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レポート

2018.09.18

HRリーダーズフォーラム 第2講・第3講
「人事制度論 ~経営戦略を実現するために人事制度はどうあるべきか?」

リーダー育成 人事制度 戦略人事

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。


経営戦略から自社の人事制度を見直す

第2講および第3講は、8月末の2日間を利用して集中的に学ぶ「人事制度論」。前回の第1講「人事総論」では、「人事の起点はビジネス。人事の役割はビジネスゴールを達成するための人的ソリューションを提供することである」という考えを軸に、持つべき視点や心構えを学びましたが、今回は、「等級・評価・報酬」といった制度面から、本プログラムで標榜する「経営の戦略パートナーとしての人事」に必要な知識や考え方を体得するべく講義を設計。経営戦略と人事戦略の関係性を理解し、その中における人事制度の意味やその周辺の規定がどのように設計されているのか、そしてされるべきなのかを、日本、海外事例の比較を通じて理解することを目指しました。

受講者には事前課題として、予め自社の等級制度、報酬制度、評価制度の構造や背景にある思想、運用の実態や課題について調べてくるといったワークが課されました。理論や先進的な事例を知るだけでなく、最終的には自社の制度評価につなげて思考することが学びを深化させ、定着させるためには必要であると我々は考えます。制度設計・運用の実務経験がない受講生や、既にある制度の運用がミッションとなっている受講生にとっては、この事前課題からタフで刺激的な内容でありましたが、この1ステップがセッション中の議論、意見交換の意義を二倍、三倍と濃厚なものにしたようです。

では早速、セッションの様子を見ていきましょう。

アリの目とトリの目という視点

「人事制度論」を2日間にわたって講義いただくのは、コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社でアソシエイトクライアントパートナーとして数多くの企業の人事制度変革に携わってきた本寺大志氏。現職だけでなく、これまでのキャリアで経験された日系企業、外資系企業でのリアルなエピソードを踏まえ、日本と海外、理論と自社の実態など、「比較することがラーニングの基礎」というメッセージを根底に、講義が進められました。

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人事とは、「どんな貢献を経営にするのか?」という命題に常にさらされ、アリの目とトリの目の視点で判断すべきポジションであるとして、講義の冒頭では、業績・職務・人材に関わる諸制度は、経営理念、全社戦略、事業戦略から導き出される、もしくは紐付くものとして整理すべきという人材マネジメントシステムの全体像を説明。日本の人事パーソンは「アリの目」で現場を見ることには長けているものの、戦略に不可欠な「次、何をすべきで、何をすべきではないか」という判断は今いる地点から見えているものだけでは決められないため、「トリの目」が必要になる。この考え方は第1講での要諦にも通じるもので、受講生にとって「あるべき人事像」をより深く理解する一助となりました。

そのうえで、人事の基幹制度である「等級・報酬・評価制度」はそれぞれが密接に絡み合い、影響しあうものであるべきということを複数のサンプルを用いて図解で説明。そして「それらは何に報いるものになっているのか」、制度の根幹にある思想・哲学が変わらないことが、運用は変われども、制度として機能していくうえで重要であると説明されました。

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自社に合った等級制度とは?

本寺氏のこうした人事制度に対する原理原則を踏まえ、本セッションで最も時間をかけて説明されたのが、等級制度―職能型、職務型と役割型について。受講者の事後アンケート結果からも、「なんとなくの概念は理解しているつもりだったが、本来の意図するところと運用方法がまったく違った」「自社の制度を職務型に変更したと聞いていたが、実際には職能型から移行した役割型だと気付いた」など、様々な気付きがあるテーマであったことが伺えます。

これまでの日本企業で通例とされてきた職能型を基本とした等級制度は、「一度ついた能力・資格は落ちない」という考えのもとに「人」に照準を当てて設計されたもので、それが合理性を持ち、機能しているうちはいいものの、ビジネス戦略を変えなければならないシーンにはマッチしない方法であるということ。一方で職務型等級制度は、細分化、明確化された職務(ジョブ)レベルで人がアサインされ、専門スキルを持ったエキスパートや若い経営トップの育成に効果的といった利点はあるものの、組織改変が頻発する日本企業ではジョブの再定義が追いつかず、また、配置替え等による長期雇用を前提とする企業風土に馴染みにくい部分があるということ。さらには、ジョブごとの給与水準は、「ポリシーライン」と呼ばれる市場とのフェア感を重視されるため、流動的な労働市場を前提とした制度であると説明。さらに、職能型と職務型の間をとったような位置づけとして定義される「役割型」は、本来、職務型のジョブのくくりを大きくしたものであるが、日本企業においては、職能型から移行したものが多く、実態としては本来の「役割型」の機能を果たしていないという懸念が示されました。

こうした理論の違いをもとに、自社の制度の仕組みを捉え、今後の経営および事業戦略に照らして、どういった等級制度が望ましいのか、何を大事に、制度を設計し、運用するのかを積極的に選択できるようになってほしい。このメッセージとともに、報酬、評価の各制度についても米国企業の事例を紹介しつつ、講義が行われました。そのなかでも特に、「報酬をコストと捉えるのか、投資ととらえるのか?」といった問いかけは、まさに各社の人事制度の根底にある哲学が問われる場面となり、関連するグループディスカッションでは「自社が大事にする哲学が不明確であることに焦りを覚えた」といった声も聞かれました。

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経営戦略を実現する人事戦略、制度になっていますか?

2日間のセッションの締めとして、「自社の人事制度は経営戦略の実現にどう貢献しているのか?」をテーマに、自社の経営戦略と人材戦略のつながり、人材戦略と等級・報酬・評価制度の一貫性の有無、そして今後の課題を個人ワークおよびグループディスカッションで総括しました。

自社の経営戦略を実現する人材戦略とは何か。そしてそれが等級、報酬、評価の仕組みに落とし込まれているのか。足元の実際の課題を何と定義するか。何を変えない・変えるべきか。

受講生にとっては、専門性の高いインプットを受けながら、様々な問いに向き合い続けた、非常にタフな2日間となりました。

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受講者の声

最後に受講者の声をご紹介します。

社会、市場、人材等の変化が益々激しくなる今後(未来)において、社員が満足度高く働ける会社(環境)をシビアに選択していく傾向は加速していくことになるため、受け皿となるルール作りの重要さと難しさを改めて感じたセッションだった。 等級制度(職能資格/役割等級/職務等級)、報酬制度、評価制度に関しての理解が深まったのに加え、自身の会社の人事制度がどのようなポイントを押さえた上で作られたのかを理解する非常に良い助けとなった。ただ、人事制度(ルール)が完璧だとしても、運用していく上で予期せぬことや、綻びが生じてくるものであるため、運用しながらブラッシュアップしていく必要があると感じた。(サービス業 Y.A様)

「職務」「職能」「役割」型の等級制度のそれぞれの特徴や、本質を理解することが出来た。今まであいまいな自己認識で言葉を使っていたことに気付いた。 情報量の多さ、そして内容の専門性が高く完全に理解できない部分もあったが、グループディスカッションや、質疑応答の時間が長くあったので、自分の中で理解を深められたと思う。(運送用機器 T.K様)

職務型、職能型の違いが体系的に理解できた。 特に職務型において、「マーケットより高い金額が払われている社員に対しては、評価が高くても昇給しない」という点に扱いやすさを感じた。 加えて、組織改編都度、職務評価を実施する必要がある点においても、工数がかかる一方で、適切な健康診断が実施できるのはメリットであると考える。評価を決めるための「手続き」の公平性の観点で、他社さんが行動評価に360度を活用している事例を聞き、当社でも検討の余地があるのではと考えた。今後、人事制度を一部変更する可能性があるため、その中に含めて議論していきたい。(サービス業 R.Y様)

自社での制度検討は、どちらかと言えば企画の人間が机上で検討し決定するケースが多く、現場社員の声を吸い上げて制度化する事はまず無い。現場に馴染まず形骸化したり、運用面で苦労したりするのは現場事情が反映されていない事が原因であると思った。 ただ、やはり最重要は「経営戦略達成のために」制度にどんなポリシーを持つかである事を、第1講から引き続きで強く認識できた。セッション中のワークでは時間も限定的で自社の経営戦略からどのような制度であるべきかの深掘りが不十分に終わってしまった。続きは自社で企画の人間とワークを試みたい。(電気機器 Y.H様)

プログラム監修委員 櫻井's VIEW  ―学習は「熟成」することで「知識」になる―

第1講の総論を終え、いよいよ各論のスタートを迎えた。各論第一回は二日間にわたる「人事制度論」である。

企業は常に経営・競争環境の変化や社会通念・価値観の変化にさらされている。どのような環境下でも業績を上げ、従業員の幸福を実現するには、また人事制度もその時々の変化に適合させ変えていかなくてはならない。

前回の「人事総論」で守島先生から「人事は制度を作るのはやめましょう」というお言葉があったが、これは、あくまでも自らの手を動かして細部にわたる設計をするようなオペレーショナルなことに時間を使わず、コンサルタントなどの専門家の力を借りればいいという意味であったと理解している。ただ、外部専門家の力を借りるためには、自ら手を動かす以上に「現下の環境においては、あるいは事業の目的のためにはどういう制度である必要があるか」を論理的に選択のうえ説明できる深い理解が必要になる。

今回本寺氏は、長年の日本企業、外資系企業の企業人事と人事コンサルとしての豊富な経験を背景に、非常に多岐にわたるテーマ(人事制度と一口に言っても「等級」、「報酬」、「評価」の3制度があり、それがまたいくつもの型や軸に分かれている)を、実例を交えながらエネルギッシュに解説いただいたが、いかんせん、参加者は将来を嘱望されるとはいえ若手中心で限られた人事エリアの経験しかない方がほとんど。ところどころで「このあたりが分かっていないのではないかな」と思うポイントについては、補足説明をしたものの、それでも「うーん」と苦悩の表情が多く、ついていくのがやっと、という状態であったように思う。

でも、しかし、この苦しみにより、理解が難しかった点を自ら考え、それでもわからなければ調べ、得た知識はいずれそれぞれの中で熟成し、ある日「ああ、そういうことだったのか!」という理解が起こる。今はすぐには腹に落ちなくても、現実に照らして考え続けることが大事である。(櫻井 功  パーソル総合研究所 副社長 兼 シンクタンク本部 本部長)

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