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レポート

2014.09.19

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HITOフォーラム「キャリアマネジメントの未来」報告vol.02

キャリア

2014年7月28日、ベルサール九段にて、第5回インテリジェンスHITOフォーラムを開催しました。
第1部では、主に経営層の方々をお招きし、リーダーシップとは何か、リーダーはどう育てるのかなど、経営に資するリーダーシップを創るキャリアについて議論しました。
開催報告の第2回は、一橋大学大学院 守島教授のファシリテートのもと行われた日本IBMの橋本孝之氏、マーサージャパンの古森剛氏、BOLBOPの酒井穣氏の3名のパネリストによるディスカッションの様子をリポートします。

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<報告記事INDEX>
vol.01:〔第1部〕登壇者による冒頭講演
vol.02:〔第1部〕パネルディスカッションの模様

〔第1部〕経営に資するリーダーシップを創るキャリアとは<パネリスト>

日本アイ・ビー・エム株式会社 会長            橋本 孝之 氏
マーサー ジャパン株式会社 代表取締役社長
マーサー ファーイースト地域代表              古森 剛 氏
株式会社BOLBOP 代表取締役CEO             酒井 穣 氏

<ファシリテーター>
一橋大学大学院 商学研究科 教授              守島 基博 氏

※文中の肩書は取材当時のものです。

パネルディスカッションでは、「キャリアやリーダーシップのとらえ方」「キャリアマネジメントを通じてリーダー育成するには、人事・経営は何をすべきか」について議論が行われました。

キャリアをとらえる2つの観点「組織と個」

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一橋大学大学院 守島基博 教授

第1部後半のパネルディスカッションでは、まず守島教授が、各パネリストの冒頭講演をふまえ、「リーダーシップ育成におけるキャリアマネジメントを考える際、組織と個それぞれの観点があるが、この2点をどう統合していけばよいか」という問いを立てました。

その問いに対し、日本IBM会長の橋本氏は、改めて個と組織の方向性を統合させる重要性を強調。そのうえで、まずは組織の観点からビジネスドメインおよびビジョンを明確にし、行動規範を決める。それから個をどう伸ばすかについて考えていくのだと主張しました。なかでも、個を伸ばす際、最も重要なのは失敗経験だと言います。IBMでは現在、全社員の情報がデータベース管理されており、どのような仕事をしたかは何年も前までさかのぼって閲覧できますが、人事評価結果は過去3年までしか見られない仕様になっています。たとえ過去20年間仕事をしてきたなかで失敗した経験があったとしても、その負の経歴を3年以上引きずらせないためです。「失敗を許す社会をつくらなければ日本の成長は難しい」と橋本氏は強調します。

また、個の観点からキャリアマネジメントについて冒頭講演を行ったマーサージャパン代表の古森氏も、まずはその企業として個に求める価値観や規範、コンプライアンスを規定すべきと続けます。それらに賛同してくれず、はみ出してしまう人は一緒には働けない。そのため、企業の持つ価値観、規範、コンプライアンスなどを基準に、仲間として働ける人を採用時に選び抜くことが大事なのです。

さらに酒井氏は、冒頭講演の「群れのルール」の考え方をもとに、こうした企業の価値観や規範、ウェイといったルール自体も、変えていく必要があると指摘します。そもそも企業としてルールを規定する理由は、いちいちルールから話し合っていては組織が効率的に動けないからです。しかし、IBMがダイバーシティを第1世代から第3世代へ変化させてきたように、勇気をもってルール自体も変化させていかなければ組織は立ち行かなくなるのです。
マーサー ジャパン株式会社 古森剛 氏

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マーサー ジャパン株式会社 古森剛 氏

そうした変化のきっかけをつくるのがリーダーであると、古森氏も賛同します。加えて、現在のカルチャーが既存の理念からズレてしまっていることもあるため、リーダーは新しい考え方を作っていくだけでなく、場合によっては今ある価値観を振り返り、再定義することも必要だと言います。

組織にとって、ルールを土台にその先のことを議論することが大事であるが、そのルール自体を変えることも必要で、それが変革につながる。その変革を先導・浸透させていくのがリーダーシップであり、そんな"今あるルールを超えていける人"をどう創るかが組織にとって非常に重要である。3名のパネリストの意見を受けて、守島氏はこのようにまとめました。

登る山は1つに決める、登り方には多様性を認める

酒井氏はさらに、そういうリーダーは必ずしも先導的で目立つ人ばかりではなく、現場の中で特にリーダーという自覚もなく、「こうしたほうがよいのでは」と思うことを少しずつ変えている人もいるだろうと言います。また、人間は本能的に変化を嫌うため、現状を変えていくリーダーは煙たい存在になりがちとも指摘します。

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日本アイ・ビー・エム株式会社 橋本孝之 氏

酒井氏の意見を受けて、橋本氏は「変わることに対して抵抗感のない組織を作ることが大事」と続けます。そのような組織を作るためにも、リーダーにとって危機感の共有はとても大事になってきます。変化なく止まっていることを危機と感じる感覚を持たせるのです。2つ目に重要なことは、会社としてビジョンを決めた後に目標設定とそれを実現するためのマネジメントシステムを作ることです。そのときに注意しなければならないのは、目標を多く掲げすぎないこと。つまり、リーダーはここでリスクをとるわけです。優先順位の低いものを捨てシンプルな目標設定にすることによって、会社の方向感を定める。そして、定期的に達成しているかをチェックするのです。最後に、それがダメであれば変える勇気もまた必要でしょう。ここでもう一つ注意したいことが、数字の見方だと加えます。達成すべき数字は、算出方法も明確で、誰が見ても客観的に納得のいくものであるべきで、グローバルではこの数字は、徹底的に議論して設定しているのです。

古森氏もまた、約束したことをやり抜いた結果で組織はまとまる、と続けます。結果は達成できたかどうかについて回答が1つあるだけ。一方、結果に至るまでのプロセスはいろんな方法がある。つまり、結果となる数字を突き詰めることは、プロセスの多様性を許容するための大事な約束事なのです。どの山に登るかは約束するが、登り方は多様性があっていい。そこに多様性を認めていくのがリーダーシップということなのでしょう。

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株式会社BOLBOP 酒井穣 氏

酒井氏は、何を約束事にするかは難しいとも言います。約束する結果は、上場企業、非上場企業、非営利団体などでそれぞれ異なるのかもしれません。

また、地球規模の環境的危機が迫る現代において、その課題に立ち向かう企業としてのリーダーシップも大事だと酒井氏は主張します。橋本氏は、会社としてリーダーシップを発揮する場合、その恩恵を受ける対象(例えば、株主、顧客、社員、パートナー、地域社会、環境など)によって、何を約束事とすべきかが変わると説明します。またリーダーシップは、会社、社員、個人と、立場によっても異なります。いずれにしても、危機感を感じたら自分がまず動き始める、それがリーダーシップなのでしょう。

リーダー育成のために人事・経営ができること

様々なステークホルダーに対するリーダーシップの話が出たところで、守島氏はNHKの番組「プロジェクトX」で紹介されるような"社会を変えたい"という強い意思のあるリーダーが昨今の日本には少なくなってきたことを挙げました。加えて、企業としても、そんなリーダー出現をサポートする姿勢が薄れてきたのではないかと問いを投げかけます。

hashimoto-300x200.jpg橋本氏は、守島氏の意見に対し「事実だと思う」と述べ、イノベーティブなリーダーが減少した背景には、デフレの影響が大きいのではないかと言います。デフレ期は、コストカットやリストラを断行できるリーダーシップが必要でした。しかし、時代によって必要なリーダーシップも変わり、景気が回復してきた今だからこそ、またイノベーティブなリーダーが求められてきたのかもしれません。

また酒井氏は、自分らしく生きることについて突き詰めて考えることが、意思のある働き方につながると指摘します。例えば「余命3カ月」と宣告されたとして、本当に今、自分らしく生きているのかということを追求してみることです。加えて、古森氏は個人の人生において充実感を得られることと、従事する仕事にどのような重なりがあるかを意味づけすることが大事なのであり、そうした意味づけをサポートできるのが、人事の仕事であると言います。

そこで、橋本氏は冒頭講演で古森氏が語ったキャリア構築のパターンを例に挙げながら、人事が行うべきは「詳細設計型(目指す方向、およびそのために積むべき経験をクリアに設計する)」の支援、そして現場のラインマネジャーが行うべきは「出会い型(確たる方向性よりも、出会いや縁を大切にする)」の支援と、個人のキャリア支援の理想的なあり方を提示しました。

marishima_2-300x200.jpg企業の方向性と働く人の方向性の間にいる存在が人事。その2つをうまくつなぎ合わせていくことが大事なのだと、守島氏は語ります。そのつなぎ込みのためには、いかにして人事が社員一人ひとりの人間理解をするかが大事だと古森氏は続けます。『人を見て、人について考える』という人事の仕事は、非常に難しい仕事。人事の機能が分化し、人事権も各事業部に分散している状況下で、現場や事業部の部長といかに連携して濃密に人について議論し、理解するか。そして、その人間理解を進める際に、人の見方という専門性で人事のリーダーシップを発揮できるか。それが人事にとって、非常に重要な役目なのです。「そんな人事が日本に増えてくれば、リーダーはきちんと育ってくるでしょう」。白熱したディスカッションは、そんな未来への期待を示す守島氏の言葉で締めくくられました。

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