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2014.10.14

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ソーシャル・プロフェッショナルが求められる時代へ

キャリア

知識社会の到来

知識社会の到来によって、プロフェッショナルに対する社会的ニーズが飛躍的に高まっていることは広く知られている事実です。機関誌『HITO』vol.04「プロフェッショナルの未来」においても、多くの識者が「知識社会」という言葉を用いながら、プロフェッショナルの未来について語っておられます。それでは、知識社会の到来にはいかなる背景があるのでしょうか。プロフェッショナルの未来について洞察する前に、まず知識社会の起源について簡単に整理することから始めたいと思います。

知識社会の到来について初めて言及したのは、1969年にドラッカーによって書かれた「断絶の時代」と言われています。ドラッカーは、時代が知識社会へ移行した理由として仕事の高度化ではなく、「知識労働者の登場」を挙げています。つまり、知識労働者の登場によって職業の性格が変わったということです。言い換えれば、知識労働に職を求める人々を雇用することが社会的に求められ、それに適した職業が創出され、仕事内容が変わっていったと主張しています。ドラッカーの主張を要約すれば、社会は「人」を基点に変化していると言えます。

知識労働者とプロフェッショナル

それでは、今回のテーマでもある「プロフェッショナル」とは、これまでどのように考えられてきたのでしょうか。プロフェッショナルと似た言葉に知識労働者という言葉があります。ここではまず、両者の違いを整理してみましょう。知識労働者について、ダベンポートは「高度な専門能力、教育または経験を備えており、主に知識の創造、伝達、または応用を目的として働く者」と定義しています。

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一方、プロフェッショナルについて、谷内は、下図の5つの要件を挙げてその特徴を整理しています。

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これまで見てきた両者の定義から読みとれることは、「知識労働者」に倫理観と使命感が備わると「プロフェッショナル」になるということです。

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また、宮下は職務経験から修得した知識・経験の専門性を持ち、組織内外の情報や知識を活用し、高度複雑化する課題に取り組み成果を出す人材を「組織内プロフェッショナル」と呼び、「職務に対する主体性と専門性を持ち、組織の中核として評価される人材」としています。申はプロフェッショナル・コミットメント(専門分野に対する個人の一体化と関与の強さ)と組織コミットメント(特定の組織に対する個人の一体化と関与の強さ)の二つともコミットメント(二重コミットメント)が高い人材を「プロ組織人」と呼び、この人材タイプは業績も高く、転職意思が低いことを明らかにしました。

それでは、プロフェッショナルはどのように考え、行動しているのでしょうか。近年のキャリア論の研究では、バウンダリーレスキャリア、プロティアンキャリアなど新たなキャリア観の存在が明らかとなっています。

これらのキャリア論に共通することは、
(1) キャリア発達は個人の意思を重視し、組織主導ではなく個人の責任において実現するとしている
(2) 地位や報酬を成功の要因とするのではなく、心理的な成功や満足度に関心を払っている
(3) 激変する社会環境の中、積極的に変化に対応するために、組織内外を越えてジョブデザインを主体的に行い、自己変革を図り成長している
(4) 他者との交流(ネットワーキング)を通じて学習し、知識・スキルの幅やキャリアの選択肢を広げている、ということです。

倫理観と使命感を持った
ソーシャル・プロフェッショナルの時代へ

「知識労働者」に倫理観と使命感が備わることで「プロフェッショナル」へと進化すると前段で説明しましたが、それでは、倫理観や使命感とはいかにして養われるものなのでしょうか。

仕事の複雑化・高度化によって、前例のない課題やそもそも何が問題なのかさえも分からない課題に直面することは頻繁に発生します。そして、それらの多くは社会的課題に起因している問題です。したがって、社会的課題への取り組みに参加し、その成果を自らの目で確かめ実感することが使命感へと繫がっていきます。また社会的課題を解決する際には倫理観が求められます。倫理観を持って判断・実行していくことで、様々な方々に支持され、社会的に活かされていることが実感できます。つまり、知識労働者がプロフェッショナルへと進化するためには、自身を社会的な存在として位置づけ、社会的課題を解決する過程で倫理観と使命感を養っていく必要があると言えるでしょう。例えば、AT&T社では次世代経営者候補に対してチャリティ活動への参加を義務付けているそうです。チャリティ活動で一番重要なのは大義名分です。そもそも大義名分が社会貢献に意義あるものとして発信できなければ、人から共感を得ることはできません。大義名分を何千・何万回と言葉に出すことで社会に活かされていること、社会貢献の素晴らしさを知るそうです。

複雑化・高度化する社会の中、プロフェッショナルの持つ専門性は企業にとってますます重要になることでしょう。しかし、複雑化・高度化する仕事に対して従来の知識労働者レベルでは解決できなくなってきていることもまた事実です。したがって、これからの時代に求められるのは、ソーシャルな視点で課題設定・課題解決できる使命感と倫理観を持った「ソーシャル・プロフェッショナル」ではないかと考えます。

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≪参考文献≫
・田中弥生 著『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』(2012、集英社)
・トーマス・H・ダベンポート著,藤堂圭太訳(2006)『ナレッジワーカー』(ランダムハウス講談社)
・谷内篤博 著(2007)『働く意味とキャリア形成』(勁草書房)
・宮下清 著(2001)『組織内プロフェッショナル』(同友館)
・申美花 著 (2002) 「ホワイトカラーの二重コミットメントに関する研究-コミットメントによる人材タイプ別の比較」,『三田商学研究』, 44(6), pp.117-143

※本記事は、機関誌「HITO」vol.04 『プロフェッショナルの未来』からの抜粋記事です。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のもの。

機関誌「HITO」vol.04 『プロフェッショナルの未来』

cover04.jpg今やすべての人にプロフェッショナリティが求められる時代。企業はプロフェッショナルをいかにして創造し活用すればよいのか。個人がプロフェッショナルになるには何が重要なのか。一橋大学大学院 守島基博教授など有識者のインタビューに加え、企業事例などを通してお伝えします。

>>機関誌「HITO」vol.04 『プロフェショナルの未来』

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