公開日 2017/10/01
執筆者: 総合営業本部 執行役員 元木 幹雄
最近、ESサーベイのお問い合わせをいただくことが多い。
「新社長が就任。その新社長から従業員のロイヤリティ(会社への忠誠心)や仕事への意欲について知りたい」とのオーダーを受けてお問合せいただいた経営企画部長。
「昨年からESサーベイを自社内で企画し実施しているが、手間がかかるし、うまくできないので外注を検討したい」という理由でお問合せいただいた人事担当。
「働き方の改革に着手している。その効果をESの側面で測定したい」というニーズでお問合せいただいた働き方改革のPJリーダー。
きっかけは様々。それぞれに知りたいことは「どのようなレポートが出てくるのか」「コストはどの程度かかるのか」「ESを測定するためにどのような設問を使っているのか」等々たくさんあるが、話を聴いていくと、一番の関心事は「従業員のやる気を引き出すために何をすれば良いのか」である。調査をしても、「何をすれば良いのか」が自動的に導かれるわけではない。 わかることは、定量的なアンケートからは、5段階や6段階で測定したアンケート結果である。5段階尺度で1や2が否定的回答、3が中立的回答、4や5が肯定的回答であれば、平均値が5に近ければ従業員の満足度が高く、1に近ければ満足度が低い、ということである。その理由については、質問をしていれば、ある程度はわかるかもしれない。しかし質問していなければ、推測はできてもわからない。仮に理由がわかったところで、「何をすれば良いのか」がわかるわけではない。もちろん、「何をすれば良いのか」を調査することもできる。 その結果「特になし」と全く意見が得られないこともあるが、「給料を上げて欲しい」「評価制度を変えて欲しい」「上司にきちんとマネジメントして欲しい」「業務負荷を減らして欲しい」「ビジョンを示して欲しい」等々、様々な意見が集まる。しかし、その意見は、本質を突いた、ES向上のためのアイデアであるとは限らない。コストを度外視した案もあれば、記入者本人しか望んでいない個人的意見もある。そのときに思いついたことを書き連ねただけ、と感じる意見も少なくない。そんな意見に対し、経営者や、ESサーベイの担当者の反応は「全てに対応なんてできるはずはない」ということがほとんどだ。1990年代後半から2000年代前半。年功から能力、そして成果主義への転換が図られていた頃のESサーベイでは、「頑張ったら報われる仕組み」とか、「きちんとマネジメントや評価ができる管理者」が求められ、人事制度改革やマネジメント研修に繋げていったことが多かった。従業員からの要望はシンプルだったように思う。 しかし、昨今のESサーベイは、従業員からの要望が複雑で多岐にわたる。ダイバーシティが叫ばれるわけである。
結論を言いたい。ESサーベイを実施しても結論が簡単にわかるわけではない。わかることは質問したことに対して、定量化されたスコアや、自由に記載された意見だけ。しかし、そのスコアや意見について「どう整理して、どう解釈すれば良いか」は悩ましい。ESサーベイは、健康診断のようなものである。健康診断では、身長や体重がわかり、基準値から外れていれば警告される。しかし、メタボと警告されたところで、その原因や、何をすれば良いのかは、医師からアドバイスはあったとしても、自分で考え、自分で決断し、自分で行動に移さなければ、健康にはなれない。同様に、ESサーベイも、ESの状態がスコアでわかり、基準値から外れていたら問題は認識できるだろう。しかし、その原因や、何をすれば良いのかは、我々からアドバイスはできたとしても、自社で考え、自社で決断し、自社で行動に移さなければならない。
我々にとって健康診断が必要であるのと同様に、ESサーベイも必要だと考える。しかし、何でもわかる魔法のような調査ではないことを伝えておきたい。弊社では、ESサーベイからわかったことをベースに「どう整理して、どう解釈すれば良いか」、そして、「その原因や、何をすれば良いのか」について考える場を企画したり、アドバイスすることを生業にしている。もし、興味や関心を持っていただけたら、お問合せいただきたい。
総合営業本部 執行役員
元木 幹雄
Mikio Motoki
人事教育コンサルティング会社及び遠隔通信制(オンライン)ビジネススクールにて営業や企画スタッフを経験後、2001年に富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)に入社。人事制度及び人材育成制度の導入・定着に向けたコンサルティング、人事情報システムやタレントマネジメントシステムの導入支援、リサーチ&アセスメントの企画・実行支援に従事し、現在に至る。産業能率大学大学院経営情報学研究科(MBA)修了。
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