調査では、はたらく幸せを感じている人は44%、不幸せは20.2%と判明。幸せは仕事の成果に影響
幸せ実感ランキングについて、職種別1位はマーケティング・企画、業種別1位は教育・学習支援業
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:渋谷和久)は、幸福経営学に関して高い知見を有する慶應義塾大学の前野隆司研究室とともに、「はたらく人の幸福学プロジェクト」の成果を発表いたします。
今回の共同プロジェクトでは、はたらく幸せ・不幸せをもたらす普遍的な7つの要因を特定し、それらを測定する新たな診断ツール「はたらく人の幸せ/不幸せ診断」を開発しました。この診断ツールを用いることで、はたらく幸せ・不幸せをもたらす要因を自分がどの程度持っているかを計測することができます。また、診断ツールの共同開発とは別に、「はたらく人の幸せに関する調査」も実施しましたので、その結果要旨を発表します。
① 定性・定量調査により、どうすれば「幸せ」にはたらけるのか、どうすれば「不幸せ」にはたらかずに済むのかについて、十分に説明できる要因(以下、因子と呼ぶ)をそれぞれ7つ特定した。
「はたらく人の幸せの7因子」は、①自己成長、②リフレッシュ、③チームワーク、④役割認識、⑤他者承認、⑥他者貢献、⑦自己裁量。
「はたらく人の不幸せの7因子」は、①自己抑圧、②理不尽、③不快空間(はたらく環境の不快さ)、④オーバーワーク(過重労働)、⑤協働不全、⑥疎外感、⑦評価不満。
② 1つの因子につき3つの設問を設け、7件法(全くそう思わない~とてもそう思うの7段階)の回答を基に得点化(全くそう思わない=1点~とてもそう思う=7点)し、回答者の幸せ・不幸せといった幸福度を測る。
はたらく幸せ・不幸せをもたらす要因の状態が定量的に可視化できるため、どうすれば「幸せ」にはたらけるのか、どうすれば「不幸せ」にはたらかずに済むのかが分かるツールとして利用できる。これにより、自組織の制度やマネジメントの在り方の検討、個人のキャリア開発やワークライフバランスに活かすことができる。
③ 従来の研究では幸福感が高いか低いかだけを測定していた(1軸モデル)。今回共同開発した診断ツールでは、幸せ・不幸せをもたらす要因がどの程度あるかを計測することで、はたらく人の心理状態をより正確に表現できるようにした(2軸モデル)。
以下の設問一覧について、7件法の回答を基に得点化(全くそう思わない=1点、そう思わない=2点、どちらかというとそう思わない=3点、どちらでもない=4点、どちらかというとそう思う=5点、そう思う=6点、とてもそう思う=7点)することで、はたらく幸せ・不幸せをもたらす要因をどの程度持っているか計測できます。
自らや自組織ではたらく人の幸福度を測るツールとしてご活用ください。また、回答で得られた得点がどのような水準にあるかが分かるよう、全体平均・職種別・業種別の得点も併せて公表します。
※上記のエクセルデータもご提供します。エクセルは➝こちら
ご参考:全体平均・職種別・業種別データ(幸せ因子)
ご参考:全体平均・職種別・業種別データ(不幸せ因子)
かつてトルストイは『アンナ・カレーニナ』の冒頭で、「幸せな家庭は似ているが、不幸せな家庭にはそれぞれの不幸がある」と述べ、幸せと不幸せは対向概念ではないことを示唆しました。「職場も同様なのではないか。幸せな職場の条件と不幸せな職場の条件は単に表裏なのではなく、別々のものとして存在しているのではないか」。このような仮説の下で行ったのが本調査です。
結果はご覧の通り、幸せでないことが不幸せなのではなく、幸せの条件を満たし、かつ不幸せの条件を満たさない職場が幸せな職場だったのです。はたらき方のために極めて重要な新発見と自負しています。
パーソル総合研究所と前野隆司研究室は、新たな診断ツールの共同開発とは別に、「はたらく人の幸せに関する調査」を実施した。調査結果の要旨は以下のとおり。
※上記ランキングのとおり、業種や職種により、幸せ・不幸せ実感の平均値は異なりますが、それぞれ幸せ・不幸せをもたらす7因子(要因)の傾向には特徴がみられました。業種や職種それぞれにはたらく幸せ・不幸せの形があると言えます。
年齢別にみると、加齢とともに、はたらく不幸せを感じにくくなっている。20代の半ばから後半にかけてが最も辛い時期といえる。一方、60代はどの年代よりも幸せ実感が高く、不幸せ実感が低い。これは、加齢の影響に加え、定年後もリタイアせずにはたらき続けている人の多くは、心身が健康であり、元々はたらくことを通じた幸福度が高いことが影響していると考えられる。
「課長相当」以上で、職位が上がるにつれ、幸せ実感が高まり、不幸せ実感が低下する傾向がみられる。幸せ/不幸せの7因子も同様に上昇/低下する傾向があり、裁量の拡大や社会的地位の向上などにより、因子が改善されると考えられる。
個人年収別にみると、年収が上がるにつれて、幸せ実感が高まる傾向がある。また、1000万円で不幸せ実感は下げ止まる傾向がみられた。先行研究では、年収が一定水準以上になると幸福度との相関が弱まると言われており、この下げ止まる傾向もそれを支持する結果だと考えられる。
① はたらく幸せ実感が高い群ほど、個人としても組織としてもパフォーマンス(仕事の成果)が高い。その逆に、はたらく不幸せ実感が高い群ほど、パフォーマンスが低い。
② 「一緒に目標を設定」「仕事ぶりに見合った評価」「ねぎらいの言葉をかける」といったマネジメント行動の実施率は30%未満にとどまるが、部下の幸せ実感に影響しており、意識的に実施すべき。
➂ 「自分が一番正しいと思っている」「自分を客観視できない」「数値や結果だけを求める」といったマネジメント行動の実施率は20%以上だが、部下の不幸せ実感に影響しており、注意すべき。
パーソル総合研究所と前野隆司研究室による共同プロジェクトは、従業員一人ひとりの価値と、企業側の価値(業績向上/戦略実現)とを合致させる概念として「はたらく人の幸せ」に着目し、新たな経営指標や組織マネジメントの在り方を探索するために実施したものとなります。調査結果からは、はたらく幸せを感じていることが、個人のパフォーマンスだけでなく、組織のパフォーマンスや前年比売上増加率にまで影響を与えると結果が得られました。すなわち、企業が従業員の主観的幸福感の向上に取り組むことの妥当性を裏付ける統計上のエビデンスが得られたと言えます。
共同プロジェクトの背景には、今回のテクノロジーの進化や人生100 年時代を見据え、就労者のライフスタイルやはたらき方は多様化していること、また、企業は自社の利益追求だけではなく、社会や従業員一人ひとりのwell-being(より良い状態)を実現する経営姿勢が強く求められていることがあります。
新型コロナウイルスの影響の観点でも、共同プロジェクトの成果は重要だと考えられます。テレワーカーと出社者が入り混じる現状は、従業員の「評価不安」や「孤独感」を高めています(パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」)。はたらく幸せ/不幸せの7因子を用いて、「評価不満」「疎外感」「他者承認」「チームワーク」の状況を確認し、企業として対策を検討いただければと思います。また、新型コロナは、はたらく個人の労働観や組織マネジメントを再考する契機となっています。共同プロジェクトがそうした再考を行ううえで役に立ち、よりよい「はたらく」に貢献することを期待しています。
組織のマネジメント施策は、従業員のはたらく幸せ・不幸せにどのように影響を与えうるのか。今回の調査では、「上司の肯定的で公正なフィードバック」や「組織目標の落とし込み(組織目標を丁寧に個人目標にすり合わせる機会を設けるなど)」は、従業員のはたらく「幸せ」を高め、かつ「不幸せ」を減少させる効果が高いことが分かりました。また、「終身雇用」「年功序列」「新卒偏重」といった日本型雇用慣行にみられる特徴は、今日の従業員のはたらく幸せを高めることには寄与しておらず、ややネガティブな影響も示唆されています(下図参照)。自組織の制度やマネジメントの在り方を検討するためにも、はたらく幸せ・不幸せをもたらす7因子を定期的に測定することを提案します。本研究が、個々の心理状態を見ながら組織全体のマネジメントに活かされる"木も見て森も見る経営"の手掛かりとなることを期待しています。
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所+慶應前野隆司研究室」と記載してください。英文表記は「PERSOL REREARCH AND CONSULTING CO.,LTD & Takashi Maeno」です。
※「はたらく幸せ/不幸せ診断」について、学術目的や私的な使用はもちろん、自組織内での使用は「無償」となります。ただし、商用目的で使用される場合、必ずパーソル総合研究所にお問い合わせください。
調査名称 | パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査」 |
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調査内容 | [予備調査]はたらく人が幸せ・不幸せを感じる場面 [第1回調査]はたらく人の幸せ・不幸せの状態 [第2回調査]はたらく人の幸せ・不幸せの状態と就業実態 |
調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査期間 | [予備調査]2019年07月20日 - 21日 [第1回調査]2019年11月06日 - 11月08日 [第2回調査]2020年02月21日 - 02月25日 |
調査対象者 | 【予備調査】 全国の就業者 n= 600 ※性・年代別に労働統計比率に基づき割付 【第1回調査】 全国の就業者 n=5,000 ※性・年代均等割付。企業・団体の代表者を除く 【第2回調査】 全国の就業者 n=5,000 ※性・年代均等割付。企業・団体の代表者を除く ※本報告書の分析結果は、第2回調査の有効回答者 n=4,634 を分析対象とした。 |
実施主体 | 株式会社 パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 |
<調査手順>
「幸福経営学」の第一人者である前野隆司教授による研究室。学問分野の枠を超え、「人間にかかわるシステムであれば何でも対象にする」「人類にとって必要なものを創造的にデザインする」という方針で研究・教育を行っています。すなわち、理工学から心理学、社会学、哲学まで、様々な分野にまたがる研究に取り組んでいます。
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、社員研修などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様なサービスを展開しています。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも取り組んでおり、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、ITイベント情報サイトおよびイベント&コミュニティスペース「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
■パーソル総合研究所では、
「はたらく人の幸福学プロジェクト」の特設サイト<https://rc.persol-group.co.jp/well-being/>
も開設しております(ニュースリリース公表後、7月16日に追記)。
■株式会社パーソル総合研究所
TEL:03-6385-6888 MAIL:prc_pr@persol.co.jp