生産)」を基に、2015年度の経済成長率0.8%(内閣府「中長期の経済財政に関する試算」におけるベースラインケース)が継続した場合の「産業別国内総生産」を推計。
②内閣府「国民経済計算(雇用者数、労働時間)」を基に、1995~2014年の生産性の伸びの相加平均値が2025年まで継続した場合の「産業別労働生産性」を推計。
③①②から産業別雇用者数を算出。総務省「労働力調査」2014年平均の「就業者数に占める雇用者数の割合」を用いて、「産業別就業者数(副業調整前)」を推計。
④副業分を調整し、「産業別就業者数」を算出。

Ⅱ.【人口減少に伴い、2025年に予想される就業者数】
①国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」と、2006年~2015年の総務省「労働力調査」年齢階級(5歳階級)別の労働力率を基に、過去の就業率のトレンドが2025年まで継続した場合の就業者数を推計。なお、非連続なトレンドとして、①海外への長期滞在者・移住者の増加、②長期介護離職の増加を考慮し、一定の調整値を乗じて推計。失業率は2015年の失業率3.4%で固定。
②総務省「国勢調査」の産業別就業者割合を基に、1995年~2010年のトレンドが2025年まで継続した場合の産業別就業者割合を「国勢調査」の産業分類にて推計。
③産業分類をⅠの「国民経済計算」の産業分類と揃えた「産業別就業者数」を算出。

※引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。
【出典記載例】  パーソル総合研究所 「労働市場の未来推計」(2016年)