パーソル総合研究所、「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」の結果を発表
外国人と日本人の賃金格差明らかに。外国人は同じ職種でも平均月収4.6万円安い

既に外国人雇用している企業は、約7割が雇用拡大の意向。人材確保策として外国人を優先
特定技能での雇用に63.6%が消極的。14業種に解禁されるも活用不十分

 総合人材サービス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:渋谷和久)は、「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」を実施し、このほど結果を取りまとめましたので発表いたします。
 本調査は、日本における人口減少や人手不足への対策として外国人材の就労促進を行うために、2019年度から新たな在留資格「特定技能」が始まったことを受け、外国人雇用の実態を明らかにすることを目的に実施しました。

「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」の要旨

賃金格差と離職

  • 外国人と日本人の賃金格差が明らかに。正社員の場合、日本人と同じ職種であっても、外国人の平均月収は4.6万円安い。技能実習生の場合、同じ職務であっても日本人より低水準の給与と回答した雇用主は46.7%にのぼる。
  • 日本人正社員の離職率に比べて外国人正社員の離職率が高いか低いかで企業群を分けた場合、外国人の離職率の方が高い企業群では、日本人より外国人の方が平均月収で10.6万円安かった。一方、低い企業群では外国人の方が平均月収で1.9万円の安さにとどまった(全体平均は月給4.6万円の格差)。

外国人雇用の意向

  • 「すでに外国人を雇用している企業」では、外国人雇用をさらに拡大する意向が約7割。
  • 人材確保のための18の対策を選択肢として挙げ、企業の優先度の割合が高かった選択順にランキング化すると、「すでに外国人を雇用している企業」では41.2%もの企業が「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、ランキング1位となった。一方、「現在は外国人を雇用しておらず、今後外国人雇用を検討している段階の企業」では9.2%の企業だけが「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、12位にとどまった。

特定技能の雇用

  • 2019年4月の改正入管法施行により、14業種では新しい在留資格「特定技能」で外国人を雇用できるようになった。しかし、特定技能の雇用について14業種に属する企業に聞いたところ、「検討していない」45.2%、「よく知らない」18.4%となり、計63.6%の企業が消極的だった。すでに特定技能で雇用しているのは2.4%。検討しているのは34.0%にとどまる。

※詳細は下記の「ご参考」以降をご覧ください。
※本調査を引用するときの出所の記載例:パーソル総合研究所「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」

ご参考

調査概要

     
調査名称 パーソル総合研究所 「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」
調査目的 企業側の外国人材雇用の実態や課題、ニーズを明らかにする
調査手法 調査モニターを用いたインターネット定量調査
調査期間 2019年6月21日-6月25日
調査対象者 自社の採用・人員計画に関わっている現場責任部門、人事・総務部門の従業員ないし経営者

・企業規模:不問 外資企業 除外
・雇用形態:経営者/フランチャイズオーナー/正社員

【所属・管掌部門】経営企画、店舗・事業所の現場責任部門、人事・総務部門
【役 職】課長以上

[サンプル構成]
①外国人材を現在雇用している企業(雇用企業):500s
②外国人材を現在雇用しておらず、今後外国人材の雇用を検討している企業(雇用検討企業):250s
③外国人材を現在雇用しておらず、今後も検討していない企業(非雇用検討企業):250s

※報告書内ではそれぞれ、①雇用企業②雇用検討企業③非雇用検討企業 と記載
実施主体 株式会社パーソル総合研究所

賃金格差と離職

  • 外国人と日本人の賃金格差が明らかに。正社員の場合、日本人と同じ職種であっても、外国人の平均月収は4.6万円安い。技能実習生の場合、同じ職務であっても日本人より低水準の給与と回答した雇用主は46.7%にのぼる。

外国人と日本人の給与比較の図

外国人材の賃金水準の図

  • 日本人正社員の離職率に比べて外国人正社員の離職率が高いか低いかで企業群を分けた場合、外国人の離職率の方が高い企業群では、日本人より外国人の方が平均月収で10.6万円安かった。一方、低い企業群では外国人の方が平均月収で1.9万円の安さにとどまった(全体平均は月給4.6万円の格差)。

正社員における外国人と日本人の賃金GAPの図

外国人雇用の意向

  • 「すでに外国人を雇用している企業」では、外国人雇用をさらに拡大する意向が約7割。雇用形態別にみると、外国人を正社員で雇用する企業で73.7%、パート・アルバイトで雇用する企業で67.4%、技能実習生で雇用する企業で71.9%が拡大する意向。

外国人雇用の今後の見通し

  • 人材確保のための18の対策を選択肢として挙げ、企業の優先度の割合が高かった選択順にランキング化すると、「すでに外国人を雇用している企業」では41.2%もの企業が「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、ランキング1位となった。一方、「現在は外国人を雇用しておらず、今後外国人雇用を検討している段階の企業」では9.2%の企業だけが「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、12位にとどまった。

人材確保策優先順位1位~3位で選択された割合のランキングの図

特定技能の雇用

  • 2019年4月の改正入管法施行により、14業種では新しい在留資格「特定技能」で外国人を雇用できるようになった。しかし、特定技能の雇用について14業種に属する企業に聞いたところ、「検討していない」45.2%、「よく知らない」18.4%となり、計63.6%の企業が消極的だった。すでに特定技能で雇用しているのは2.4%。検討しているのは34.0%にとどまる。

「特定技能」雇用の検討状況の図

分析コメント

  • ポイント①~外国人雇用の二極化が進み、出遅れている企業は危機感を持つべき~
     外国人雇用の優先度を高く考えている企業と、そうではない企業の二極化が進んでいる。これまで人材の送り出し国であったアジアの国でも高齢化社会に向かう国が増える中、人材確保は年々難しくなっている。介護人材やIT人材を中心としたグローバルな人材獲得競争が激化する中、出遅れている企業は危機感を持つべきだろう。
     外国人雇用に取り組まなければ採用や人材定着のノウハウが蓄積されず、将来的に外国人材が必要になった時には、自社が望むレベルの人材を確保できない可能性が高い。すぐに採用まで至らなくとも、手遅れになる前に早く動きだすべきだろう。
  • ポイント②~外国人活躍のために、賃金格差を解消し、組織的に働きやすい環境を作るべき~
     外国人と日本人との賃金格差が明らかとなった。「同じ職種の正社員」という条件での比較であるため、勤続年数などによる差の可能性もあるが、年功賃金的な従来の日本型雇用の枠組みに外国人を組み入れようとすると、せっかく採用した外国人材の離職を招く懸念がある。
     賃金に限らず、外国人の働きやすい環境を整備することも同時に必要だ。外国人の離職率が低い企業群(※)では、「外国人材の強みを生かせる部署の配属」や「コミュニケーション機会の創出」、「外国人用のマニュアル・業務資料の準備」などを実施している割合が高かった。既存の職場環境に外国人を当てはめるのではなく、職場の方を外国人に合わせて変化させている企業が成功している。外国人を単なる現場の人手補強として考えるのではなく、会社や組織ぐるみで働く環境を再構築していくことが求められる。

※正社員の離職率について、日本人と比較する形式で聴取。その回答を元に群を分割した。

以上、コメントは調査担当者(リサーチ部研究員・高月和子)

【株式会社パーソル総合研究所】<http://rc.persol-group.co.jp/について

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