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2015.09.16

いま議論されている限定正社員の問題

1985年時点で16.4%に過ぎなかった非正規社員は2013年時点で36.6%、数にして1,906万人に上る(※1)。これは東京23区と大阪府を足した人口を上回る規模に匹敵する(※2)。もしこうした社員がみな自らの希望で就業しており、企業の人材活用も適切であればさほど問題にならないかもしれない。しかし注目すべきはその内情である。

非正規社員はこの約30年で16.4%から36.6%まで増加
非正規推移

※出所:総務省「労働力調査」

非正規社員のうち5人に1人は不本意就業者(※3)であり、「常雇」など契約期間が長期・継続的な雇用者は6割近くに上る(※4)。常雇的有期社員(※5)、フルタイムのパート社員―。そんな語義矛盾ともとれる人材活用が横行し、個人のみならず企業や社会にも負の影響を及ぼしている。

非正規社員のうちの常雇の割合推移(文中※4)
常雇の割合推移

※出所:総務省「労働力調査」

こうした問題を受け、政府も対応を進めている。その柱が「限定正社員」(※6)だ。これは「勤務地」「時間」「職種」のいずれかに限定性のある正社員を指す。例えば勤務地限定正社員や職種限定正社員であれば、「いわゆる正社員」(※7)のように全国どこでもどんな部署でも赴く必要性はない。また、時間限定正社員であれば「いわゆる正社員」のような過多な残業を求められることもない。こうした就労ニーズに即した働き方を広めることで、正規−非正規の二極化を是正し『全員参加の社会』を実現することを政府は狙いとしている。

こうした動きに企業はどう向き合えば良いのだろうか。 言うまでもないが『全員参加社会』実現のために企業は人材を採用し活用するわけではない。政策への対応が企業成長の足かせになっては本末転倒であろう。先進的に取り組む企業では、むしろ企業成長のために、旧来の雇用区分や人材活用を見直している。そうした事例を通して見えてくるのは、政策そのものの是非よりも、その背景にある経済・社会の変化を読み取り、それをいかに自社の成長戦略と紐付けるか、という視点である。

機関誌HITO vol.7「多様な正社員の未来」では、先進企業事例として株式会社すかいらーく、ギャップジャパン株式会社、日本マクドナルド株式会社の取り組みを紹介している。取り組みの詳細は、ぜひ本誌をご覧いただきたい。 >>機関誌「HITO」vol.07 『多様な正社員の未来』

※本記事は、機関誌「HITO」vol.07 『多様な正社員の未来』からの抜粋記事です。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のもの。

※1 いずれも総務省「労働力調査」
※2 東京23区907万7,177人(平成26年7月1日時点)大阪府885万791人(同年8月1日時点)
※3 総務省「労働力調査(詳細集計)」(平成25年平均)によると不本意就業者は全体で19.2%。25~34歳に至っては30.3%。なお、不本意就業者(非正規雇用)とは、現職の雇用形態(非正規雇用)についた主な理由が「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した者。
※4 総務省「労働力調査(詳細集計)」による。
※5 常雇とは雇用契約期間が1年超または期間の定めのない者を指す。また、臨時雇・日雇は雇用契約期間が1年以下の者。
※6 厚生労働省『非正規雇用のビジョンに関する懇談会』などでは「多様な正社員」とも定義されている。
※7 日本の正社員の典型的な雇用形態で、『「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会』等で用いられている用語。雇用が安定し、職業能力開発機会や相対的に高い処遇が得られる一方で、職務や勤務地の変更が幅広く行われ、長時間労働がみられる。規制改革会議の『雇用ワーキング・グループ報告書』では、職務・勤務地・労働時間が特定されていない無限定正社員という傾向が欧米に比べても顕著である点が指摘されている。

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