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キャリアマネジメント

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キャリア自律の必要性は十数年以上前から叫ばれています。しかし「自己責任」という名のもとキャリア開発の主体者が過度に個人だけに委ねられてしまっているのではないでしょうか。個人のみならず企業にとってもキャリアマネジメントの必要性が高まる中、企業にはどのような役割が求められるのでしょうか?

- 委員会
第4回 議事要旨
『「学びマトリクス」に基づくタイプ移行の可能性』

2013.11.25

これまで3回の議論を通じて、キャリアを「学びの軌跡」であると捉え、「学びマトリクス(仮)」を作成した。第4回会合となる今回は、学びマトリクスにおける5ゾーンの意義と限界、またゾーン間の移行可能性について議論を行った。

「学びマトリクス」5ゾーンの意義と限界について

これまでの議論を通じて、キャリアのある一時点をスナップショットで見た場合、以下の5つの学びゾーンに分類されることが指摘された。

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※用語ならびにその定義はすべて仮。

一般に、企業視点に立てば「(1)自己革新型」が望ましいとされ、その他は何らかの課題点があるとされる。しかし、個人の長い職業人生を考えた場合、一人の個人が「(1)自己革新型」であり続けることは現実的妥当性に乏しい。また「(1)自己革新型」であり続けることが必ずしもキャリアマネジメントする上で望ましいとも言い難い。なぜなら、「(1)自己革新型」の実践する「合目的的な学び」は予定調和な環境変化には適応できても、不確実な環境変化に対応するための「幅の広さ」を担保できない可能性があるためである。

一方、不確実な環境変化に対応するための幅の広さを担保する「学習の吸収力」という観点から「(2)ラーニングロマンチスト」を捉えると、新たな見方を提示できる。一般に、「(2)ラーニングロマンチスト」は「(1)自己革新型」と違って、企業から敬遠されがちな存在である。なぜなら、成果を意識しない「無目的的な学び」は企業にとって無価値なだけでなく、本業への支障をきたすとさえ見受けられるためである。しかし、本当にそうだろうか。特に駆け出しのビジネスパーソンにとっては一体何の役に立つのかよくわからない経済理論や経営戦略のフレームワークであっても、それを知識として吸収していたことが10年後の仕事に活きてくるということはよくある。つまり、軸足は「(1)自己革新型」にあったとしても、「(2)ラーニングロマンチスト」への一時的なシフトが活きることはあるだろう。今の時代に求められる「連続的スペシャリスト」(リンダグラットン2012『ワークシフト』)になるためには、一定の学び直し期間が必要とされているが、それはまさに「(1)自己革新型」→「(2)ラーニングロマンチスト」→「(1)自己革新型」の変遷モデルと符合した考え方である。以上より、とりわけ「(1)自己革新型」と「(2)ラーニングロマンチスト」はいずれもキャリアマネジメント上重要なステージとして位置づけることができる。

それでは、その他の「(3)経験主義的評論家型」「(4)危機欠如・現状維持型」「(5)指示待ち型」についてはどうだろうか。いずれのゾーンもある一時点において踏むステップという意味では問題ないが、後述するようにあるゾーンに居続ける、または3ゾーン間を移行し続ける場合には注意を払う必要がある。なぜなら、不確実な環境変化に適応するためには能力開発行動が必要不可欠なためである。

これまで、能力開発行動のベースは職場の日常に溢れている「良質な経験」によって育むことができるとされてきた。しかし、近年、OJTの機能不全や教育訓練投資コストの削減などが指摘されるようになった。企業主体で良質な学習機会を提供することが難しくなった今、学びは個人の主体性・積極性に頼らざるを得ない状況と言える。「第3次勉強会ブーム」と言われるように所属組織を超えて学習機会を求める社会人の動きに注目が集まる一方で、「学ばない人」との格差は広がりを見せている。言い換えれば、能力開発行動の有無を分ける境目(タイプ①②とその他の差)が鮮明化しているということである。こうした現象は、学習に必要な「吸収力」という観点から説明可能である。つまり、学びには吸収力(前提知識)が必要だが、吸収力(前提知識)は学びによってしか得られないというパラドキシカルな無限ループの中で、「学び人と学ばない人」という二極化構造がより鮮明になっているのではないだろうか。

「学びマトリクス」のゾーン間移行の可能性について

上述したように、本委員会では上記5つのゾーンがキャリアを通じて変容的であるという前提に立って議論を展開した。それでは、一般にどのような移行が考えられるのか。ここではすべてのパターンに言及することはできないが、代表的なパターンを取り上げてご紹介したい。また、それらの移行に影響を与えている個人要因、環境要因について整理する。

論点
パターン(1):「(5)指示待ち型」に居続けてしまう要因
パターン(2):「(5)指示待ち型」→「(4)危機欠如・現状維持型」へのシフト要因
パターン(3):「(5)指示待ち型」→「(3)経験主義的評論家型」へのシフト要因
パターン(4):「(5)指示待ち型」→「(2)ラーニングロマンチスト」へのシフト要因
※補足1:タイプ5→1になるパターンもあるが、2を経由することがほとんどであるとの解釈からここでは触れない。
※補足2:その他からタイプ5に戻る可能性もあるが、ここでは触れない。

パターン(1):「(5)指示待ち型」に居続けてしまう要因
【個人要因】
「夜遅くまで会社に居続けること」「会社に忠誠を尽くすこと」が目的化する意識。手段が目的化してしまい、積極的に何を遂行する姿勢はない。
【環境要因】
指示待ち型に対する企業の高い評価やそれを重用する組織風土。言われたことはそつなくこなすことができるためマネジメントしやすいタイプ。大学院進学など直接業務成果に繋がるか分からない能力開発行動に投資をするより,単純に業務量を増やす残業を好意的に受け止める組織風土。

パターン(2):「(5)指示待ち型」→「(4)危機欠如・現状維持型」へのシフト要因
【個人要因】
時間展望における未来志向性の低さ。
キャリアモティベーションの低さ。
【環境要因】
雇用の安定性が担保された環境(健全な危機感を感じにくい環境)や組織の歯車化した感覚が強く、学びのスパイラルが機能しない環境。また、キャリア転機の消失(所属組織やその中での職種・職位に大きな変化がないこと)により、危機意識が欠如する。

パターン(3):「(5)指示待ち型」→「(3)経験主義的評論家型」へのシフト要因
【個人要因】
成果の最大化を能力開発行動に求めるのではなく、過去の経験(特に成功体験)に求めようとする姿勢。(能力開発行動の重要性を強く認識していないタイプ)
【環境要因】
成果を重要視する組織風土やマネジメントスタイル。

パターン(4):「(5)指示待ち型」→「(2)ラーニングロマンチスト」へのシフト要因
【個人要因】
「学ぶことが役立つ」「学ぶこと自体が楽しい」という学習動機。
【環境要因】
リストラや修羅場経験など非日常的なキャリアイベント。また、社会人大学院やラーニングイベントなど学習動機を喚起させる場づくり。

第5回委員会では、以下の変遷パターンに着目し、それぞれを促進・阻害する個人要因・環境要因について整理する。

【肯定的な変遷モデル】
「(4)危機欠如・現状維持型」→「(5)指示待ち型」→「(2)ラーニングロマンチスト」→「(1)自己革新型」
「(5)指示待ち型」→「(3)経験主義的評論家型」→「(2)ラーニングロマンチスト」→「(1)自己革新型」
「(1)自己革新型」⇔「(2)ラーニングロマンチスト」

【否定的な変遷モデル】
「(5)指示待ち型」→「(4)危機欠如・現状維持型」
「(3)経験主義的評論家型」→「(4)危機欠如・現状維持型」
「(2)ラーニングロマンチスト」維持
「(1)自己革新型」→「(3)経験主義的評論家型」

日時:2013年11月25日(月)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室

参加者:
石山 恒貴氏(法政大学大学院 政策創造研究科 准教授)
服部 泰宏氏(横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院(兼)経営学部 准教授)
亀島 哲氏(厚生労働省 人道調査室 ハローワークサービス推進室 室長)
田中 潤氏(株式会社ぐるなび 執行役員 管理本部 兼 総務部門長)
酒井 之子氏(コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社
マーケティング本部教育研修部 部長)
須東 朋広 (株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員)

事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中 聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 森安 亮介

※肩書きは当時のものです

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