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コラム

2019.09.11

1on1やコーチングでは変わらない~課長がマネジメントの本質を理解すれば組織は変わる~

マネジメント 人材育成 組織開発

執筆者:ラーニング事業本部 人財育成ソリューション部 部長 種部 吉泰

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「従業員のモチベーションを何とかしたい。現場の課長は何をやっているんだ!」
働き方改革、生産性向上、コンプライアンス遵守、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進など、これらの全てが経営上の重要課題だが、業務の負荷はほぼ全て課長(課長ではなくマネジャーという呼称の企業もあるでしょう)に集中している。業務の負荷が集中する中、課長は部下のモチベーションを何とか高めようともがいている。しかし現実は思うようにならない。
1on1やコーチング、色々とやっているんだけど...そう考えている課長をはじめとする管理職の皆さん、まずは考えてみていただきたい。あなたの会社の課長はマネジメントの本質を理解していますか?

  1. 組織マネジメントにおける課長のリアル
  2. 組織の中でマネジメントを語れない課長たち
  3. マネジメントとは何か、課長は何をしなければならないのか
  4. 組織成果につながるマネジメントの本質とは
  5. まとめ

1.組織マネジメントにおける課長のリアル

働き方改革、生産性向上、メンタルヘルスケア、コンプライアンス遵守、D&I。企業で働く人たちにとってはよく耳にする言葉である。これらに関する様々な取り組みの影響を最も受けているのは恐らく課長であろう。例えば、働き方改革におけるKPIのひとつである残業時間削減に関して、課長は部下の労働時間を管理しながら、組織成果はこれまでと同等以上のものを求められ、結果として課長自らの業務量やプレッシャーはかなり増している。

部下にはコンプライアンスを遵守するように働きかけ、情報管理にも目を光らせ、更には部下の健康状態にまで配慮しなくてはならない。働き方改革の促進によりリモートワーカーが増えることで、部下の仕事ぶりを直接観察する機会が減れば、部下に納得感をもってもらえるような評価やフィードバックを行うことがますます困難になることが予想される。別の観点だが、昇進して課長(管理職)になり残業代が発生しないことにより手取りが減った、という話もよく聞く。このような状況では、現場の要である課長が疲弊してしまう。

私は年間60~80日間、講師として管理職研修を担当している。研修前後のインタビューなどを含め、毎年数多くの課長の皆さんと接してきている。彼らとの対話を通して感じるのは、課長の皆さんは上記のような厳しい状況であることを充分認識はしつつも、決して悲観的ではないということである。

新任課長もベテラン課長も「何とかしたい」という気概を皆さんが持っている。ただ私が見るところ、一様に手詰まり感を覚えているように感じられる。マネジメントにおいて、自分なりには頑張っているが、これ以上何をやれば良いのか分からないといった状態であろう。彼らの言う「これ以上」の"これ"は何を示しているのかを聞いてみると、おおよそ以下のような返答がある。

  • 部下と1on1を定期的にやっている。その際は部下の話を聞くように心がけている
  • 評価をできるだけ高くつけてあげられるよう配慮している
  • できるだけ声をかけるようにしている(飲みに行くようにしている)

これらのどれもがマネジメントの本質を付いているとはいえない(この点は第4章『組織成果につながるマネジメントの本質とは』で述べたいと思う) 課長の皆さんは自らの経験と勘をもとに日々奮闘し、会社や上司、部下からの多様で複雑、ときに困難な要求に何とか応えようと必死にもがいている状態が、まさに組織マネジメントにおける「課長のリアル」なのである。

2.組織の中でマネジメントを語れない課長たち

そもそも課長はマネジメントをどう理解しているのだろうか。管理職研修の中で「マネジメントとは何をすることか」と参加者に問いかけてみると、以下のようなことが挙がってくる。

  • 会社から期待されている成果をあげること
  • 会社や部門の方針をかみ砕いて下ろすこと
  • メンバーのベクトルを合わせること
  • 部下のモチベーションを高めること
  • 部下が仕事をやりやすいように環境を整備すること
  • 部下を育成すること

本稿をお読みの皆さんは「マネジメントとは何をすることか」と問われて、いくつ項目を挙げられるだろうか。私の経験では、課長の多くが挙げられるのは5項目ぐらいである。管理職を対象に360度サーベイを実施している企業の方であれば想像可能かと思うが、管理職に必要な要素や行動がどの程度あるか思い返してみてほしい。測定している項目数(質問数でも良いし、カテゴリー数/構成概念数でも構わない)がいくつあるか。5つどころではない。マネジメントとしてすべきことはもっとある。「人は自らが知っていることしか実践できない」とするならば、多くの課長はマネジメント業務の一部しか実践できていないのが実状ではなかろうか。

3.マネジメントとは何か、課長は何をしなければならないのか

では、そもそもマネジメントとは何か。マネジメントの定義は世の中にたくさん存在するが、私は様々な定義を参考にし「会社から預けられた資源(人・モノ・お金・情報)をもとに、任された組織の成果の最大化を図ること」としている。先ほど列挙した研修中に挙げられた意見を概ね包含している。この定義から、世の中の課長(に限らず管理職の皆さん)に押さえてほしいことは2つある。

ひとつは、管理職は会社からマネジメント資源を預かっているという自覚が必要であるという点。課長にこの自覚があるかどうかは日々のマネジメントに様々な影響を及ぼしている。例えば、部下Aさんという貴重な資源をどう見るか。Aさんの強みはどんな点で、それをどう活かそうと考えているのか、実際に活かしきれているか。入手したある情報(という資源)をどう編集・加工し、メンバーや組織へどのように伝えると成果にとってよりプラスか。部下や情報という大切な資源を課長である自分がどう扱うかによって成果が上下するという自覚、その有無から来るマネジメントの違い、ひいては成果の違いは無視できないものである。

もうひとつは、組織の成果の最大化を図るという点である。メンバー一人ひとりの持っている経験や能力が似ている2つの組織があるとする。同じスタートでも月日を重ねると、2つの間には組織としての成果に大きな違いが発生することがある。その一因は、相乗効果や補完関係が組織内に存在するか否かの違いがあるからである。この違いは、課長が資源を上手に"やりくり"しているかどうかに多大な影響を受ける。この"やりくり"こそがマネジメントである。

前述のマネジメントの定義「会社から預けられた資源(人・モノ・お金・情報)をもとに、任された組織の成果の最大化を図ること」をしっかり理解すれば、マネジメントとして必要な行動をいま以上にたくさん挙げられるだろう。そうすれば、これまでよりも効果的なマネジメントが期待でき、結果として組織成果の向上も期待できる。ただし、それはマネジメントの本質を課長がしっかりと理解していればという前提が付く。そうでなければ、マネジメントはきっと上滑りすることになるだろう。

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4.組織成果につながるマネジメントの本質とは

課長が仕事上で関わる人は社内外に多くいるが、組織成果を上げるためには部下の存在なくしては成果もマネジメントも語れない。部下はとても重要な存在である。組織成果にとって、部下という資源はいつも安定的なパフォーマンスを発揮してくれる存在であるとは限らない。

同じ部下でも、高いパフォーマンスを発揮することもあれば、そうでないときもある。その差を生む要因は何か。一般に、パフォーマンスの低さについて部下本人に起因する要素としては知識やスキルの不足が考えられるが、もともと高いパフォーマンスをあげていた部下の場合、知識やスキルが急に失われたり、通用しなくなったりするとは考えにくい。多くの場合、それはモチベーションの低さが主な原因であろう。

では上司として、部下のモチベーションの低さに対して何ができるのか、何をすれば良いのか。第1章『組織マネジメントにおける課長のリアル』で述べた「1on1をやっている」とか「話を聞くように心がけている」、「評価をできるだけ高くつけてあげられるようにしている」といった課長の行動はすべて、上司として部下のモチベーションに配慮したものと映る。モチベーションに関しては「人が働くモチベーションの源泉は給料(お金)である」とか「人は生活のために働いている」と、働く人のモチベーションを一面的にしか捉えていない課長も存在している。

ここ20数年間の国内景気を見れば、右肩上がりの持続的な成長は見込みづらい時代である。毎年給料がグングンと上がることは期待できない。とすれば「人が働くモチベーションの源泉は給料である」としか捉えていない課長は「私には部下のモチベーションを高めることはできません」と公言しているようなものである。

人は本当にお金のためだけに働いているのか。確かにそういった人は皆無とは言わない。一部には存在するのも事実であろう。しかしながら多くの人はそうではない。課長は、部下が本来持っている欲求を踏まえた上で、モチベーションを高めるようなマネジメントをする必要がある。

名古屋商科大学大学院(MBA)の高木晴夫先生は、書籍『プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった一つ』の中でこう述べている。「部下は自分の存在や、自分が担う仕事について、その意味や価値・重要性に関する認識を持ちたいと思っている。上司は部下のそういった認識を満たすことで彼らのモチベーションを高めることができる。これがマネジメントの本質である」と。

第2章『組織の中でマネジメントを語れない課長たち』で触れたように、課長に求められる、部下に対するマネジメント行動は数多くあるが、高木先生の言われる「マネジメントの本質」を理解した上でマネジメントを行っているかどうかが、上滑りしないマネジメントの鍵である。課長は以下のような点に関して、部下の認識を満たしてあげることが必要である。

  • この会社や職場で、私の担う仕事はどのような意味や価値をもっているのだろうか
  • この仕事はなぜ私は担当するのだろうか
  • この仕事は周囲からどのように評価されるのだろうか
  • 上司は私をどう見ているのだろうか(役立ててくれようとしているか)

高木先生は同書籍で「世の中には確かに優れた課長(マネジャー)が存在する。そういった人は、決してカリスマ性や並外れた専門能力を持っているわけではない。ただマネジメントの本質を理解し、日々実践しているのである」と述べている。裏を返せば、多くの課長はこの本質を理解せぬままマネジメント職を担っているのである。

これからも続くと思われる、厳しいビジネス環境下で、課長は部下のモチベーションを高めようと日々必死にもがいている。現場のキーパーソンである課長に期待し、何とか武器を持たせてあげようと、多くの企業では1on1のような機会を制度化したり、コーチング研修を実施したりしている。それらが機能するには、高木先生が述べられた「マネジメントの本質」を課長が理解することが前提となる。そうでなければ、全ての制度や研修が無駄に終わるであろう。

まとめ

多忙を極める課長は、組織成果をあげるために日々奮闘している。課長にとって部下のモチベーションは、組織成果をあげるために非常に気になるテーマである。会社としても1on1を制度化したり、管理職向けの部下とのコミュニケーション研修を用意したりするなどの工夫はしている。しかし多くの場合、マネジメントの本質を付いたメッセージが課長に届けられていないのである。このままでは何も変わらない。

人が組織の中で働く際、どのような認識を欲しているのか。それを満たすこと。これこそがマネジメントの本質である。これを課長に理解・実践させることこそが、マネジメントの質を大きく高め、成果をあげる組織への成長を促すのである。

なお、パーソル総合研究所では、課長を対象にした研修など、様々な形でサポートしています。何か、疑問やご相談等があれば、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。


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日々のマネジメントで苦労しているマネジャーに対して「チームに適切な情報を配ることに集中することで、部下のやる気を高め、力を惜しみなく発揮させる」ことを主眼にして、「人を動かすコミュニケーション」「組織の中のマネジメント」「部下とチームの動機づけ」等の重要性を知ると共に、それらを実行するポイント・手法についてご紹介します。

執筆者紹介

種部 吉泰

人財育成ソリューション部 部長
人材開発コンサルタント

種部 吉泰

Yoshiyasu Tanebe

筑波大学大学院 ビジネス科学専攻 経営システム科学専攻 博士課程(前期)修了。人材育成学会会員。
1999年に人材開発コンサルティング会社に入社。以来、人や組織のパフォーマンス上の課題解決に従事している。
医療業界(医薬品・医療機器)を中心に、国内のリーディングカンパニーにて、主にミドルマネジャー養成や営業力強化といった領域においてサービスを提供。リサーチ業務 および リサーチ結果に基づくトレーニングの開発・実施に長く携わっている。研修講師歴は約20年。2017年9月より現職。トレーニングプログラムを中心とした、各種ソリューションの開発に従事。

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