【イベントレポート】働き方改革と企業の持続的成長に向けて

公開日 2017/01/11

株式会社NTTデータ 代表取締役社長 岩本敏男氏

前回の弊社社長渋谷のオープニングリマークスに引き続き、「働く未来フォーラム」(主催:日本経済新聞社クロスメディア営業局、協賛:パーソルグループ)の様子をご報告します。基調講演ではNTTデータ代表取締役社長岩本敏男氏に「働き方革命と企業の持続的成長に向けて」と題し、NTTデータの働き方変革や最新のテクノロジーの進化と働き方の変化について、事例を交えてご提言いただきました。

働き方の変革を進め、多様な人財の活躍を促す

岩本社長 写真小.jpgNTTデータの前身である日本電信電話公社時代、電話交換手という職種がありました。若い人はご存じないかもしれませんが、当時電話をかけるには交換手が相手につながないといけませんでした。この電話交換手という職種は約99%が女性の職場で、当時の日本電信電話公社は女性の多い会社だったといえると思います。1960年の日本電信電話公社の女性就業者の割合は約33%、実に約7万人が就業し、そして育児を理由に毎年約5%の女性が退職していました。そこで1965年に育児休職に関する規定を定め、子供が3歳になるまで休職できる仕組みを運用し始めました。これは当時としては国際的にも先進的な取り組みだったと思います。その結果30代で退職する女性が減り、1970年代後半には女性の平均勤続年数が男性を上回るまでになりました。

NTTデータとなってからも、エッグガーデンという社員向け託児所の整備やフレックス勤務の活用、テレワークの推進などの変革に取り組んでいます。このような取り組みが評価され、経済産業省からダイバーシティ経営企業100選や総務省からテレワーク先駆者百選などに選んでいただきました。このようなことは一例ですが、働き方変革を進め、多様な人財が活躍することが企業の持続的成長に不可欠だと考えています。

テクノロジーが仕事そのものや働き方を変える

NTTデータは、航空路レーダー情報処理システムや全国銀行データ通信システムなど多岐にわたるテクノロジーを用いたサービスを提供しています。その上で、私たちは「テクノロジーは仕事そのものや働き方を大きく変える」と考えています。例えば、IT(情報技術)やロボットなどのテクノロジーの活用は、工場などの製造プロセスに大幅な革新をもたらしました。現在では、3Dプリンタ、AI(人口知能)などのテクノロジーにより驚異的なスピードで革新が進行しています。例えば、スペインのバルセロナに建つサグラダ・ファミリアは2182年の完成予定でした。しかし、3Dプリンタやコンピューター制御された高度な加工機を使うことで大幅な工期短縮を実現し、現在2026年の完成を目指しています。一方で、このようなテクノロジーの進化により、皆さんの中には「テクノロジーが仕事を奪うのではないか」と心配される方もいるのではないでしょうか。しかし、私はそうは考えていません。

少し時代を遡りますが、1960年代からの日本産業の状況を見てみましょう。製造業就業者は1992年をピークに現在に至るまで減少傾向にあります。しかし、現在の製造業の日本国内生産額は大幅に増加しています。つまり、産業用のロボットやITなどの活用により製造業の生産性が向上したと考えられます。では製造業を離れた労働者はどこへいったのかというと、産業構造やライフスタイルの変化の中で、飲食業や医療福祉、娯楽業などのサービス業にシフトしていったことが見て取れます。私は「テクノロジーは人間の仕事を代替するだけでなく、新たな仕事を生み出してきた」と考えています。

テクノロジーの劇的な進化は、労働のあり方をどう変えるのか?

では今後、テクノロジーの進化は私たちの仕事や働き方にどのような変化をもたらすのでしょうか。現在注目のテクノロジーの1つとしてAIがあります。AIはディープラーニングという人間の脳を模したシステムを活用し、飛躍的に進化しているといえると思います。2016年3月にはAI(AlphaGo)が囲碁の勝負で世界トップレベルのプロに勝利したというニュースが話題になりました。実はAIは囲碁の勝負では世界トップレベルのプロに勝つには10年以上はかかると言われていました。しかし、ディープラーニングというシステムを活用したことで飛躍的にAIが進化したのです。では、ゲームの世界ではAIが一番強いのかというと実はそうとも言い切れません。チェスの勝負では既にAIが人間に勝利しているのですが、AIと「AI+人間」チームが対戦したところ、「AI+人間」チームがAIに勝利しました。元15年連続チェスの世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフ氏は「コンピューターの戦術レベルでの正確無比な計算能力と、人間の戦略レベルでの指揮が合致したら世界最強だ」と述べています。人間の知的能力とAIの計算能力の共創の可能性を示した例と言えるのではないでしょうか。

もう1つ、手術支援ロボット「da Vinci」の事例もご紹介します。「da Vinci」は外科医の技術を補完するロボットで、外科医の動きを精密にトレースし、遠隔手術を可能とする機能や、外科医の突発的な動きのミスなどを補正する機能を持っています。人間の高度な技術をテクノロジーが補完している例だと考えています。

このような例からも分かるように、先端テクノロジーは人間の持つ能力を補完し、共創していくものなのではないでしょうか。将来、私たちは先端テクノロジーと連携し、新たな仕事を生み出していくべきなのではないかと考えています。

最後に

これまで見てきたように、テクノロジーの進化は仕事そのものや、働き方を変える可能性があります。NTTデータでは今後テクノロジーがどのように進化していくのかということを研究し、社会に公開しています。働き方の問題を考える上でこのようなテクノロジーに関する予見は欠かせないものだと思います。働き方変革を通じて多様な人財の活躍を図り、「人間の持つ能力と先端テクノロジーの共創」により生み出される価値に対応していくことが重要だと考えています。


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