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コラム

2017.01.25

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「徹夜するくらい頑張ったらできる、オレもそうだった」と語られる企業の長時間労働を考える(前編)

労務管理 残業

シニアマネージャー 為田香苗 

生産性と労働時間と成果

日本はすでに人口減少、少子高齢化の時代に入ってきており、その中で、「生産性」を向上させることの必要性はますます高まってきています。「生産性」「労働時間」「成果」について、ここに2つの式があります。どちらも同じことを示す方程式なのですが、観点が異なります。

図1 生産性.jpg


・「成果」を上げる事が主眼にあるのが①のケースです。その場合、「生産性」か「労働時間」を上げる必要性があるのですが、「生産性」を上げるよりも手っ取り早い「労働時間」を投下しがちとなります。
・一方「生産性」に主眼があるのが②のケース。この考え方では、安易に「労働時間」を投下できません。どうしたら時間を投下せずに「成果」を上げられるか工夫を凝らすのです。

このどちらに主眼があるかで行動が大きく変わってきます。製造業では比較的古くから「生産性」概念がありますが、それ以外の企業では難易度の高そうな「生産性」に手を付けるよりも、なんとか「労働時間」で乗り切ろう、というのがこれまでの傾向でした。

"そのロジックはもはや通用しなくなる"と、積極的に労働時間削減に取り組み、働きやすい環境を整えている企業も徐々に増えている一方、まだまだたくさんの会社が労働時間削減をやりきれていない様です。日経リサーチが実施した上場企業301社に対する調査によると、73%の企業が長時間労働の是正を働き方改革の最優先課題に挙げていました(日本経済新聞朝刊2017年1月10日)。未だに、多くの企業の課題意識が長時間労働にあるのです。

今回は、労働時間削減化の難航している下記のような企業にフォーカスし、どのように長時間労働問題に向き合い、働く環境を整備していくのかを考えていきたいと思います。実際に、私たちがお客様の長時間労働問題に向き合う時に、どのように考えているか経験も交えてご紹介します。

・社員の徹底的な品質追求・クリエイティビティ追求が、自社ビジネスの生命線となっているため、手を付けにくい
・社員の仕事に対するモチベーションが非常に高く、それを阻害したくない
・現場との距離を感じる(ホールディング人事、グループ人事など)

おそらくこのような企業は、"残業時間をなんとか法定内におさめよう "という合格ラインギリギリを狙おうとしてもなかなかうまく行きません。なぜなら残業の多くが、「非自発的残業」ではなく、経営や人事がコントロールできない「自発的残業」で占められると考えられるからです。特に残業を希望する理由が、「仕事そのものへのこだわり」の場合、働く当人たちが価値観を変えないとなかなか変わりません。一見回り道に感じられますが、現場を巻き込み、「仕事の進め方」「社内風土改革」などにより、積極的かつより本質的な取り組みを行うほうがこのような会社には近道だと思われます。

4図2 長時間労働 .png 

継続性のマネジメントからの脱却

「徹夜して初めてわかる」「そういうもんだ、オレもそうだった」と、自らの成功体験で部下をマネジメントしている上司、皆様の会社にもいますか?その上司の方の時代には確かにそうだったのかもしれません。しかし、このマネジメントスタイルは、VUCA*の時代と呼ばれる今の時代には通用しにくくなっていると言われています(*VUCA:Volatile, Uncertain, Complex, and Ambiguous 頭文字を取り、不確実で不明瞭な状態を指す。軍事用語から転じてビジネス界の流行語となった)。事業のグローバル化、IT化の中で、もはや過去の経験則で解は見いだせなくなっています。

図3 マネジメント.png


米ゼネラル・エレクトリック(GE)社でも、これまでかの有名な「GEバリュー*」ののれんを下しました (*自社の価値観やイニシアティブ=戦略的目標を社員に伝えるための価値基準)。製造業、産業界で起きている技術の進化や技術進化に伴う人の役割の変化の中で、過去から成功パターンを定義することに意味を見出せないと判断したためです。

図4 成功パターン.png


図:『今こそ、企業の包容力(1) 人の成長を待つ余裕を持つコラム~』からの再掲http://rc.persol-group.co.jp/research/data/article20150610/3

私たちがコンサルタントとして長時間労働削減に取り組む時、マネジメント教育にかなりの時間・パワーを投下します。長時間労働削減は、上司の頭から「そういうもんだ(オレもそうだった)」という考えを拭い去らなければ実現できません。そのために、自ら代替案を考えてもらうワークショップや、これからのマネジメントを考える研修を受講してもらいます。ビジネス、組織や人材マネジメントの時代変遷を体系的にインプットし、人材の価値が変わってきていることを理解していただきます。今までの方法が唯一無二の成功パターンであるという思い込みを一度捨て、他のやり方を考えてもらいます。今の時代にどう人を育て、どう組織をマネジメントしなければならないかを考え、現場で実行してもらわないことには、労働時間の削減は実現し得ないと考えています。次回は長時間労働削減に向けた具体策について考えていきます。

図5重視すべき価値.png

執筆者紹介


ディレクター

為田 香苗

Kanae Tameda

株式会社リクルート入社後、人材総合サービス事業部門でクライアントへの採用戦略の提案を行う。米サンダーバード国際経営大学院への留学(MBA)を経て、2004年よりワトソンワイアット株式会社(現タワーズワトソン)で人材コンサルタントとして人事制度構築、人事に関わる様々なコンサルテーションを実施。2007年より、株式会社リクルート再入社。グループ人事・グローバル人事で、M&Aの人事デューデリジェンス、人事PMIを担当。2012年より、株式会社カンター・ジャパンの人事ディレクターとして人事全般を担当。2014年8月より現職。

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