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レポート

2019.03.28

HRリーダーズフォーラム 第8講
「人事データ活用論 ~人事はテクノロジーで進化する~」

HRテック 戦略人事

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。


人事業界でも進むX-Tech

第8講は慶應義塾大学大学院経営管理研究科・特任教授の岩本隆氏による「人事データ活用論」です。

登壇する慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授 岩本隆氏

岩本先生は、日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社などの企業で、半導体システムや通信機器などの研究開発を行った後に、株式会社ドリームインキュベーターにて、幅広い技術分野で「技術×経営×産業の融合」をテーマに活動されてきました。現在も、慶應義塾大学大学院にて、データやテクノロジーを経営に融合させる研究を様々な企業と組んで進めていらっしゃいます。

今世の中は、社会や産業がグローバルに変化しており「第四次産業革命(AIの発達によりAIが大量の情報を基に自律的な最適化行動をとる時代)」が始まっています。岩本先生は、『データ駆動社会』というキーワードを用いて、この新しい社会を説明されました。

●『データ駆動型社会』とは

リアルなものをデジタル化し、再びリアルなものへつながっていくという一連の動きが、AIの進化により高度に効率化・最適化されている社会。

岩本先生は、実例を挙げて次のようにご説明下さいました。

「例えば、あるお店で"物が売れた"というリアルな出来事が即座にデータ化されます。国内だけでなく、全世界の全店舗の購買データが瞬時に集められ、その膨大なデータをAIが自動的に解析し、サプライチェーン連携によって原材料の購入や商品の生産のフィジカルな現場へフィードバックという一連の流れ。すでに現実の世界で実現されているものもたくさんありますが、今後は、データ化できるものがより一層増えていくので、生産×消費以外のフィールドでも、データ駆動社会が進展していくと言われています。」

FinTech(金融業界)や、LogiTech(物流業界)などで先行して発展している技術が、他の領域にも応用されており、人事が扱う領域でもテクノロジーの活用が進んでいるそうです。

HRテクノロジービジネスの躍進

HRテクノロジーの歴史を振り返ると、1980年代に従業員情報や従業員の勤怠情報の"記録システム"としてのパッケージソフト導入の潮流から始まり、1990年代には従業員の能力を管理する"タレントマネジメントシステム"、従業員の関与や関係性強化のための"エンゲージメントシステム"が登場し、現在は"生産性向上システム"としてのHRテクノロジーが台頭してきています。

(生産性=付加価値÷コスト)です。要らないことを戦略的にやめて「コストを下げる」、従業員ひとりひとりのスキルを高めることやチームの力を上げることで「付加価値を高める」、あるいは、低生産性分野から高生産性分野にシフトする「全体最適」という目的で、上手にテクノロジーを活用している企業が増えてきているそうです。

例えば、ある建設業界の企業では、いち早くHRテクノロジーを用いて従業員ごとの生産性を明らかにし、「人によって生産性は3倍変わる」ということが分かったため、生産性の高い人の給与を上げることで良い人材を継続的に確保できるようになったそうです。オリンピックに向けて、建設業界における人手不足は依然として続きますから、このような取り組みを行う企業が有利になることは間違いなさそうです。

また、ある飲食店では、同じ時間にシフトに入っている従業員同士のチーム力を分析し、チームメンバーの構成で売り上げが大きく変わることを発見。その情報をシフト管理に活かすことで、売り上げアップが実現できたそうです。

「人」にまつわるデータを入手するためのテクノロジーも、どんどん進化しています。心拍数や体温、声のトーンや人相などでストレス度をモニタリングする機器や、睡眠の質を計測する機器など、次々と新しい製品が生まれています。マーケティングや営業部門ではすでに当たり前である「データ・ドリブン」の手法が、人事の分野でも活用され始め、大きな経営インパクトを産むことも。

岩本先生は「これからは、人事も積極的に最新テクノロジーに触れるために海外出張にいく時代になっていくのでは?」とおっしゃいました。ワクワクする話ですが、一方で「自分は、テクノロジーが苦手...」と思い込んでいる人事担当者も少なくないかもしれません。何からどう手をつけていけばよいのかイメージできず、困惑する受講生の顔もありました。

第8講「人事データ活用論」セッションの様子

デジタルHRを実行するための体制

不安な表情を浮かべる受講生に「皆さん、意外と食わず嫌いしているだけで、実際は簡単です」とおっしゃる岩本先生。

登壇する慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授 岩本隆氏

テクノロジーが生まれたばかりのときは、そのテクノロジーにある程度の知識やスキルが必要になるけど、そのテクノロジーが進化・発展していく過程で、使う側に要求されるスキルレベルは格段に下がるそうです。例えば、Windows95が出るまでは、パソコンを操作するのには「コマンド」と呼ばれる指示文を打ち込まなければならなかったわけですが、今ではパソコンにそんな時代があったことを知らない人も多い。なるほど。そう考えると、活用する人に要求される技術的なスキルのハードルは、どんどん下がっていくのかもしれません。

デジタルHRを実行していくために、人事がテクノロジーそのものの仕組みや、統計学などを一から学ぶ必要はないそうです。人事はHRテクノロジーの最新動向を随時把握しながら「データサイエンティスト(データを分析するのが得意)」や、「情報システム担当者(社内のデータシステムを熟知)」とともにチームを組んで進めることがポイント。しかし、リーダーシップをとるべきは「人事」です。データサイエンティストや情報システム担当者は"人"に興味があるとは限りませんから、"人"のパフォーマンスを高めるためのテクノロジー活用の旗は、人事が握ったほうがよいと、岩本先生はおっしゃいます。

第8講「人事データ活用論」セッションの様子

何から手をつけるべきか

「喫緊の経営課題の解決に直結するデータはこれだ!」と分かっているならいいのですが、分析してみなければ分からないことが多いのも事実。それでは、いったい何から手をつければよいのでしょうか?

働き方改革が叫ばれる中、人事主導でHRデータを取るために従業員に新たな負荷をかけることはなかなか難しいかもしれませんが、すでに取れているデータを活用する方法もあります。また、すでに定期的に実施している何らかの調査スキームに設問を追加するということであれば、負荷をかけずに新たなデータを取ることができます。あるいは「人事のデータベースに入っていないだけ」というものがあるかもしれません。どのようなデータを使うかは、視野を広げて考えてみることが大切。

注意したいのは「データを集めることや、HRテクノロジーを導入することが人事の仕事ではない」という点。
もっとも大事なのは、以下の2点を踏まえた経営的な視点での仮説を組み立てることです。

・そのデータを用いて何を明らかにしたいのか
・その明らかになったことをどのように使いたいのか

手に入るデータが増えれば増えるほど、迷うことが増えていくかもしれません。データはあくまでデータであり、完璧なデータはありません。人間の全てをデータ化することもできません。一方で、人事施策においては、データの裏づけを基に語ることも大事です。

「HRテクノロジーを自社にとって本当に必要な打ち手にフィットさせるために、人事担当者自身が、『テクノロジーを活用して新たな付加価値を生み出せる人材』になることを目指していただきたいです。」という言葉で、講義は締めくくられました。

第8講「人事データ活用論」セッションの様子

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