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キャリアマネジメント

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キャリア自律の必要性は十数年以上前から叫ばれています。しかし「自己責任」という名のもとキャリア開発の主体者が過度に個人だけに委ねられてしまっているのではないでしょうか。個人のみならず企業にとってもキャリアマネジメントの必要性が高まる中、企業にはどのような役割が求められるのでしょうか?

- 委員会
第1回 議事要旨
『個人が自己変革するために必要なものは何か?』

2013.08.29

キャリアマネジメント研究会発足の背景

市場の不確実性の増大や職業人生の長期化など、働く個人を取り巻く環境は大きく変化している。1つの組織内でキャリアを安定的に築くのではなく、複数の組織をまたぐことや、今まで積み上げてきたスキル・能力が通用しなくなるような変化にも対応することが求められている。そうした中で「バウンダリーレスキャリア 」・「プロティアンキャリア 」など”新たなキャリア”の概念が提唱されて久しい。
しかし、個人の意識や行動は変化しているのだろうか?現状を見る限り、残念ながら変化していないと言わざるをえない。例えば日本能率協会(2013)『2013年度 新入社員「会社や社会に対する意識」調査』では、「今の会社で定年まで勤めたい」が過半数を占めるほか、JILPT『従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査』(2008)によると、働く上で重視することは、「雇用が安定していること」が依然高い。他方、企業側の意識をみても能力開発・能力活用はあまり積極的に行われていない上、中堅社員の育成においてもキャリア研修の実施率は依然として低い水準にとどまっている。
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※出所:日本能率協会『2013年度 新入社員「会社や社会に対する意識」調査』(2013)

企業や社会のニーズが変化する中、その変化に個人の意識・行動が追いついていないことは個人のエンプロイアビリティ停滞を招くことに加え、組織にとっても変化への対応力低下に陥る温床となっている。個人が変化に対応し、自己変革を行い続けるために何が必要なのだろうか?そして組織はそれにどう介入し促進すれば良いのだろうか?

1職務、組織、仕事と家庭、産業の壁を動くキャリア。マイケル・アーサーが提唱した。
2変幻自在のキャリア。D・ホールが提唱。尚、プロテウスとは、姿形を変幻自在に変えられた神の名を指す。

個人が変化に対応し、自己変革を行い続けるための
4つのサイクルとそれを支える土壌

個人が自ら変革し学習を行い続けるためには何が必要なのだろうか?ケース・ウェスタン・リザーブ大学のボヤティスによれば次の5つの要素が必要だとしている。

▶キャリアの意図的変革のための5つのステップ

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出所:Richard E. Boyatzis(2006)。尚、日本語訳は境 忠宏(2011)「キャリア研究の発展とキャリア教育の今後の課題」(国際経営・文化研究Vol.16)を参考に事務局で作成した。

上記5つの要素は並立ではなく、厳密には下記のような4つのサイクル((1)(2)(3)(4))それらを促す土壌(5)という関係性にある。

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※出所:Richard E. Boyatzis(2006)“An overview of intentional change from a complexity perspective”を参考に加筆修正。

本委員会では4つのサイクルのうち主に(1)目指すべき自己像やパーソナルビジョン/(2)(強みや弱みに基づいた)目指すべき自己像と現状とのギャップ/(3)ラーニングアジェンダの設定と計画化における課題と企業の取組事例について共有を行った。

(1)目指すべき自己像やパーソナルビジョン
ボヤティスによれば、個人が自己変革を望み学習を志向するためにまず必要なのは「自分は何になりたいのか?」などの目指すべき自己像の確立である。委員会においても、自発的に学習するか否かは「そもそも自分がどのように生きたいのか?」等の指針の有無によって大きく左右される点が指摘された。
では、個人が目指すべき自己像を確立するにあたり何が必要なのだろうか?本委員会で提示されたのが「時間展望」である。自身の「ありたい姿」を確立し長期的な展望に立っている人ほど、変化対応力を高める行動にもつながる。従って企業においてもキャリアパスやポストを明確化しオープンにすることが、社員に長期的な時間展望の可能性を示すことにつながるのではないだろうか。
なお、目指すべき自己像について考えるにあたり、(職業や企業の視点からではなく)あくまで「自分自身がどうなりたいか?」といった視点に立つことに留意しなければならない。本委員会においては、職業や企業の視点から”偏った自己分析”に陥った結果、適切なキャリアを歩めない学生および若手社員の存在も問題視された。

(2)(強みや弱みに基づいた)目指すべき自己像と現状とのギャップ
上記①の次に必要なのは、目指すべき自己像と現実の自己とのギャップの認識である。その際、「今何ができ何ができないのか」という過去の成果から判断するのではなく「未来からの視点」から判断することが重要だとボヤティスは指摘している。ここでいう未来の視点とは、目指すべき自己像と現実の自己とを比較し、整合している部分から強みの萌芽を見出すと同時に、整合していない部分を課題として認識し開発していこうという視点である。
こうしたギャップや強み・弱みを本人が自覚するために組織はどういった支援が可能だろうか?本委員会ではメンターの有効性が指摘された。とくに外資系企業においてはメンタリングツリーなど、適切にメンタリングを受けられるような仕組みや風土が根付いている企業が多い。しかし、日本企業は、仮にメンター制度が存在していたとしても、メンター自身の忙しさやキャリア意識の欠如によって形骸化しているケースが多いのではないだろうか。

(3)ラーニングアジェンダの設定と計画化
上記(1)(2)が明確になった上で、次に必要なステップがそのギャップを埋めるための具体的な筋道であろう。ボヤティスはこれを「ラーニングアジェンダ」と呼び、「望ましい未来の開発に焦点を絞った」ものであるべきだとしている。
日常の業務を行いながら”未来の開発に絞った”ラーニングアジェンダを設定し実行するためには何が必要だろうか?本委員会では上司のサポートが必要不可欠であることが指摘された。本人へのフィードバックやすり合わせ、仕事の割振りなどを通し、目の前のタスクを個人のラーニングアジェンダと結び付けられるか否かによって個人の学習の実行有無が大きく左右される。しかし、実情は上司が目の前の業績やKPIにのみ目が奪われ、部下のキャリアを考慮できていないケースが多い。このことが仮に目指すべき自己像の明確化や現状とのギャップを認識する整備が行われていたとしても、実行フェーズ((3)・(4))に移れない原因の1つではないだろうか。

以上のように本委員会第1回では、(1)(2)(3)を中心に議論を行った。では、「④望ましい変化を実現するための新たな行動の実験と実践」や、それを促す「(5)新たな学習や挑戦を支持し可能とさせる人間関係」とは、どのようなものなのだろうか?次回以降、具体的な取り組みをもとにしながら模索したい。

※参考文献
・Richard E. Boyatzis(2006)“An overview of intentional change from a complexity perspective”
・日本能率協会(2013)『2013年度 新入社員「会社や社会に対する意識」調査』
・境 忠宏(2011)「キャリア研究の発展とキャリア教育の今後の課題」(国際経営・文化研究Vol.16)

日時:2013年8月29日(水)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室

参加者:
石山恒貴氏(法政大学大学院 政策創造研究科 准教授)
服部泰宏氏(横浜国立大学 国際社会科学研究院(兼)経営学部 准教授)
亀島哲氏(厚生労働省 人道調査室 ハローワークサービス推進室 室長)
川口公高氏(株式会社ミスミグループ本社 人材開発室 副ゼネラルマネジャー)
酒井 之子氏(コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社 マーケティ
ング本部教育研修部 部長)
島田 由香氏(ユニリーバ・ジャパンHD株式会社 取締役本部長)
田中 潤氏(株式会社ぐるなび 執行役員 管理本部 兼 総務部門長)
須東 朋広 (株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員)

事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中 聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 森安 亮介

※肩書きは当時のものです

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