パーソル総合研究所×「CAMP」、「留学生の就職活動と入社後の実態に関する調査結果」を発表
日本型雇用や就活のあり方に留学生の過半数が違和感

留学生は日本人より独立志向が2.5倍高く、やりがい・成長を求む。在学中のビジネス活動は日本人の3.3倍
入社企業に対する留学生の満足度は、内定承諾直後で96.4%と日本人の1.3倍。入社直後も1.4倍

 株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:渋谷 和久)と、パーソルキャリア株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:峯尾 太郎)の若年層向キャリア教育支援プロジェクト「CAMP(キャンプ)」は、「留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査」を行いましたので、結果をお知らせいたします。
 本調査は、外国人留学生の就職活動や入社後の意識・実態や、就職後の定着・活躍に関わる要因を明らかにし、企業経営・人事に資するデータを提供することを目的に実施しました。パーソル総合研究所とパーソルキャリアの「CAMP」との共同調査は「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」※に続き、2回目です。
「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」詳細

調査結果概要

【就職活動について】
・留学生の過半数が、日本型の雇用や就職活動のあり方に関して、さまざまな違和感を抱いている。
・就職活動関連の情報を得るための手法として、留学生は日本人に比べて、合同会社説明会や学校の就活ガイダンスの活用は少ない。実際に、留学生が第一志望とする企業では、留学生を採用するために「留学生の積極採用を情報公開」(35.4%)や、「留学生へのキャリア支援・サポートの情報提供」(33.1%)など、さまざまな施策を行っている。
・キャリアに対する意識に関しては、「独立志向」を持つ留学生は日本人の2.5倍。留学生の約4割が、学生のうちから将来を見据えたビジネス活動に時間を割いている。

【入社後の意識・実態について】
・入社企業に対する満足度は、日本人より留学生の方が高く、内定承諾直後には96.4%。その後徐々に低下し、入社3年以内に70.3%まで低下するが、いずれの時点でも留学生の満足度は日本人を大きく上回る。
・留学生が、入社後に不満を感じる点として、「労働時間が長い」「サービス残業が多い」「休暇がとりにくい」といった就業環境や、「与えられている裁量や権限が小さい」といった若いうちから活躍しやすい環境でないことなどが挙げられる。
・留学生が入社後に定着・活躍をするためには、入社前の「職業適性」「日本文化」への理解、特に「職業適性」の理解が影響。「職業理解」の理解促進には、学生生活において「社会勉強」に時間を割くことや、「学生生活でさまざまな経験をすることが大切である」という意識を持つことが有効である。

調査結果詳細

就職活動について

① 日本型雇用の特徴や日本の就職活動のあり方に関する留学生の強い違和感

 日本型雇用の特徴や日本の就職活動のあり方に関して、留学生の過半数はさまざまな違和感を抱いている。具体的には、「定年までの雇用が前提とされていること(終身雇用)」で62.6%、「自分が希望しないかたちで転勤・異動があること」で59.5%、「勤続年数に応じて賃金が上がる仕組みがあること(年功賃金)」で54.0%が違和感を抱いていた。新卒の採用基準に関しては、「具体的な技能・スキルが求められないこと」で56.2%、「資格が重視されないこと」で56.0%となった。
 また、新卒一括採用に対する違和感も強い。具体的には「新卒者をまとめて採用する仕組みがあること」で65.4%、「選考開始、内定出しのタイミングにルールがあること」で62.1%、「4月入社が一般的であること」で59.3%が違和感を抱いていた。

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② 留学生が就職活動で活用した情報源ランキング

 就職活動関連の情報収集に活用した情報源について、留学生と日本人とのギャップが大きい順にランキング化すると、1位「企業・口コミサイト以外のWebサイト」(留学生=34.7%、日本人=9.6%と25.1ポイント差)、2位「企業のSNS公式アカウント」(留学生=26.4%、日本人=7.3%と19.1ポイント差)、3位「公式アカウント以外のSNS」(留学生=23.1%、日本人=5.8%と17.3ポイント差)。留学生は日本人に比べて、合同会社説明会や学校の就活ガイダンスの活用は少ない。そのため、企業側はネットやSNS上などに、留学生向けの情報を充実させる戦略を取るべきである。

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③ 企業が留学生を採用するための情報発信

 留学生が第一志望とする企業では、留学生を採用するためにさまざまな施策を行っている。例えば、留学生が第一志望とする企業のうち約3割は、「留学生の積極採用を情報公開」(35.4%)、「留学生へのキャリア支援・サポートの情報提供」(33.1%)などを実施していた。将来有望な留学生を採用するためには、専ら留学生をターゲットとした取り組みが必要である。

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④ 留学生の希望業種ランキング

 就職を希望する業種について、留学生と日本人とのギャップが大きい順にランキング化すると、1位「宿泊、飲食サービス業」(留学生=14.8%、日本人=4.6%と10.2ポイント差)、2位「教育、学習支援業」(留学生=17.5%、日本人=8.6%と8.9ポイント差)、3位「卸売、小売業」(留学生=17.5%、日本人=10.0%と7.5ポイント差)。留学生が最も希望する業種は、「情報通信業」で23.7%。これらの業種の企業では、日本人に加え、留学生を意識した採用活動を行うことで、人材獲得がしやすくなる可能性がある。

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➄ 留学生の内定数

 平均内定社数は留学生2.61社、日本人2.33社と、留学生の方が多い。企業側は、留学生に対する内定後のフォローを、日本人以上に行うことが必要な可能性がある。

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⑥ 留学生と日本人のキャリアに対する意識の差

 「キャリアに対する意識」について、留学生と日本人とのギャップが最も大きかったのは 「将来、独立したい」で2.5倍もの差があった(留学生=58.9%、日本人=23.3%と35.6ポイント差)。次いで、「新しい事業を自分で起こす機会に恵まれたい」(留学生=60.4%、日本人30.5%と29.9ポイント差)、「責任者のある仕事を任されたい」(留学生=69.6%、日本人41.0%と28.6ポイント差)。留学生は、「独立志向」「やりがい・成長志向」が強いことが明らかになった。一方、「リストラがない会社で働きたい」(留学生=56.2%、日本人=71.1%と14.9ポイント差)、「定年まで同じ会社で働きたい」(留学生=33.3%、日本人=41.3%と8.0ポイント差)などは、日本人の方が高く、「安定志向」が強くみられた。

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➆ 留学生の学生生活

 「学生生活で時間をかけていた活動」について、留学生と日本人のギャップが大きい順にランキング化すると、1位は「起業など、ビジネス活動を行う」 (留学生=41.6%、日本人=12.6%と29.0ポイント差)だった。2位は「授業に関する勉強」(留学生=81.2%、日本人=56.3%と24.9ポイント差)、3位は「授業と関係のない勉強を自主的にする」(留学生=66.7%、日本人=42.8%と23.9ポイント差)、4位は「新聞を読む」(留学生=43.3%、日本人=19.9%と23.4ポイント差)となった。留学生が、非常に熱心に勉強に取り組んでいることが定量的に示された。

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入社後の意識・実態について

⑧ 入社企業に対する満足度

 入社をした企業に対する満足度は、留学生の方が日本人より高いことが明らかとなった。留学生の満足度は、内定承諾直後96.4%、入社直後91.9%、入社3年以内70.3%となるが、日本人は73.5%、64.3%、46.8%と推移する。いずれの時点でも留学生の満足度は日本人を大きく上回り、比較的高いという結果だった。

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⑨ 留学生の入社後の不満ランキング

 留学生が、入社後に抱く不満をランキング化すると、1位「労働時間が長い」(51.5%)、2位「サービス残業が多い」(42.5%)、3位「休暇がとりにくい」(38.5%)と、労働時間に関わるものが上位となる。5位は「与えられている裁量や権限が小さい」(31.0%)。長時間労働を求められる一方で、若いうちから活躍がしやすい環境ではないことに不満があるとうかがえる。

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⑩ 入社予定の企業に対する理解度

 就職先企業に対する入社前の理解度合いを、「組織」「職業適性」「日本文化」の3つの観点から聞いたところ、「職業適性」に該当する項目の理解度が比較的に高いことが分かった。中でも、「自分の能力や適性」が69.0%と最も高いことが判明した。

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⑪ 入社前の「組織」「職業適性」「日本文化」への理解度が与える影響

 入社前の「組織」「職業適性」「日本文化」の理解度合いが、どのように入社後に影響するのかを分析。すると、入社前に「職業適性」「日本文化」の理解を深めることが、入社後の「パフォーマンス」や「定着」に、ポジティブな影響を与えていることが分かった。特に、「職業適性」の理解が進んでいると、その傾向が強いことも判明した。

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⑫ 入社前に「職業適性」の理解を深めるための行動・意識

 学生生活において「社会勉強」に時間を割いている人や、就職活動においては「大学生活でのさまざまな経験をする」、「就活マニュアルにこだわりすぎない」ことが重要であると意識していた人が、入社前に「職業適性」の理解が促進されていることが分かった。学生時代から社会に触れることで、知見や視野が広がり、必要とされる能力や自分の向き・不向きなどが認識できるようになると考えられる。

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分析コメント~企業は日本式の採用活動・組織マネジメントから脱却し、留学生の活躍を促せ~

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パーソル総合研究所
上席主任研究員 小林祐児

 日本で学ぶ留学生は、日本人学生と比べて勉強熱心であり、キャリア意識も高く、企業で活躍できる潜在力は高いと言える。だが、そうした留学生の多くが、日本独自の就活の慣習に戸惑いを感じていることが明らかになった。優秀な留学生を獲得したい企業はまず、形式張ったマナー重視の就職活動ではなく、より具体的な能力やスキルを見極める方向に舵を切るべきだ。また、留学生を意識した情報提供や機会創出など、日本人とは異なる取り組みによっても、留学生を惹きつけることができそうだ。
 日本企業からはしばしば「留学生は入社後に定着しない」という声を聞くが、実は入社企業に対する満足度は留学生の方が日本人より高い。また、社会人となった元留学生が日本で働きたい年数は平均11.6年と長い。定着するかどうかは留学生のマインドの問題ではなく、企業側の制度や組織マネジメントの問題として捉えるべきだろう。労働時間や裁量・権限、報酬などを改善すれば、自社への定着・安定的に活躍してくれることが示唆された。現状では、言語サポートや制度整備なども不十分(下図参照)であり、今後の外国人材との協働のためにも、一層の充実が求められる。

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分析コメント~学生は早期に社会と触れることが、キャリア形成において重要~

パーソルキャリア
はたらクリエイティブディレクター
佐藤 裕

 入社後の活躍を促進するために、「企業や仕事内容への理解を深める」「自身の能力を適切に把握する」ことなどが重要であると明らかになった。これは、留学生だけではなく、日本人にも共通して言えると考える。社会に出てからのキャリアを具体的にイメージし、それを実現するための準備を学生時代から進めることが、活躍の鍵となるためだ。
 そのために学生は、就職活動をスタートするよりも前の段階から、インターンシップに参加する、社会人とコミュニケーションを取るなどの経験を積むことが必要である。このような経験を通じて、社会人からフィードバックが得られ、伸ばすべき強みや、足りないスキルを認識することができるなど、自己理解が進み、自分が取るべき行動が明確化される。将来のキャリアを充実させるためには、社会に対するアンテナを張り、さまざまな社会人との繋がりを作るという意識を持って学生生活を過ごすことが、留学生、日本人問わず重要であると考える。

■株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児(こばやし ゆうじ)プロフィール

 NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームにて、各種の定量調査・定性調査・訪問調査・オンラインコミュニティ調査など、多岐にわたる調査PJTの企画-実査を経験。2015年入社。専門は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。

■パーソルキャリア株式会社 はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕(さとう ゆう)プロフィール

 若年層向けキャリア教育支援プロジェクト「CAMP」のキャプテンを務める、はたらクリエイティブディレクター。これまで15万人以上の学生と接点を持ち、年間200本の講演・講義を実施。現在活動はアジア各国での外国人学生の日本就職支援にまで広がり、文部科学省の留学支援プログラム「CAMPUS Asia Program」の外部評価委員に選出され、グローバルでも多くの活動を行っている。また、パーソルキャリア株式会社では若者にはたらくの本質や楽しさを伝えるエバンジェリスト、パーソルホールディングス株式会社ではグループ新卒採用統括責任者、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、デジタルハリウッド大学の非常勤講としての肩書きも持つ。

※本調査の詳細は下記をご覧ください。
本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所×CAMP」と記載してください。

調査概要

     
調査名称 パーソル総合研究所×若年層向けキャリア教育支援プロジェクト「CAMP」
「留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査」
調査内容 外国人留学生、元外国人留学生の就職活動に関する意識・実態を把握し、就職後の定着・活躍に関わる就職活動要因や入社後の企業のサポート体制を明らかにする
調査手法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査期間 2020年2月14日 - 3月2日
調査対象者 合計サンプル数 500人
<共通条件>居住地日本全国、外国籍 ※国籍の比率は実態に即して割付
<学生> 300人
四年制大学1-4年生、修士1-2年生、(博士課程は除外)、卒業後に日本での就業意向がある者
<社会人> 200人
日本の大学を卒業しており、日本で就職活動を行った人かつ現在日本で働いている人(内外資不問)
初職 正社員5年以内 ※就職活動をして正社員で就職した者
実施主体 パーソルキャリア株式会社「CAMP」/株式会社パーソル総合研究所

【株式会社パーソル総合研究所】<http://rc.persol-group.co.jp/について

 パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、社員研修などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。

「CAMP」について<http://camp-program.com/について

 「CAMP(Career Activate Management Program )」は、全国やアジアの学生を対象にしたキャリア教育支援プロジェクトです。新卒で入社した人たちの約30%が、3年以内に離職することが約30年も続いている実情に課題を感じ、その要因の一つが日本の旧態依然の「就職活動」にあると考え、佐藤 裕が立ち上げました。内定をゴールとした就職活動テクニック、自己分析などはお伝えしません。最先端のマーケットを理解し、多くの経験から実績を残してきた社会人が、社会で必要とされる能力や本当に必要なキャリアの考え方をお伝えしていきます。

パーソルキャリア株式会社について<https://www.persol-career.co.jp/について

 パーソルキャリア株式会社は、-人々に「はたらく」を自分のものにする力を-をミッションとし、転職サービス「doda」やハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX」をはじめとした人材紹介、求人広告、新卒採用支援等のサービスを提供しています。2017年7月より、株式会社インテリジェンスからパーソルキャリア株式会社へ社名変更。グループの総力をあげて、これまで以上に個人の「はたらく」にフォーカスした社会価値の創出に努め、社会課題に正面から向き合い、すべての「はたらく」が笑顔につながる社会の実現を目指します。

【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

 パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」をはじめ、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様なサービスを展開しています。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも取り組んでおり、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、ITイベント情報サイトおよびイベント&コミュニティスペース「TECH PLAY」、オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」、クラウド型モバイルPOSシステム「POS+ (ポスタス)」などのサービスも展開しています。

問い合わせ先

■パーソルキャリア株式会社(旧社名:インテリジェンス)TEL:03-6757-4266 MAIL:pr@persol.co.jp
■株式会社パーソル総合研究所 TEL:03-6385-6888 MAIL:prc_pr@persol.co.jp

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