イベントレポート

帝人の戦略を推進する、「適所適材」のキャリア自律支援 ~選び選ばれる会社へ~(キャリア自律セミナー2025|第4回)

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帝人の戦略を推進する、「適所適材」のキャリア自律支援 ~選び選ばれる会社へ~(キャリア自律セミナー2025|第4回)

マテリアル事業、繊維・製品事業、ヘルスケア事業などを展開する帝人株式会社では、2024年度に新たなパーパスとバリューを制定し、人的資本経営に取り組んでいる。同社の人的資本経営の中心にあるのは会社にとっての「適所適材の実現」と、社員の「自律的キャリア形成」によるWin-Winな関係。その観点から人事施策の見直しを進め、会社と社員がともに「選び選ばれる会社」になることを目指した取り組みを始めている。2026年1月14日(水)に開催された第4回キャリア自律セミナーでは、ジョブ型による管理職の処遇制度の見直し、公募制度・FA制度の更なる活用活性化に向けたイベント、上司と部下によるキャリア面談の拡充など、製造業である同社が取り組むキャリア自律支援のための施策ついてご紹介いただいた。

変化に柔軟に対応+選ばれる会社に。帝人が考えるキャリア自律とは?

帝人株式会社は、「Pioneering solutions together for a healthy planet」というパーパスのもと、「すべての挑戦をリスペクトします」「多様な仲間と専門性を活かして成長します」「地球とあらゆる生命に寄り添い、守ります」をバリューに掲げている。このパーパスを軸として、同社の人的資本経営は、事業ポートフォリオの変革に対応できる組織、グローバル全体での人材の充足、自律的にモチベーション高く活躍できる環境づくりを志向している。つまり、会社にとっての「適所適材の実現」と、社員の「自律的なキャリア形成」のWin-Winな関係づくりが、同社のキャリア自律における基本的な考え方だ(図1)。

図1:人的資本経営の全体像

本セミナーに登壇した人事部人事グループ長の久保田氏は、「社員の自律的なキャリア形成を支援する魅力的な会社でなければ、社員に選んでもらえる会社にはなれませんし、社員の側は自律的にキャリア形成をして能力の発揮を最大化してこそ、希望の職務に就くことができ、会社にもより一層貢献することができます」と語る。

社員の自律的なキャリア形成を支援できる「選ばれる会社」であるためには、年功的な考え方ではなく、一人ひとりの実力を見て適所適材を実現していくことが大事になる。また社員のキャリア観が多様化していくなか、人財がキャリア自律を実現し、活躍していくには、社内でさまざまなキャリアチェンジができるようにしていく必要もある。

その一環として、同社は管理職の処遇をジョブ型へ移行すべく、2024年度から段階的に見直しを進めているところだ。マネジャー的な職務、プロフェッショナル的な職務に関係なく、管理職の職務をポストごとに9段階の等級に分け、同じ基準で職務評価を実施。管理職の社員が異動した場合、その時々で担っている職務に応じ、適用される等級も変わる。マネジャーコースを希望するか、プロフェッショナルコースを希望するかについては、キャリア面談を通じて確認したうえでシステムに登録される。

「弊社では、素材事業の工場現場で3交代勤務をしながら働いている社員もいれば、ヘルスケアの営業所で働いている社員もいます。またキャリア採用比率は60%近くになってきており、新卒入社とキャリア入社が半々ぐらいにもなってきています。そのような状況のなか、全社として実施するにはどういう施策が適切なのかを悩みながら、試行錯誤で考えている段階です」

本人の意思による「適所適材」の実現へ――Job Posting Weekで感じた手ごたえ

「キャリア自律」と聞いて、「異動の希望を考えること」と想起する人は、まだまだ多いのではないだろうか。帝人もまた自社の従業員に対して同じ課題感を持っていた。そのような中で同社は、「キャリア自律=異動・転職」で留まらないよう、キャリアビジョンを自ら考え挑戦していけるように、キャリア研修やキャリア面談など、キャリアビジョンを考えるための施策、あるいはジョブポスティング制度をはじめ、社内外へのキャリアチェンジを支援する施策など、様々なキャリア施策を展開している(図2)。

図2:キャリア施策の全体像

施策の中には、ここ数年で新たに始めたものもある一方、従来から実施していた施策を「キャリア自律」の視点で改めて整理し直し、拡大リニューアルさせたものも多い。キャリア面談については、従来から行われていた自己申告面談を2025年4月からキャリア面談という形に統合させた。同時にキャリア面談を受ける社員本人用と上司用にeラーニングを準備し、キャリアに関するベーシックな考え方を学び、キャリア面談への理解と重要性を知ってもらうための教育ツールも提供している(図3)。またキャリアカウンセリングは、キャリアコンサルタントの資格を所有している社員が担当。資格所有者を登録しておき、カウンセリングの希望があれば相談にのる形で適宜実施している。

「新たにキャリア面談として1年間実施してみて、『異動希望を伝える場』という認識がまだまだ根強いと感じます。その前段階にある自分自身の棚卸しやスキルアップへの取り組みなども含めて話し合う場であることを浸透させていく必要があります」

図3:キャリア面談

リニューアルしたキャリア面談施策では、本人および上司向けのeラーニングを整備する他、目的や重要性への理解を浸透させるために、CHROや人事部長からのメッセージ動画も発信した。

帝人がめざす「適所適材のキャリア自律」に向けた施策として、中でも特徴的なのが、「Job Posting Week」というイベントだ(図4)。これは、公募をかけている部署がオープンポストや職場について詳しく紹介し、イベントに参加した従業員が自薦による手上げを検討するというもので、現在は年に2回開催している。当初は東京本社のイベントスペースを活用したリアル参加とオンライン参加のハイブリッド形式で開催していたが、業務の都合上リアルタイムでの参加が難しかったり、会場に来られるのは東京近郊の社員に限られてしまったりすることから、現在はオンラインによるタウンホール形式のみで実施している。

図4:Job Posting Week

(左)ハイブリッド開催時は、帝人のマスコットキャラクター「みっけたん」でポスターを制作。(右)現在はTeamsのタウンホール機能(1万人までの大規模な配信に対応)で実施。イントラネットにタイムテーブルを載せ、興味のある部署の公募案内だけでも視聴でき、参加できなかった社員向けにアーカイブ動画も配信している。

このJob Posting Week、実際に参加して公募内容を紹介した部署の方がポスティングへの応募が多かったことから、「施策には一定の効果を実感している」と久保田氏。また、応募後のミスマッチの回避や、異なる部署でのキャリアチャレンジがしやすくなったという点でも効果を感じていると話す。「とはいえ、会社主導の異動でも、キャリア面談での本人の希望や事情、キャリアの考え方を踏まえて異動計画が作成されていますので、現状は会社主導による異動がまだまだ圧倒的です。手上げによる異動の割合を増やしていく仕組みづくりは、今後の課題です」

昨今、ジョブ型人事制度を導入した企業、あるいはキャリア自律支援を強化している企業では、本人の希望や公募への手上げによる異動など、様々な取り組みが試行錯誤のもと行われている。その一方で、経営・事業戦略との整合性を担保すること、そのうえでキャリア施策としての成果を出すことの難しさにも直面しているのではないだろうか。この点に関し、久保田氏はセミナーの最後に次のように語った。

「選ばれる会社として生き残っていくためには、事業運営上のやりづらさがあるからやりませんではなく、それでもやるんだ!という姿勢を明確に打ち出していくことが必要ではないかと考えています。キャリア自律に向けて、この先も地道に活動を続け、会社の風土として根付かせていきたいです」

人事のすべての部署が、キャリア自律を念頭に

ここからは質疑応答で寄せられた質問のうちのいくつかを紹介していこう。

【Q1】 様々な施策を行っているが、キャリア施策の担当部署など、社内の組織体制はどのようになっていますか?

以前はキャリア開発グループという部署がありました。その時はキャリアの考え方を全社に浸透させていこうという段階で、その部署があらゆる施策を担っていましたが、数年前に「もうその段階は終わったのではないか」という話になり、あえてその部署をなくしました。現在は人的資本経営の中で、人事のどの部署であっても「適所適材」と「キャリア自律」を念頭において、様々な施策を行っています。

【Q2】 Job Posting Weekについて、「上司や同僚にイベント参加を知られたくない」といった抵抗感はないですか?

対面の会場を用意していたときは、一部ではありますが「会場に行くのは抵抗がある」といった声もありました。上司に知られたくないという人は、一定数いたのではないかと思っています。そのようなこともあって、今は誰でも気兼ねなく参加できるようにタウンホール形式に変えました。またイベントは就業時間内に開催することにこだわっています。イベントに参加することも仕事であること、仕事中に参加してもいいイベントであることを、会社からのメッセージとして発信しています。

【Q3】 モノづくりの現場、工場で働く人のキャリア支援については、どのように考えていますか?

工場で働く従業員の中には、様々な工場を経験する、あるいは別の職場に異動する可能性がある職種もありますが、ひとつの工場で専門性を深めていく職種の従業員に対して何をどのように伝えていくかは、難しいと感じています。全国でジョブポスティングをしたとしても、他の地区・他の事業への異動を望まない人もいますし、要件やスキルが合わない場合もあります。そのような人にも、与えられた仕事だからやるのではなく、それが自分のキャリアであると理解してもらうこと、キャリア自律はすべての従業員に共通して必要なものであることを、模索しながら浸透させていくことが大事であると考えています。

登壇者紹介

帝人株式会社 人事部 人事グループ長

久保田 はる菜氏

大学卒業後、帝人株式会社入社。労政グループ、岩国事業所、人財開発グループ、組織・キャリア開発グループ、ワークライフ変革推進グル-プを経て、育児休職を取得。人事グループで復職し、2023年10月に同グループ長に就任。管理職のジョブ型処遇制度への改革や、キャリア面談・ジョブポスティングなど、キャリア支援施策の企画に取り組む。

  • 文中の内容・肩書等はすべて取材当時のものです。

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