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インタビュー

2014.09.24

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まずは満額回答、次は自分の志

キャリア 人事制度 戦略人事

人事本部長就任から、2度の大きな風土改革などを経験するなかで、経営の要望に対し100%応える"満額回答人事"に5年間徹してきた曽山哲人氏。経営から満足を得られるレベルまで、"満額回答"ができるようになった今、"自分の思いや志を実現する"という次のステージへと踏み出しました。2013年から始まった社内ヘッドハンティング制度やタレントマネジメントのためのデータベース「GEPPO(月報)」の構築、そして2014年に導入した女性支援制度「macalon(マカロン)パッケージ」(以下、マカロン)といった新施策など、曽山氏の次なるコミュニケーション・エンジンの挑戦は走り始めています。

年間150人が異動! 社内ヘッドハンター始動

―― 2013年から社内ヘッドハンティング部門「キャリアエージェントグループ」を新設。併せて、個人の潜在能力やキャリア志向を可視化できるGEPPOというデータベースを構築されました。

曽山氏:社内ヘッドハンティングもGEPPOも、そもそもは経営陣が中心となり中長期的な経営課題の解決策や新規事業プランを提案し合う「あした会議」という社内の経営会議で人事以外の部署の社員から提案されたものです。

GEPPOは、社員に先月の目標を文章で入力してもらい、翌月の月初め5営業日以内に、目標達成度を「晴れ」「曇り」「雨」などの天気マークで回答してもらっています。その結果を見て、「雨」が続いている社員をフォローしたり、反対に、「晴れ」続きの人には伸びしろがある可能性が高いので新たな挑戦の機会を用意するなど対応を検討します。また、GEPPOにはフリー回答欄もあり、将来のキャリアに対する希望や得意なこと、今の成長実感度合いや稼働率など、いろんなことを質問しています。例えば「あなたの稼働率はどうですか?」と聞くと、だいたい平均で「70~80%」と回答してくれるのですが、なかには「200%でパツパツです」と主張する人もいれば、「5%」と書いて「まだまだキャパシティがあるので機会があればチャレンジしたい」という意思表明をしてくれている人もいます。

GEPPOキャプチャ_将来のキャリア3-1024x759.pngGEPPO画面例

―― ヘッドハンティングはどのように進めるのですか。

曽山氏:まず月初めに、社員が目標達成度を入力したGEPPOの内容を手分けして2~3日で読み込みます。そうして、その月にフォローしたほうがよい社員を決定し、月末までの1カ月間でその人たちとの面談を実施するというサイクルです。面談で聞くことは、前回お話した風土改革の際の面談とほぼ同じで(前回リンク)、「今のコンディション」と「困っていること」、あとは「今やっている業務」と「将来のキャリアの方向性」についても聞きます。一方で、事業部長層からの人材ニーズも把握しているので、面談するなかで要件に合致する人材が見つかれば異動を役員会に提案するという仕組みです。ヘッドハンティング組織の立ち上げから丸1年が経ちますが、既に150人の異動実績があります。

妊活をキーワードに築いた女性支援制度「マカロン」

―― 女性支援制度マカロンの誕生のきっかけは?

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株式会社サイバーエージェント
取締役 人事本部長 曽山 哲人 氏

曽山氏:これもきっかけは「あした会議」です。「あした会議」で提案された育児支援制度自体は新規性がないということで残念ながら却下されたのですが、そのタイミングで社長の藤田から「『妊活』が世の中の課題として顕在化してきたし社員にも実はニーズがあるのでは? 人事本部で再度考えてみて」と言われて制度化の検討を始めました。

実を言うと、女性・育児支援の制度は、人事本部長になった頃からずっとやりたかったことです。しかしながら、ママ社員より独身女性社員のほうが多い時期にやっても「優先順位が違うでしょ?」と"シラケ"させるだけですし、こういう取り組みは会社側がアピール重視でやっても意味がありません。過去に社内託児所も検討しましたが、「渋谷(同社所在地)へは送迎車でもない限り連れていくのが無理」という意見が出たり、松濤にある24時間経営の保育所利用も考えましたが、「松濤は会社から遠くて不便」と言われたり、なかなかママ社員に満足してもらえる施策を作れずにいました。そうして今回、妊活というキーワードが浮上し、再び制度を検討できる機会を得たのです。そこでまず、キーワードとした『妊活』にかかわる制度については、「妊活休暇」「妊活コンシェル」を設けました。

個人の働きやすさに配慮した制度

―― マカロンは、「キッズ在宅」「キッズデイ休暇」など子育てに関する制度も充実していますよね。

曽山氏:キッズ在宅、キッズデイ休暇は、社員の声を参考に考案したものです。例えばキッズ在宅ですと、「子どもが病気になったときに、自分は元気だから在宅で働きたいのに子どもをどこにも預けられないから働けない」といった意見などがきっかけです。それまで在宅勤務は一部の技術者などには認めていたのですが、ママやパパが病児保育などの理由で使うという考え方が社内にはありませんでした。ですから今回、病児看病のための在宅勤務も許可することにしたのです。

また、キッズデイ休暇の場合は、子どもの入園式や三者面談など学校行事に参加するために有給休暇を取っているママ社員やパパ社員が多いことは、日頃の社員とのランチでもよく聞いて知っていました。「行くと子どもも奥さんも喜んでくれるんですよね。でも、たまたま自分の部署にはパパとママが少なくて、お休みをもらうのは何か悪い気もするんです」という声も同時に耳にしていたので、子どもの行事のために取る休暇を会社として公けに認めたほうが、そのママやパパも取得しやすくなりますし、奥さんや子どもからも喜ばれます。こういうイベントはたいてい半休をとれば済むことが多いので、業務への影響は少なく、むしろ社員の活力が出ることを考えるとプラス面が大きいだろうと考え、制度化しました。

―― これらに「エフ休」を加えた5つの制度をまとめてマカロンパッケージとなるのですね。「エフ休」とはどんな制度なのですか。

曽山氏:エフ休のエフは、FemaleのF(エフ)で、女性社員の休暇は有給休暇も含めてすべて「エフ休」と呼ぶことにしたものです。たとえば人事の女性社員が拾ってくれた声によると「生理休暇」というのはチームの男女構成や上司によっては言いづらいというところもあって、「腹痛」とか「体調不良」と言ってお休みしている社員も多かったのです。でも、男性上司にはよくわからないから、優しい上司ほど「大丈夫? 病院行ったほうがいいんじゃない? むしろ家まで行こうか?」と過剰に反応してしまったりして、思いやりが裏目に出かねない。ですから、お互いのためにも、会社として「『エフ休』と言ったらもう深入りしない」というルールにしました。ちなみに、先述した「妊活休暇」も「エフ休」と言うようにし、現場では、誰が「妊活休暇」なのか、誰が「生理休暇」なのかはわからないようになっています。

―― マカロンを導入して数カ月が経ちますが、利用状況はいかがですか。

曽山氏:5つすべての制度で、既に利用実績があります。妊活コンシェルは、募集開始2時間以内に5~6人から申込みがきて、その後すぐに埋まってしまい、現在はすでに増枠を続けているほどです。また、キッズデイ休暇は、パパ社員の利用もとても多いですね。キッズ在宅については、「曽山さん、キッズ在宅すごくいいですね! 会社が公けに認めてくれたおかげで、上司だけでなく、一緒に働いている周囲の社員にも受け入れてもらいやすいところが助かっていますよ!」と女性のエンジニアが言ってくれました。キッズデイ休暇もそうですが、有給休暇で個別に対応できることであっても、やはり会社としてオーソライズしないと、どこかやりづらかったり気まずかったりすることもあると思います。そこを配慮して、現場に裁量権を渡すことと、会社として制度化することをよく考えなければならないと思います。

macalon(マカロン)パッケージ

名称由来〔ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く)

■エフ休
女性社員の休暇は有給休暇も含めてすべて「エフ休」と呼ぶ制度。従来の「生理休暇」や、下記「妊活休暇」も、取得する際には「エフ休」と言い、周囲に理由を知られることはない。

■妊活休暇
不妊治療中の社員の通院のために月1回まで取得可能な特別休暇。男性社員も取得できる。

■妊活コンシェル
専門家に月1回30分の個別カウンセリングで相談できる制度。パートナーとの参加も可能。

■キッズ在宅
子どもの看護時に在宅勤務できる制度。男性社員も利用できる。

■キッズデイ休暇
子どもの学校行事や記念日に取得できる特別休暇。年に半日休暇2回の取得が可能。男性社員も利用できる。

土台となるのは変化の習慣

―― 社員の意見にしっかり耳を傾けながら制度を整え、社員のモチベーションアップに貢献する。ここでもコミュニケーション・エンジンを貫いておられますね。今後さらに、コミュニケーション・エンジンとして、やっていきたいことはありますか。

曽山氏:ずっと変化し続けることです。私は、それがすごく大事だと思っています。変化の主役は現場の社員だし、会社全体の変化を決定するのは経営です。だから人事は、変化を推進し、変化を応援する。いつでも変化できる風土を作っておいて、いざ大きな変化をすると決まったときには、未然に社内の不満を吸い上げたり、面談でフォローしたり、変化を成功させるために、できることをとにかくやります。

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インテリジェンスHITO総合研究所
主席研究員 須東朋広

―― 2度の風土改革を見ても、御社は変化し続けることが根付いているように思います。

曽山氏:そうかもしれません。変化の習慣の上に実力主義と終身雇用が乗っている、そういう状態をつくりたいですね。その状態を成り立たせるには、やはり土台となる変化の習慣が非常に重要です。

―― 100年以上続いてきた老舗企業も、昔から変わらないところというのは、守るべき企業理念があり、それを皆で語り合うという点だけで、商品そのものや営業方法などは時代に合わせて変化させてきました。企業が時代とともに変えていくべき対象には、人のマインドセットも含まれるのでしょうね。3回にわたり、貴重なお話をありがとうございました。


soyama_profile-150x150.png■ 曽山哲人(そやま・てつひと)氏
株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長
1999年、株式会社サイバーエージェント入社。2005年、人事本部設立とともに人事本部長に就任し、2008年から取締役。「採用・育成・活性化・適材適所」など人事全般を手がける。著書に、「クリエイティブ人事~個人を伸ばす、チームを活かす~」(光文社新書)、「最強のNo.2」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

※内容・肩書等はすべて取材当時のもの。

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